アンリツ(6754)
中立的でない見解の場合は、その見解の出所を常に明示します。例えば、経営側により示された見解は常に企業の見解として、弊社による見解は弊社見解として提示されます。弊社の目的は情報を提供することであり、何かについて説得したり影響を与えたりする意図は持ち合わせておりません。
ご意見等がございましたら、sr_inquiries@sharedresearch.jp までメールをお寄せください。ブルームバーグ端末経由でも受け付けております。
2012年 2月 5日時点
|
|
この文書は、情報提供のみを目的としております。投資に関する意見を提供するものでも、投資の勧誘や推奨を意図したものでもありません。SR Inc.は、本レポートに記載されたデータの信憑性や解釈については、表出された場合と黙示された場合の両方につき、一切の保証を負わないものとします。SR Inc.は本レポートの使用により発生した損害について一切の責任を負いません。 本レポートの著作権、および本レポートとその他Shared Researchレポートの派生商品の作成および利用についての権利は、SR Inc.に帰属します。本レポートは、個人目的の使用においては複製および修正が許されていますが、配布・転送その他の利用は本レポートの著作権侵害に該当し、固く禁じられています。なお、本レポートに記載されている会社名、製品名は各社の登録商標または商標です。
金融商品取引法に基づく表示
本レポートの対象となる企業への投資または同企業が発行する有価証券への投資についての決断を伝える意見が本レポートに含まれている場合、その意見は、同企業からSR Inc.への対価と引き換えに盛り込まれたものであるか、同企業とSR Inc.の間に存在する当該の対価受け取りについての約束に基づいたものです。
直近更新内容
概略
2012年1月30日、アンリツ株式会社は2012年3月期第3四半期決算及び通期会社予想、配当予想の上方修正を発表した。
(決算短信へのリンクはこちら、通期会社予想及び配当予想の修正へのリンクはこちら、2012年3月期第3四半期決算実績の項目へのリンクは こちら)
3ヵ月以上経過した会社発表はニュース&トピックスへ
業績動向
四半期実績推移
2012年3月期第3四半期実績
2012年1月30日、同社は2012年3月期第3四半期決算を発表した。また、同時に2012年3月期通期会社予想、配当予想の上方修正を発表した。
モバイル市場向け計測器の需要拡大により計測事業が好調に推移したことから、第3四半期累計期間の売上高は前年比22.4%増の66,025百万円となった。また、営業利益は前年比135.0%増の10,129百万円となった。
同社のコメントを基に2012年3月期第3四半期累計期間の各事業の状況をまとめると以下のようになる。
計測事業(売上高:50,780百万円( 前年比34.2%増)、営業利益:10,232百万円( 前年比181.7%増)
北米や日本を中心にLTE(Long Term Evolution)のチップセットおよび携帯端末の開発用計測器、規格適合試験や相互接続試験を行う計測システムの需要が増大した。また、アジアを中心にスマートフォンやタブレット端末に代表される多機能携帯端末の製造用計測器やネットワーク・インフラの建設・保守用計測器の売上が拡大した。
産業機械事業(売上高:9,949百万円(前年比17.0%増)、営業利益:269百万円(前年比11.1%増)
食品産業向けビジネスが、日本市場に加えてアジアと米国で食品の検査設備への需要が堅調だった一方、円高などの影響によって価格競争が激化した。
情報通信事業(売上高:1,496百万円(前年比11.2%減)、営業損失:580百万円(前年同期:営業損失640百万円)
公共投資予算と密接に関連する公官庁ビジネスが低調であった(予算執行が集中するのは第4四半期)。
その他の事業(売上高:3,800百万円(前年比35.4%減)、営業利益:612百万円(前年比57.3%減)
前年同期に堅調であった国内映像配信市場向けのデバイス需要が一巡し、低調だった。
2012年3月期通期会社予想の上方修正は下記の通り。同社によれば、欧州債務問題や為替の動向など先行き不透明感が強まっているが、モバイル市場向け計測器の需要は堅調なため、上方修正したとのことである。また、業績予想の上方修正に伴い、年間配当予想を従来の1株当たり10円(うち中間配当5円)から増額修正し、1株当たり15円(うち中間配当5円)とした。
2012年3月期通期
- 売上高:91,500百万円(前回予想87,500百万円)
- 営業利益:14,200百万円(同11,700百万円)
- 経常利益:12,500百万円(同10,000百万円)
- 純利益:9,500百万円(同7,000百万円)
2012年3月期第2四半期実績
2011年10月27日、同社は2012年3月期第2四半期決算を発表した。また、同時に2012年3月期通期会社予想の上方修正を発表した。
モバイル市場向け計測器の需要拡大により計測事業が好調に推移したことから、第2四半期累計期間の売上高は前年比21.9%増の44,621百万円となった。また、営業利益は前年比126.8%増の6,392百万円となった。
同社のコメントを基に2012年3月期第2四半期累計期間の各事業の状況をまとめると以下のようになる。
計測事業(売上高:34,014百万円( 前年比34.5%増)、営業利益:6,366百万円( 前年比192.4%増)
計測事業の売上高の構成比はモバイル分野が約47%(売上高は前年比89%増)、ネットワーク・インフラ分野が約39%(売上高は前年比7%増)、エレクトロニクス分野が約24%(売上高は前年比8%増)であった。
モバイル分野の売上伸長率が著しく高いが、ネットワーク・インフラ分野やエレクトロニクス分野の売上伸長率も良好であったと同社は述べている。
モバイル分野
北米や日本を中心にLTE(Long Term Evolution)の開発関連の売上(LTEとネットワークの相互接続試験、認証試験を行うコンフォーマンステストシステムなど)が増大したほか、アジアを中心にスマートフォンやタブレット端末に代表される多機能携帯端末の製造用計測器の売上が拡大した。
同社は製造用計測器のシェア向上のために、1)2G、3G、3.5G、LTEの全ての方式に対応できる携帯端末製造用計測器の投入(顧客の当面の使用目的が3Gだとしても、将来的にLTEなどにスイッチするのであれば、様々な方式に対応計測器の方が方式を限定した計測器より選好される可能性がある)、2)顧客に対するサポート体制の強化、3)製品の機能・品質に加え、短納期対応が差別化要素として重要性を増してきているのでその強化、などを重点施策として掲げている。
同社は、第1四半期で新たに大手端末ベンダー(Tier1ベンダー)からもまとまった受注案件を獲得した(同社はこれまで開発用計測器では取引があったが、製造用計測器では新たに受注を獲得した格好)ほか、中国などで新たなベンダーが出現しつつあるが、そうした新たなベンダーに対しても拡販を進めるなど、上記施策が実を結びつつあるようだ。
ネットワーク・インフラ分野
北米やアジアにおいて、ネットワーク・インフラの建設・保守用計測器の需要が堅調に推移したことが売上拡大に寄与した。
エレクトロニクス分野
1)顧客の需要がリーマンショック以降の回復途上にあること、2)モバイル・データ・トラフィックが増大する環境下、LTE方式の開発・商用化に加えて、WiFi、WiMaxなどノンセルラー方式によってデータオフロード化を進めるなど無線通信方式の多様化が進んでいること、等が同社の製品に対する需要の増加につながっているようだ。
同社は、ノンセルラー方式に対する今後の計測需要の取り込み策として、セルラー方式(2G、3G、LTE)とノンセルラー方式の組合せに一つの計測器で対応できる体制を整えて行きたいと述べている。
産業機械事業(売上高:7,194百万円(前年比14.4%増)、営業利益:346百万円(前年比21.8%減)
食品産業向けビジネスが、日本市場に加えてアジアと米国で食品の検査設備への需要が堅調だった一方、円高などの影響によって価格競争が激化した。
情報通信事業(売上高:978百万円(前年比4.5%減)、営業損失:477百万円(前年同期:営業損失570百万円)
公共投資予算と密接に関連する公官庁ビジネスが低調であった(予算執行が集中するのは第4四半期)。
その他の事業(売上高:2,433百万円(前年比39.5%減)、営業利益:385百万円(前年比61.4%減)
前年同期に堅調であった国内映像配信市場向けのデバイス需要が一巡し、低調だった。
2012年3月期通期会社予想の上方修正は下記の通り。同社によれば、世界経済の減速により先行き不透明感が一段と強まっているが、モバイル市場向け計測器の需要は堅調な推移が見込めるため、第2四半期累計期間の実績を踏まえ、売上、営業利益を上方修正したとのことである。一方、経常利益および当期純利益については、為替レートの状況などを踏まえ、従前の予想を据え置いたとのことである。
2012年3月期通期
- 売上高:87,500百万円(前回予想86,500百万円)
- 営業利益:11,700百万円(同11,000百万円)
- 経常利益:10,000百万円(据え置き)
- 純利益:7,000百万円(据え置き)
ちなみに、上記通期会社予想は、上期実績が前回予想を上振れた点を反映した数値であり、下期だけに限れば、前回予想が据え置かれている。同社はこの点について、上期に関しては、1)クリスマス商戦におけるスマートフォン需要の拡大を睨んだ端末ベンダー・EMSの積極投資があったこと、2)Tier1ベンダーからのまとまった受注案件があったこと、などから業績が拡大した一方、下期に関しては、上期のような大きな案件は見込んでいないためとコメントしている。
また、下期の会社予想を据え置いた点について、別の観点からみた理由としては、製造用計測器に関して短納期での需要が増加しており、数ヵ月先の需要見通しを立てにくいことを指摘している。同社によれば、LTEのチップセットおよび携帯端末の開発用計測器の需要は比較的安定しており、需要見通しを立てやすい一方、アジアを中心に高まりつつある多機能携帯端末の製造用計測器需要は、上記のような理由(短納期需要が増加)で見通しにくいとのことである。
同社は、製造用計測器の需要について短期的な見通しは立てにくいものの、中長期的には2G方式から3G方式への移行が行われる過程で、堅調な需要が期待できるだろうとしている。
2011年10月28日に、同社は2012年3月期第2四半期決算説明会を開催した。主なコメント(上述した内容以外)は以下の通り。
- 日本国内でもLTE投資に関していえば後発組であった通信キャリアが投資を始めており、開発用計測器に対する需要が高まりつつある
- タイの洪水影響について、1)産業機械事業に属する子会社がバンコクにあるが、影響は限定的である、2)当社に対する供給先がバンコクに数多く存在するため、サプライチェーンの復旧に取り組んでいる
- 光インターコネクトに対する新規需要が米国で高まりつつある。当社も2010年に光インターコネクト用の新製品を投入したが、順調に売れている
- LTE Advanced(LTEの次の規格、2015年より商用化が見込まれている)に関しても基礎開発を進めている
2012年3月期第1四半期実績
2011年7月28日、同社は2012年3月期第1四半期決算を発表した。また、同時に2012年3月期上期および通期の業績予想ならびに配当予想の上方修正を発表した。
モバイル市場向け計測器の需要拡大により計測事業が好調に推移したことから、売上高は前年比16.0%増の19,518百万円となった。また、営業利益は前年比144.6%増の2,233百万円となった。売上高は期初会社予想を大幅に上回る実績となったが、その要因は計測事業の特にモバイル分野が非常に好調であったことによる。また、プロダクトミックスが改善したことで、営業利益率は11.4%(2011年3月期第1四半期は5.4%)と非常に高水準となった。
同社のコメントを基に各事業の状況をまとめると以下のようになる。
計測事業(売上高:15,062百万円( 前年比27.7%増)、営業利益:2,422百万円( 前年比254.2%増)
計測事業は、売上高が前年比27.7%増と大幅に増加したほか、受注高も前年比44%増と高い伸びとなった。
計測事業の売上高の構成比はモバイル分野が約41%(売上高は前年比66%増)、ネットワーク・インフラ分野が約30%(売上高は前年比2%増)、エレクトロニクス分野が約29%(売上高は前年比25%増)であった。
モバイル分野
北米や日本を中心にLTE(Long Term Evolution)の開発関連の売上(LTEとネットワークの相互接続試験、認証試験を行うコンフォーマンステストシステムなど)が増大したほか、アジアを中心にスマートフォンやタブレット端末に代表される多機能携帯端末の製造用計測器の売上が拡大した。
特に製造用計測器の拡販については、2012年3月期における同社の重要施策の一つであった。世界的にみれば携帯端末加入者の約80%近くが、(同社の参入していない)2G方式であり、そのことが同社の製造用計測器のシェアが低水準に留まってきた主因であった。逆に、昨今の多機能携帯端末の普及(=3G方式の拡大傾向)を、同社は製造用計測器の市場に本格参入する好機とみなし、1)2G、3G、3.5G、LTEの全ての方式に対応できる携帯端末製造用計測器の投入(顧客の当面の使用目的が3Gだとしても、将来的にLTEなどにスイッチするのであれば、様々な方式に対応計測器の方が方式を限定した計測器より選好される可能性がある)、2)顧客に対するサポート体制の強化、などの手法で同社は、拡販を推し進めようとしている。
同社は、第1四半期でこれまでも取引があったアジアのEMSに加え、新たに大手端末ベンダー(Tier1ベンダー)からもまとまった受注案件を獲得した(同社はこれまで開発用計測器では取引があったが、製造用計測器では新たに受注を獲得した格好)。製造用計測器の拡販に関し、早くも一定の成果を修めたといえるだろう。
ネットワーク・インフラ分野
北米やアジアにおいて、建設・保守用計測器の売上高が拡大した。
エレクトロニクス分野
同分野の強化は現中期経営計画の柱の一つである。2011年3月期は不振に終わったが、2012年3月期は好調な出足となった。1)顧客の需要がリーマンショック以降の回復途上にあること、2)モバイル・データ・トラフィックが増大する環境下、LTE方式の開発と商用化に加えて、WiFi、WiMaxなどノンセルラー方式も含めたマルチ運用が行われるなど無線通信方式の多様化が進んでいること、等が同社の製品に対する需要の増加につながっているようだ。
産業機械事業(売上高:2,820百万円(前年比8.7%増)、営業損失:50百万円(前年同期:営業利益18百万円)
食品産業向けビジネスは、日本市場に加えてアジアと米国で食品の検査設備への需要が堅調だった一方、精密計測事業は低調だった(同分野は2012年3月期より「その他の事業」から「産業機械事業」に分類変更)。
情報通信事業(売上高:491百万円(前年比6.0%減)、営業損失:279百万円(前年同期:営業損失243百万円)
公共投資予算と密接に関連する公官庁ビジネスが低調であった(予算執行が集中するのは第4四半期)。
その他の事業(売上高:1,144百万円(前年比40.3%減)、営業利益:248百万円(前年比56.2%減)
前年同期に堅調であった国内映像配信市場向けのデバイス需要が一巡し、低調だった。
2012年3月期上期および通期会社予想の上方修正は下記の通り。また、配当を期初予定の1株当たり年間8円(うち中間配当4円)から、1株あたり年間10円(うち中間配当5円)に上方修正すると発表した。
2012年3月期上期
- 売上高:43,000百万円(当初予想36,500百万円)
- 営業利益:5,500百万円(同1,500百万円)
- 経常利益:5,000百万円(同1,100百万円)
- 純利益:3,500百万円(同600百万円)
2012年3月期通期
- 売上高:86,500百万円(当初予想80,000百万円)
- 営業利益:11,000百万円(同6,200百万円)
- 経常利益:10,000百万円(同5,500百万円)
- 純利益:7,000百万円(同3,800百万円)
会社予想の上方修正理由について同社は、計測事業の第1四半期の売上高、営業利益などの業績が好調であったことに加え、受注が大幅に増加し、先行きも堅調な需要が見込めることを挙げている。
通期(2012年3月期)見通し
同社は期初段階では、2012年3月期の会社予想について、売上高、営業利益ともに慎重な数値を置いていた(売上高は前年比2.8%増の80,000百万円、営業利益は前年比11.4%減の6,200百万円の当初会社予想であった)。しかし、同社は2012年3月期第1四半期決算発表時、2012年3月期第2四半期決算発表時、2012年3月期第3四半期決算発表時にそれぞれ、上方修正し、上図の数値を会社予想としている。
こうした上方修正によって、2012年3月期の会社予想は同社が中期経営計画で掲げてきた2013年3月期の目標値(売上高:90,000百万円、営業利益:9,000百万円、当期純利益:4,500百万円)を上回る数値となった。
事業別にみると、上方修正されたのは計測事業のみであり、同事業の売上高は期初会社予想の56,500百万円から68,000百万円へ、営業利益は同5,000百万円から13,000万円へと上方修正された。一方、計測事業以外の事業については期初の会社予想が据え置かれている。
将来の展望
2010年4月28日、同社は中期経営計画「GLP2012」を発表した。主な数値計画は下表のようになる
中期経営計画の対象期間は2013年3月期までであり、2015年3月期のVision(Anritsu120)達成のためのマイルストーンとの位置づけになっている。計測器事業の2013年3月期の売上高計画は610 億円(年間平均8%増収)、営業利益計画は60 億円(同38%増益)である。計測器事業におけるグローバルシェアを高め、業界の成長率を上回る増収ペースを意図していた。
ただし、2012年3月期会社予想を達成できれば中期経営計画(2013年3月期の営業利益計画)を早くも実現できる見込みとなっていることから、同社は2012年中に改めて中期経営計画を策定したいと述べている。
同社が中期経営計画を前倒しで達成できる見通しとなった主因は、計測セグメントの好調さに起因するものであり、1)LTEの開発関連需要が前倒しで発生したこと、2)スマートフォンなど多機能携帯端末の普及に牽引された製造用計測器需要の増加、などを背景としている。
詳細な需要見通しは(修正後の)中期経営計画待ちだが、同社は説明会の資料で中長期的な需要イメージを提示している(本レポートの市場概要、「計測ビジネスの需要イメージ」を参照)。それによれば、計測セグメントにおける需要は中長期的に高水準での推移が続くであろうとの見通しが示されている。例えば、チップ・端末などの開発用計測器需要は、今後2-3年、LTE関連の開発需要が牽引すると予想されている。また、製造用計測器需要は、2G方式から3G方式への転換が向こう5年程度かけて進む過程で、高水準の需要が期待されるほか、LTE関連の製造用計測器需要が2-3年後より生じてくると見込まれている(2011年11月時点)。
事業内容
ビジネス
同社は計測器の設計・製造を行っている会社である。計測器は、一般的に各製品の研究開発・製造・品質検査において、製品の性能などを評価する物差しとして用いられている。同社は特に通信機器の計測器に力をいれてきた。
同社の事業セグメントは計測事業、産業機械事業、情報通信事業、その他事業、の4つから成る。
計測 (2011年3月期売上高構成比:68.7%、営業利益構成比: 72.2%)
同社の主力事業である。計測事業は顧客・対象市場によって、3つのカテゴリーに区分される。
- ネットワーク・インフラ分野(2011年3月期の計測事業売上高に占める比率約36%)
- モバイル分野(同約34%)
- エレクトロニクス分野(同約30%)
計測事業における顧客とマーケットポジション
出所:会社資料
ネットワーク・インフラ分野
通信事業者、通信建設業者、通信装置メーカーが主要顧客である。ここに含まれる製品・事業によって、売上高の内訳はさらに下記3つに分けられる。
売上高の内訳(2011年3月期)
- 約35% : 基地局計測
- 約45% :光・デジタル・IP計測
- 約20% :サービス・アシュアランス
基地局用の計測器(基地局から出る電波の質を試験)の主力製品はハンドヘルド型計測器であり、同社は大半を海外で販売している。同社によれば、基地局向けのハンドヘルド計測器のグローバルシェアは70%強であり(2011年3月期)、世界的にみても競争力を有しているとのことだ。
光・デジタル・IP計測とは、超高速デバイス開発や光ファイバー関連など通信インフラ機器用の計測器をさしている。
サービス・アシュアランスとは、通信事業者のサービス品質保証のために通信ネットワーク全体の監視やサービス品質を解析するソリューションを提供するという事業である。データ収集に必要なハードウェア・ソフトウェアを提供することに加え、通信事業者とモニタリングサービス契約を締結し継続的な収入を得るというビジネスモデルである。
モバイル分野
携帯電話端末に関連した計測器が含まれる分野である。チップセットメーカー、携帯電話端末メーカー、IT系サービスプロバイダ、通信事業者などを顧客としており、主要製品としては携帯端末開発用・認証用・製造用の計測器が挙げられる。
開発用の計測器とは、携帯電話端末メーカー、チップセットメーカーなどの研究開発に用いられる計測器である。製造用の計測器とは、携帯電話端末を工場で生産する際に使用される計測器であり、携帯電話端末メーカーが新たな生産ラインを設置する際に需要が生じる。
開発用と製造業の売上構成はサイクルに応じて変動し得る。一般的に、携帯電話において新たな通信規格が導入される場合、まず携帯端末やチップセットの研究開発がなされ、次いで端末の生産・販売が拡大していく。そのため、当初開発用計測器の需要が立ち上がり、次いで製造用計測器の需要が発生する傾向がある。
2011年3月期の時点で、各規格別の状況を俯瞰すると、3G/3.5Gに関していえば開発計測器の需要はほぼ一巡しつつあり、製造用計測器の需要がメインである。スマートフォンへの需要の増加や新興国市場への広がりもあって、3G/3.5Gの対応市場は拡大傾向にあるため、製造用計測器の需要は今後も伸びると同社はみている。また、TD-SCDMA(3G携帯として中国が推進している通信方式)に関しては、これから開発用・認証用計測需要が本格化すると同社はみている。LTEに関しては、開発計測器需要がメインであり、製造用計測器需要がようやく立ち上がりつつある段階にある(詳細は「コアテクノロジー・フォーカス」の項を参照)。
SR社の理解では、同社はモバイル分野において、開発用計測器で高シェアを誇ってきた(3Gの開発用計測器のグローバルシェアは約70%、LTEの開発用計測器は同約50%、いずれも2011年3月期)が、製造用計測器においては約10%程度と競合他社(米Agilent Technologies社、独Rohde & Schwarz社)の後塵を拝してきた。
世界的にみれば携帯端末加入者の約80%近くが、(同社の参入していない)2G方式であり、そのことが同社の製造用計測器のシェアが低水準に留まってきた主因であった。逆に、昨今の多機能携帯端末の普及(=3G方式の拡大傾向)を、同社は製造用計測器の市場に本格参入する好機とみなし、1)2G、3G、3.5G、LTEの全ての方式に対応できる携帯端末製造用計測器を投入(顧客の当面の使用目的が3Gだとしても、将来的にLTEなどにスイッチするのであれば、様々な方式に対応計測器の方が方式を限定した計測器より選好される可能性がある)、2)顧客に対するサポート体制の強化、などの手法で同社は、拡販を推し進めようとしている(2011年3月期)。
エレクトロニクス分野
この分野には、シグナルアナライザや信号発生器などの携帯電話関連の汎用計測器が含まれている。また、携帯関連以外にも、基地局の開発・製造、通信用部品・モジュールの開発・製造、自動車、家電、スマートグリッドなど多様な用途で使用されている汎用計測器も当該分野に含まれている。
同社が強みを有しているとみられるモバイル分野の専用計測器は、端末の開発サイクルへの依存度が高く、需要変動が大きい傾向がある。そのため、同社は対象市場がより広く、需要変動もより安定的な汎用計測器分野のシェアアップをめざし、全社ベースでみた安定的な収益源にしようとしている(2010年4月公表の中期経営計画の柱の一つ)。
汎用計測器における競合他社は、幅広い顧客が使用できる文字通り「汎用的な」製品を販売することが多いが、同社は製品開発を、特定のニーズを満たすニッチな用途向けにフォーカスしている。たとえば、統合型のホームネットワーク・ゲートウェイ(テレビ、電話、インターネット、ワイヤレスなどを組み合わせる)を開発するメーカーは通常、いくつかの計測器で個々のコンポーネントを試験し、そして次にシステム全体で試験する必要がある。同社はこれに対して、異なる通信モジュールとソフトウェア・アプリケーションを組み合わせることにより、専用テストソリューションを開発し、その試験のセットアップをプリパッケージ・ソリューションとして販売するという対応をとる。メーカーにとっての利点は、テストの複雑性を緩和でき(テストの計画実行時に管理・統合対象の機器数を少なくできる)コスト低減できる点である。同社は、他社であれば(汎用機器の幅広さを考えた場合)「ニッチすぎる」、または他の既存製品との共食いなしには開発できないと思えるような製品を、魅力的な価格で作れる能力を基盤にしていると見られる。
産業機械 (2011年3月期売上高構成比:15.8%、営業利益構成比:9.4%)
食品・化粧品・薬品産業向けの生産管理・品質保証システムを事業分野としており、重量選別機(食品製造ラインにおいて高速搬送しながら高精度に軽量する選別機)、自動電子計量器、異物検出機(食品中に混入する金属や石などの異物を高感度に検出し製造ラインから排除する異物検査機器)などの開発、製造、販売を行っている。2011年3月期時点で、当セグメントの売上高の80%強が上記産業向けである。
当該事業は売上高に対する寄与度はさほど高くないが、食品・化粧品・製薬メーカーなどコアとなる顧客からは安定的な需要が生まれる。従来から国内市場に焦点を当てていたが、海外に目を向け始め、2009年3月期にはタイに製造拠点を設立した。
情報通信 (2011年3月期売上高構成比:5.3%、営業利益構成比:1.0%)
ネットワーク監視・管理装置(ネットワーク・スイッチ、トラフィック・スムージング ルーター)、映像監視システム、およびその他の通信システムを提供している。対象となる顧客は政府・地方自治体(河川映像監視システム、公益事業向けテレメーター(遠隔測定)システムなどを提供)、および金融機関や通信事業者など一部民間企業である。民間企業に販売している製品の例として動画配信システムや帯域制御装置などが挙げられる。
その他 (2011年3月期売上高構成比:10.2%、営業利益構成比:23.6%)
当事業には、同社の非中核的事業(光学装置、精密測定システム、板金処理、不動産投資、施設管理、物流など)が含まれている。
主な施設
同社は国内、米国、欧州に研究開発施設を有している。研究開発のほとんどは国内、米国で行われている。
日本、米国およびタイに生産拠点を有する。また、中国のEMS企業を一部活用している。
地域別売上高
同社グループとしては日本国内が主力市場であるが、2007年3月期から2011年3月期にかけて海外売上高比率が上昇してきている。また、計測器事業に限れば、日本での売上は26%にしか過ぎない(2011年3月期)。
同社の為替感応度(営業利益ベース)は、対ドルで1円円高が進むと100百万円、対ユーロで1円円高が進むと20百万円の損失となる(2011年3月期)。
ビジネスモデル
計測器の売上高が、グループ収益の大部分を占めている。製品の範囲はハンドヘルド計測器から大型のラックマウント型装置まで多岐にわたる。製品には汎用計測器と専用計測器がある。同社では、セールス活動の一環でデモ機(売上原価に計上)を生産しているが、開発生産に関連し非経常的費用が生じる。同社は、これらのデモ機をなるべく早い時期に販売するよう努力している(デモ機は徐々に削減されている)。
価格の範囲は10万円(現場で使用されるハンドヘルド計測器や携帯が容易なシステムの概算価格範囲)から数億円以上(複雑な注文システム)と幅広い。顧客が支払う価格は値引きに影響され(商品化までの時間が問題ではない場合)、通常は予想数量または全体的な取引関係の重要性などに左右される。
製品ミックス(小型 対 大型)は、顧客の設備投資および製品開発スケジュールに依存する。携帯電話のチップセットメーカーが研究開発段階にいる場合のテストのニーズは、完成品のチップセットが量産に入る場合に生じるテストのニーズとは異なる。初期の段階の装置が最も高額で、利益率も高い(営業利益率は約20%)。
同社は一部の製品では、6ヵ月前に特殊部品を注文し仕掛品を作り、さらにそれを仕様に合わせてカスタマイズしている(たとえば、ラックマウント型の装置は特定の注文ごとに指定されたプロトコル対応のボードを入れるなど)。在庫のリードタイム(6ヵ月)と注文配送(通常、受注から納品まで1ヵ月から1ヵ月半かかる)により在庫リスクが生じる。同社は、12ヵ月経過した在庫は50%、24ヵ月経過後は100%のたな卸資産評価損を計上している。
同社の売上高は2008年3月期にピークを迎え(3Gの新規開発がほぼ終了した)、計測器事業の減収を他の事業で相殺できず、2009年3月期には2003年3月期のITバブル崩壊の時と同様、痛みを伴う構造改革を実施することとなった。同社はキャリアからの大きな需要変動を平準化するべく、汎用計測器の拡大などに努めている。
コスト構造
費用に占める構成比率が高いのは研究開発費と労務費である。研究開発費の一部は売上原価に含まれ、その他は販売および一般管理費(販管費)に含まれている。
SR社には、同社の労務費と研究開発費は対売上高比率が高く、比較的固定費の要素が強いように思える。そして、このことが、業績低迷時に臨時で大規模な構造改革(リストラ)につながったと考える。2001年のITバブル崩壊後、同社は社員数を6,000人から4,000人に削減し、契約社員と正社員の比率を変更した(正社員よりも調整しやすい契約社員の数を増やした)。2008年3月期中の構造改革においては、生産拠点の統合(2施設を閉鎖)、サプライチェーンのスリム化(事業部門間での購買機能の共有化)および他の非中核的サービスの合理化を行った。2011年3月末現在、同社の社員数は約3,600名である。同社によれば、2008年3月期の人員削減で余剰の労働能力は調整済である。つまり需要が増えた場合は、対応して人員を増やす必要がある。
収益性スナップショット、財務比率
営業利益率の変動が大きいが、その一因として、労務費および研究開発費が固定費的な性質を持っていることが挙げられる。
ROEはROAと財務レバレッジ(資産/株主資本)の2つに分けることができる。同社の財務レバレッジをヒストリカルにみた際、中央値(2005年度から2010年度)は米Agilent Technologies社よりも高い。一方、ROAはどの期においてもAgilent Technologies社より低くなっている。この要因として、Agilent Technologies社が汎用計測器の量産事業をメインビジネスとしていること、つまり、規模の経済を達成し、単位原価を下げることができていることが挙げられる。同社は2001年3月期のSDH/SONET (光通信/デジタル通信)サービス開始の際に、規模の経済を享受した経験があり(特定の装置に需要が集まる)、ROAが例年に比べ大幅に上昇した。SR社は、高い投資収益を安定的に得るような事業基盤を構築することが現経営陣の課題であると考える。
SW(Strengths, Weaknesses)分析
強み(Strengths)
- 特定分野の独占的地位 : 同社は3G開発用計測器で国内および世界的なリーダーとして存在を認められている(世界シェアは70%)。同社は、これにより2つの優位性を手にしている。1つは次世代規格に技術がシフトする際、既存顧客との密接な関係から競合他社に開発その他で先手を打てるメリットである。2つ目が世間での評価であり、これにより新しい計測器市場の開拓につながり得る(エレクトロニクス、自動車、コンポーネントなど)。
- 緊迫感 : 2009年3月期に大幅な構造改革を行って以来、同社は競争戦略を見直し、収益性を重視してきている。2010年4月に就任した橋本裕一社長の経理畑での経験は、会社の力点を単なる技術的な目標からより収益性も含めたバランスの取れた方向に導いていく上で役立つであろう。
- 変化への対応 : 同社は、その沿革に示される通り、市場の需要変化に対する適応力を持っている。研究開発における試験と開発のサイクルはますます短縮化し、装置はますます複雑化している。顧客のニーズや市場の傾向に即座に対応する能力を持つというのは、大企業や官僚的な企業にはなかなか取ることができない選択肢である。
弱み(Weaknesses)
- 波に逆行する汎用計測器事業 : 同社が汎用計測器でシェアアップをめざすということは、中核的な計測器(専用計測器)の市場で競争しながら、同時に汎用計測器のための対応を急がなければならないということを意味している。汎用計測器市場は市場規模が大きいもの、競合他社が既に高いシェアを有しており、同社がどれだけシェアアップを実現できるかは不透明である。特に、同社が2つの異なる市場で同時に競争していくことは、経営資源および財務上の大きな負担を生じさせることになる。
- 不均等な販売チャネル : 同社はこれまでのところ、国内での独占的な位置づけやポジショニングを特定分野でしか確立できていない。同社は国内および米国では成功したが、これは一部にNTTドコモのサービス展開に携わったことが理由となっている。GSM技術に弱いことから、欧州ではシェアを取ることができなかった。また、汎用計測器市場でシェアアップを追求するにはまったく新しい販売チャネルを構築する必要があり、おそらく大変な労力が必要となるだろう。
- 通信業界の投資サイクルに左右される事業 : 同社の中核事業はほとんどが単一の業界、つまり通信業界に依存している。そのため、収益の変動が激しく、事業リスクも高い。 競合他社の場合は汎用計測器の提供を通じて、複数の業界にバランスよく顧客が存在するため、通信業界の設備投資サイクルの変動を減殺しリスクを低減することができている。
グループ会社
2011年3月期時点で、アンリツ・グループは37社の子会社で構成されている。
主な子会社は以下の通り。
日本
- アンリツ産機システム株式会社― 産業機械事業
- 東北アンリツ株式会社 ― 製造子会社
- アンリツ計測器カストマサービス株式会社
- アンリツデバイス株式会社
- アンリツネットワークス株式会社 ― 情報通信事業の子会社
- アンリツエンジニアリング株式会社
- アンリツプレシジョン株式会社
- アンリツ興産株式会社
- アンリツ不動産株式会社
- アンリツテクマック株式会社
- 株式会社アンリツプロアソシエ
米国
- Anritsu Company ― 製造子会社
- Anritsu Instruments Company
英国
- Anritsu EMEA Ltd. ― 製造子会社
イタリア
- Anritsu S.p.A.
- Anritsu Solutions S.p.A.
デンマーク
- Anritsu A/S
中国
- Anritsu Company Ltd.(香港)
- Anritsu Electronics Co., Ltd.(中国)
台湾
- Anritsu Company, Inc.
韓国
- Anritsu Corporation, Ltd.
グループ戦略
同社は2009年3月期に計測事業を主にアンリツ社にそれ以外の事業を別会社に分離し、独立採算制を取らせることにした。
市場とバリューチェーン
市場概要
同社にとって最も重要な市場は、携帯電話市場と特殊汎用計測器市場である。携帯電話関連の計測器の市場は概ね端末メーカーや通信事業者の設備投資計画によって決定される。
携帯電話用の計測器については、ほとんどの支出は通信事業者が新しい通信規格を採用する際(例、2Gから3Gへの移行時)に発生する。もっとも、通信事業者の設備投資は一部のネットワーク構成要素を取り換えるだけといった小規模なもの(基地局とその他の多少の設備など)から通信基盤の完全置換え( 2Gから3Gへの進歩はまさにこのタイプで、構築にあたっては通信事業者の通信網の大幅なアップグレードが必要だった)までと幅広い。
2011年始めの段階で、無線通信技術で最も重要な開発はLTEの構築である。
コアテクノロジー・フォーカス(3G/LTE)
3G/3.5G
同社は計測器で世界的に主流となったGSM方式で競合他社の後塵を拝したが、NTTドコモの研究開発チームと緊密に連携し、日本の携帯電話産業でも重要な技術開発の「第1段階」から参加、同社製品は世界の3G/3.5G開発用計測器の業界標準となった(同社によればグローバルシェアは約70%、2011年3月期)。
それ以前の技術とは異なり、3G/3.5Gはより広帯域となり、提供サービスも増えたため、プロトコルもより複雑になった(これまでのプロトコルは無線接続を1接続につき1サービスに限定していた。音声と映像の両チャネルを同時に使用するテレビ会議などのアプリケーションは使用できなかった。3G/3.5Gはこれを提供できる)。同社が早期に3G/3.5Gに関与したことは、同社が通信スタックの「物理層」よりも上の機能を開発したことを意味する(ここでいう「スタック」とは、無線や固定通信などの物理層から、それらの通信を使用するアプリケーションまでのデバイス間の複数の論理接続層を表す。アプリケーションは、実際の接続が無線か有線かを意識することなく他方向からくるアプリケーションデータだけを「見る」のである。詳細は、スタック内の上位/下位層で処理する。3Gの上位層プロトコルにおける経験は、直接LTE に応用することができる(LTEについては下記参照))。
2011年6月時点で、3G/3.5Gから生じる需要は同社の得意な開発用計測器ではなく、大半が製造用計測器である。当該分野では、Agilent Technologies社や独Rohde & Schwarz社のシェアが高く、SR社の認識では同社のシェアは10数%に留まる。同社が同分野のシェアが低い理由の一つは、GSM方式で競合他社の後塵を拝したことにある。ただし、1)スマートフォンの普及や発展途上国での携帯電話端末の普及を背景に3G/3.5Gの製造用計測器需要が拡大傾向にある点、2)同社が後塵を拝したGSM方式から3G/3.5Gへのスイッチングの過程で、同社製品への乗り換えが発生する可能性もある、なども踏まえれば、3G/3.5G向けの製造用計測器は同社にとっては引き続き有望な分野といえるだろう。
中国の3G
中国の移動体通信業者の3G技術であるTD-SCDMAは、ネットワークのサービスエリア拡大や新規サービス追加により、大きな市場機会を生み出し得る。TD-SCDMAは他の3Gプロトタイプに比べれば比較的新しい。2009年に開始され、まだ構築段階にある。TD-SCDMAはほとんどが中国のみで使用されるプロトコルであり(開発は国が後押しした)、準拠する端末や機器、対応するネットワーク計測器の数も少ない。ただし、2011年3月時点で、チャイナモバイル社の抱える7億人の加入者のうちTD-SCDMAユーザーは2,600万人にしか過ぎない。市場はまだまだ立ち上がり始めたばかりといえよう。
LTE
今後の同社の成長ドライバーとして期待されるLTE(Long Term Evolution、3.9G)関連ビジネスに関して、ここに別途記載する。
LTEの特徴
LTEは次世代移動無線通信サービスであり、下記3つの特徴がある。
- 3G以前は独自のプロトコルが使用されていたのに対し、LTEはネットワーク上の機器がインターネットでも使用されているプロトコルであるIPを使用している
- 超高速データ通信を可能にするという点であり、下り100Mbp/上り50Mbp以上の通信速度を誇る。IP技術と高速通信の組み合わせは、ユーザーに電話という概念をはるかに超えたブロードバンド並みの速度の高機能端末の提供を可能とする
- 3.5Gまでは、GSM・CDMAと大きく二つの規格に分かれていたが、LTEについては世界のほとんどの通信事業者が採用を表明している。すなわち、規格の統一が実現される可能性が高まっている
同社との係わり
同社のLTE関連ビジネスは、携帯端末の開発・製造用計測器がメインだが、それ以外にも、基地局の製造、建設・保守、さらには、通信容量の不足によるモバイルバックホールの高速化・大容量なども含む需要全般にかかわる。従って、同社の事業・サブセグメントでいえば、計測器事業のモバイル分野(携帯端末開発用・製造用計測器)のみならず、ネットワーク・インフラ分野(基地局用計測器)、エレクトロニクス分野など計測器事業全般が需要を享受できる可能性もある。
これまでの状況をみる限り、同社は携帯端末開発・製造、基地局の建設保守、通信事業者(無線)の建設・保守分野で高いシェアを保持する一方、通信機器、光ファイバーといった分野ではシェアが低く、こうした低シェア分野の開拓ができるかどうかについては、2011年6月時点では判断し難い。
競合状況
同社の強みは、無線用の計測器から光関連の有線用計測器まで幅広く計測ソリューションを提供できる点にあり、この強みを生かしながら、上記した需要全般にかかわっていこうとしているとのことだ。
2011年6月時点において、LTE関連ビジネスで同社と競合しているのは、Rohde & Schwarz社である。ただし、Rohde & Schwarz社は無線用計測器の計測ソリューションしか持ち合わせていないため、同社と競合しているのは、携帯電話端末の開発用計測器の分野である。
Agilent Technologies社が従来から強みを有しているのは汎用計測器の分野である。そのため、今のところ専用計測器が主流のLTE市場への参入は限定的である(2011年6月時点)。今後、LTEにおいても汎用計測器が主流となった際、Agilent Technologies社が本格参入してくる可能性はあると同社はみている。一般的に規格が成熟化してくると、専用計測器ではなく汎用計測器が用いられるようになってくる。
同社は、無線系計測事業を新たに買収、無線、有線用計測事業を兼ね備えた米JDSユニフェーズが今後の競合相手として浮上してくる可能性もあると指摘している。
出所:会社資料よりSR社作成
LTE市場の展望(同社見解を基に)
同社によれば、ITバブル時は、光のコアネットワーク投資が通信キャリアという供給者主導で進展、崩壊したのに対し、今回のLTEに関しては、ユーザーのニーズが強いサービス・アプリケーションが提供されることによって、ネットワーク利用が増大。無線通信の高速化需要やネットワークの大容量化需要が創出されたことが起点となっている。つまり、需要者主導で進展する格好となっているとのことだ。従って、端末の高速化、モバイルバックホールの強化、メトロネットワークの高速化・大容量化という順に、加入者に近い方から最終的にはネットワーク全体が強化されるに至るという特徴があると同社はみている。
加えて、通信キャリアがARPU(Average Revenue Per User、加入者1人当たりの月間売上高)の頭打ちないしは低下傾向を受けて、投資余力が必ずしも高くない状況で進行していることもあって、各国・通信キャリアごとに投資タイミングが異なるという点も注目される。例えば、NTTドコモ、米Verizon社などは2010年内のLTEの商用化を開始したのに対し、米AT&Tは2011年、Softbank、欧州勢(英Vodafone等)は2012年以降の商用化をめざしているとされ、その後に新興国におけるLTE投資が始まるとみられている。
以上の同社見解をまとめれば、今回のLTE投資はITバブルのように短期間に集中的に行われるというよりむしろ、キャリアごとに異なるタイミングで、徐々に積み上げられていくということになる。つまり、ITバブル時ほど山は高くないが、なだらかに長期間続く可能性があるということである。
注)シェアは同社の現在の数値
出所:会社資料よりSR社作成
開発用と製造用それぞれに関する計測器需要に関して、同社に見方をまとめると、携帯端末の開発用計測器需要は2010年のNTTドコモ、米Verizon社の商用化で端末ベンダーの投資が活発化すると予想されることから、少なくとも2012~2013年まで続くだろうとのことだ。さらに他の通信事業者が上記2社よりも遅れて商用化することを鑑みれば、それ以降も開発段階が続く可能性が高いだろうとのことである。携帯端末の製造用計測器需要は、一部2011年3月期より既に生じている模様だが、これはデータ通信カード製造用の計測器であり、携帯端末の製造用計測器需要が生じてくるのは、2012年3月期以降とみている。また、基地局建設・保守の計測器需要も2012年3月期以降、緩やかに生じてくるだろうとのことだ。こうした需要動向や同社の得意分野を踏まえ、SR社では2016年3月期までの同社LTE関連の売上の大半は、携帯端末の開発用計測器より生じるものと推測する。
なお、下図は各顧客に対する同社の主力製品、および需要動向の予測(イメージ)である。得意分野に関する記載は、同社の指摘に基づいたものである。
出所:会社資料よりSR社作成
LTEの同社収益へのインプリケーション
同社の2010年3月期におけるLTE関連の売上は、専用の特定1機種のみで40億円であった。また、2011年3月期のLTE関連の売上は複数の機種で約100億円であった(モバイル分野のみ)。中期経営計画では、LTE向けの売上を計測器全体の売上の2割まで高める計画である(LTE関連売上高はモバイル分野のみが対象)。2013年3月期の計測器事業全体の売上計画が610億円である点を踏まえれば、LTE向けの売上は120億~130億円が想定されている計算になる。ただし同社は、2011年3月期が終わった時点でLTE関連の引き合いは中期計画策定時点で想定していたよりも強いと指摘している。
ちなみに、同社が計測器で高いシェアを誇る3G(W-CDMA)の投資動向を振り返ると、3Gの場合は、2000年代初頭の当初3~4年は携帯端末開発用の計測器需要にとどまっていたが、2006年3月期以降は開発用に加えて製造用の計測器需要が盛り上がり、同社の3G携帯関連の売上は、ピークの2006年3月期で約250億円に達した。
3Gの開発は、同社とビジネス上のつながりが深いNTTドコモが開発面で先行、世界初の3Gネットワークを立ち上げたことにより、同社は競合よりも開発用計測器販売で優位に立つことができた。しかし、LTEの開発に関しては、必ずしもNTTドコモだけが開発面で先行しているわけではなく、3Gと同水準の高シェアを握れるとは限らない。同社もLTE開発用計測器の目標としてシェア50%を目標に置いている。
同社による計測ビジネスの需要イメージ
出所:会社資料
加えて、LTEの開発用計測器の中には、一部3G用計測器からアップグレードできるため、必ずしも顧客が新たに計測器を買う必要がない場合もあるなど、1社当たりの計測器需要が3Gの時より小さいものと思われる。例えば、上表は日本の通信事業者によるLTEの導入計画であるが、NTTドコモの設備投資額は3,430億円となっている(NTTドコモは2010年7月にLTE 投資を当初計画の2015年3月期まで3,430 億円の設備投資から2013年3月期までに約3,000億円を前倒しで投資すると発表している)。3G導入時の総コストが約4兆円であったことを踏まえれば、少額にとどまっている。こうした点を踏まえれば、先行き、ピーク時の同社、計測器事業・モバイルのLTE向けの売上は3Gの際の250億円には届かないとSR社ではみている。
反面、3G開発時との相違点として、3G開発時には同社が供給できなかった、顧客にソリューションを提供する機会が生まれる可能性、および通信以外の異業種からの需要が創出される可能性がある。例えば、2010年からLTEの商用化を予定している米Verizon社は、これまでシステムとしてcdma2000を採用していたのに対し、同社はW-CDMA対応の計測器を供給していたため、米Verizon社の計測器をもっぱら手掛けていたのは、米Agilent Technologies社および独Rohde & Schwarz社であった。しかし、LTEに関しては、同社も同じ土俵に立てる上、3Gの開発でシェアが高かったことなどが見込まれて、米Verizon社および米Verizon社向けベンダーに計測器を納入している。
また、前述したようにLTEはIPを使用して通信するため、LTE準拠の最終製品は携帯電話に限らず、タブレット、ゲーム機、自動車などにも広がる。つまり、通信以外の異業種に対して同社のソリューション提供機会が広がる可能性がある。
参入障壁
参入障壁は極めて高い。最も重要な参入障壁は、精密な計測器を開発するために必要な技術的専門性である。今後参入する企業は、具体的な計測の応用技術に関連した研究開発と精密機器の製造能力を必要とする。より特殊な計測器の領域では、その領域で老舗の企業と競合するに十分な、大量の技術的ノウハウを必要とする。ネットワーク通信領域では、特に新興技術の複合機能的特性を考慮した場合(デバイスはさらに複雑化している)十分に強力な研究開発体制を構築するまでには数年かかるであろう。
競合
グローバルでの主な競合他社
- 米Agilent Technologies社
- 米JDS ユニフェーズ社
- 米Ixia社
- 独Rohde and Schwartz社
同社はAgilent社を計測器販売における世界的なリーダーと認めており、Agilent社の2010年度の計測器市場のシェアを約30%と推定している。主な製品カテゴリー:ライフサイエンスと化学分析(医療・化学分析機器など)、電子計測(オシロスコープ、信号発生器とアナライザ、通信テスト機器など)。同社はAgilent社の競争力を、品質を落とすことなく、幅広い量販向製品の品揃えを他社に負けない魅力的な価格で供給できる点にあると評価している。
代替品
事実上、計測器には代用品はない。計測器の購入に代わる選択肢としては、社内で独自開発した機器を使用する案があるが、これは別のリスクを発生させる。たとえば通信技術では、メーカーの最終製品は他の準拠製品と相互接続できなければならない。製品を社内開発ツールでテストした場合、相互接続性の保証はより難しくなる。第三者による計測器は、その意味で製品開発におけるこうした不確定要素を取り除いてくれるため、メーカーは計測器のプロトコル実装を気にすることなく、製品のみに注力することができる。
経営戦略
同社の競争戦略は、通信市場で培った技術などを活用し、計測器の隙間市場を開拓していくというものだ。同社は大手競合他社に対して汎用計測器市場で直接対抗していくことは難しいと認識しており、競争が激しい市場のなかでも、相対的に競合他社が手掛けていない領域を開拓しようとしている。
さらに、同社は、技術面のみならず、製品や事業の採算を重視した事業計画を推進している。具体的には、同社は2008年3月期に不採算事業からの撤退を開始した。また、変化を更に推し進めるべく、2010年に経営陣を刷新し、長くCFOの職にいた橋本裕一氏が社長職に任命された(「トップ経営者」の項を参照)。
採算を重視した理由の一つは、収益の変動が大きいためである。同社の純利益は以前もITバブルの生成・破裂と同じような軌跡をたどっている。経営陣は、こうした「ジェットコースター」のような利益サイクルから脱したい述べいる。ただし、その実行は容易ではないだろう。以前のNTTドコモと同社の関係では、売上をあげるには高品質で技術的に進んだ製品を開発すればよかった。しかし、NTTドコモが最先端技術でリードしてきた時代から市場は変化している。新しい技術開発や、より積極的な競合他社の姿勢によりマーケットは収縮し、製品サイクルは短縮化している。同社は世界的に競争をしていくには、潤沢な経営資源を抱えるグローバル企業に勝つか、少なくとも対等に張り合っていけるようでなければならないことに気づきつつある。この新しい現実に適応するために、同社は自社の強みと限界を冷静に評価し、唯一有効な選択肢は競合他社がいない市場を創出することだと悟ったようだ。
相対的にニッチな分野で汎用計測器事業を推進していくために、同社は新たな販売チャネルを開拓している(再販業者の重要性が増している)。当該事業における同社の顧客獲得手法は、取引関係が成立していても関係が脆弱な業界にフォーカスすることだ(アップグレードサイクルにおける国内の通信コンポーネントメーカーなど)。同社はこれまで米国のハンドヘルド計測器などの隙間市場を開拓することに成功してきてはいるが、SR社はそうした成功が未だ道半ばにあると考える。
過去の財務諸表
前期以前の業績概況(参考)
2011年3月期通期業績
2011年4月27日、同社は2011年3月期通期決算を発表した。
端末製造用計測器およびLTEの開発用計測器などモバイル通信市場で計測事業が堅調に推移し、売上高総利益率が改善したこと、固定費のスリム化やKPIマネジメントによる費用投資管理によって収益体質の改善が進んだこと、などによって、売上高は前年比5.9%増の77,853百万円、営業利益は前年比52.6%増の6,994百万円となった。
営業利益は会社予想6,500百万円を上回って着地した。同社によれば、LTE端末開発用計測器や3G多機能携帯端末(スマートフォン)製造用計測器などが想定よりも好調であったことが要因であるとのことだ。
2011年3月11日に発生した東日本大震災の影響については、東北アンリツ株式会社(福島県郡山市)の生産設備が一時休止したことほか、一部設備の破損があったことから、修繕費を計上(約200百万円)したが、総じて影響は軽微であった模様。郡山工場は2011年3月下旬で既に稼働を再開している。
同社によれば、各事業の状況は以下のようであった。
計測事業(2011年3月期売上高: 前年比10.8%増、営業利益: 前年比124.3%増)
次世代通信規格であるLTEの基地局の製造・建設需要や携帯端末の開発需要が立ち上がるとともに、スマートフォンの開発需要、製造需要が増大した。地域別には日本を中心に顧客の設備投資抑制や投資先送りが継続したが、北米市場やアジア市場では計測需要が堅調であった。こうした結果、売上高は前年比10.8%増の53,462百万円、営業利益は前年比124.3%増の5,050百万円であった。
計測事業の売上高の構成比はモバイル分野が約34%(売上高は前年比15%増)、ネットワーク・インフラ分野が約36%(売上高は前年比5%増)、エレクトロニクス分野が約30%(売上高は前年比6%増)であった。
モバイル分野
計画比上振れにつながったのはこのサブセグメントである。同社によれば、モバイル市場の売上のうち、約10,000百万円がLTE関連の売上、約8,000百万円程度がスマートフォン関連の売上であったとのことである。
ネットワーク・インフラ分野
同サブセグメントの構成比は、ハンドヘルド型計測器が約35%(売上高は前年比15%増)、光通信/IPネットワーク用測定器が約45%(売上高は前年比5%増)、サービス・アシュアランスが約20%(売上高は前年比5%減)であった。基地局向けのハンドヘルド型計測器は、LTE用、それ以外ともに堅調に推移した。同製品はドル建ての取引が多いため、数量ベースでは上記数値よりも高い伸び率を示したとのことだ。一方、サービス・アシュアランスもユーロ建ての取引が多く、現地通貨ベースでは同社の計画値を上回る実績であったとのことだ。
エレクトロニクス分野
汎用計測器などの製品が含まれるサブセグメントだが、汎用計測器は日本のメーカーの投資需要がまだ低調なため、芳しくない結果であった。
情報通信(2011年3月期売上高: 前年比22.4%減、営業利益: 前年比51.7%減)
同事業の売上の約8割を占める官公庁の投資が予算削減から冷え込み、減収減益へとつながった。
産業機械(2011年3月期売上高: 前年比5.9%増、営業利益: 前年比8.0%増)
アジアで検査設備への需要は堅調であり、増収増益となった。
その他(2011年3月期売上高: 前年比4.6%減、営業利益: 前年比26.5%減)
2011年3月期第3四半期業績
2011年1月27日、同社は2011年3月期第3四半期決算を発表した。また、同時に通期業績予想の上方修正、期末配当金予想の増額修正を発表している。修正後の通期会社予想に対する第3四半期累計期間の進捗率は以下の通り。
- 売上高 :70.0%(通期予想77,000百万円)
- 営業利益:66.3%(同6,500百万円)
- 経常利益:60.7%(同4,800百万円)
- 当期純利益:72.9%(同3,000百万円)
同社は、2011年3月期第3四半期累計の実績が計画を上振れた理由として、1)端末製造用計測器およびLTEの開発用計測器などモバイル通信市場で計測事業が堅調に推移し、売上高総利益率が改善したこと、2)固定費のスリム化やKPIマネジメントによる費用投資管理によって収益体質の改善が進んだこと、などを挙げている。
計測事業(第3四半期累計売上高: 前年同期比10.5%増、営業利益: 前年同期比297.4%増)
モバイル分野
計画比上振れにつながったのはこのサブセグメントである。LTEビジネスの足下までの状況は、チップセットや端末向けの開発用計測器の需要が米国や韓国などの海外を中心に堅調に推移している模様。北米に関しては、LTE投資が当初計画より前倒しで進んでいるとのことだ。また、端末製造用計測器も堅調に推移している模様。同社はこの理由に関して、同社の製品1機種でLTEも含めた様々な通信方式に対応できるため、新規投資の際には将来のLTE対応も見据えて同社の製品が選好されているとコメントしている。
同社は、従来、モバイル分野において、開発用計測器で高シェアを誇っていたが、製造用計測器においては約10%程度と競合他社の後塵を拝してきた。そのため、LTEも含めた様々な通信方式に対応できる機種を投入することによって、メーカーの新規製造ラインを中心に製造用計測器に占めるシェアを高めるべく努力をしている最中とのことだ。
LTE用の端末製造用計測器需要に関しては、米ベライゾン社などが音声端末を投入した後、2012年3月期の後半から本格的に盛り上がってくると同社はみている。
ネットワーク・インフラ分野
基地局向けのハンドヘルド型計測器は、LTE用、それ以外ともに堅調に推移している模様。ただし、光通信/IPネットワーク用測定器やサービス・アシュアランスなどを含めたサブセグメント合計としては、モバイル市場ほどの伸びではないようだ。
エレクトロニクス分野
汎用計測器などの製品が含まれるサブセグメントだが、汎用計測器は日本のメーカーの投資需要がまだ低調なため、芳しくない結果であった模様。同社によれば、日本のメーカーの生産水準はリーマンショック前の水準まで回復したが、設備不足感を認識するまでには至っていないとのことである。同分野における同社のシェアはあまり高くないが、同社のシェアアップのための起爆剤となるのが、日本のメーカーの投資需要増加といえよう。同社はスマートフォン、タブレット端末が売れている現状から、2012年3月期に関しては、日本のメーカーの投資需要も回復してくるだろうとコメントしている。
情報通信(第3四半期累計売上高: 前年同期比20.5%減、営業利益: 640百万円の赤字)
同事業の売上の約8割を占める官公庁の投資が予算削減から冷え込み、減収につながった。
産業機械(第3四半期累計売上高: 前年同期比5.6%増、営業利益: 前年同期比13.0%減)
営業利益に関しては、会計基準(設備設置完了時に計上)の影響もあって減益だが、アジア、北米を始め、検査設備への需要は堅調であると同社はコメントしている。
その他(第3四半期累計売上高: 前年同期比4.1%増、営業利益: 前年同期比19.8%減)
2011年3月期通期の会社予想の修正内容は以下の通り。
- 売上高 :77,000百万円(据え置き)
- 営業利益:6,500百万円(前回予想5,600百万円)
- 経常利益:4,800百万円(同4,000百万円)
- 当期純利益:3,000百万円(同2,500百万円)
同社は通期会社予想の修正理由について、売上高の予想は、計測事業でモバイル向け計測器需要が堅調なことを背景に売上増加を見込むものの、情報通信事業では官公庁市場向けの売上減少が見込まれることから据え置くとコメント。一方、営業利益以下に関しては、主力の計測事業の増収効果と売上総利益率の改善が見込まれることから上方修正したとのことだ。
通期会社予想の修正を鑑み、通期ベースの配当金予想は1株当たり6.0円から7.0円に増額修正されている。
2011年3月期第2四半期業績
2010年10月27日、同社は2011年3月期第2四半期決算を発表した。また、同時に通期業績予想の上方修正、期末配当金予想の増額修正を発表している。修正後の通期会社予想に対する上期の進捗率は以下の通り。
- 売上高:47.6%(通期予想77,000百万円)
- 営業利益:50.3%(同5,600百万円)
- 経常利益:43.9%(同4,000百万円)
- 当期純利益:38.9%(同2,500百万円)
2010年7月28日に発表した上期会社予想を、売上高で1,617百万円、営業利益で2,018百万円上振れて着地したが、同社はこの点に関し、LTE関連を中心にモバイル市場向け開発用計測器需要が想定を上回って推移したほか、コスト抑制が実施されたためと説明している。
2011年3月期通期の会社予想の修正内容は以下の通り。
- 売上高:77,000百万円(据え置き)
- 営業利益:5,600百万円(当初予想3,800百万円)
- 経常利益:4,000百万円(同2,500百万円)
- 当期純利益:2,500百万円(同1,500百万円)
同社は通期会社予想の修正について、売上高は円高による業績への懸念を鑑みて据え置くが、営業利益以下に関しては、第2四半期までの実勢を鑑みて上方修正したと説明している。ちなみに、想定為替レートに関しては、為替レートの実勢を鑑み、1ドル85円(通期、前回は1ドル90円)に為替想定を変更している。また、計測事業での開発投資を当初想定より積み増すとしている。
通期会社予想の修正を鑑み、通期ベースの配当金予想は1株当たり4.0円から6.0円に増額修正されている。
2010年10月28日開催の決算説明会における同社からの主なコメントは下記の通りである。
- 2011年3月期上期の受注は前年同期比1%減。減少の要因は公共投資の遅れによって情報通信が低調なことである。
- 2011年3月期上期の計測器の受注も低いが、円高の影響が大きい。現地通貨ベースでみれば受注は増加している。
- 2011年3月期上期の計画超過達成要因であるコスト抑制とは、人件費は想定通り増加したが、人件費以外のコストが想定を下回ったことを意味する。
- LTEに関しては、端末のコア開発が佳境に入った。また、端末の商用開発の設備需要が想定していたよりも早く、一部前倒しで始まっている。また、同社の製品がユーザーから比較的受け入れられてきている。
- 2010年10月にテストハウス大手のCetecom社がLTEの端末の認証に、同社のソリューションを採用。これによって、同社のベライゾン向けのビジネスに弾みがついた。
- 中計の施策の一つである、オフショア開発については、2010年10月にルーマニアに開発拠点を開設した。同社にとっては、欧州で4つ目の拠点となる。
計測事業(第2四半期累計売上高: 前年同期比9.8%増、第2四半期累計営業利益: 前年同期比712.6%増)
LTE関連
同社によれば、2011年3月期のLTE関連の売上高(計測事業)は90億~100億円を見込んでいたが、上期実績はすでに50%程度進捗している模様である。地域別にいえば、日本は力強さに欠けるが、北米および韓国の端末・チップセットのベンダーからの引き合いが強く、顧客の開発が前倒しで進んでいるとのことである。例えば、現状、端末・チップセットのコア開発が行われており、一部商用化開発も始まっているが、商用化開発のタイミングは同社の想定よりも早いとのことである。
LTEの商用化で先行しているキャリアは、ベライゾンとNTTドコモである。ベライゾンに限っていえば、当初、音声を含めた端末の商用化は2011年後半を予定していた(データ通信カードは2010年中の商用化を予定)が、それを2011年半ばに計画を前倒しするなどLTEの導入に非常に積極的な姿勢をみせている。その影響が計測器需要に出ている可能性がある。
競合状況に関していえば、端末・チップセットの研究開発用の測定器は同社と独Rohde & Schwarz社間でシェア争いが続いているようだ。もっとも、無線系計測事業をJDSユニフェーズに売却した米Agilent Technologies社が2010年9月に開発用測定器を市場投入するなどの動きをみせており、今後のAgilent Technologies社の動向も注目される。ただし、同社は、端末・チップセットの研究開発用の測定器は価格よりも品質が重視されており、価格競争に発展するような事態には至らないとの見方を示している。
同社は2011年3月期よりも2012年3月期はLTE関連の需要が増えるとの見通しを示している。通信事業者の端末受入試験において、各オペレータのサービスやアプリケーションの広がりから認証試験や相互接続試験の需要が増えるほか、2011年半ばから予定されている音声を含めた端末の商用化対応で、製造用計測器の需要も立ち上がるとみているためだ。また、エリアカバー率拡大と比例して、基地局建設・保守用の計測器需要も2011年3月期よりも2012年3月期、2012年3月期よりも2013年3月期と徐々に増加するとの見通しを示している(「ビジネス」の項参照)。
汎用計測器
汎用計測器のシェアアップは、中期経営計画の課題の一つである。もっとも、同社によれば、基地局向け製造用計測器が海外ベンダーに新たに導入されたが、日本のメーカーの設備投資需要が弱さに相殺され、現状では目立った改善をみせていない模様である。
情報通信(第2四半期累計売上高: 前年同期比6.6%減、第2四半期累計営業利益: 570百万円の赤字)
同社によれば、国土交通省の公共投資の執行が遅れ気味で公官庁市場向けが低調だった一方、帯域制御装置が金融機関のネットワーク向けを中心に堅調であった。
産業機械(第2四半期累計売上高: 前年同期比7.6%増、第2四半期累計営業利益: 前年同期比34.3%増)
国内中小メーカーは投資を抑制気味だが、それを補う格好でASEAN、北米でビジネスが堅調であった。ASEANは日本向けの輸出が堅調で、それに伴う食品の検査機器需要が生じている模様だ。北米は食品検査機器に対する需要がようやく立ち上がりつつあるとのことであり、同社は今後の市場拡大を期待している。
その他(第2四半期累計売上高: 前年同期比6.2%増、第2四半期累計営業利益: 前年同期比22.2%減)
第2四半期までの利益は想定以上だった模様だが、ブロードバンド化に伴う光デバイスの需要一巡から第3四半期以降は当初想定通り利益水準が下がるだろうと同社はコメントしている。
2011年3月期第1四半期業績
2010年7月28日、同社は2011年3月期第1四半期決算を発表した。修正後の同社の第2四半期累計期間業績予想に対する第1四半期の進捗率は以下の通り。
- 売上高: 48.1%(上期予想35,000百万円)
- 営業利益:114.1%(同800百万円)
- 経常利益:同0百万円に対し252百万円
- 四半期純利益:同300百万円に対し89百万円
受注高は前年同期比6.1%増加、売上高は前年同期比17.6%増加となったが、主因は主力の計測事業においてLTE向け研究開発用をはじめとした需要が堅調に推移したためである。また、営業利益は増収効果によって前年の867百万円の損失から黒字に転換している。
2011年3月期上期の会社予想の修正内容は以下の通り。
- 売上高:35,000百万円(据え置き)
- 営業利益:800百万円(当初発表予想の△200百万円から1,000百万円増額修正)
- 経常利益:0百万円(当初発表予想の△800百万円から800百万円増額修正)
- 純利益:△300百万円(当初発表予想の△1,300百万円から1,000百万円増額修正)
上方修正の理由として、同社では、計測事業においてLTE関連ビジネスに取り組む顧客の開発投資案件を当初想定よりも前倒しで獲得でき、それによって第1四半期の売上総利益率が約8%、前年同期よりも改善したため、営業利益および経常利益、純利益に関しても改善が見込まれるとしている。
通期会社予想に関しての変更はない。
同社はLTE関連ビジネスに関して、顧客と開発ロードマップを共有しながら進めているため、需要がある程度見えており、通期でみれば当初想定から実際の投資動向が大幅に乖離しているわけではないとしている。加えて、当初の為替想定は1ドル90円、1ユーロ125円であったが為替レートの実勢を鑑み、第1四半期終了後に1ユーロ110円に為替想定を変更している。同社の為替感応度は、対ドルで1円円高が進むと7,000万円、対ユーロで1円円高が進むと3,000万円の損失となる。従って、仮に通期で為替レートが1ドル85円、1ユーロ110円であったとすれば、対ドルで3.5億円、対ユーロで4.5億円、合計8億円の下振れ要因が発生することになる。従ってSR社では、会社予想より上振れ気味ではあるものの、現時点では大幅に上回って着地するほどではないと判断している。
2010年3月期の実績
2010年3月期の決算においては、2008年3月期および2009年3月期に比べ、業績が大幅に改善した。減収ではあったが、2009年3月期における構造改革の結果、営業利益は回復している。厳しい市場環境は続いており、計測器事業(中核事業)の売上高は対前年比で約16%減少した。同社は、米国における需要が回復の兆しを見せ始め、LTE関連の受注が顕著になってきた一方、中国の第3世代(3G)用計測器の需要は期待ほど増大しなかったとコメントしている。
営業利益率は大幅に改善した(2009年3月期1.1%に対し2010年3月期は6.2%)。米国、日本における一時的な賃金カットと、研究開発費が当初予算を下回ったこと(当初予算98億円に対し実績94億円)などが要因である。加えて、第4四半期に当初予算を上回るコスト削減を達成できたことや、予想よりも早くLTE関連機器の売上高が計上されたことにより営業利益率は改善した。
同社の2009年3月期の最終損益は赤字だったが、2010年3月期には黒字に転換している。当期純利益率は繰延税金費用の支払いもあり、0.5%と低い水準にとどまっているが、税前利益は2007年3月期と比較すると大幅な増益(26.2%増)となった(2008年3月期と2009年3月期は最終赤字)。
損益計算書
同社の売上高の変動が激しいのは、顧客の設備投資サイクルの影響を受けるからである。2000年3月期から2002年3月期の高水準の売上高はSDH/SONET (光通信/デジタル通信)の世界的ネットワーク構築に関連した装置の売上が非常に好調だったことによる。2003年3月期および2004年3月期において売上高が落ち込んだのは、3G市場が低迷していたことに加え、世界的にIT関連の支出が抑制されことによる(インターネットバブルの崩壊)。2008年3月期にかけて売上高が回復したのは、主としてNGN およびインフラ拡大に関連した顧客の初期投資が理由である。
2001年3月期の営業利益増加は、SDH/SONET関連の売上高が堅調だった結果である。固定費回収後の売上高増が利益を全体的に押し上げた。2003年3月期の営業損失の理由は、主に売上高の激減によるものである(売上高が対前年比で大幅に落ち込み、その固定費的な費用構成も相まって売上高販管費率が上昇した)。2009年3月期の営業利益率低下の理由の一つとして、売上総利益の落ちこみがある(たな卸資産評価損および会計方針の変更により売上原価が増えた)。
2001年3月期の特別損失は、主に退職給付にかかる会計基準の変更によるものだった(約112億円)。2003年3月期の特別損失はリストラにかかる特別退職金(113億円)とたな卸資産評価損(148億円)に関連している。2009年3月期の主な特別損失は、主に構造改革費用(22億円、人員削減と海外の工場閉鎖)およびたな卸資産評価損(14億円)に関係している。
当初会社計画と実績
同社の2003年3月期および2009年3月期の売上高の実績は、景気低迷により大幅な未達となった(2003年3月期はITバブル崩壊、2009年3月期は世界的な経済金融危機)。
2006年3月期の営業利益は、情報通信事業の営業損失計上およびネットテスト社の買収により当初予想を下回った。2008年3月期と2009年3月期の業績に対しては構造改革費用が影響を与えた。2010年3月期の営業利益が期初予想を上回ったのは、それまでのコスト削減効果が表れてきたことと、予想より早くLTE関連の売上高が計上されたことによるものである。
2005年3月期の経常利益は営業利益が低かったことと、約15億円のたな卸資産評価損および廃却損により、当初予想を下回った。2008年3月期の経常利益の赤字のほとんどは、たな卸資産評価損及び廃却損で56億円を計上したことによる。2009年3月期は営業利益の実績がかなり低かったことから経常利益も予想を下回った。2010年3月期の経常利益は営業利益が当初予想よりも良かったことから、予想を上回った。
2010年3月期の当期純利益は、繰越税金資産の取り崩しにより当初予想を下回った。
貸借対照表
資産
資産は運転資本に関連した流動資産が中心となっている。必要運転資本の変動(売掛債権+たな卸資産-買掛債務)は、主にたな卸資産の変動と売上高の地理的ミックスの変化に大きく影響される(商慣習は地域ごとに異なり、同社の海外売上高はかなりの額に上る)。同社は計測器のデモ機関連在庫が運転資本やキャッシュフローに大きな影響を持つ可能性があるとコメントしている。デモ機は標準品の売上高に比べると在庫リスクも高い。
2000年3月期から2011年3月期までの貸借対照表上の固定資産は、ほとんどが製造設備および建物である(建物および土地から減価償却費累計額を差し引いた金額が装置に比べて大きい)。2000年3月期から2011年3月期の間に、国内および海外で本社の移転や工場閉鎖をしたため、固定資産の総額は減少してきている。
負債
2000年3月期から2011年3月期まで、負債は短期と長期の比率がほぼ半々になっている。流動負債の内訳の中で最も大きな割合を占める科目は買掛金である。買掛金は、売上高の変動やサプライチェーン管理の向上などが影響し、減少傾向にある。同社は、材料費が全般的に下がってきていること、および現場の在庫数量を減らしきていることが影響しているとコメントしている。
株主資本
主に当期純利益および配当金の影響で変動してきた。同社は2009年3月期の海外子会社の会計上の連結方法変更に伴い、大きな評価・換算差額金を計上した(約103億円、米Wilton社買収ののれん代83億円とデンマーク事業法人のR&D資産20億円)。
希薄化リスク
- 2011年3月末時点の新株予約権付社債(100億円、転換価格 629円)から生じ得る希薄化率は、約12.4%である
- 同社のポイズン・ピルは20%で行使される。計画には敵対的買収または大株主による望ましくない株式買い占めが生じた際に、希薄化を狙って株主に対し無料で株式(新株予約権)を発行する策が含まれている
1株当たりのデータ
キャッシュフロー計算書
営業活動によるキャッシュフロー
同社の営業キャッシュフローは、運転資本の変化により大きく影響を受けている。運転資本のニーズはデモ用や評価用装置の在庫の要求量に影響される(「ビジネスモデル」の項を参照)。2003年3月期の営業キャッシュフローは、大幅な当期純損失の計上に起因している。
投資活動によるキャッシュフロー
2006年3月期の109億円の支出は主にサービス・アシュアランス事業に参入するためのネットテスト社の買収に関連したものである(約79億円)。その他の投資活動によるキャッシュフローは、時折、有価証券投資は行っているが、ほとんどが設備投資である。
財務活動によるキャッシュフロー
同社の2000年3月期から2011年3月期の財務キャッシュフローの変動は、ほとんどが社債の発行と償還によるところが大きい。
単純フリーキャッシュフロー
同社の単純フリーキャッシュフローのほとんど当期純利益(または損失)および運転資本の変動による。運転資本の変化は、顧客の需要パターンで決定される(デモ機など – 「ビジネスモデル」の項を参照)。
キャッシュコンバージョンサイクル
同社のキャッシュコンバージョンサイクルは、2000年3月期から2011年3月期までで改善してきている。買掛金支払日数は増え、必要在庫数量は減っている。必要在庫数量は売上高水準全般も反映するが(売上高は2009年3月期および2010年3月期に減収となった)、同社は2008年3月期のグループ再編以降、必要在庫数量を減らすことを目的として購買の合理化を実施している。
その他情報
沿革
1931年3月 株式会社安中電機製作所と共立電機株式会社の合併により資本金50万円で安立電気株式会社設立
1961年4月 厚木事業所新設
1961年10月 東京証券取引所市場第二部上場
1968年8月 東京証券取引所市場第一部上場
1978年5月 無線機器製造部門等を厚木事業所に移転し製造部門の厚木事業所集結を完了
1985年3月 福島県郡山市に生産子会社東北アンリツ株式会社を設立
1985年10月 10月1日から社名をアンリツ株式会社に変更
1990年2月 Wiltron Company(米国、現 Anritsu Company)を買収
2005年8月 NetTest A/S(デンマーク、現 Anritsu A/S)を買収
アンリツの起源は、石杉社(せきさんしゃ、のちの同社)が創立された1895年までさかのぼる。同社は、1908年に阿部電線製作所と合併し、社名を共立電機電線株式会社とした。同社は1931年に安中電機と合併し、社名を安立電気株式会社とした(安中電機は1900年に設立され、1903年に無線技術を第5回内国勧業博覧会に出展、1912年に無線電話機を完成させ、それを1916年に商用化した。これが世界初の無線電話サービスである)。安立電気は1933年に日本初のテレビジョン放送機を製作し、1939年に国産初の自動式公衆電話機を開発した(同時に日本初のテープレコーダーの初期試作品も開発した)。 1950年に、同社初の主要な計測器、ARM-6074形超短波電界強度測定器を開発した。同社は1962年に産業機械分野に参入し、電子マイクロメータ(精密計測器)の生産を開始し、1964年に自動重量選別機の製造も開始した。
1961年に東京証券取引所第二部に上場した。
1968年に東京証券取引所第一部に上場した。
1977年には光通信用測定器の販売を開始し、同年に2Gb/sの超高速誤り率測定器を開発した。また1982年に世界初のインマルサット形式認定を取得したインマルサット船舶端局装置(元々は海上使用のために開発された衛星通信ネットワークシステム)を開発した。1986年には光ファイバー通信システムや超高速論理素子の研究開発に活躍する5GHzパルスパタン発生器を開発した。
同社は1990年に無線機器および関連装置の開発会社である米国計測器メーカー、ウィルトロン社を買収し、製造機能およびウィルトロン社の中域周波数から高周波数の技術を取得した。
2001年、同社は世界初の43.5 GHz-4 Ch超高速誤り測定器を開発し、3G携帯電話に準拠したシグナリングテスタを開発した。その後、2003年には携帯端末用の認証試験コンフォーマンステストシステムの承認を取得した。
2005年にはネットテスト社(デンマークのネットワーク計測器、監視ソリューション・メーカー)を買収し、サービス・アシュアランスの機能を強化した。取得は新たな市場の門戸を開くこと(ネットワーク事業者に製品とサービスを提供)、および主要な装置事業の欧州販路を拡大することを目的としていた。全般的に、買収によって期待された効果は2010年3月期時点ではいまだ具現化しておらず、日本の通信事業者はサービス・アシュアランス(ネットワーク監視、パケットごとの請求など)を独自に行っている。また、海外の需要は、設備投資計画の縮小や業界の統合再編により当初の予想よりも減少してきている。
ニュース&トピックス
2011年10月
2011年10月27日、同社は2012年3月期第2四半期決算および通期の会社予想の上方修正を発表した。
2011年7月
2011年7月28日、同社は2012年3月期第1四半期決算を発表した。また、同時に2012年3月期上期および通期の業績予想ならびに配当予想の上方修正を発表した。
2011年4月
2011年4月27日、同社は2011年3月期通期決算を発表した。
2011年3月
2011年3月28日、同社は、3月11日に発生した「東日本大震災」による影響について、下記のようにコメントを発表した。
アンリツ株式会社郡山事業所・東北アンリツ株式会社(福島県郡山市)の状況
- すべての生産ラインが整備され、生産を開始した
- ロジスティック体制につきましても、郡山からの直接出荷・直接納入体制を整えた
- 水道・電気設備、ITシステムに関してもほぼ正常に稼動しており、すべての部門で従業員は通常業務に従事している
注:同社は、「東日本大震災」についてホームページ上にて別途開示している。
2011年3月23日、同社は、3月11日に発生した「東日本大震災」による影響について、下記のようにコメントを発表した。
郡山事業所・東北アンリツ社(福島県郡山市)の状況
- 地震発生前の生産完了品の出荷作業については、3月16日から開始している
- 同時に生産ラインの復旧点検活動に取り組み、製品生産ライン毎に整備が完了しつつある
2011年3月14日、同社は、3月11日に発生した「東日本大震災」による影響について、下記のようにコメントを発表した。
被害の状況
- 東北地方の生産拠点として、東北アンリツ株式会社(福島県郡山市)がある
- 当該設備は最上階の3階の天井部および配管等に一部損傷がありましたが、建物および付帯構築物は操業する上でとくに問題のない状態。被災後直ちに復旧に努めて、3月14日から部分的に操業を再開している
2011年3月2日、同社は株式の売出しの売出価格などが決定したと発表した。
- 売出価格:725円(2011年3月2日の終値に対するディスカウント率は3.07%)
2011年2月
2011年2月23日、同社が株式の売出しを発表した。詳細は以下の通りである。
売出株式の種類及び数:同社普通株式 19,200,000株
売出人:日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(住友信託銀行再信託分・日本電気株式会社退職給付信託口)
売出価格:未定
2011年1月
2011年1月27日、同社は2011年3月期第3四半期決算、通期業績予想の上方修正および通期配当予想の増額修正を発表した。
2010年10月
2010年10月27日、同社は2011年3月期第2四半期決算、通期業績予想の上方修正および通期配当予想の増額修正を発表した。
2010年9月
2010年9月8日、同社は2015年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行条件等が決定したと発表した。詳細は下記の通りである。
- 転換価額:629円(2010年9月7日の終値に対するアップ率は21.9%)
本社債が株式に転換されたとすると、発行済総株式数128,038千株(2010年6月30日現在)に対して12.42%の希薄化が生じる。比較的大きなインパクトだが、2010年9月7日の終値を21.9%上回る水準に転換価額が設定されるなど、投資家にとっての希薄化リスク回避のために一定の配慮がなされているとも解釈できよう。
2010年9月7日、同社は2015年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行を決議したと発表した。詳細は下記の通りである。
- 発行総額:10,000百万円
- 払込期日および発行日:2010年9月28日
- 発行価格:額面金額の102.5%
- 転換価額:未定
- 新株予約の行使期間:2010年10月12日から2015年9月14日の銀行営業終了時間まで
- 社債の利率:ゼロクーポン
- 満期償還:2015年9月28日に額面金額の100%で償還
- 繰上償還:2012年9月28日以降、同社普通株式の終値が20連続取引日にわたり、転換価額の130%以上であった場合、同社が本社債の所持人に事前通知した上で、残存する本社債の全部を額面金額の100%で繰上償還できるなど
同社は本社債発行によって調達した資金の使途として、次の①~③を挙げている。
①LTE市場をはじめとする成長分野への研究開発投資に4,000百万円
②事業基盤強化のための設備投資に2,000百万円
③残りは有利子負債の返済に充当
なお、本社債発行によって金利負担軽減の効果が見込まれるが、同社では、当該効果が業績に与える影響は軽微であるとしている。
トップ経営者
同社は2010年4月1日付で代表取締役の異動を発表。新しく代表取締役社長に就任したのは橋本裕一氏である。橋本氏は名古屋工業大学工学部出身だが、同社においては主に経理畑の役職を経験している(1998年に経理部長に就任)。
橋本社長の略歴:
- 1998年4月 経理部長
- 2002年6月 取締役、執行役員兼務 経理部長委嘱
- 2004年4月 取締役、上席常務執行役員兼務 経理部長委嘱
- 2006年6月 取締役、専務執行役員
- 2007年6月 代表取締役、専務執行役員
- 2010年4月 代表取締役社長
従業員
同社の2011年3月期末時点の連結ベースの社員数は3,614名(単体825名)である。単体の社員の平均年齢は40.3歳、平均年収は653万円、平均勤続年数は16.5年である。
大株主
配当および株主優待
同社は中間および期末配当を実施しているが、株主優待制度はない。
IR活動
同社は4半期ごとの決算説明会を東京にて開催し、IR情報を日本語と英語の両方で管理している(説明会資料、財務諸表、年次報告書、決算発表会のウェブキャストなど)。


























