イエローハット(9882)
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2012年 5月 18日時点
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直近更新内容
概略
2012年5月11日、株式会社イエローハットは2012年3月期通期決算を発表した。
(決算短信へのリンクはこちら、2012年3月期通期決算項目へのリンクはこちら)
2012年5月8日、同社は2012年3月期の1株当たり期末配当予想を前回予想より2円増額の14円とし、年間配当予想を24円に修正した。
(リリース文へのリンクはこちら)
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直近業績動向
四半期実績推移
2012年3月期第通期決算実績
2012年5月11日、同社は2012年3月期通期決算を発表した。
売上高は前年比8.7%増の103,110百万円であった。同社は各種営業施策の実施や既存店の収益力強化、出店拡大による売上向上に努めた結果であるとコメントしている。
2012年3月期末の国内イエローハット店舗数は、直営店:26店舗、子会社運営店:103店舗、グループ企業運営店:401店舗の合計530店舗。海外店舗数は15店舗であった。また、他にも国内モンテカルロ店舗として、子会社:11店舗、グループ企業運営店4店舗の合計15店舗がある。
売上高の部門別内訳については、店舗譲渡により直営店舗数が減少、グループ企業運営店舗が増加した結果、卸売部門は前年比13.6%増の64, 186百万円、小売部門は同0.2%減の31,483百万円となった。
営業利益は前年比41.3%増の6,238百万円であった。上記増収効果に加え、販売管理費が前年比6.0%増に留まったことが寄与した格好である。経常利益は同38.5%増の7,188百万円、当期純利益は同80.2%増の5,244百万円であった。
2012年3月期第3四半期実績
2012年2月3日、同社は2012年3月期第3四半期決算を発表した。会社予想に変更はない。
第3四半期累計期間の売上高は前年比8.9%増の81,074百万円であった。同社は各種営業施策の実施や既存店の収益力強化、出店拡大による売上向上に努めた結果であるとコメントしている。
2012年3月期第3四半期末の国内店舗数は、直営店:26店舗、子会社運営店:93店舗、グループ企業運営店:397店舗の合計516店舗。海外店舗数は16店舗であった。2011年3月期末からの変化でいえば、国内店舗数は16店舗の純増(開店19店舗、閉店3店舗)、海外店舗数は1店舗の純減となる。国内で開店した19店舗のうち18店舗は全て居抜き物件である。
売上高の部門別内訳については、店舗譲渡により直営店舗数が減少、グループ企業運営店舗が増加した結果、卸売部門は前年比15.5%増の52,717百万円、小売部門は同2.1%減の22,938百万円となった。
営業利益は前年比46.3%増の5,265百万円であった。上記増収効果に加え、販売管理費が前年比1.3%増に留まったことが寄与した格好だ。
2012年3月期第2四半期実績
2011年11月4日、同社は2012年3月期第2四半期決算を発表した。同社は2011年11月2日に既に2012年3月期第2四半期累計期間および通期の会社予想の上方修正を発表している。
第2四半期累計期間の売上高は前年比10.6%増の48,344百万円であった。同社は各種営業施策の実施や既存店の収益力強化、出店拡大による売上向上に努めた結果であるとコメントしている。
2012年3月期第2四半期末の国内店舗数は、直営店:24店舗、子会社運営店:87店舗、グループ企業運営店:399店舗の合計510店舗。海外店舗数は16店舗であった。2011年3月期末からの変化でいえば、国内店舗数は10店舗の純増(開店12店舗、閉店2店舗)、海外店舗数は1店舗の純減となる。国内で開店した12店舗のうち11店舗は全て居抜き物件である。
営業利益は前年比101.7%増の2,935百万円であった。上記増収効果に加え、販売管理費が前年比0.7%減となったことが寄与した格好だ。
2012年3月期第1四半期実績
2011年8月4日、同社は2012年3月期第1四半期決算を発表した。
売上高は前年比12.3%増の23,619百万円であった。同社は各種営業施策の実施や既存店の収益力強化、出店拡大による売上向上に努めた結果であるとコメントしている。
イエローハットグループ(直営、子会社運営店、FC運営店)の店頭売上高を品目別にみると、タイヤや地デジ対応商品(地デジチューナー、地デジチューナー内蔵ナビゲーション等)が好調であったとのことであった。地デジ対応商品は2011年7月のアナログ放送終了に伴い需要が高まっている。
2012年3月期第1四半期末の国内店舗数は、直営店:23店舗、子会社運営店:85店舗、グループ企業運営店:395店舗の合計503店舗。海外店舗数は16店舗であった。2011年3月期末からの変化でいえば、国内店舗数は3店舗の純増(開店5店舗、閉店2店舗)、海外店舗数は1店舗の減少となる。国内で開店した5店舗のうち4店舗は全て居抜き物件である。
営業利益は前年同期の約3.2倍となる894百万円であった。上記増収効果に加え、販売管理費が前年比1.7%減となったことが寄与した格好だ。また、経常利益に関しては、貸倒引当金戻入額273百万円を営業外収益として計上していることもあり、前年同期の約3.3倍となる1,833百万円となった。
同社は2012年3月期上期および通期の会社予想を以下のように修正したが、クレジット関連手数料等の表示方法を変更したことに伴うものであるとのことであり、ファンダメンタルズに基づいた修正ではない。もっとも、2012年3月期第1四半期実績の2012年3月期上期会社予想に対する進捗率は売上高が50.3%だが、営業利益で81.2%、経常利益で101.7%と高い。
2012年3月期上期
- 売上高:46,997百万円(当初予想46,870百万円)
- 営業利益:1,610百万円(同1,483百万円)
- 経常利益:1,803百万円(据え置き)
- 純利益:1,015百万円(据え置き)
2012年3月期通期
- 売上高:100,307百万円(当初予想100,021百万円)
- 営業利益:4,822百万円(同4,536百万円)
- 経常利益:5,312百万円(据え置き)
- 純利益:2,974百万円(据え置き)
2011年3月期の実績
2011年5月12日、同社は2011年3月期決算を発表した(上表を参照)。(決算短信はここをクリック)また、同時に期末の配当を前回の配当予想8円から増配し、10円にすると発表した(年間配当は前回予想の16円から18円に)。
同社は2011年3月期の会社予想を2010年11月、2011年2月と2回上方修正した。2011年3月期実績は、売上高は若干計画未達であったものの、営業利益で12.3%会社予想を上回った。同社は各種施策への取り組みと経費コントロールの結果であるとコメントしている。東日本大震災に関しては、物流センターや一部の施設、店舗で被害が発生、災害損失引当金繰入を252百万円を特別損失として計上した(特別損失合計は2,669百万円)。もっとも、当期純利益は前年比76.6%増の2,910百万円となり、会社予想を上回った。
同社にとっての営業基盤であるイエローハットグループ(直営、子会社運営店、FC運営店)の店頭売上高は111,482百万円(前年比4.6%増)。主な品目別売上高をみると、タイヤ:前年比13%増、アルミホイール:前年比18%増、オーディオ・ビジュアル・コミュニケーション:前年比3%減、バッテリー:前年比12%増などとなっており、販売強化中の商品の売れ行きは全般的に好調であった。
2013年3月期の見通し
中長期展望
同社は中期経営計画を公表していないが、同社の今後の業績を占う上では、以下の3点をみていくことが重要であろう。
- 同社の施策(「経営戦略」を参照)
- 国内カー用品市場縮小の影響
- 国内カー用品市場における高シェアのチャネルのサービスステーション、カーディーラーなどの拠点減少の影響
仮に、カーディーラーとサービスステーションのカー用品売上高が2010年3月期のペース(サービスステーション:前年比10.7%減、カーディーラー:5.6%減)で減少していくと、2013年3月期までに約1,700億円、2015年3月期までに約2,680億円、両業態の売上高が減少する計算となる。一方、カー用品市場の縮小ペースは2000年3月期から2010年3月期までで年率4.4%であることを踏まえ、カーディーラーとサービスステーションの売上縮小による影響(カー用品市場の需給ギャップ)を計算すると2013年3月期で約560億円の需要超過、2015年3月期で約820億円の需要超過が発生することになる。簡単な試算だがこうした今後の需給ギャップをいかにして埋めるか(シェアアップするか)で同社の今後の売上高が決まることになるだろう(市場規模に関しては、「マーケット概略」を参照)。
ちなみに、野村證券株式会社・金融研究所が2011年5月20日付のレポートにおいて、同社の業績予想を2014年3月期まで提示している(2012年3月期予想:営業利益4,700百万円、当期純利益3,100百万円、2013年3月期予想:営業利益5,200百万円、当期純利益3,400百万円、2014年3月期予想:営業利益5,500百万円、当期純利益3,500百万円)。
事業内容
主要事業
カー用品等の卸売販売および一般消費者への小売販売、ならびに主にFC運営企業に店舗物件の転貸をしている。国内カー用品専門店では株式会社オートバックスセブン(東証1部:9832、以下オートバックス社)に次いで売上高ベースで業界第2位である。
カー用品等販売事業(2011年3月期売上構成比92.8%)
イエローハットグループの主力事業であり、自動車用部品およびカーアクセサリーの販売を行う。当該事業の売上高は、連結対象外のフランチャイズ(FC)企業向けの卸売、ホームセンターなど一般店向けの卸売、連結子会社による小売、イエローハット単体直営店による小売と4つに区分される(下図参照)。卸売と小売に分ければ、カー用品販売事業の売上構成比は卸売部門が64.1%、小売部門が35.8%となる(2011年3月期)。
一方、同社の営業基盤をみるうえでは、会計上の売上高とは別にイエローハットグループ(直営、子会社運営店舗、FC運営店舗)の店頭売上高をみておく必要がある。
- 商品、サービス
2010年3月期で店頭売上高の売上構成比率は、タイヤ25%、オーディオ・ビジュアル24%、サービス(タイヤ交換工賃、オイル交換工賃、車検など)14%、カーアクセサリー7%、オイル6%、ケミカル5%、バッテリー4%、ホイール4%、その他11%となっている。
タイヤ、消耗品(バッテリー、オイルなど)は売上高粗利益率が高く、オーディオ・ビジュアル商品のような耐久消費財は売上高粗利益率が低いとSR社は認識している。
競合先と比較すれば、サービスステーション、カーディーラーなどよりも商品の仕入価格は低い傾向にあるようだ。これは同社の取扱量が大きいためである。また、メーカー系タイヤショップとの比較では、当然ながら多くのメーカーの商品を扱えるのが特徴といえる。
業界慣行で耐久消費財(オーディオ・ビジュアル商品等)以外は、新商品との商品交換ができるケースがあるため、在庫滞留のリスクは他の業種との比較では相対的に低いといえるだろう。
- 店舗
「イエローハット」は、小規模な店舗を全国に展開しており、売場面積150坪未満の店舗が約半数、全体の約8割が売場面積200坪未満の店舗である。商圏は3~5km、商圏人口3万人~、商品アイテム数は約7000をベースに売場面積にあわせアイテム数を圧縮、地域密着型の店舗運営が基本スタイルである。
2011年3月末時点の店舗数は国内500店、海外17店である。国内店舗の運営主体別の内訳は、単体直営店が29店舗、子会社運営店が89店舗、FC企業運営店(連結外FC法人運営)が382店舗となる(詳細は下図参照)。
- FC契約
株式会社イエローハット(フランチャイザー)とFC(フランチャイジー)は、イエローハットグループ店契約を締結している。株式会社イエローハットはFCに対して、商標および経営ノウハウを提供するほか、同一企業イメージで事業を行う権利を与えている。一方、FCはイエローハット社より商品を仕入れることとなっている。SR社の理解では、FCのメリットとして他に、イエローハット社が大量に仕入を行うことによるバイイングパワーを享受できることや、本部からの各種情報、店舗運営指導や同チェーン比較情報、その他多くのメリットを享受できるほか、広告宣伝をイエローハット社が行うなどの販売支援が挙げられる。
一般的なフランチャイズ契約にみられるようなロイヤリティの徴収はしていない。そのため、単体直営店、子会社運営店、FC企業運営店の間の相違点は、運営主体の違い、およびFC企業運営店では決められたフォーマットの他に自動車を販売するなど一定の裁量が認められているといった点などに限られる。歴史的には直営店がFC企業運営店の空白地帯を埋める役割を果たしてきたが、全国にFC企業運営店の店舗網が敷かれた現状では、その役割も低下している。
- 出店および退店
退店の基準として、店舗段階で赤字が何年続いたらといった「退店基準書」は存在するが、基本的には店舗の運営企業交替による、店舗の再活性化をめざすケースが多く、最終的に退店するのは手段が尽きたときになるようだ。
同社の店舗は小商圏での出店にも適しており、サービスステーション、カーディーラーなどが撤退した後の空白地帯にスピーディに展開できるという側面もあるといえよう。
- 海外事業
中国、台湾では合弁会社を通じた店舗運営(直営およびFC、FCは日本と同様の契約)を行っており、業績は主に同社の持分法投資損益に反映される。韓国、サウジアラビア、アラブ首長国連邦においてはフランチャイズ契約を締結しており、実際に投資は行っていない。売上高は契約締結時の手数料、その後はロイヤリティ(日本とは異なる)、卸売によって発生することになる。海外事業の収益として明確に開示されているわけではないが、2011年3月期で持分法投資利益は31百万円であり、影響は小さいものと推測される。
- オートバックス社との比較
オートバックス社と同社を比較すると、オートバックス社の方が1店舗当たりの売場面積が広く、1店舗当たりの売上高も大きい。また、首都圏近郊、関西地区などでの店舗展開が多いといった特徴がある。一方、同社店舗は相対的に小規模であり、地方都市のような小商圏をターゲットとしたフォーマットになっているということがいえる。こうした違いが生まれた背景として、オートバックス社の方が小売の展開が早く、首都圏、近畿などにスピーディに出店を行ったこと、オートバックス社がFCからロイヤリティ収入を得ていることもあって、大型店を出店させて売上高を稼ぐインセンティブが働きやすいといったことなどがあるとSR社では推測している。
SR社は、イエローハット社の店舗の相対的なメリットとしては、アイテム数を絞り込んでいることによる抵抗力や小商圏をターゲットとした店舗運営を行ってきた実績にあると考える。アイテム数をタイヤ、消耗品などに絞り込むことは、消費者の買い控えを受けやすい嗜好品の販売不振影響、すなわち市場縮小の影響を受けにくくなるというメリットがあるといえるだろう。また、小商圏をターゲットとした店舗運営を実施してきた経験は、今後、カーディーラーとサービスステーションが撤退した後の空白地帯に素早く出店することを可能としよう。オートバックス社も小型・低コスト店の開発を進めようとしているが、出店計画に遅れが生じるなど今のところその試みがうまくいっているとはいい難い(2011年8月時点)。
賃貸不動産事業(2011年3月期売上構成比7.2%)
同社がFC運営企業に対して、店舗用の土地、建物を賃貸することによって得られる売上高、利益がこの事業に計上される。
SW(Strengths, Weaknesses)分析
強み(Strengths)
- しがらみにとらわれない経営:創業者およびその一族が経営から退いた後も、実質的には経営に関与し、会社のガバナンスの混乱を生じさせるというのは良くあるケースだ。また、いわゆるオーナー企業では「成長の追求」と一族内での「相続」、「財産保全」との間でジレンマに直面するケースが見受けられる。しかし、同社は創業者とその一族が円満に経営から退いており、同社の経営には関与していない。同社は現経営陣が自分達の裁量で経営を行え、利益の極大化を追求できる状況にあるとSR社ではみている。そのため、「必要十分条件」のうちの「必要条件」は整っているといえるだろう。あとの「十分条件」は現経営陣の「手腕」である。
- 現経営陣による施策と実績:2008年10月に就任した堀江社長の下、業績はV字回復を遂げている。これまでの実績が今後の成功を必ずしも保証するわけではないが、少なくともこれまでのところ、施策が正しかったということはいえるだろう。また、就任以降、数々の施策を矢継ぎ早に実施してきており、経営にスピード感があるとSR社では考える。
- 残存者利益を享受し得る体質:縮小していく市場の中で、成長していくには残存者メリットを享受する必要がある。同社は全国展開するカー用品大手として、仕入等の側面からスケールメリットを享受し易い状況にあるとSR社は考える。また、小商圏をターゲットとした店舗運営のノウハウを蓄積している点も今後の出店を考えると有利な要素といえよう。
弱み(Weaknesses)
- 国内市場の縮小傾向:国内カー用品市場は縮小傾向にある。売上を拡大させるには、販売拠点の減少傾向にあるカーディーラーやサービスステーションといった他チャネルや競合他社からシェアを奪うしかない状況にある。
- FCに対する限定的な関与:同社はFC店にかなりの程度、店舗運営の裁量を委ねているものとSR社では認識している。この点はFCのオーナーのモチベーションを高めるという点で強みになり得る反面、店舗ネットワークの連携、調和を図ることが難しいということも意味しよう。仮に、店舗ネットワークのコントロールに長けた競合他社が、同社の強い地域に組織的に進出してきた際、営業基盤が侵食される懸念も残るとSR社は考える(2011年5月時点では現実的というより、あくまで理論上の懸念材料である)。
- 自動車保有台数の多い地域での弱さ:同社の店舗は南関東や近畿といった自動車保有台数の多い地域に相対的に少ない。2011年3月時点で、日本全国の乗用車保有比率の21.1%を南関東が、16.9%を近畿・四国が占める(出所:自動車検査登録情報協会)。一方、2011年3月期末で同社の国内店舗網で南関東が占める比率は9.8%、近畿・四国の占める比率が10.8%に留まる。SR社は、同社がこうした地域にあまり出店をしてこなかった理由として、競合他社がより早い時期にこうした大規模市場に合ったやり方で店舗展開をドミナント化させたためと理解している。ただし、今後、同社がシェアアップを望むならば、南関東や近畿などでカーディーラーやサービスステーションの拠点の減少から出店余地を探る可能性もある。
コスト分析
同社の販売管理費の推移としての特徴は2点ある。第一に2008年3月期までは売上高販売管理費率が上昇傾向にあったが、2008年3月期をピークに低下傾向にあること、2つ目は2009年3月期から2011年3月期にかけてその低下率が大きい点である。これは、同社の経営体制に負うところが大きい。つまり、2005年3月期まで同社は各地域の子会社を軸とした「地方分権的」なグループ運営を行っていたが、2006年3月期に一気に「中央集権的」なグループ運営へと移行したのである。2005年3月期には22社あったイエローハット店舗運営子会社が2006年3月期には1社に集約された。その結果生じたのが、人件費を始めとする経費の増加であった。グループ運営上、地域に応じて定まっていた給与が高い水準に収斂したほか、オペレーション上の非効率性が発生したためである。その後、2008年10月に就任した堀江社長は、再び「地方分権的」なグループ運営体制に戻したほか、直営店のFC運営企業への譲渡を進めた。その結果、2011年3月期まで、売上高販売管理費率は大幅に低下している。
グループ会社
イエローハットグループは、2011年3月末現在、株式会社イエローハットおよび子会社20社(国内19社、国外1社)、関連会社5社(国内3社、海外2社)で構成される。
株式会社イエローハット
販売子会社、関連会社およびグループ店などに対し、カー用品等の卸売販売を行うほか、イエローハット社の直営店舗において小売販売を行っている。また、賃貸不動産事業を行っている。
市場とバリューチェーン
マーケット概略
2010年3月期の国内カー用品関連業界の市場規模(車検整備など自動車整備業を除く、Web経由は含まない)は約1.8兆円(出所:「A・M NETWORK」、以下の市場データも同様)。2000年3月期の同市場規模が約2.7兆円であったことを踏まえると年間平均4.4%で縮小してきたということになる。背景として、景気低迷に加え、自動車保有台数の頭打ち、車を趣味とする消費者(いわゆる「クルマ好き」)の減少傾向などが挙げられる。
同社はこうしたカー用品市場の縮小に対抗すべく、2000年代に入って、介護事業やホームセンター、自動車販売などの多角化を行い別の分野で収益を伸ばそうとしたが失敗に終わっている。経営体制を一新し、同社が現在進めているのは、カー用品事業とそれに付随する関連事業へ資源を集中し、シェアアップを狙う戦略だ。また、タイヤをはじめとする消耗品の販売を強化することにより、新車販売のような年間の車販売(フロー)ではなく、乗用車保有台数(ストック)に依存しようとしている
一方、同社にとっては追い風も吹いている。第一に、カー用品市場に占める他業態のシェアが縮小にあるという点である。具体的には、2011年3月期のカー用品市場の38.1%をカーディーラーが、11.2%をサービスステーションが占める。カーディーラーは2008年のリーマンショックとその後の国内新車販売の縮小傾向を受けて淘汰が進みつつある(2004年3月末:国内約16,700店、2011年3月末:同15,340店)。また、サービスステーションに関しても、従来からの過当競争に近年の原油高・低燃費化傾向が拍車をかけ、収益性が悪化した結果、急速に淘汰が進んでいる(2000年3月期が国内約53,000店、2004年3月が同約41,000店、2011年3月期が同約29,001店)。こうした他業態シェアの縮小傾向が今後も続けば、カー用品市場における残存者にメリットをもたらすことになるだろう。
第二に、同社のようなカーショップ内においても淘汰が進みつつある。カーショップ業界においては、同社やオートバックス社のようなナショナルチェーンの他に、ローカルチェーン、独立系ショップが存在するが、ローカルチェーン、独立系ショップは年々シェアが縮小傾向にある(上図参照)。また、比較的規模の大きいカーショップ内でも優劣が明確化しつつある模様だ。実際、同社は2009年3月期にアイ・シー・エス社より自動車用品販売店「オートテック」および「ピット100」の合計10店舗を譲り受けている。同社は今後もこうした同業他社の店舗譲り受けによる拡大の可能性については否定をしていない。
参入障壁
カー用品販売は誰でも始められる事業である。しかし、市場の競争が激しく成熟度も高いことから、参入企業は相当の差別化要素を持ち合わせている必要があるだろう。言い換えれば、参入するのは容易だが、市場に残存するのは難しい。そのため、SR社は実際の新規参入はほとんどないと考える。
競合環境
カー用品関連業界に多数の競合他社が存在する。同社の他には、オートバックス社、ジェームス社(非上場、トヨタ自動車系)、ドライバースタンド社(非上場)、オートウェーブ社(JASDAQ:2666)、オートアールズ社(非上場)、モンテカルロ(JASDAQ:7569)などだ。ただし、同社とオートバックス社がカー用品業界のシェアの大半を占めており、その意味で同社の直接の競合先はオートバックス社といえるだろう。
また、カー用品関連業界内だけではなく、タイヤショップ、ホームセンター、サービスステーション、カーディーラーなどとも競合している。
その他、インターネット経由によるカー用品販売も一定の比率を占めており、同社は約3割程度がインターネット経由であると推定している。SR社はカー用品(ここでは、タイヤ、オイル、カーエレクトロニクス、アクセサリーなど)をインターネット経由で購入するのは、一部の熱狂的なクルマ好きに限られるだろうと考える。なぜなら、カー用品は購入後、それを取り付ける作業が生じる。しかし、その取りつけ作業があるがゆえに、インターネットの主な特長である、利便性やコスト節減などが活かされないからだ。例えば、インターネット経由での購入者はカー用品の取り付けのために、近くのカー用品店や修理工場などにわざわざタイヤを取り付けに行く手間が生じる。また、取り付けには追加で費用が生じるだろう。こうした点を踏まえ、SR社では、カー用品がインターネット経由で非常に魅力的な値段で購入でき、手頃な価格で容易に取りつけを行うようなことができない限り、インターネット経由のカー用品販売シェアが向上し、同社の脅威になる可能性は低いとみている。
経営戦略
同社は中期経営計画を社外向けに公表していない。ただし、同社は自らの向かうべき方向性として以下4項目の基本方針を示している。
- 「カー用品等販売事業への資源集中」・・・店舗数の増加、卸売の強化、粗利率の改善、タイヤ販売強化、消耗品(バッテリー、オイル)の販売強化、地デジ・ナビの注力など
- 「車検サービス事業の拡充」・・・車検サービス提供体制の拡充、車検の獲得強化、ピットサービス収益拡大などが主など
- 「経営効率の向上」・・・店舗運営の改革、資産の有効活用、組織体制の改革、財務体質の強化、海外事業の収益力改善など
- 「活力ある会社づくり」・・・社内コミュニケーションの改善など
「カー用品等販売事業への資源集中」に関し、同社は既に2010年3月期までに経営資源をカー用品等販売事業に集約している。今後は、店舗数の増加やグループ以外の一般向けの卸売の強化、タイヤなど消耗品の販売、2つ目の項目である「車検サービスの拡充」などを通じて、利益拡大をめざしている。
店舗数の拡大については、カーディーラーなどが撤退した後の居抜き物件(閉店した内装設備付きの店舗)への出店や店舗の譲り受けを中心に2012年3月期より年間30店舗程度をコンスタントに出店していくものと思われる。
一般向けの卸売に関し、同社は中長期的な目標として100億円規模を掲げている。2011年3月期のホームセンターのカー用品売上高は975億円であり、同社はホームセンターなどに対して卸売のシェアアップをめざす考えのようだ。 タイヤ、消耗品の販売に関しては、粗利益率が他の商品より高いほか、新車販売台数のような振れの大きい年間の車販売(フロー)依存型ではなく、乗用車保有台数(ストック)依存型に収益体質を変化させる狙いがあるようだ。また、カーディーラーやサービスステーションなどの他業態が急激に縮小していく一方、こうした商品・サービスに対するニーズが急激に縮小するわけではないため、残存者メリットを享受する狙いがあるものとSR社では理解している。
「経営効率の向上」としては、店舗インフラ活用によるレンタカー事業の推進など、資産の有効活用を進めている。
海外事業については、本格的な車社会化(モータリゼーション)に突入しようとしている中国については、出店の加速など追加投資もありえそうだ。その他の国においては、リスクをあまり取らず、慎重に事業展開を図っていく方針である。
その他情報
沿革
同社は1961年、カー用品の卸売業として鍵山秀三郎氏によって創業された。創業時の名称はローヤル。その後、1982年にイエローハットグループ店第1号を開店し、1990年代にはグループの店舗数を一気に拡大(1992年12月:200店舗、1995年4月:300店舗、1997年3月:400店舗)。1997年には東証1部上場を果たす。この上場を機に株式社イエローハットに商号を変更した。2000年代半ばより多角化や販売子会社の一本化を行うも失敗に終わり、2008年3月期、2009年3月期と2期連続で最終赤字に転落。2008年10月に就任した堀江社長の下、再び販売子会社の地域分散化や本業への経営資源の集中を進め現在に至る。
ニュース&トピックス
2012年2月
2012年2月3日、同社は2012年3月期第3四半期決算を発表した。
2011年12月
2011年12月2日、同社は株式会社モンテカルロ(JASDAQ7569)を株式交換によって100%子会社化すると発表した。
2011年12月2日開催の両社の取締役会において、以下1)から3)を決議したとのことである。
1)同社によるモンテカルロ社優先株式の取得
2)当該優先株式の普通株式への転換を通じたモンテカルロ社の子会社化
3)同社を株式交換完全親会社、モンテカルロを株式交換完全子会社とし、その対価としてモンテカルロの株主に対して同社普通株式を交付する株式交換を行う
モンテカルロ社は自動車関連製品の直営店で運営及び卸売事業を営む。中国地方を中心としたエリアに強みを有しているものの、2000年3月期をピークに売上高は減少傾向が続いており、近年の景気低迷もあって企業収益が圧迫される状態が続いていた。
モンテカルロ社の2011年3月期の連結ベースの経営成績及び財政状態は以下。
- 売上高:8,956百万円
- 営業利益:△106百万円
- 経常利益:△167百万円
- 当期純利益:△280百万円
- 総資産:6,828百万円
- 純資産:424百万円
- 有利子負債:5,257百万円
こうした状況下、同社とモンテカルロ社はモンテカルロ社が既存店舗の一部及び有利子負債の一部を切り離すことを前提に、モンテカルロ社を同社の完全子会社とし、モンテカルロ社にイエローハットの有する経営ノウハウ、資金力を導入することにしたというのが子会社化の目的のようだ。
今後の主な予定
2011年12月5日:モンテカルロ社優先株式の同社への譲渡
2011年12月12日:モンテカルロ社優先株式の普通株式への転換
2012年2月27日:モンテカルロ社株式上場廃止日
2012年3月1日:本株式交換の効力発生日
2012年3月期業績に与える影響については、精査中のため、判明次第公表するとのことである。
2011年11月
2011年11月21日、同社は出光興産株式会社(東証1部5019)と自動車用品の卸販売、店舗販売および商品開発にかかわる提携協議に関して基本合意に至ったと発表した。また、本提携を強固なものとすべく、出光興産社で同社の株式の取得も検討する(取得方法は未定)とのことである。
2011年11月4日、同社は2012年3月期第2四半期決算を発表した。
2011年11月2日、同社は2012年3月期第2四半期累計期間および通期の会社予想の上方修正を発表した。また、期末配当予想の増額修正を発表した。
2012年3月期第2四半期累計期間会社予想
- 売上高:48,344百万円(前回予想46,997百万円)
- 営業利益:2,935百万円(同1,610百万円)
- 経常利益:3,536百万円(同1,803百万円)
- 純利益:2,660百万円(同1,015百万円)
2012年3月期通期会社予想
- 売上高:101,193百万円(前回予想100,307百万円)
- 営業利益:6,151百万円(同4,822百万円)
- 経常利益:7,047百万円(同5,312百万円)
- 純利益:4,502百万円(同2,974百万円)
同社は業績予想の上方修正要因について、第2四半期累計期間の実績が、アナログ放送終了に伴う地デジ対応ナビゲーション需要や震災復興のための需要増などからの売上高が予想を上回る見込みであるほか、経費コントロールに努めた結果であるとコメントしている。また、会社予想を鑑み、期末配当予想を1株当たり12円(前回予想は同10円)、年間配当予想を同22円(前回予想は同20円)に増額修正したと述べている。
2011年8月
2011年8月4日、同社は2012年3月期第1四半期決算を発表した。
大株主
有限会社幸栄企画および有限会社中原商事は前社長の鍵山幸一郎氏が社長を務める不動産管理会社。鍵山幸一郎氏個人名義と合算すれば直接および間接的な保有比率は20.2%である。
堀江康生社長からのコメント
社長プロフィール
1952年京都市生まれ。1976年にイエローハット入社。取締役営業管理部長、常務取締役などを経て2008年10月から現職。
2010年11月16日にSR社は堀江社長にインタビューを行った。その際の主な堀江社長のコメントは以下。
社長就任以降
- 就任してから実施した施策で業績改善に一番効果があったのは、一度1つになった店舗運営子会社を再び分割したこと
- 活力ある会社にしようと心掛けてきた。社員のモチベーションは高いと思う
今後の成長
- 残存者メリットを享受できる時代にどこかで突入するだろう。タイヤ交換、車検などは当社に来るようになる。当社には成長余地があるが、オート部品関連ということでその点が評価されていない
- 売上高は増加していないが、小売部門を縮小させてきたためである。小売部門の売上ウェイトも縮小し、今後は売上高も増加するだろう。売上は現状路線でも伸びると思うが、今後の施策次第では伸び率が高まると考える。2、3年後の成長へ向けてストーリーは色々考えている
- 競争相手は同業他社というより、地方のタイヤショップ、サービスステーション、カーディーラーなど。カーディーラー、サービスステーションなどより当社の商品・サービスは価格が安い
- 当社は、小型店で全国展開をしている。顧客に必要なものを売ろう、顧客に気軽にきてもらえる店にしようという考え。地方で消耗品を中心に取り扱っており、若者の車離れの影響も少ない
- サービスステーションの減少は今後も続くだろう。数が多すぎる上に、車の燃費がどんどんよくなっている。また、カーディーラーも新車販売台数の減少と共に販売拠点数が減って行くだろう
創業家
- 現在も大株主だが、支配権はなく経営からは完全に離れている
- 当社は創業者一族が円満に経営から退いた非常に珍しい会社
株価
- 現在(2010年11月16日)の当社の評価は低いと思っている
- 自分でも従業員持株会などを通じて当社株式を保有している。社長として株式を持っていないと話にならない
- 中長期的な経営計画は公表していないが、株主を意識した内容となっている
配当
- 下げるつもりはない
- 従来は配当利回り2%という基準が自身の念頭にあったが、現在は環境が変わっている。そのため、この基準に関しては再考の余地がある
(注)2011年5月12日発表の平成23年3月期決算短信にて以下の配当方針を記載している(注)
当社は、原則、連結純資産配当率(DOE)を基準として安定的な配当の継続を重視するとともに、各事業年度の連結業績などを勘案しながら利益配分を行っていくことを基本方針としております。 また、連結純資産配当率(DOE)は1.2%を基準としております。














