ナノキャリア(4571)

出典: www.sharedresearch.jp


ナノキャリアは、薬物ターゲティング及び送達機能をもつミセル化ナノ粒子(高分子ミセル)技術を用いて新しい治療薬を開発するバイオベンチャー企業である。

ナノキャリア(4571)


[編集] 直近更新内容

[編集] ハイライト

同社は、2010年9月3日に第2四半期累計期間および通期の業績予想を修正した。修正後の業績予想は、以下の通り。

第2四半期累計期間業績予想:

売上高 20百万円
営業利益 △312百万円
経常利益 △312百万円
当期純利益 △313百万円

通期業績予想:

売上高 475百万円
営業利益 △226百万円
経常利益 △227百万円
当期純利 △229百万円

海外製薬会社と新規ミセル化ナノ粒子医薬品製剤について、これまでライセンス契約締結による収入を第2四半期に見込んでいたが、評価期間が延長され、ライセンス契約締結見込み時期が来春にずれた。本件については、第3四半期に一旦オプション契約が締結される。なお、売上減少幅ほどに利益が減少していないのは、経費節減の効果に加え、上記契約案件で見込まれていた費用が発生しないことや、NC-4016についても第I相の臨床試験の終了予定時期がずれたことにより治験用製剤製造費用および関連費用が発生しないためである。

同社は、2010年7月30日に2011年3月期第1四半期決算を発表した。


同社は、2010年6月28日にパクリタキセルミセル(NK105)に関する物質特許が欧州において登録査定を受けたことを発表した。


同社は、2010年6月21日に同社のコア技術であるナノテクノロジーを応用した化粧品を開発したことを発表した(美容液;商品名「エクラフチュールーW」)。発売は2010年10月1日を予定している。


同社は、2010年5月19日に同日開催の取締役会において、メディネット社に対し第三者割当増資を行うことを決議したと発表した。発行株数は4,819株、発行価額 1株につき20,750円。調達資金の額は99,994,250円であり、発行諸費用1,800,000円を差し引いた差引手取概算額は98,194,250円となる。2010年6月7日は払込手続きが完了され、増資後の発行済株式数は133,398株になった。資金用途としては、メディネット社との包括的共同研究契約を元に行うがん治療分野の新しい医薬品や医療技術等であるとのこと。詳しくは、サイトカインのミセル化製剤と各種エフェクター細胞及び抗原提示細胞を用いた細胞治療との組み合わせによる新たながん治療技術や、抗体結合ミセルを用いてがん領域をターゲットとした治療技術の研究開発費用に充当する予定である。株式発行による希薄化は3.74%であり、既存株主に対し大きなインパクトはない、とSR社は見ている。又、厳しい市場環境におけるメディネット社との協力関係強化は一定の評価ができるであろうが、目に見える形で成果が表れるのにはある程度時間かかるであろう。


同社は2010年5月14日に通期決算を発表した。


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[編集] 業績動向

四半期業績推移

image:Nano-JP-quarter.png

2011年3月期第1四半期業績

2010年7月30日に同社は2011年3月期第1四半期決算を発表した(上表を参照)。同社の上半期の業績予想に対する第1四半期の業績及び進捗率は以下の通り。

  • 売上高: 2.0%(上半期予想516百万円)
  • 営業利益: △145百万円(同119百万円)
  • 経常利益: △145百万円(同118百万円)
  • 四半期純利益: △146百万円(同117百万円)

売上高に関しては、提携先に対する新規開発パイプラインの評価研究用ミセルの供給に基づく収入があった。営業利益に関しては、研究開発費を極力節減したことにより、145百万円の営業損失に留まっている。

また、第1四半期に同社のコア技術であるナノテクノロジーを応用した美容液「エクラフチュールーW」)を開発し、テスト販売を開始した。本格販売開始は2010年10月1日の予定。この化粧品の開発・販売の主な目的は同社の技術力をアピールすることにある。高分子ミセルにより、ビタミンC誘導体やビタミンEなどの保湿性の高い成分を角層 のすみずみまで浸透させ、潤いあふれる透明感のある素肌を保つ。

上半期及び通期業績予想に変更はなかった。同社は上半期の売上高について、新規契約締結に伴う契約収入等により、達成する見込みであるとしている。


パイプラインの現況

パクリタキセルミセル(NK105)

同社によると、ほぼ計画通り第II相臨床試験が終了し、現在データの解析中。データ解析には通常4~6カ月を要するが、データ解析終了後には第Ⅲ相臨床試験が開始される見込み。

ナノプラチン®(NC-6004)

現在引き続き台湾での第I/II相臨床試験が進行中。II相臨床試験は2011年より開始予定であるが、終了までには開始から約1年がかかる見通し。

ダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)

第I相の臨床試験が進行中。同社は、試験結果と基本データが、遅くとも2010年秋までに出揃うとしていたが、終了予定が12月末までにずれた。同社によると第I相の臨床試験では安全性の確認及び投与量の決定が行われるが、同社及びDebiopharm社が予想していたより副作用が少なかったことから投与できる量が増えており、臨床試験が長引いている。臨床試験の時期はずれているが、同社は安全性の確認が行われたことによるもので、Debiopharm社も満足しており、ネガティブではないとしている。


2010年3月期通期実績

2010年5月14日に同社は2010年3月期通期決算を発表した(上記表を参照)。

売上高は1億1,800万円(前年同期比66.7%減)、営業損失は4億9,300万円(前期は5億3,200万円の損失)、経常損失は4億9,200万円(前期は5億2,400万円の損失)、当期純損失は4億9,500万円(前期は5億2,400万円の損失)であった。

2010年3月期 業績のレポートカード

売上高

目標: 505百万円

実績: 118百万円

営業利益

目標: -253百万円

実績: -493百万円

当期純利益

目標: -257百万円

実績: -495百万円

2010年3月期通期業績は3月の修正後会社予想とほぼ合致するものだった。第4四半期中にライセンス契約に至る予定だった交渉が2011年3月期まで持ち越されたことが、当初会社予想との乖離要因だった。期中のライセンス契約に至らなかったのは、シスプラチン誘導体ミセル(ナノプラチン®(NC-6004))及びダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016) に関する交渉。会社側から詳細説明はないが、NC-6004の臨床試験に想定以上の時間を要していることが契約延期の主因ではないかとSR社では推察している。一方、交渉が先延ばしになったことで、逆に戦略的機会が生まれた可能性があるとSR社では考えている(詳細は後述)。

2010年3月期の研究開発費は219.2百万円(前年同期比25.8%減)だった。これは、予算上の制約が主因だったが、2009年3月期に利用した研究補助金がなかったことも影響したようだ。概して、ナノキャリアは費用をうまく抑え、キャッシュバーンを維持可能な水準に保っているようだ。


パイプラインの現況


パクリタキセルミセル(NK105)

同社によると、第II相臨床試験がほぼ計画通り進行中である。同試験は日本化薬株式会社により実施されており、日本化薬の発表前にナノキャリアが詳細に言及することはできない。しかしSR社では、パクリタキセルミセル(NK105)の臨床試験は、当初計画よりやや遅れ気味だと推察している。日本化薬は保守的な性質の会社で、これまでも小規模ニッチ市場を狙った創薬・上市において注意深い足場固めをしており、特許期間終了後も安定した売上を確保してきた確固たる実績をもつ。今回の開発にあたっても、ゆっくりと慎重な態度を保っているようだ。SR社では、日本化薬が第II相臨床試験における適応症を胃がんに絞り込んだことにも注目している。これほど狭い範囲に絞り込んだ理由は定かではないが、おそらく、医学的根拠のみならず戦略性を勘案した結果ではないかとSR社では推察している。胃がんは国内において最も多いがんの一つであり、日本化薬による大胆な施策により潜在的競合相手を牽制することも可能だとSR社は考える。パクリタキセルミセル(NK105)の承認時期は2014年から2015年初とSR社では睨んでいる。


ナノプラチン®(NC-6004)

台湾での第I/II相臨床試験は当初想定以上に時間がかかっており、その理由は、よくある患者募集の遅延であると会社側は説明している。遅ればせながらも、予備データは2010年夏には出揃う見込み。SR社は、その時点で、提携先候補とのライセンス契約交渉が再開するものと予想している。NC-6004の複数のライセンスが可能になる。Orient Europharma Co. Ltd.社が独占権を有するのはアジア、オセアニア地域のみ (日本、中国本土を除く)であることから、日本、中国本土、米国、EU諸国でのライセンスが可能になる。

もう一点、2010年3月期中にライセンス契約を逃した経緯について興味深いのは、協議の対象がNC-6004とNC-4016の両方だったと会社側がコメントしている点だ。会社側は詳細を明らかにしていないが、SR社では、両製剤の提携先候補は同一の会社だったのではないかと推察している。実際、NC-4016の交渉が頓挫したのに、会社側からの説明では、NC-6004 の台湾での臨床試験遅延を理由としてほのめかしたにとどまっていることから、両製剤の国内販売権に関する交渉相手は一社のみであった可能性が高いことが示唆されている。一方、米国、EU諸国におけるNC-6004の権利についての提携候補が一社だったか複数だったかは不明だが、いずれにせよ臨床試験実施の遅延がここでも契約遅延の原因となった。

2010年3月期の会社予想に織り込まれた契約交渉が実を結ばなかったのは残念だが、これにより、同社は時間的猶予と複数の提携候補と交渉を進めるための道徳的権利を手に入れたとも言えよう。両製剤についてさらに具体的な試験結果が出揃えば、2010年3月期に比べ、同社は、さらに優位な立場で交渉にのぞむことが可能になろう。そうなれば、両製剤に関するライセンス契約は、仮に2010年3月期に契約締結に至った場合に比べ、より大きな収益源となる可能性も出て来たとSR社では考えている(ロイヤリティのパーセンテージは一般に、臨床試験のフェーズが進むにつれ増加する)。


ダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)

第I相の臨床試験が進行中。同社は、試験結果と基本データが、遅くとも2010年秋までに出揃うと見込んでいる。通常、第II相臨床試験は第I相の終了後6〜9ヶ月に開始する。つまり、同製剤の第II相試験は第4四半期にも始まる可能性があることが示唆されており、同社はその時点でマイルストン収入を受けることになる。しかし、同社がDebiopharm社から臨床データを受け取る可能性があることも同様に重要な点である。ナノキャリアがNC-4016に関する権利を保有する唯一の市場日本において、同社はライセンシングの機会をうかがうことができるようになる(上述の議論も参照)。


同社によると、2010年3月期末現在、同社の研究開発中のプロジェクトは20品目、提携会社は12社。同社は特に、主要パイプライン5品目を同社の業績を担う基幹品目として強調している。 5品目とは、ドセタキセルミセル、エピルビシンミセル、タンパク質ミセル、 siRNAミセル、センサー結合型ミセルである。2010年5月時点で新規パイプラインの具体的な目標に関する情報はほとんどなかったが、ドセタキセルミセルとエピルビシンミセルに関するフィージビリティスタディが終了していると同社が発表していることから、この2品目が次の商品化の有力候補であるとSR社ではみている。

パイプラインの全般的な進捗について、同社はSR社に対し、「良好である」とコメントしている。


2011年3月期会社予想

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image:Nano JP Revised Forecast.png

2011年3月期の第2四半期累計期間および通期の業績予想は、当初第2四半期に見込まれていたライセンス契約締結が2011年春に延期されたことから9月3日に下方修正された。

販管費は通期でおよそ600百万円、研究開発費は通期で前期比約80百万円増の約300百万円が計画されている。


長期計画

2011年3月期の動向が収益増大への道筋をつけることになろうが、マイルストン収入の性質上、支払い時期が定まらないことから、売上高も引き続き上下変動が予想される。


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[編集] 事業内容

[編集] ビジネス

コア技術

ミセル化ナノ粒子技術

同社のコア技術とは、ポリマー化技術とナノテクノロジー技術の融合である。
同社の技術の重要な側面の1つは、ミセルを様々な大きさに「巧みに操り」、種々の構成要素を持たせることができるという事実であろう。コア技術が、同社の成長・発展の道筋を築こう。また、競争上の優位性を支えるための潜在力も持つ。同社によれば、その他多くの既存技術は固定されており、他企業が様々な化合物や疾患に対して適用しようとしているのは、ひとつの製造手法でしかないという。同社の技術は新しいエリアでの成長をもたらす可能性を持つ、より一層柔軟なプラットフォームである。このシステムは、従来の単量体薬物だけでなく核酸ポリマーを含む重合体、さらには生理活性ペプチドタンパク質にも活用できるかもしれないと同社は述べている(「生理活性」とは、生命体に影響を与えうることを意味する)。タンパク質をターゲットとするミセルは、既存のパイプラインを含むパッシブ・ターゲティング化合物に使用されている技術とは同じではないが、同様の原理の延長線上にある。

最新技術の焦点:

  • 現状の技術について同社は、核に薬物を封入し、血流中で長期間安定するナノスケールのミセル(20~100ナノメートル)を製造している。
(出所:会社資料)
  • ポリエチレングリコール(親水性物質)及びアミノ酸(疎水性物質)を共重合体に合成する。水と混合した際、ポリエチレングリコールが外殻を形成しアミノ酸が内核を形成することで、この共重合体の数十~数百個の分子の凝集体が個々の安定した球体を作り出す。薬物はアミノ酸構造内に包み込まれ、封入される。
  • 通常、同社がターゲットとする抗がん剤は多くの場合水に対し不溶性である。これらをアミノ酸内核の内部に送達するため、薬物はアルコールあるいは同様の有機溶液に溶解される。その後、この薬物・アルコールの溶液を共重合体・水の溶液と十分に混合する。その際、(1)水溶性の親水性部分が外殻を形成し、一方で(2)不溶性の薬物化合物及びアミノ酸が内核を形成する。その中で、薬物がアミノ酸の「容器」内に封入される。その後、アルコールを溶液から分離して、安全な静脈内薬物送達システムが得られる。
  • 薬物を含むミセルは目に見えず、薬物は水に溶けているように見える。

ミセル化ナノ粒子技術は次のような注目すべき特徴を備えている:

  • ほとんどの主要臓器への蓄積が低く、したがって毒性が低い。粒子の大きさがウイルスの大きさに近く小さいため、肝臓などの体内の臓器内に捕捉される薬物含有粒子の量が大幅に減少する。この効果は100ナノメートル未満の大きさで特に顕著となる。
  • 長期循環。外殻を形成するポリエチレングリコールは、免疫機構から外来物質と認識されにくい特性を持っている。これにより、薬物を封入したミセルは血流中を長期間循環でき、薬物の効果が高まる。
  • パッシブ(受動的)ながん細胞へのターゲティングを可能にする。がん細胞は非常に急速に増殖するため、がん組織内で形成される血管の血管壁は通常のそれよりも透過性が高い傾向にある。実際、100ナノメートルよりも小さい粒子は、がん組織の血管壁は透過しても、正常な血管壁では阻まれる。このことは、薬物を封入したミセルが徐々に血流から出てがん組織内に集積され、そこで薬物放出が起こることを意味する。薬物の集積はリンパによる排出機能ががん組織では未発達であるという傾向に後押しされる。つまり到達した時とは違い粒子が容易にがん細胞から排出されない。これらの現象は、EPR (Enhanced Permeation and Retention)効果として知られている。ナノミセル薬剤の成功は、抗がん剤治療の副作用を相当に軽減させるはずであり、より高い服用量(がんと闘う効能の向上)及びより少ない投与回数(高価かつ疲労度大きい病院での治療プログラムではなく在宅治療)での治療が実現できる。
(出所:会社資料)
  • この技術では水及びポリエチレングリコールなどの安全な非毒性物質を使用する。更に、(形成する分子数を変えることによって)粒子の大きさを選択でき、内核を形成するアミノ酸の選択も可能となる。これにより、体内での薬物の吸収、分布及び排出に関して優れた柔軟性が得られる。

本技術を用いて開発した主なシステムは以下の通り:
NanoCap®システム、ポリアミノ酸を用いて薬物を封じ込めるシステム。ポリアミノ酸は、水に溶けにくい油の様な特性を持つ。ブロック共重合体を含む溶液に投入した場合、水不溶性の薬物は効果的に油(ポリアミノ酸)に溶け、ミセル内核に捕捉される。NanoCap®システムの効果:不溶性薬物の溶解性向上を可能にする。

Medicelle®システム、磁気結合または化学結合によって薬物を封入するシステム。一部の医薬品はプラスまたはマイナス電荷を有する。反対の電気を帯びている重合体を用いることによってこれらをミセル内に結合させることが可能である。化学結合は、薬物をポリアミノ酸と化学結合させることによって行う。Medicelle®システムの効果:血液中の滞留性を向上する。

NanoCoat®システム、がん細胞への選択的なターゲティングのためにセンサー(リガンド)ミセル表面に結合させるシステム。こうしたシグナル伝達センサーの役割を果たすものとして、抗体を使用することが可能である。NanoCoat®システムの効果:特定部位へのターゲティング能力を強化する。

(出所:会社資料)



[編集] 同社が権利を所有する出願特許一覧

image:Nano-JP-patent.png

[編集] パイプライン

[編集] 主要パイプライン

  • NK105 (パクリタキセルミセル)
パクリタキセル(多くの場合はその製品名タキソールで呼ばれる)は、卵巣がん、肺がん、乳がん、胃がん及びその他がんの治療薬である。水に溶けにくい性質への対処として、クレモホールEL(ポリオキシエチル化ヒマシ油)及びアルコールを溶媒として用いる。これらの溶媒は重大な副作用を引き起こすが、副作用軽減のために処方されるステロイド剤や抗ヒスタミン剤自体も副作用を引き起こす。同社は、薬物送達の向上を図り毒性溶媒関連の副作用を緩和するNanoCap®技術を使い、パクリタキセルを封入したミセル化ナノ粒子を開発した。これがNK105(パクリタキセルミセル)である。
数年前、同社は[日本化薬株式会社(4272)]とミセル技術を用いてパクリタキセルを改善する共同研究で成果をあげた。その後、日本化薬株式会社はその研究結果に基づきNK105を開発する決定をし、2002年6月にナノキャリアから技術ライセンスを受けた。これにより、日本化薬株式会社は日本とアジアにおける独占販売権及び世界のその他の国々における非独占的販売権を得た
第I相臨床試験は、2004年5月から2006年4月にかけて国立がんセンター中央病院で行われ、良好な結果が得られた。Drug Delivery System誌ニュースレター(24-1、2009年)によれば、NK105のAUC(曲線下面積、血液濃度対時間の曲線下の面積)は、従来のパクリタキセルよりも15倍高かった(NK105の推奨用量は150mg/sq.mであるのに対してパクリタキセルの通常用量は210mg/sq.mであった)。数名の患者には4週間以上も症状安定がみられ、1名の転移性肝臓がん患者では明らかな肝転移の縮小がみられた。
日本化薬株式会社は、ライセンス契約に基づき日本において第I相臨床試験の成功を収め、2007年11月に第II相臨床試験を開始した。
第II相試験での主な目的は、延命に寄与するか否かの確認に加え薬効と安全性を証明することにある。特に長期間投与した場合、NK105はパクリタキセルよりも低い毒性を示すことが期待されている。パクリタキセルに比べ良好なAUC指標と合わせ低い毒性が実証されれば、NK105がパクリタキセルの代替となる道が開けるかもしれない。主要評価項目に対する結果は2009年の下半期に明らかになることが予定されている。対象となるのは胃がんである。第II相で肯定的な結果が得られれば、乳がん、非小細胞肺肉腫、卵巣がんなどの、現在パクリタキセルで治療されているその他のがんへの適用の可能性もでてくる。
ナノキャリアは、日本化薬株式会社から初回契約一時金及び各相の開始時に受け取るマイルストン収入を得た。さらに、同社は、製品が上市された際にはマイルストン収入(総額3億5,000万円)とロイヤリティ(正味販売高の2%:総ロイヤリティは4.5%であるが、2.5%は科学技術振興機構に支払われる)を受け取る予定である。治験が順調に進んだ場合2014年にはこの製品の日本での承認申請がされるであろうとSR社は予想している。
現時点では推測の域を出ないが、NK105がパクリタキセルの優れた代替品となることが証明された場合、現在主流となっている超大型薬タキソテールの競合品となる可能性があるとSR社はみている。タキサン系では30%の世界市場占有率は即ち約14億米ドルの売上に相当する。ロイヤリティ水準2~2.5%仮定すれば、40億円に上る売上高を同社にもたらす可能性がある(ロイヤリティはSR社の想定、参考目的のみ。同社は潜在売上高やロイヤリティについてコメントしていない)。


ナノプラチン®は、ナノキャリアのナノミセルキャリア技術をシスプラチンに応用して開発した薬物である。シスプラチンは優れた薬物でありながら重篤な嘔吐や腎毒性を引き起こし、(静脈内注射による)投与期間中の集中的な水分補給が必要とされる。このことは患者の生活の質(QOL)の著しい低下をもたらす。NK105の項で触れた様な改善のおかげで、シスプラチン内含高分子ミセル化合物NC-6004が、これらの問題を解消できると同社は期待を寄せている。
ナノキャリアはこの薬物を自社開発し、英国で第I相臨床試験を開始した。しかし、主に新規株式公開前から公開後にかけて株式市場不振が原因で十分な資金調達ができなかったため、欧州において次の段階の臨床試験を続けることを断念し、より低コストの機会をアジア地域で求めることとなった。最終的に、同社は台湾に拠点を置く医薬品・化粧品製造輸入企業、Orient EuropharmaにNC-6004をライセンスアウトし、日本及び中国本土を除く太平洋圏での独占権を与えることとなった。Orient Europharmaは現在、台湾において第I相/第II相臨床試験を実施している。
同社資料によれば、契約による収入は契約一時金及びマイルストン収入であり、直接ロイヤリティについては触れられていない。代わりに、Orient Europharmaが臨床試験費用の半額を負担すると同時にナノキャリアから薬剤を販売価格の一定割合の値段で購入する。これは事実上ロイヤリティに似た手法ではあるが、ナノキャリアの直接製造コスト負担を軽減し、また同社の資金調達難が続くという最悪のシナリオを想定し策定されたものとみられる。


  • NC-4016 (ダハプラチンミセル)
NC-4016は、オキサリプラチン代謝物(代謝の産物)、即ちDACHプラチンからなる新しい医薬品製剤である。オキサリプラチンは有効で広く使用されている薬物であるが、嘔吐、時として慢性的に推移することもある末梢神経障害(手足のしびれといった症状)などの深刻な副作用を引き起こす。抗がん作用があるとはいえ、これらの副作用はしばしばオキサリプラチンによる治療中止の要因となっている。
オキサリプラチンは、いったん体内に入ると、がん細胞の繁殖を抑える効果のある白金化合物、すなわちDACHプラチンへと活性化(代謝)される。同社は、DACHプラチンを自社開発のミセル化ナノ粒子に封入した場合、副作用をより軽減した強力な抗がん剤を作り出せると考えている。同社は2007年10月、オキサリプラチンの開発元であるDebiopharmにNC-4016化合物のライセンスを行い、これによりDebiopharmは、この薬物の日本を除く全世界での独占開発権並びに独占販売権を得た。製造権はナノキャリアが保有している。同社は契約一時金及び研究開発協力金を受け取った。
Debiopharm は、2009年3月に欧州で第I相臨床試験を開始している。同社への取材を基に、同試験は円滑に進行しているとSR社は理解している。また、臨床試験の全フェーズが問題も遅延もなく順調に進んだ場合、2016年にはまず欧州で、次いで米国での発売が可能になるとSR社は予想している。
同社新規株式公開(IPO)目論見書によると、当ライセンス・供給契約による総マイルストン収入は1460万米ドルである。また、同社は薬剤をDebiopharmに独占的に供給する。ロイヤリティ水準は正味販売高の最大5%(10年間もしくは特許期限切れのいずれかの遅い時点まで)、もしくはDebiopharmが薬剤を更にライセンスアウトする場合、総ロイヤリティの15%に設定されている。日本で独自の治験を行うための非臨床試験・臨床試験データを購入する場合、同社はDebiopharm に一定額(未公表)を支払わなければならない。
オキサリプラチン(エロキサチン)の2008年の世界販売額は14億ユーロであった(参考文献:SEC Form 20-F)。


[編集] 新規開発パイプラインと探索中の化合物

当社が行っている新規開発の大半は、短命の生体分子を身体のターゲット領域に的確に送達するキャリア構造体の製造手法研究に集中しているとSR社では推測している。これは全く新しくかつ極めて有望な領域である。ここで成功を収めれば、現代薬理学に革命をもたらす治療用化合物の大発見となるかもしれない。新規プロジェクトのほとんどは評価試験段階にある。


  • タンパク質ミセル
治療用タンパク質のターゲティングは生命工学研究の新興領域である。タンパク質のターゲティングは体内で自然に起こり、様々なタンパク質細胞内の必要とされる箇所に運ばれる。タンパク質はリボソーム上で作り出され、その輸送はシグナル伝達ペプチドによって指揮される。何らかの異変が生じると、一部のタンパク質が過剰生産されてがん及び他の疾患を引き起こす。「悪い」タンパク質のスイッチを切り、「良い」タンパク質のスイッチを入れることは、薬学における究極の目標かもしれない。しかし、タンパク質ペプチドの血中における半減期は短く、また不適切な場所にあれば損傷(副作用)を引き起こすことがあるため、これらを「長生き」させ、選択的に働くようにすることが重要な課題である。
同社資料によれば、タンパク質をPEG化(ポリエチレングリコール連結)するなどの他企業のソリューションは、タンパク質の生理活性を低下させる。同社が用いる技法はタンパク質の生理活性を損なわず、疾患組織へのターゲティングを可能にする。
同社はG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)に注目している。これは成長因子(サイトカイン)、すなわち骨髄を刺激して幹細胞及び白血球細胞を作り出す物質である。ラットの実験で、ナノキャリアのG-CSFミセルは従来のG-CSF溶液と比較して9倍のAUCを示し、4倍高い好中球(白血球の一種)数をもたらしたことが示されている。このことは、がん治療において、化学療法による特発性好中球減少症や免疫応答低下からの回復を助ける薬剤として、G-CSFミセルを有効活用できる可能性があることを示唆する。
同社の資料によると、タンパク質ミセルはPEGとポリアミノ酸誘導体の組合せという他の技術と同様の核共重合体を使用している。但し、当研究者らは異なる疎水性基を導入することによって疎水性の核部分を改変した。これにより、有機溶媒を使用せずにタンパク質のカプセル封入が可能となる一方でいわゆる破裂効果が防止された。破裂効果とは、大量の薬物が急速に放出されることをいう(キャリアの「破裂」)
BCCリサーチによれば、タンパク質薬剤市場は2008年の950億米ドルから2013年には1600億米ドルまで成長するとの予想である。


  • siRNAミセル
siRNA(低分子干渉RNA)は、研究者が注目する生体分子で様々な疾患治療への応用が期待されている。複雑な機構で「敵対」RNAと干渉してそれを排除する低分子のRNA断片である。こうした敵対RNAは、ウイルスまたは腫瘍細胞のRNAである。がん以外で頻繁に取り上げられるsiRNAの応用の1つは、先進国における高齢者失明の主要因であるAMD(加齢性黄斑変性症)である。
siRNA、ペプチド、その他の生体分子の問題点は、正常な代謝により体内から急速に排出される(適切に表現すれば、その血中における半減期は非常に短い)ことであり、その結果、血中に投与する薬物として捕捉しづらいものとなっている。同社は、siRNAをミセル化ナノ粒子内に封じ込めることができるかもしれないと予想している。これが実現されれば、こうした化合物の血流中の安定性を劇的に向上させ、siRNAベースの薬物を用いた治療可能性が大きく広がる。同社は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から開発補助金を受け、このテーマについて株式会社東京大学TLOと共同研究を行っている。
同社は最近(同社のニュース&トピックスを参照)、株式会社東京大学TLOと、カチオン性のポリアミノ酸などの新規物質及びsiRNAなどの低分子核酸を用いた高分子イオン錯体の形成に関する新規独占契約を明らかにした。報道発表では、エンドソーム(細胞膜)を通して核酸を標的の患部細胞内に奥深くに送達する場合に、この技術が有効であると発表している。言及されている関連用途は、がん、炎症性疾患、及び肝疾患である。


  • カチオン性のポリアミノ酸(この記述は上記siRNAの記述に関連している)
同社は治療用化合物であるカチオン性のポリアミノ酸製造の可能性を研究している。「カチオン性」とは、非常に簡単に言えば「正電気(=プラスの電気を帯びている)荷電」である。プラス荷電粒子とマイナス荷電粒子が引き付けあうことは、初歩的な物理で学ぶところである。
悪性腫瘍細胞は非腫瘍細胞よりもマイナス荷電が強いことが知られている。したがって、腫瘍に選択的に引き寄せられ薬物を送達するプラス荷電した化合物を作り出すことは、理論的に可能である。さらに、カチオン性ポリマーはマイナス荷電した核酸鎖(強力なマイナス電荷を有するsiRNAなど)を縮合させて保護する能力も有すると考えられている。これらの特徴は、がん組織内へ直接かつ奥深く送達することが可能な核酸医薬を作り出す一助となるかもしれない。従って、この研究領域は同社にとって大きな可能性を秘めているとSR社ではみているが、現時点でその成功確率を推定することは不可能である。


  • センサー結合型ミセル
同社は、より良好な腫瘍へのターゲティングを目指し、高分子ナノミセルにバイオセンサーを結合させる可能性についての評価試験を行っている。こうしたセンサーの1つは抗体であろう。同社は、キリンファーマ株式会社が開発した抗体を使用する可能性を追究するため2006年からパートナーシップ契約を締結していたが、これらの抗体は同社が開発したミセル化ナノ粒子技術に適合しなかったため、2008年6月に関係が解消された。同社は現在の評価試験の詳細を公表していない。


  • pH応答性ミセル
同社は、pH応答性ミセルの評価試験を完了し、1社以上のパートナー(未公表)と協議中であると発表した。がん細胞は正常細胞と比較して酸性度が高い傾向にあることが以前から知られている。エンドサイトーシスとして知られるプロセスを通じナノキャリアのpH応答性ミセルががん細胞に取り込まれると、エンドソーム内のより高い酸性度に反応し薬剤を放出する。同社への取材を基にSR社では、pH応答ミセルがナノキャリア社の製品パイプラインに入るとうことは、同技術が今後さらに有力視されるのではないかと見ている。


ドセタキセルミセル

ナノキャリア社は、ドセタキセルの効果的な送達を可能にしつつ、かたやドセタキセルに係る副作用を軽減する可能性を持つ新しいナノミセルを開発したことを報告した。ドセタキセルミセルは同社のMedicelle®技術を活用し、ミセルに内包されたドセタキセルの放出速度を調整することにより、薬効を維持しながらドセタキセル治療でよく見られる毒性を減少させることができる。
ドセタキセルミセルは2009年11月に発表されており、同社ではこれをNK-105 (パクリタキセルミセル) の後継候補とすることを期待している。同社の予想では、ドセタキセルミセルとNK-105との間では開発におよそ6年間の開きがあるとのことである。


スキンケア

同社のミセル化ナノ粒子技術が応用できる用途として、スキンケアがある。ミセルナノサイズであることは、人間の皮膚の外層(角層)を通って表皮内まで浸透し、医薬化合物または化粧品化合物を送達できることを意味する。ナノミセルはサイズが小さいため、最外側の皮膚層である表皮の最初の層にミセル化ナノ粒子が浸透し、経皮吸収が起こる。続いて、これらは「顆粒層」と呼ばれる疎水性脂質に満ちている組織に「滞留する」のである。同社は岐阜に拠点を置く一丸ファルコス株式会社にその技術を提供した。一丸ファルコス株式会社は最近、化粧品用途のADS-ナノミセルの販売を開始したが、このことは注目に値する。ナノキャリアのパートナーがミセル化ナノ粒子薬の販売を開始し、その規模が拡大するにつれミセルの製造コストが下がれば、化粧品用途は瞬く間に脚光を浴びるであろう。SR社は、ナノキャリアの技術で「夢の薬」に加え、「夢のクリーム」も生産し得るのではないかと考える。


ビジネスモデル

同社は、ミセル化ナノ粒子の製造技術を用いて新しい薬物を開発している。同社は、原則として自社開発、共同開発、ライセンスアウトの3つのアプローチを採用している。同社資料によると、主要な開発対象は、周知の薬剤化合物、開発が中止された新規化合物、及び既存化合物の新規適応である。同社のミセル化ナノ粒子技術によって、実質的に化合物の価値を高めることを目指している。

現状の厳しい金融市場環境下では資金調達が困難であるという事情もあり、同社はほとんどライセンスアウトに依存している。理想を言えば、自社開発により重点を置き、後期の臨床試験段階でのみライセンスアウトを行いたいと経営陣は考えている。いずれにせよ、製造への関与は試験的な規模に限定される。

同社ががん領域に注目しているのは、抗がん剤の市場規模は大きくかつ拡大基調にあることと、また既存の化合物は深刻な副作用をもたらすものが多いことから、同社の独自技術が活かせる土壌が整っていることにある。

ビジネスモデルの主な構成は以下の通り:
研究開発協力金及び補助金:パートナー企業及び政府機関との契約に基づく収入。
契約一時金(アップフロント):各ライセンス契約の開始にあたり、その締結時に受け取る収入。

マイルストン:開発の各段階で受け取る収入。

ライセンス料:製品上市後に支払われる、固定額あるいは正味販売高に応じて料率の変わるロイヤリティ収入。

ライセンサー(例えばナノキャリアのようなバイオテック企業)が受け取る標準的ロイヤリティのパーセンテージの概算は、契約によって様々である。よく参照されるケース(Medius Associates 2001)によれば、非臨床段階で約0~5%、第一相試験段階で5~10%、第II相では8-15%、第III相では10%-20%、認可薬に対しては20%以上であるとしている。これに基づけば、同社新規株式公開目論見書で公表されている実際の既存開発品目(NK105及びNC-4016)については、ライセンス契約初期段階で得られるロイヤリティレベルであることを示している。具体例を挙げれば、日本化薬株式会社は、正味 販売高の4.5%をロイヤリティとして同社に支払う(科学技術振興機構への2.5%を含む)契約である。Debiopharm S.A. との契約では、ロイヤリティ及びマイルストン収入に加えて薬剤の製造・製品の供給も行うため、正味販売高に対する同社ロイヤリティ収入は10%近くの水準になると思われる。


単なる薬物送達技術の開発者から新薬開発型企業に進化することは、すなわち一化合物あたりの収入の多面性を増大することにつながるため、非常に重要なステップアップとなる。そのような変化の兆しが見え始めれば、同社の資本調達力は大幅に改善し、好循環を生み出す可能性があるとSR社では考える。


コスト構成

同社事業が新規であり未だ不安定であるという事情から、現段階で具体的なコスト構造を論じることはできない。売上高よりも、現金消耗率(経営陣は約7億円と推定)の許容範囲及び手元資金によりその支出の大部分が決定される(2010年3月期の売上高はマイルストン収入がほとんどで、製品売上はわずかであった)。現在の手元資金約10億円(2010年3月期末)をほぼ維持しつつ、研究開発費として 2011年3月期に4億6000万円を支出する計画である (この数値は原材料費が含まれる;2009年3月期決算説明会で示された同社中期経営計画より)。

SR社は、高製造コストが制約になっていると推定する。ナノキャリアはこれらコストの引き下げに取り組んでいると見られるが、仕入れ規模が小さいため、材料費を引き下げることは難しい。2010年3月期の売上総利益率は39.8%である(前年同期比で約10%の改善)。2009年3月期の売上総利益率が低いのは、材料費が高く利益率の低いNC-4016治験用製剤供給が主な収入源であったことによるものと考える。2011年3月期以降、マイルストン収入により、売上総利益率が改善するとSR社はみている。営業利益率は裁量で増減する研究開発費により影響を受ける可能性がある。


SWOT分析

強み

  • 高分子ミセルにおける研究開発技術の経験。様々なブロック共重合体を改変してミセル化ナノ粒子を製造し、有機・無機物質をミセル粒子に封入する技術経験こそが強みであると、経営陣は述べている。


  • 特許。同社技術は30件以上の特許出願によって保護されている。


  • さらなる基礎技術の入手機会。同社は強力な基礎技術提供源である片岡教授及びそのチームを持つ。同教授は同社創設者の1人であり、継続的な協力が得られると思われる。経営陣は、東京大学・片岡研究室で生み出された技術の第一先買権を有すると述べている。


弱み

  • 資金調達。同社は2008年初めに上場したが、折しも日本の小型株、特にバイオテクノロジー関連株の下げが著しい最中のことであった。それゆえに、戦略の実行に必要となる十分な資金調達が実現できなかった。2010年3月期まで逆風下の株式市場が成長に必要な資金調達を困難とさせる状況が続いている。


  • 成功をおさめた認可薬がない。年間ロイヤリティ収入があればキャッシュフローがプラスになり、戦略的計画をはるかに実行しやすくしたであろう。同社は未だ初期段階の開発企業であるため、継続的な収益源がない。


  • 市場での認知度。同社は新薬開発型企業としての地位を確立しようと努めているが、これまでのところは主に初期技術をライセンスアウトしていることで、新薬開発ではなくDDSの開発のみのメーカーとみなされかねない。これは市場からは成長の可能性の芽を摘んでいると評価されかねず、資金調達の機会も逃す可能性がある。経営陣は、自社が正真正銘の新薬開発企業であるというメッセージを強調している。


主要設備

同社は本社所在地である千葉県柏市に研究開発施設を持ち、東京オフィスに管理部門を置く。

主要拠点

同社の拠点は日本国内のみである。但し、国際的な提携関係を追求しており、目指すところは世界市場である。

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[編集] 市場とバリューチェーン 

マーケット概略

製薬市場において抗がん剤は最大規模の領域である。IMSヘルスのMIDASによると、この領域は2007年に全世界の売上規模では最上位、また欧州及び日本で最大売上規模領域であり、米国では脂質低下剤に次ぎ、また医療新興国(BRICs諸国、韓国、トルコ、及びメキシコ)では、セファロスポリン抗生物質に次ぎ第2位であった。


トータル・プランニング・センター大阪によると、2008年の米国抗がん剤市場は2兆1,500億円、欧州は1兆7,300億円、日本は5,270億円であった。

タキサン(アルカロイド)系抗がん剤の世界売上高:

  • 2005年:3,000億円
  • 2006年:3,270億円
  • 2007年:3,750億円
  • 2008年:3,900億円 (推定値)

白金系抗がん剤世界売上:

  • 2005年:2,400億円
  • 2006年:2,700億円
  • 2007年:2,670億円
  • 2008年:2,320億円 (推定値)

(出所:トータル・プランニング・センター大阪)

タキソールの世界売上は2000年に16億米ドルでピークとなり、後に別のタキサンであるタキソテールに取って替られた。タキソテールは サノフィ・アヴェンティス(Sanofi-Aventis) が販売している評価の高い抗がん剤で、売上成長が続いており、2008年には20億ユーロに達している(出所:SEC Form 20-F)が、2010年に特許切れとなる。タキソールは2003年に特許切れとなり、売上は2007年に4億2,200万米ドルまで低下した。


主要な白金系抗がん剤であるオキサリプラチンについては、既存パイプラインのセクションを参照されたい。


DDSは、生化学及びナノテクノロジーの進歩によって1990年代後半に生まれた新研究領域である。DDSは、腫瘍や他の疾患細胞に対する薬物放出制御を可能にするだけでなく、受動・能動的なターゲティングも可能にする。DDS技術によって薬効の増大、副作用の軽減、使い勝手の改良(投薬回数減、薬剤費の削減、患者のQOL向上)など、従来の医薬品の改善が見込まれる。

本レポートで触れているナノキャリア開発の高分子ミセル以外にも、DDS技術には、高分子マイクロスフェア、ハイドロゲル、生分解性ポリマー、デンドリマー、電気活性ポリマー、及び改質C-60フラーレン(「バッキーボール」)など様々なものがある。

現在上市されているDDS医薬品および分子標的薬をいくつか以下に紹介する:

ドキシル(卵巣がん、エイズ関連カポジ肉腫; Johnson & Johnson)。ドキシルは主に、白金系抗がん剤が有効でない場合に卵巣がんの治療に使用される。(Competitorsも参照のこと)


アブラキサン(転移性乳がん)。Abraxis BioScience(Nasdaq: ABII)は、世界初のパクリタキセルDDS製剤としてアブラキサンを2005年に発売した。キャリアとしてアルブミンを使用する。アブラキサンはAstraZeneca と共同販売されており、2009年の売上高は3億1,500万米ドルに達した(2008年の3億3,600万米ドル)。野村證券のアナリストは2008年前半のレポートで、NK105はアブラキサンと比較されるが、より有効性が高いことが証明されれば、ナノキャリアに世界的なライセンスの機会をもたらし得ると推定している。アブラキサンの延命効果についてと、はたしてNK105の妥当な比較対象であるか否かについては議論の余地があるとSR社では考える。いずれもDDS薬物であるが完全に異なる送達システムを使用しており、恐らく異なる薬効と毒性プロフィールを持つと思われる。


イレッサ(一般名ゲフィニチブ)とは、AstraZeneca 及びTevaが販売する抗がん剤である。イレッサはEGFR(上皮成長因子受容体; 変異するとがんを引き起こす場合があるタンパク質)を阻害する作用がある。タルセバ(エルロニチブ、中外/Roche)は別の類似抗がん剤である。


ハーセプチン(トラスツズマブ)とは、Genentech社(Roche社が買収)が開発した抗体薬であり、乳がんの直接トリガー機構の1つとして同定されたHER2/neuと呼ばれる受容体と結合することにより作用する。


アバスチン(ベバシズマブ)とは、Genentech/Roche社が開発した別のモノクローナル(1つの細胞のクローニングによって生成された)抗体薬であり、腫瘍中の血管の形成を阻害することで作用する(血管新生と呼ばれ、新生を止める薬は血管新生阻害剤である)。
これらの抗がん剤について指摘される問題点は、腫瘍の成長を遅くする作用はあってもがん細胞を死滅させる効果が低いことである。同時に、これらは他の薬剤と併用投与することによってより効果的に作用するとされており、その例としてよくオキサリプラチンが挙げられる。
同社は新規株式公開目論見書上で、同社のナノミセル技術によって開発される新薬は、いわゆる分子標的薬である上述の抗がん剤と併用してがん治療に使用することができるとしている。また、ターゲティングの改善を図るために、ナノミセルにこれらの分子標的薬を封入するといった可能性もありうるとしている。


サプライヤ及び技術供給元

同社は複数の取引先から原材料の仕入れを行っている(括弧内は2010年3月期の全仕入量に対する占有率を示している)。

  • 川原油化株式会社:2,161万円(40.4%)
  • 家田ケミカル:1,832万円(34.2%)
  • コーア商事株式会社:338万円(6.3%)
  • 東海ケミー株式会社:175万円(3.3%)
  • 株式会社オズインターナショナル:37万円(0.7%)


川原油化株式会社は日油株式会社の代理店であり、すべての関連材料は日油株式会社が製造している。日油株式会社は、高分子ナノミセル生産に必要なポリマーをナノキャリアに独占的に製造供給する権利を持つ。この契約は2013年12月まで有効である。
同社は、これまでと同様に今後も株式会社東京大学TLO(東京大学が研究者の発見を事業化するために設立)から、実用化に向けた基礎技術の獲得を継続的に行っていくと見られる。過去には、そうした技術はまず独立行政法人科学技術振興機構(JST)に譲渡され、同社がJSTから技術供給を受けることもあったが、その基礎技術の大半は片岡教授及びその研究チームにより開発されたものである。


東京証券取引所(TSE)の規定では、上場後の新たなライセンスイン案件について詳細開示の義務付けはないが、新規株式公開目論見書には参考となるいくつかの既存契約の詳細が記されている(p44-53)。一例として株式会社東京大学TLOとの実施許諾契約書を取り上げると、実施権の対価として正味販売高の1%の実施料及び小額の契約一時金を東京大学TLOに支払うといった内容である。

参入障壁

認可に成功した医薬品への参入障壁は特許保護により非常に高い。その反面、研究開発段階で障壁の高さを判断することは困難である。実際、片岡教授らの国際レベルと見られる基礎研究を利用する権利を有することは一種の障壁といえるものの、多数の競合技術及び優位性の主張が存在する。 技術が上市段階に近づくに従い、その勝者は明らかになるであろう。
同社が研究開発に取り組む特定の技術が、製品化され成功を収めることができれば、同社の特定領域における研究の優位性は極めて高いため、参入障壁は非常に高くなるはずである。製造技術開発は、近道のほとんどない長い道のりの試行錯誤プロセスである。

競合環境

新規薬剤化合物の中から関連のある潜在的な競合品を特定することは難しい。ナノキャリアは、実質的に全く新しい技術を開発している。日本及び世界で類似の化合物あるいは類似の原理に基づく技術を用いて新薬を開発している企業は数社ある。


同社は、新規株式公開(IPO)目論見書やその他参考資料で、抗がん剤、特にパクリタキセル及びシスプラチンに適用するリポソーム担体が潜在的な競合品であると触れている。リポソームとは、膜によって保護され、内部に物質を集積しターゲットとする細胞まで送達するために使用される超微粒子である。ドキシル(PEG化リポソームカプセル封入ドキソルビシン)はこうした薬物の例である。(ドキソルビシンは有効であるが心臓毒性の強い抗がん薬である)。リポソーム担体は、概念上はナノミセルと非常に類似しているが、薬物を集積、送達及び放出する方法が異なる。同社によれば、このような違いは、リポソーム担体の薬物保持力、放出の制御及び薬物選択の低下に結びつく。


同社に似たアプローチで、放出制御、抗がん剤・その他の薬物のターゲティングと毒性軽減の問題解決に向けた製品の開発を行っているバイオテック企業や、がんのターゲティング治療法に取り組んでいるベンチャー企業も数社ある。


Novosomは、ドイツのバイオ企業であり、「電荷を有した逆相リポソーム」と呼ぶ技術を核酸治療剤の送達に用いている。これは、周囲のpH要因によってその電荷をマイナスからプラスに変化させるリポソームである。CD40拮抗剤と呼ばれる薬剤が非臨床段階にある。


Calando Pharmaは、薬物送達技術を開発する米国のバイオテック企業である。IT-101は、Calandoのシクロサート(Cyclocert)(TM)技術を用いて可溶化したカンプトテシン(抗がん剤の一種)であり、現在非臨床段階にある。Calandoの強みは、シクロデキストリン及びPEGを含むポリマーナノ粒子の製造に関するノウハウであると見られ、CalandoはこのノウハウのsiRNA薬への応用に取り組んでいる。


Access Pharmaceuticals Inc.は米国拠点の企業で、活性代謝物がナノキャリアのNC-4016と同様にDACHプラチンであるプロリンダク(Prolindac、2010年の初めに米国で第II相)を開発した。プロリンダクの場合、活性剤がHPMA(ヒドロキシプロピルメタアクリルアミド)共重合体の幹と結合している。


Supratek Pharmaは、カナダのモントリオールに拠点を置く企業である。「プルロニックブロック共重合体」と呼ばれる技術を開発し、ドキソルビシン系のDDS薬剤であるSP1049Cを開発した。2005年から第II相臨床試験が英国で進行中とみられる。

代替品

同様の薬効をもつ既存薬、新薬が代替となる。医薬品発売後一定の年数が経過し特許期限切れになると、ジェネリックが強力な代替品となる。市販ジェネリックと比べ薬効に大きな優位性がない限り新薬に要求される薬効のハードルは高くなり、相対的にコストが高い新薬がジェネリックより高い売上レベルを達成する可能性は考えにくい。


別の抗がん技術が成功を収めれば代替となり得るが、そのような技術は既存薬の代替ではなく、既存薬と併用される可能性が高いだろう。そのような技術の例として、がん細胞内に蓄積できるナノ粒子の開発に取り組むフランス企業、NanoBiotixがある。これらの粒子は不活性で、薬物ではなく、それ自体は特定の作用を持たない。しかし、これらをX線にあてることで遊離ラジカル及び熱が放出され、がん細胞の活動を停止させる可能性を持つ。NanoBiotix製品は実験的非臨床段階にある。

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[編集] 経営戦略 

同社は、高製造コストや資金的な制限といった制約があるため、特定領域に焦点を絞った戦略をとっている。自社の技術経験、特定分野の研究やライセンスの専門知識を生かし、比較的低い現金消耗率で高い投資回収結果を生み出すと見込まれる開発品目の実用化に的を絞っている。

同社は、効能はありながらも有効なキャリア及びターゲティングシステムを欠くため制約を受けている既存の治療用化合物の研究を今後も更に推進していくと見られる。具体的な新規の戦略的研究領域は以下の通り:


  • タンパク質及び酵素などを使った単剤での分子標的(マーケット概略も併せて参照。)
  • 薬物の併用(カクテル)。抗がん剤は多くの場合、互いに組み合わせることでより優れた作用を発揮する。但し、既存の多くの抗がん剤が引き起こす深刻な副作用のため、抗がん薬のカクテル治療を実用化することは非常に困難であることが分かっている。
  • 非がん用途。

同社は、独自の薬物開発戦略を追及することを目指す姿勢は維持している。しかし2011年3月期初時点においては、先行コストを低減しキャッシュフローの黒字化をより早く実現するために、早期研究開発段階化合物のライセンスアウトを行う可能性がより高い。同社がある時点で、市場または第三者割当増資によって追加資本を調達することができれば、戦略的オプション、ひいてはその事業価値が増大するであろうと、SR社は考える。

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[編集] 過去の財務諸表

前期以前の業績概況(参考)

第3四半期

2010年2月1日に同社の第3四半期決算が発表された。売上高5,900万円(前年対比56.0%減)、営業利益-8,700万円(前年対比40.0%減)、経常利益-8,800万円(前年対比39.3%減)、純利益-8,800万円(前年対比39.7%減)であった。

同社は、費用を最低限に抑えるために、各種コスト削減策を検討中であると述べている。同社事業はまだ、研究資金の必要額を実質利用可能な資金にバランスを取らなければいけない段階である。しかし現時点で現金流出を抑えるために研究開発費を減らすことは、有力な製品パイプライン形成に支障を来たし、将来に影響が生じることが暗示される。(研究開発段階の技術を多数ライセンスアウトしてしまうと、将来パイプライン技術に関連した高収益を達成できなくなることになる。)

当四半期の必要資金については、上期に発行した新株予約権(第6回新株予約権 希薄化防止型行使価格修正条項付)により一部調達されている。同社の決算短信によれば、新株予約権の行使により44百万円を調達しており、経営資金として支出した125百万円を一部相殺している。

第2四半期

10月30日に同社の第2四半期決算が発表された。売上高は3,900万円(前年対比で73.8%減)。営業・経常利益は-2億8,200万円。当四半期の主な出来事として、NC-4016の物質特許が欧州において登録査定を受理、メディネット社とがん治療分野での包括的な共同研究提携で合意 、同社のミセル化ナノ粒子技術とメディネット社のがん免疫の融合、また同社は共同提案者である提案が総合科学技術会議のプログラムの「中心研究者及び研究課題」として選定された。

キャッシュ・フローについては当第2四半期末における現金残高が全事業年度末に比べ2億6,000万円減だが、その殆どが経常損失によるものである。それ以外、財務状況の目立った変化はなかった。

第1四半期

7月30日に第1四半期決算が発表された。売上高は729万円、うち77.7%は欧州及び国内向けだった。第1四半期中に、同社は国立大学法人東京大学および株式会社東大TLOと独占ライセンス契約を結んだ。(詳細は、同社のニュース&トピックスを参照されたい)
パイプラインの進捗状況に関して、第1四半期中に特に変更はなかった。

[編集] 損益計算書 

image:Nano-JP-PL.png

過去の業績

同社は、2006年3月期から監査済会計報告書を提出している。損失が継続しているため完全希薄化後一株当り利益は公開していない。売上高は2003年3月期から2010年3月期にかけて大きく変動している。研究開発の成果と臨床試験マイルストン収入の不確実性を考慮すると、想定内の結果といえよう。

2003年3月期、売上高は、日本化薬株式会社からのマイルストン収入等により、約9,600万円を計上し、研究開発費用等により1億4,100万円の経常損失が生じた。

2004年3月期、約1億2,300万円の売上高は主にキリンビール株式会社からであった。

2005年3月期、Debiopharm S.A. から契約一時金(アップフロント)を受け取り、これが約1億1,300万円の売上高の大部分を占めた。

2006年3月期、Debiopharmから研究開発協力金、エーザイ株式会社から研究開発協力金及びマイルストン収入を得、総売上高は約1億800万円であった。また、英国においてNC-6004ナノプラチンの第I相臨床試験を開始した。

2007年3月期、売上高はDebiopharmから2,660万円(総売上高の25.7%)、キリンファーマ株式会社から2,920万円(28.2%)、エーザイから2,730万円(26.4%)であった。

2008年3月期、Debiopharmからの収入は1億4,800万円(総売上高の56.3%)。また、日本化薬株式会社からNK105関連の1億100万円(総売上高の38.3%)のマイルストン収入があった。

2009年3月期、Debiopharmからの収入は2億2,850万円(総売上高の64.6%)。Orient Europharmaからの収入は1億1,900万円であった (33.6%)。

2010年3月期、同社は、既存・新規提携先との契約交渉遅延を理由に2010年3月26日付で2010年3月期の会社予想を下方修正した。同社のプレスリリースによると、交渉は今後も継続するとのこと。

2010年3月期の業績は、修正後の会社予想とほぼ合致する内容だった。

Debiopharm社からの収入は55.0百万円(売上高全体の46.6%)。 一丸ファルコス株式会社からの収入は13.5百万円(同11.4%)。約27.5百万円は他の2社からの収入だった(社名は公表されていない)。

過去の業績VS会社予想

ナノキャリアの会社予想を実績と照合して正確さをはかることにあまり意味はない。同社の製品パイプラインは開発途上にあり、進捗速度は会社の制御範囲外であるところが大きい(ライセンス契約の相手先企業が臨床試験を実施しているため)。従って 、コアおよび新規パイプラインの両方に関して、パイプラインの全般的進行状況を、会社の設定した長期目標に照らして包括的に精査することが有用であるとSR社では考えている。会社側は、2010年3月期末現在のパイプラインは、順調に計画通り進行中であるとしている。

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[編集] 貸借対照表 

image:Nano-JP-BS.png


資産

2010年3月期末時点で、同社の現金及び相当額は10億600万円であり、前年の13億6,900万から減少した。同社の製品パイプラインが成長し、新たな収入源が育つまで、同社の運営はバランスシート上の現金によりまかなわれる部分が大きい。

同社の固定資産はほとんどが無形固定資産(2010年3月期の固定資産合計69.6百万円に対し、34.7百万円が無形固定資産)である。従来、同項目中で最も重要なのは実施許諾権である(2010年3月期現在30.7百万円)。


負債

負債はごく低水準だった(2007年3月期から2010年3月期の借入金はゼロ)。


株主資本

ナノキャリアは、2007年3月期、2009年3月期の第三者割当増資(それぞれ1,400百万円、75百万円を調達)、2008年3月期の新規株式公開(IPO)による643百万円の調達などを含む多様なエクイティファイナンスを行っており、新株予約権も発行している。2009年3月期の第三者割当増資7,500万円はシンテック株式会社(Orient Europharmaの子会社)に対するものであった。2007年3月期の第三者割当増資は2010年3月期時点の株主資本合計は1,011百万円。


潜在希薄化

ナノキャリアは2009年9月に新株予約権の発行を発表した(第6回新株予約権)。公使価格については過度の希薄化を防止するために修正可能条項付とした。最低行使価格31,500円で権利が行使された場合の2010年3月期現在の最大潜在希薄化率は22.2%(年度末の発行済予約権数28,500、発行済株式数128,579に基づき算定)である。

新株予約権が最低行使価格31,500円で行使されたと仮定すると、調達額はおよそ897.8百万円(2010年3月期に使われた現金総額の約2倍)になる。


一株当たりデータ

image:Nano-JP-pershare.png

(注:同社はIPO前に10:1の株式分割を行った。)

2010年3月末時点での発行済株式は128,579株であった。同日付で、発行済ストックオプションとして16,340株の潜在株があった(最大12.71%の希薄化)。権利行使価格は43,316円~67,337円の範囲である。

発行済オプションと第6回新株予約権を併せると潜在株式数は44,840株となり、潜在希薄化率は34.9%となる(2010年3月期現在)。第6回新株予約権以前に発行されたストックオプションは大幅に「アンダーウォーター」(実際の株価が行使価格を下回った状態)になっており、株価が行使価格を上回るまで希薄化の可能性は非常に低いことが示唆されている。

同社は2008年3月5日に東京証券取引所マザーズに上場した。当初は総額8億7,380万円(諸費用前)、すなわち25,000円で34,950株(野村證券からのオーバーアロットメントの4,950株を含む)を調達することを目標とした。新規株式公開額は20,000円というより低水準に設定され、調達された資金は合計6億9,900万円であった。

同社は調達した資金のうち相当額をNC-6004の臨床試験に出資する予定であったが、この試験計画を断念し、後にOrient Europharmaへライセンスアウトした。


[編集] キャッシュフロー計算書 

image:Nano-JP-CF.png

2010年3月期、同社の営業活動によるキャッシュフローは452百万円の支出となったが、これは、同社の予測通り、契約交渉の遅延で純利益が落ち込んだことが主因。2006年3月期から2010年3月期の営業活動によるキャッシュフローがマイナスになっているのは、同社と同社の技術が初期段階にあること(2010年3月期現在、同社はまだマスマーケット向け製品を創出するに至っておらず、研究開発費は固定費である)を反映したものである。

2006年3月期から2010年3月期の投資活動によるキャッシュフローはごくわずかだった。

2006年3月期の財務活動によるキャッシュフローは銀行からの借入金(300百万円)と株式発行(499百万円)によるもの。2007年3月期および2008年3月期の財務活動によるキャッシュフローは主に株式発行(それぞれ第3者割当増資とIPO)によるものだった。2009年3月期の財務活動によるキャッシュフローは、子会社であるOrient Europharma Co. Ltd.を通じた株式投資の結果だった。

2007年3月期から2010年3月期のナノキャリアの単純フリーキャッシュフローは、同社が成長初期段階にあることを反映したもの。純利益がプラスになるのはまだ先だが、これは、同社の製品が依然として投資・開発段階にあることが原因である。同社の単純フリーキャッシュフローのパターンとして見られる一つの重要な性質は、2007年3月期から2010年3月期にかけて単純フリーキャッシュフローの支出額が減少していることだ。2011年3月期に関する会社予想(2010年5月発表)には純利益の黒字化が盛り込まれていたことから、同社の事業は間もなくキャッシュを生み出す段階まで成長しつつあることが示唆される。

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[編集] その他情報

[編集] 沿革

同社設立のきっかけは、高分子ミセルの学術研究に端を発する。東京大学の片岡教授(トップ経営者参照)、東京女子医科大学の岡野教授(トップ経営者参照)らが、高分子ミセルの医学的な応用を目標に研究を重ねた(用語集を参照)結果、高分子ナノミセルを静脈投与した場合、血中に薬物が長時間循環し、薬物の効果が持続するキャリア(担体)となりうることを見出した。バイオベンチャー企業経営の経験を持つ現代表取締役社長CEOの中冨一郎氏が、前述の教授らと共に、その研究成果を事業化するために起業したのが、ナノキャリアである。

本社・研究所 (出所:会社資料)


年表
1996年 6月: ミセル化ナノ粒子を医薬品開発に応用・実用化することを目的として、ナノキャリア株式会社を設立
1997年 8月: 日本油脂株式会社(現:日油株式会社(4403))と、新規ブロックコポリマーの共同開発契約を締結
2001年 1月: 株式会社先端科学技術インキュベーションセンター(現:株式会社東京大学TLO)と「シスプラチン内包高分子ミセル」に関する実施許諾契約書を締結
2002年 6月: 日本化薬株式会社(4272)とパクリタキセルミセルに関する実施許諾基本契約を締結
2002年11月: 同社のミセル化ナノ粒子技術とキリンビール株式会社(現:協和発酵キリン株式会社)のヒト抗体技術を融合し、抗体結合型ミセルによる抗がん剤(NC-4010)開発のための共同研究契約書を締結
2004年 5月: 国内においてライセンスアウト先の日本化薬株式会社がパクリタキセルミセル(NK105)の第I相臨床試験を開始
2004年 5月: 国立大学法人東京大学及び株式会社東京大学TLOと「ダハプラチン含有ブロック共重合体抗腫瘍剤」に関する実施許諾契約書を締結
2005年 3月: Debiopharm S.A.(スイス)とミセル化ナノ粒子技術によるダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)に関する共同研究およびオプション契約を締結
2006年 5月: 英国においてシスプラチン誘導体ミセルであるナノプラチン®(NC-6004)の第I相臨床試験を開始
2006年 6月: キリンビール株式会社(現 協和発酵キリン株式会社)と抗体結合型ミセルによる新規抗がん剤(NC-4010)開発のための新規共同研究契約書を締結
2006年 7月: 国立大学法人東京大学及び株式会社東京大学TLOと「静電結合型高分子ミセル薬物担体とその薬剤」に関する独占ライセンス契約を締結
2007年 2月: 国立大学法人東京大学及び株式会社東京大学TLOと「pH応答性高分子ミセルの調製に用いる新規ブロック共重合体及びその製造法」に関する独占ライセンス契約を締結
2007年10月: Debiopharm S.A.とダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)に関するライセンス及び製剤供給に関する契約を締結
2007年11月: 日本化薬株式会社がパクリタキセルミセル(NK105)の第II相臨床試験を開始
2008年 3月: 東京証券取引所マザーズ市場に上場
2008年 4月: 株式会社東京大学TLOと核酸ミセルに関する独占ライセンス契約を締結
2008年 9月: 台湾のOrient Europharma Co. Ltd.とナノプラチン(NC-6004)のライセンス及び共同開発契約を締結
2008年12月: ナノプラチン®(NC-6004)第I/II相臨床試験開始申請承認(台湾)
2008年 12月: Debiopharm S.A.が欧州においてダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)の第I相臨床試験開始申請承認
2009年 5月: 国立大学法人東京大学および株式会社東京大学TLOとカチオン性ポリアミノ酸に関する独占ライセンス契約を締結

2009年11月:同社はニュースリリースで、ドセタキセルミセルの開発成功(抗がん剤ドセタキセルを継続的に徐放するミセル)を発表している。

2009年12月:同社は遺伝子治療分野で、東京大学および株式会社東京大学TLOとライセンス契約を締結したと発表した。

2010年3月:同社は ダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)に関する製法特許の登録査定を米国特許庁より受けたと発表した。



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[編集] ニュース&トピックス 

同社のニュース&トピックス

2010年3月

  • ナノキャリアは2010年3月4日、米国特許庁よりダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)に関する製法特許の登録査定を受けたと発表した。これにより、米国にて特許が成立するということになる。本特許は、2009年10月に発表した欧州で登録査定を受けた物質特許とは異なる、製造方法に関する特許である。本特許発明を用いることで、ダハプラチン誘導体ミセルを高品質な状態で効率的に製造することが可能になる。NC-4016はナノキャリアから Debiopharm S.A.(スイス)に日本を除く全世界における再実施権付きの独占実施権を許諾し、2010年3月現在、臨床第Ⅰ相試験を欧州にて実施中である。ナノキャリアは本特許が提携先のDebiopharm S.A.との関係をより強固にするものだとコメントしている。SR社は、そのコメントをDebiopharm社にとって同特許の対象となる製造方法が魅力的となるかもしれないと捉えている。もしそうであれば、Debiopharm社はナノキャリアから同特許を使う権利を得ることに対し、ナノキャリアにNC-4016の欧州においての臨床試験データを魅力的な条件で提供するのが想像できる。ナノキャリアがそのデータを入手できれば、日本国内の臨床試験を自社で行う可能性が高くなり、長期成長の起爆剤になりうる。
【発明の名称】 白金錯体のポリマー化配位化合物の製造方法
【出願国】米国(US)
【出願番号】 11/921784
【特許権者】 ナノキャリア株式会社/国立大学法人東京大学


2009年12月

  • 同社は2009年12月21日、東京大学・東京大学TLOと遺伝子治療分野に関する新たな独占的ライセンス契約を締結したと発表した。又、同社は日油株式会社(東証:4403)へ再実施許諾付き独占的権利を許諾した。日油株式会社による2009年12月21日の関連リリースによると、本契約対象であるポリマーミセル型キャリアは、従来技術に比べて毒性を低く抑えつつ遺伝子の導入効率を高め、遺伝子の機能を発揮しやすくするとのこと。
  • 平成21年12月1日に、同社は11月における新株予約権の行使数は600 株、行使額面総額1,890万円(1株当たり行使価格は31,500円)であると発表した。月末時点における未行使残存個数(株式数)は28,500 個(28,500 株)である。


2009年11月

  • 2009年11月19日、同社はタキサン系の抗がん剤であるドセタキセルの放出持続型ミセル製剤の開発に成功したと発表された。ドセタキセルミセル製剤は、薬効を維持したまま、消化管毒性や浮腫(むくみ)などの副作用を減らすことが期待される。ドセタキセルミセル製剤はタキサン系の一種ではあるが、パクリタキセルミセル製剤(NK105)とは異なった構造をしており、NK105 の後継品として開発を進めている。今後、製薬企業へのライセンスを進めていく予定である。ドセタキセルは、1994年から販売されている抗がん剤で様々ながんの治療に使用されている。[1]
  • 2009年11月2日、同社は10月における新株予約権の行使数は900株、行使額面総額2,921万円(1株当たり行使価格は32,460円)であると発表した。


2009年9月

  • 同社は、2009 年9 月29 日にNoga Capital Groupが100%の株主であるJapan Equity Value LTD を割当先として、第三者割当の方法により新株予約権(第6 回新株予約権{希薄化防止型行使価額修正条項付};以下本新株予約権)を発行することを発表した。


時期や背景
同社はこの資金調達の方法については、現在選択できる資金調達手段としては直接金融に依拠せざるを得ないことや、既存株主の不利益を最小限にすることができるので、ベスト・チョイスだと判断した。同社によると、今回のJapan Equity Value LTD はバイオベンチャーの事業モデルに詳しい欧州の有力投資アドバイザーが運用する日本投資専用ファンドである(同社のファイナンシャル・アドバイザーのアライド株式会社から紹介されたという)。以下の3プロジェクトの開発を加速するために、早期資金調達が必須と考えた。
  1. ナノプラチン®(NC-6004)は、Orient Europharma Co., Ltd.と日本、中国を除いたアジア地域16 カ国に限定したライセンス及び供給契約を締結、現在同社と共同で第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を開始している。これと並行して、本件プロジェクトのスピードアップを目的として、同社は別途シンガポール、香港、韓国のいずれか2ヶ国にて、同様の臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験を計画し、係る費用は総額で約4 億円程度(支出時期平成22年4月以降)である。
  2. ダハプラチン誘導体ミセルはDebiopharm S.A.により欧州にて臨床第Ⅰ相試験を行っているが、ナノキャリアが有する日本でのライセンス価値を高めるために日本での臨床第Ⅰ相試験を計画している。その費用は約2.2億円(支出時期が平成22年9月以降)である。
  3. pH 応答性ミセルを中心とした新規開発パイプライン候補の非臨床試験推進等の費用で3.03億円充当する予定(支出時期が平成22年4月以降)である。
条件
本件新株予約権の行使により同社の普通株式が新たに発行される。目的である株式の総数は30,000株である(本件新株予約権の総数30,000個に対して一株ずつ)。
調達資金:947.91百万円
本新株予約権の払込金額の総額:2.91百万円(新株予約権1個当たり97円)
本新株予約権の行使による払込金額:945百万円
発行諸費用: 24.45百万円
調達資金の手取概算額:923.46百万円
行使価額 31,500円
本件新株予約権の行使価額は、当該発行に係る発行取締役会決議日前日の東証における同社普通株式の終値の90%になる。ただし、各行使日において、各行使日前日の同社普通株式の普通取引に係る売買高加重平均価格(VWAP)の92%に相当する価額に修正される)
上限行使価額 47,250円
下限行使価額 31,500円 平成21 年9 月28 日の終値35,000 円の90%)
本件新株予約権の発行日以降の行使価額は、行使日前日の東証における同社株式の売買高加重平均価格(VWAP)の92%に相当する金額に修正される。ただし、修正後の行使価額が当初行使価額を下回る場合には、修正後行使価額は当初行使価額に相当する金額とし、修正後行使価額が当初行使価額の150%に相当する金額を上回る場合には、修正後行使価額は当初行使価額の150%に相当する金額とする。
割当と払込は 2009 年10月15日である。
行使可能期間は2009 年10月15日から2011 年10月14日までである。
最大希薄化は23.6%である。
  • 同社は2009年9月24日、当第2四半期の業績予想修正を行った。第2四半期に見込んでいた契約案件による売上については、契約条件に関する合意が得られなかったため、第3四半期以降(下半期)にずれこむことになった。同社は第3四半期以降締結できると見込んでいる。第2四半期累計期間の業績予想の売上高を42百万円、営業利益を-286百万円、経常利益を-285百万円、当期純利益を-286百万円に修正した。当初の売上予想が127百万円から42百万円と84百万円減少したにも関わらず、営業利益、経常利益、四半期純利益が当初予想とほぼ変わらないのは、上記理由により契約案件に伴う費用が発生していないことと、間接費を極力節減したことによるもの。なお、上記契約案件に関しましては、交渉の最終段階を迎えており、第3四半期以降には売上計上が見込まれるため、通期業績予想の修正はない。
  • 2009年9月7日の同社のリリースによると、2009年9月4日に開催された内閣府の総合科学技術会議の最先端研究開発支援プログラムの「中心研究者及び研究課題」30件が選定され、その中では同社のサイエンティフィック・アドバイザー片岡氏が中心研究者を務める”ナノバイオテクノロジーが先導する診断・治療イノベーション”という提案が含まれた。同社は同提案の共同提案者である。


2009年7月

  • 同社の2009年7月14日のリリースによると、経済産業省による平成21年度地域イノベーション創出研究開発事業公募において、同社を含む研究グループ(財団法人千葉県産業振興センター、ナノキャリア株式会社、東京大学)のテーマ「siRNA デリバリー用高分子ミセル製剤の開発」が採択された。同公募は地域の産学官連携による事業化に直結する実用化技術開発を促進することにより、新産業の創出を促し、もって地域経済の活性化を図ることを目的として行われた。


2009年5月

  • 2009年5月25日、同社は「カチオン性のポリアミノ酸」に関し東京大学及び株式会社東京大学TLOと独占ライセンス契約を締結したと発表した。(詳細は、新規開発パイプラインと探索中の化合物を参照されたい)


業界内のニュース&トピックス

  • 2009年6月15日、医薬品業界誌の日刊薬業は、DDSの使用により改良された場合既存薬剤の特許を延長するとの知的財産高等裁判所における判決に関する記事を掲載した。同紙によると、新規DDSを備えることによって既存化合物の特許保護が認められる可能性がさらに高くなったとしている。

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[編集] トップ経営者

代表取締役
中冨一郎博士は1996年6月以降同社の代表取締役社長CEOを務めている。久光製薬株式会社でのキャリアの後、米国セラテック社で事業開発担当副社長を務め、後に日本セラテック株式会社の代表取締役社長となった。iPSアカデミアジャパン株式会社の社外取締役でもある。

取締役

加藤泰己博士は、2005年7月から取締役CSO (Chief Scientific Officer) を務めている。ナノキャリアへの参画以前は、協和発酵工業株式会社に22年間在籍し、直近では医薬研究センター部長を務めた。


西山達男氏は、取締役CFO (Chief Financial Officer) 及び管理部長で、2005年10月同職に就任。同氏は1974年に株式会社住友銀行(現:株式会社三井住友銀行)に入社、その後、株式会社M&A情報センター(1990年10月)の専務取締役、メース・ピアソンジャパン株式会社(1998年11月)、株式会社エスエムティ(2001年11月)を経て、2005年にナノキャリアに参画した。


花田博幸氏は、取締役CBO (Chief Business Development Officer) を務めており、同職就任は2008年6月。2007年12月にナノキャリア顧問、ついで2008年5月に事業開発部長の職に就いた。それ以前はアンジェスMG株式会社の顧問を務め、同社以前は、生化学工業株式会社の執行役、さらに株式会社そーせいの開発部門長を歴任。同氏のキャリアは1980年の久光製薬株式会社に始まる。


岡野光夫博士(非常勤取締役)は、ナノキャリア技術の中心的な発明者の1人であり、研究開発の方向性への助言及び重要な戦略的判断の決定にあたって重要な役割を果たしている。同博士は、東京女子医科大学ならびに米国ユタ大学の教授であり、先端生命医科学研究所所長も務める。その研究専門は生体材料、人工臓器、DDS、組織再生などである。


大橋彰医学博士(非常勤取締役)は、臨床開発におけるその豊かな経験や知識に基づいて臨床/非臨床的プログラム戦略及び同社のプロジェクトの実行に関する助言や情報提供を行う主要メンバーである。


サイエンティフィック・アドバイザー
同社は、東京大学の片岡一則教授及び筑波大学(学際物質科学研究センター)の長崎幸夫教授と顧問契約を結んでいる。片岡教授は新規技術に関する助言を行い、長崎教授はsiRNAの応用を中心として助言を行っている。

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[編集] 従業員 

2009年3月末現在、常勤スタッフは28名。平均年齢は41歳である。

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[編集] 大株主 

2009年3月末現在、同社の株主は4,955人。(大株主上位10名は企業概要を参照)

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[編集] 配当および株主還元 

2010年3月期時点で配当を含め、株主還元策は実施されていない。

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[編集] IR活動 

お問い合わせ先
ナノキャリア株式会社
東京オフィス
〒103-0027 東京都中央区日本橋3-2-2
電話:03‐3548‐0217(社長室)

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[編集] ところで

[編集] 用語集

[編集] 基本的なナノキャリア関連のバイオ用語

DNA(デオキシリボ核酸)

生物の全遺伝情報を含む核酸タンパク質合成のような、生命維持に必要なプロセスに関する情報の格納場所、あるいは指示コードの鋳型として機能する。その情報を実際に保有しているDNA分子のセグメントを遺伝子と呼ぶ。

pH

国際的な合意に基づいた相対的尺度による酸性度の指数。純水はpH7に近い中性pH。pH7未満の環境は「酸性」と呼ばれ、pH7を超える環境は「アルカリ性」または「塩基性」と呼ばれる。血漿は僅かにアルカリ性でpH7.35程度である。この値は、身体がストレスなしに機能するために最適なレベルであり、生理的pHと呼ばれる。

RNA(リボ核酸)

DNAにやや類似する核酸。異なるのは、DNAが2本鎖であるのに対してRNAは通常1本鎖という点である。これは、RNAの極めて重要な特徴であり、例えばタンパク質の合成に必要な情報の運搬といった役割を果たす。
  • mRNA(伝令RNA)
情報をDNAからリボソーム(RNAとタンパク質の組み合わせ)まで運ぶもので、リボソームでは続いてタンパク質が作り出される。
  • RNA干渉(RNAi)
遺伝子がサイレンシング(複製の阻止)されるプロセスであり、ウイルスに対する身体本来の防御機能の一部。特定の有害な体内プロセスをサイレンシングすることが可能であると研究者が発見した際には、医学及び生命工学ベンチャーの耳目を集める話題となった。RNAiでは、siRNAの断片が「敵対」RNAとカップリングして情報を運ぶことを阻止し、敵対細胞を効果的に死滅させる。RNAiは、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)と呼ばれることもある。
  • siRNA
低分子干渉RNA、「短干渉RNA」または「サイレンシングRNA」とも呼ばれる。RNA干渉に関与するRNAの分類。siRNAの発見は、1999年Science誌で最初に発表された。
  • アンチセンスRNA
mRNAと相補性を持つ1本鎖のRNAであり、mRNAと巧妙に結合する。アンチセンスRNAを相補的mRNAと結合させて翻訳機構を物理的に妨害することによって、細胞機能を妨げることに利用できるかもしれない。医薬的利用は今のところ見出しづらいとされている。アンチセンスRNAはRNA干渉(RNAi)とは異なる。
  • 他のRNA種
20種以上のRNAが存在する。tRNA(転移RNA、タンパク質の産生に不可欠)、rRNA(リボソームRNA、触媒)が重要であると思われる。

アミノ酸

アミノ酸はタンパク質の構成要素をなす。約300種の既知のアミノ酸が存在し、そのうち約20種がタンパク質合成に関与している。

ウイルス

通常は10~300ナノメートルの大きさの感染性因子であり、宿主細胞内でのみ繁殖することができる。ウイルスは、細胞構造を利用してウイルス自身のDNAまたはRNAを複製することによって細胞を乗っ取る。通常は、ウイルスが急速に繁殖する一方で宿主細胞は死ぬことになる。ウイルスは、人間における外因性疾患源の最も重大なものの一例である。

エンドサイトーシス

物質が細胞膜を通らずに細胞内に取り込まれること。言い換えれば、細胞が物質を「飲み込む」こと。

(化学)結合

原子や分子が互いに結びつくプロセス。

核酸

遺伝情報を保有・運搬し、また細胞内での構造をなす高分子。最も一般的なものはDNA及びRNAであり、これらはすべての細胞及びウイルス中に見い出せる。

共有結合

原子が電子(マイナス電荷を有する原子より小さい粒子)を共有することによって互いに結びつく(結合する)ことである。

血漿

水のような溶液(ほとんど水)で、血液の主要構成成分で、その量の半分以上を占める。血液細胞にとっての自然環境である。

抗体(免疫グロブリン、Ig)

細菌やウイルスなどの外来物質への反応として免疫システムが作り出す、固有のタンパク質。侵入細胞を死滅させるか、その死滅を助ける。異なる防御機能を持つ5種類の抗体が存在する。

高分子

大きな分子

高分子ミセル

ブロック重合体(ブロックポリマー)から形成され、球状の内核及び外殻を有する高分子の集合体。

細胞

生物を構成する最小単位。細胞は、本質的にはある程度自律した有機分子の集まりであり、それが属する生物の機能及び生殖に必要な情報を含む。

サイトカイン

短命の分子の分類で、タンパク質である場合が多く、ある種の細胞によって、自身及び他の細胞の機能に影響を与えるために作り出される。基本的に、これらは細胞に特定の反応(たとえば特定の化学物質を作り出す)を起こさせるシグナル伝達(メッセンジャー)因子である。サイトカインは免疫機構において重要な機能を持つ。

ジアミノシクロヘキサン白金(DACHPt; ダハプラチン)

有機白金化合物であり、オキサリプラチンの基本構成要素。

(分子の)自己集合

自己会合とも呼ばれ、無秩序の系が、その構成要素間の相互作用によって自然に規則正しい構造を形成するプロセスをいう。

重合体(ポリマー)

化学結合(共有結合)によって連結された反復構造からなる高分子
  • 共重合体(コポリマー)
1種類以上の単量体からなる重合体。1種のみの単量体を使用した場合は同種重合体となる。
  • 単量体(モノマー)
他の単量体と結合して重合体を形成することができる小分子(通常は有機分子)。最も有名な単量体は、ブドウ糖及びアミノ酸である。アミノ酸は、タンパク質という重合体を形成する天然の単量体である。
  • 同種重合体(ホモポリマー)
単一の単量体の鎖からなる重合体。
  • ブロック共重合体(ブロックコポリマー)
2種以上の同種重合体の単位が共有結合によって結合された共重合体。

親水性分子

水と一時的結合を形成する分子。言い換えれば、これらは「水を好む」性質を持つ。

疎水性分子

水と反発する分子。言い換えれば、これらは「水を嫌う」性質を持つ。

タンパク質

アミノ酸からなる有機化合物。人体の主要な構造部分をなしている。人体組織の構成要素として、あるいは生化学的反応の制御を補助する「酵素」(生体触媒)として作用することができる。

ナノサイズ

ナノスケール、すなわちナノメートルで測定される大きさ。ナノメートルは1メートルの10億分の1である(1/1,000,000,000)。通常は、1~100ナノメートルの大きさの話をする場合に「ナノスケール」という用語を使う。

白金(Pt)

化学元素であり、かつ貴金属。白金は高い細胞毒性(細胞に対して毒性であること)でも知られている。実際には、DNA合成を阻害(妨害または減少)して細胞の分裂を妨げる。

分子

強力な化学結合によって明確な構造が保たれている、安定した原子の集団。有機(生物学的起源)あるいは無機(鉱物起源)の分子がある。有機分子は必ず炭素を含むが、炭素を含むすべての分子が有機であるわけではない。

ペプチド

αアミノ酸と呼ばれる特定のアミノ酸同士が結合した場合に形成される小重合体。これらのアミノ酸は、すべてのタンパク質の構成要素である。

ポリエチレングリコール(PEG)

ポリエーテルという有機化合物の一種として広く知られている。我々が関心を寄せるのは、水溶性があり、一部の疎水性分子と結合した場合に界面活性剤(ミセルの構成要素)を形成できることである。

ミセル

水性コロイド中に分散している界面活性剤と呼ばれる細胞の集まり(凝集体)。コロイドとは、2種類の物質が互いに均一に分散している混合物である。溶液とは異なり、これらの物質は、通常はその粒子が溶けるには大きすぎるため、懸濁しているだけであって溶解はしていない。コロイドの例は牛乳である。界面活性剤とは、疎水性の「尾部」及び親水性の「頭部」をどちらも含むタイプの分子である。この特徴により、界面活性剤は何にでも溶けることができる。水中で一定の濃度に達すると、これらは小さな球状の構造を形成するが、その際、それぞれの界面活性剤分子の疎水性尾部が内部に隠れて内核を形成し、親水性頭部が外部に突出して外殻を形成する。ミセルは、石けんまたは洗剤に似た作用をすることができ、不溶性の粒子がミセル内核(それ自体も不溶性であり、基本的には油である)に拾われてその内部に包み込まれ、「洗浄」効果を示す。これがまさにナノキャリアの技術のポイントであり、小さなミセルが不溶性かつ有毒であることも多い薬物を包み込み、血液中を運ぶことができる。

リガンド

特にタンパク質または核酸と結合するシグナルトリガー分子であり、例えば医薬物質とターゲットとなるがん細胞との結合を可能にするナビゲーション・ブイまたはセンサーとしての役割を果たす。

有機金属化合物

炭素・金属間の結合を持つ化合物。金属が白金である例が有機白金化合物である。ダハプラチンは有機白金化合物の例である。



[編集] 医薬品関連用語の基礎知識

DDS(薬物送達システム)

薬物が身体から放出、吸収、分布または排除される方法を改変することによって薬剤プロファイルを改善する技術である。目的は薬物を身体内のターゲット部位に送達することである。簡単に言えば、DDSとは、薬剤送達のシステムである。

GMP

医薬品の品質管理基準(Good Manufacturing Practice)の略であり、ナノキャリアの事業背景との関連では、International Conference on Harmonization (ICH) によって認可されている研究開発・製造ガイドラインの一部にあたる。

アクティブ・ターゲティング

部位特異性リガンド、またはシグナル伝達分子を用いて薬物をターゲット臓器に運ぶことからなる、非浸潤性の治療手段である。これらの分子はセンサーとして働き、ミセルが運ぶ薬物と結合している場合は薬物送達効率を向上させる。

アブラキサン

Abraxis Bioscience Inc.が開発販売している抗がん剤であり、最初に市販されたDDS抗がん剤の1つ。パクリタキセルをベースとし、送達システムとしてアルブミン(水溶性血清タンパク質)を使用している。

インヴィトロ(In Vitro)

生体組織外部の制御された環境で行うプロセスを意味する。

インヴィヴォ(In Vivo)

動物やヒトといった生体を使って行うプロセスを意味する。

オキサリプラチン

シスプラチンと同族の白金系抗がん剤である。1976年に日本で発見され、Debiopharmにライセンスアウトされた。Debiopharmは、オキサリプラチンを大腸がん治療薬として開発し、1994年にSanofi-Aventisにライセンスした。1999年に欧州で、2004年に米国での販売が認可された。Sanofi-Aventisはこれを商品名Eloxatinとして販売している。新規化学成分としての特許は2007年に期限切れを迎えたが、結腸がんの治療における様々な用途に関しては2013~2016年まで特許保護される。

契約一時金(アップフロント)

通常ライセンス契約の開始時に行われる現金または株式の支払である。

抗体結合型ミセル

同社が開発した化合物の種類である。結合(コンジュゲード)とは、共有結合を介して生体分子を組み合わせた生成物である。抗体などのセンサーを薬物が封入されたミセルと結合させ、薬物送達効率を向上させるために使用することができる。

シスプラチン

白金系がん治療(抗がん)薬の一種。1978年FDAに認可され、カルボプラチン及びオキサリプラチンを含む薬物群では最初の(認可)薬であった。DNAまで浸透し、細胞分裂を妨害する。最終的には細胞死を引き起こす有機白金化合物を身体内で形成することによって作用する。静脈内投与で、最も広く使用されている抗がん剤の1つである。広く使用され非常に有効な抗がん剤でありながら、重度の副作用を伴うため使用量に制限がある。

シスプラチン内包高分子ミセル

ミセルの核内部にシスプラチンを封じ込めた高分子ミセルである。

代謝物

生命の維持のために有機体が行う一連の化学反応の生産物。

タキソール

Bristol-Myers Squibbから販売されているパクリタキセルで、パクリタキセルをヒマシ油配合物(クレモホールEL)及びエタノールに溶解したものである。

ダハプラチン誘導体ミセル

ナノキャリアが開発した、ジアミノシクロヘキサン白金(Dachプラチン)を封入した新しいミセルである。

ナノプラチン

同社が開発した薬物の商標(主要パイプライン参照)であり、ナノミセル技術を利用して作り出されたシスプラチン内包高分子ミセルである。

パクリタキセル

抗がん剤の一般名である。1967年に米国で発見され、珍しいタイヘイヨウイチイの樹皮から単離された。Bristol-Myers Squibbによって商品開発され、タキソールとして販売されている。これは、別の薬剤ドセタキセル(タキソテールとして販売)・アブラキサンと共にタキサンと呼ばれる抗がん剤群を形成する。

マイルストーン

研究開発または臨床試験のマイルストーン達成と関連づけられた現金収入である。

薬物キャリア

薬物のターゲット領域への分布を向上させるように働く物質である。

臨床試験

所定の試験計画に従ってヒトを対象に行う生物医学または健康に関する調査研究であり、新薬、治療、または装置の安全性及び効能を確認するために実施する。臨床試験は、第I、II、III、IV相といった数段階から成る。
  • 第I相臨床試験
少人数のグループに対して行う新薬の試験であり、ほとんどの場合は健常者が対象となる。安全性の評価、安全な投与量の範囲決定及び副作用の調査を目的とする。
  • 第II相臨床試験
中規模の人数のグループに対して行われる探索的試験で、薬効、安全性、用量反応の確立を目的とした試験である。第I相と第II相試験は合わせて行われることがある。
  • 第III相臨床試験
通常大人数の患者グループでの無作為化試験であり、類似条件下で従来治療と比較した薬効と安全性の確認を目的としている。当該試験が成功した場合、認可に向けて試験結果が規制当局に提出される。
  • 第IV相臨床試験(市販後調査試験)
様々な患者集団における認可薬の効果と安全性、時には長期に渡る安全性について調査する。
  • 第0相臨床試験
近年FDA(アメリカ食品医薬品庁)が定めたヒトに対する試験段階で、 FDAの「探索的治験薬研究」に関する2006年ガイドラインに基づき治療レベルを下回るごく少量の投薬で行われる。第0相は、化合物の安全性や薬効に関してではなく、化合物が生体外試験や動物試験の段階と同じ働きをするかどうかのデータを提供する。

ロイヤリティ

ライセンスアウトした製品の収入に関連して支払われる報酬。売上額の一定割合または固定額である。