クリーク・アンド・リバー社(4763)
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直近更新内容
概略
2012年4月5日、株式会社クリーク・アンド・リバー社は2012年2月期通期決算を発表した。
(決算短信へのリンクこちら、2012年2月期通期決算項目へのリンクはこちら)
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業績動向
2012年2月期通期実績
2012年4月5日、同社は2012年2月期通期決算を発表した。
2012年2月期通期の売上高は15,783百万円(前年比11.6%増)、営業利益は675百万円(同135.3%増)、経常利益は729百万円(同143.0%増)、当期純利益は254百万円(同185.1%増)となった。
同社は、2012年2月期中に2度、通期会社予想の上方修正を行った。直前の会社予想(2012年1月12日公表)と実績を比較すると、売上高はほぼ予想通りだが、営業利益は9.0%会社予想を上回って着地した。
2011年2月期との比較では、クリエイティブ分野(日本、韓国)、医療分野が増収増益となり、業績を牽引した格好だ。東日本大震災の影響による株式市場の低迷で、保有有価証券の価格が著しく下落したものについて、減損処理を行い、投資有価証券評価損51百万円を特別損失として計上したため(特別損失合計は113百万円)、当期純利益は253百万円と過去最高水準(2008年2月期263百万円)にはわずかに届かなかった。しかし、売上高、営業利益、経常利益に関しては過去最高水準となった。
同社のコメントに基づけば、分野別の概況は以下の通りであった。
- クリエイティブ分野(日本・韓国)(売上高:12,026百万円(前年比8.1%増)、営業利益:496百万円(同119.6%増)
国内
エンタテインメント分野(ゲーム・アミューズメント関連、TV・映像関連等)、ビジネス分野(WEB、広告・出版等)ともに増収増益となった。
ゲーム・アミューズメント関連(クリーク・アンド・リバー社単体売上構成比約20%)では、オンライン/ソーシャルゲーム市場が拡大する中、同社に対する人材需要も旺盛となり、売上が大幅に増加した。また、TV・映像関連(同構成比約30%)においては、TV局の番組制作の内製化傾向が強まる中、(同社に登録している)クリエイターの地上波テレビ番組での実績やスキル向上などが評価され、同社へのニーズが高まっているとのことだ。同社は、TV・映像関連について、今後もこうした傾向が続き、安定的な成長が続くとみている。
ビジネス分野においては、主に企業の人材需要の回復傾向とともに各種求人広告サイト等のコンテンツ制作需要が増加、収益改善につながった模様だ。同社によれば、リーマンショック後の業績悪化局面では、こうした求人広告サイト等からのコンテンツ制作需要が落ち込んだものの、その後緩やかに回復傾向にあるとのことだ。また、電子書籍市場において、2011年7月より電子書籍制作の最適化サービスを開始、出版社等からの旺盛なニーズに対応している模様。また、電子書籍配信の大手プラットフォームより電子化及び取次契約を受託したとのことである。同社は、この「プラットフォーム」の名称を明らかにしていない。
韓国
韓国メディア法改正(2011年7月)によって、韓国国内で新聞社と通信社が放送事業に進出することが可能となったことからTV局が増加(6局増加)。この機会を捉えることによって、TV局向けのクリエイターの派遣を伸長させることができたとのことである。もっとも、外国為替市場において、ウォン安・円高傾向にあったため、クリエイティブ分野(韓国)の売上高、営業利益は現地通貨ベースではより高い伸びを示しているものの、円換算ではよりマイルドな伸びに留まった。
- 医療分野(売上高:2,154百万円(前年比9.8%増)、営業利益:231百万円(同71.9%増))
同社は、東日本大震災の影響を一部事業活動において受けたものの、全国各地での慢性的な医師不足を背景に、各医療機関からの医師へのニーズは引き続き高く、医師の紹介事業が順調に伸長したとしている。また、医師向け転職情報サイト「MediGate(メディゲート)」や臨床研修病院情報検索サイト「レジナビ」等、医療業界の情報・人材交流の場を提供する事業も順調に成長し、収益に貢献しているとのことだ。同社は、医療分野については今後もこうした状況が継続し、安定的な成長が可能とみている。
ちなみに、同社は2009年12月より看護師を対象としたエージェンシー事業(看護師事業)を開始した。医療分野に関しては、2011年2月期に当該事業の開始に伴う広告宣伝費や人員増での営業利益水準が押し下げられた側面もある。2012年2月期に関しても、看護師事業の黒字化は実現していないが、上記医師紹介事業の伸長等もあって、医療分野の収益は大幅に改善した模様だ。
- IT・法曹・会計他(売上高:1,721百万円(前年比27.0%増)、営業損失64百万円(前年は営業利益12百万円)
IT分野を始め、各分野において売上高が増加した。同社によれば、IT分野では、2011年2月期に組成・開始したビジュアライゼーション事業における3DCGによる可視化ソリューションの技術が高く評価され、公的機関を中心に受注が進んだとのことだ。営業利益は、IT分野で震災の影響による納品の遅延等の影響から、第3四半期累計期間までにおいては赤字であったが、通期では黒字化、増益を達成した格好だ(新規事業も当該分野に含まれるため、上記数値は営業損失の計上となっている)。営業利益の内訳は、IT分野、会計分野がほぼ同程度であり、法曹分野がわずかながらも営業損失の状態とのことである。ちなみに、震災影響による納品の遅延影響は一部残存しており、2013年2月期に持ち越しとなった面もあるようだ。
2012年2月期第3四半期実績
2012年1月12日、同社は2012年2月期第3四半期の決算を発表した。また、通期会社予想の上方修正を発表した。
2012年2月期第3四半期累計期間の売上高は前年比13.0%増の11,786百万円、営業利益は前年同期の約3.1倍の水準となる611百万円であった。クリエイティブ分野(日本)、医療分野が増収増益となったことが寄与している。四半期純利益は272百万円に留まったが、これは東日本大震災の影響による株式市場の低迷で、保有有価証券の価格が著しく下落したものについて、減損処理を行い、投資有価証券評価損51百万円を特別損失として計上したためである(特別損失合計は72百万円)。ただし、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益いずれも第3四半期累計期間において過去最高の業績となった。
2012年2月期第3四半期会計期間は同社想定以上の実績であったと同社は述べている。IT分野が、震災影響もあって納期が後ずれした影響から、IT・法曹・会計が営業損失となったが、それ以外は順調であった模様だ。
クリエイティブ分野(日本)の中でも特に、ゲーム会社(ゲームの売上構成は同分野の約20%を占める)の同社に対する人材需要が旺盛であったとのことである。これは、ゲーム会社の需要が増加しているというよりは、同社のシェア向上によるところが大きいようだ。また、TV局等の映像関係の人材需要もTV局の番組制作の内製化傾向等から、引き続き底堅い推移となっているものとみられる。
クリエイティブ分野(韓国)は、「韓国メディア法改正(2011年7月、新聞社と通信社が放送事業に進出することが可能となった)」によるTV局増加(6局増加)の機会を捉え、TV向けの人材派遣を伸長させることができたとのことである。クリエイティブ分野(韓国)は現地通貨ベースではより高い伸びを示しているものの、ウォン安傾向を受けて、円換算ではよりマイルドな伸びに留まっている。
IT分野では、3DCGによる可視化ソリューションの技術が高く評価され、上記、震災影響による納品の遅延等の影響はあるものの、公的機関からの受注が進んでいるとのことである。ちなみに、期ズレ案件については、予定通りであれば、2月に納品され、それによって第4四半期に同分野は営業黒字に転換すると同社は想定している(同社によれば、2月に当該案件が間に合わなくても、会社予想は達成可能)。
通期会社予想については、下記の通り、上方修正された。
- 売上高:15,500百万円(前回予想:15,000百万円)
- 営業利益:620百万円(同550百万円)
- 経常利益:670百万円(同550百万円)
- 当期純利益:250百万円(同220百万円)
同社は、修正の要因について、第3四半期累計期間の利益実績が通期会社予想を上回ることとなったためと述べている。なお、新たな通期会社予想の利益項目は、季節要因(医療分野は第4四半期は例年営業赤字)及びグループ会社の移転・拠点集約に要する費用を鑑み、第3四半期累計期間の実績とほぼ同額としたとのことである。
2012年2月期第2四半期実績
2011年10月6日、同社は2012年2月期第2四半期の決算を発表した。
2012年2月期第2四半期累計期間の売上高は前年比15.1%増の7,782百万円、営業利益は前年同期の約3.2倍の水準となる405百万円であった。クリエイティブ分野(日本)、医療分野が増収増益となったことが寄与している。
四半期純利益は172百万円に留まったが、これは東日本大震災の影響による株式市場の低迷で、保有有価証券の価格が著しく下落したものについて、減損処理を行い、投資有価証券評価損51百万円を特別損失として計上したためである(特別損失合計は58百万円)。
同社はクリエイティブ分野(日本)が好調であった要因として、以下の点を指摘している。
- TV局の番組制作の内製化傾向
- TV局向けのビジネスに関して、同社に登録しているクリエイターのスキルが向上し、ディレクターとして番組そのものを請け負える能力水準となってきたこと
- ゲーム会社向け、一般事業会社向けのビジネスの需要も堅調であったこと
一般的に、昨今の厳しい環境下でTV局が番組制作を外部のプロダクションに委託するよりも自ら内製化する傾向を強めているといわれている。その内製化に際して、同社に登録しているようなクリエイターのような外部のプロフェッショナル人材に対する派遣需要が高まっているとのではないかと同社はみている(実際にはTV局にクリエイターが常駐している場合が多い)。
また、一般事業会社向けのビジネスに関しては、リーマンショック直後に需要が急減したが、その後の回復過程にあるとのことだ。もっとも、同ビジネスは競合も厳しいとのことで、同社のクリエイターしか有しない技術を確立することが今後の課題であるとしている。
医療分野もやはり好調であったが、同社は同分野を順調な成長を遂げており、今後も成長余地があるとみている。
トピックス
中国のテレビ通販市場に向けた取り組み
2011年8月に同社は北京視易購伝媒科技有限公司と中国国内のテレビ通販における日本企業及び日本商品に関する独占販売契約を締結した。視易購伝媒科技は、(中国全土をカバーすることが可能となる)デジタルテレビを通じたテレビ通販としては初の試みとなる「電視商城(テレビモール)」の運営を行うことを目的に2011年6月に設立されたChina Digital TV Holding Co., Ltd.の子会社である。
視易購伝媒科技は2011年9月からテストマーケティングを行い、2011年10月より上海地域約150万世帯に向けて通販事業を展開する予定となっている。さらに対象エリアを拡大することにより、2011年度中に500万世帯、2012年度には1,000万世帯への展開を予定。さらに、中国においてデジタル放送への移行が完了する2015年度には5,000万世帯に展開することを目標としている。
同社は、上記提携により、「電視商城」内に設けられた日本商品専門コーナーにおける日本企業及び日本商品に関する独占窓口権を有している。同社としては当初、既に中国に進出している日系企業に対して、新たな販路として提案。中長期的に、新たに中国への進出を検討する日本企業に対しても提案していきたいとしている。
日本貿易振興機構(JETRO)によれば、2009年度の中国テレビ通販市場規模は3,000億円。ユーザー層の特徴としては消費能力の高い20歳から40歳、主要商品は中級・高級品とのことだ。中国国内で先に通販が拡大したネット通販と比較すると、テレビ通販やや対象がミドルからハイエンドよりとなっている。ちなみに、同社は2020年までにはテレビ通販市場が6兆円を突破するとの専門家の見通しを紹介している。
2012年2月期第1四半期実績
2011年7月7日、同社は2012年2月期第1四半期の決算を発表した。
売上高は前年比16.8%増の3,717百万円、営業利益は37百万円(前年同期は営業損失116百万円)であった。クリエイティブ分野(日本)を始め、全分野が増収増益となった。売上高および営業利益は第1四半期としては過去最高水準であった。
四半期純利益は1百万円(前年同期は四半期純損失76百万円)に留まったが、これは東日本大震災の影響による株式市場の低迷で、保有有価証券の価格が著しく下落したものについて、減損処理を行い、投資有価証券評価損51百万円を特別損失として計上したためである(特別損失合計は57百万円)。
同社のコメントに基づく分野別の概況は以下の通りである。
クリエイティブ分野・日本
- 前年同期の実績が悪過ぎた面もあるが、映像・TV分野など既存事業が回復基調にあり増収増益を達成
- 電子書籍事業やEC事業などの新規事業を立ち上げ中
クリエイティブ分野・韓国
- TV局が増加するなど対象市場が改善するなか、TV分野を中心にエージェンシー事業が伸張
医療分野
- 増収増益(営業損失が縮小)だが、医師の紹介事業の売上高は第2四半期に集中する傾向がある(医師の異動がその時期に発生する)ため、低調な実績
IT・法曹・会計分野
- IT分野の新規事業(ビジュアライゼーション事業)の寄与などから増収増益(営業損失が縮小)
同社は2011年6月29日付で、2012年2月期第2四半期累計期間(上期)の会社予想の上方修正を発表したが、2012年2月期通期の会社予想については期初予想を据え置いている。この理由について、同社は原子力発電所など電力供給に係る問題の悪影響が第2四半期以降に顕在化するリスクを鑑み、通期会社予想については引き続き慎重にみているためとコメントしている。
2011年2月期通期実績
2011年4月7日、同社は2011年2月期の決算を発表した。
売上高は前年比8.3%増収。クリエイティブ分野(日本)を始め、全分野が増収となった。一方、営業利益は前年比102.1%増であった。クリエイティブ分野(日本)やIT・法曹・会計他などが前年の営業赤字から営業黒字に転じたことが寄与した格好だ。
計画対比では、売上高、経常利益が概ね計画通りとなった一方、当期純利益は計画を下回った。
クリエイティブ分野・日本
売上高は9,311百万円(前年比4.5%増)となった。売上高は前年より400百万円増加したが、増収の内訳はエージェンシー事業が172百万円、プロデュース事業が228百万円であった。営業利益は184百万円(前年は35百万円の営業損失)であった。新規事業投資として、中国やEC事業に投資を約90百万円行っており、この分が減益要因となっているものの、前述した増収がより大きく寄与し、大幅な営業増益となった。
クリエイティブ分野・韓国
売上高は1,811百万円(前年比14.9%増)、営業利益は42百万円(前年比156.6%増)であった。クリエイターの派遣数が増加し、エージェンシー事業が増収となったことが寄与した。
医療分野
売上高は1,961百万円と前年比4.0%増となったが、新規事業投資に伴い110百万円(看護師事業への投資や東京・大阪オフィスの移転・増床)、既存事業強化のための人員増(6人)に伴い26百万円がそれぞれ費用に計上されたことによって、営業利益は前年比49.2%減の135百万円となった。
IT・法曹・会計分野
売上高は1,355百万円(前年比57.0%増)となった。売上高は前年より491百万円増加したが、増収の内訳はIT分野のエージェンシー事業が96百万円、IT分野の新規事業(ビジュアライゼーション事業)が232百万円、会計分野の新規連結化(ジャスネットコミュニケーションズ株式会社の連結化)が143百万円となっている。営業利益は11百万円(前年は26百万円の営業損失)であった。
2013年2月期の見通し
会社予想は、売上高17,000百万円(前年比7.7%増)、営業利益800百万円(同18.4%増)、経常利益800百万円(同9.7%増)、当期純利益350百万円(同37.8%増)。また、一株当たり配当予想は200円である。
クリーク・アンド・リバー社単体(クリエイティブ分野・日本)に関して言えば、売上高11,000百万円、営業利益550百万円の計画。単体の2012年2月期実績が、売上高10,019百万円、営業利益454百万円である点を踏まえれば、2013年2月期の売上高、営業利益の伸びはほぼ単体によって説明される。同社は、単体に関しては、2012年2月期の好調さが持続するとみている。一方、医療分野については、引き続き拡大を見込んでいるものの、営業利益はほぼ2012年2月期と横ばいを予想。主な要因としては、一部支社の移転や新たな支社の開設(2~3拠点を新設する予定)など、同分野の事業拡大に伴う投資費用が60百万円程度発生することを挙げている。また、2012年2月期は新規事業分野で、120百万円程度の営業損失を計上しているが、2013年2月期においても当該分野で若干の営業損失が残るとみているようである。
同社にインタビューを行った上で、SR社はこうした会社予想に対するダウンサイドリスクは限定的であろうと考える。あるとすれば、景気が急激に悪化し、クリエイティブ分野(日本)におけるビジネス分野の仕事量が減少することであろうが、リーマンショック時と比べて、その他分野の収益力がついてきている上に、現時点(2012年4月)で同社の全社的な業績を押し下げるほどの業界環境の悪化は想定し難い。また、2012年3月28日に改正労働者派遣法が成立したが、同社への影響はほとんどない模様だ。改正労働者派遣法では、仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ登録型派遣を原則禁止するとしていた(当初の政府案)規定は削除されており、適用対象者は当初よりも大幅に圧縮される見通しである。
一方、アップサイドとしては、1)医療分野や新規事業における計画比上振れ、2)外国為替市場における円安・ウォン高、などが挙げられよう。単体に関しては、一定の増収増益が見込まれているものの、医療分野においても全国各地での慢性的な医師不足を背景に、各医療機関からの医師へのニーズが引き続き高いものと推測される。事業拡大に伴う投資費用を補ってなおかつ営業増益となる可能性は十分にあるといえよう。
また、新規事業に関して言えば、順調にいけば、2013年2月期中に、日本国内において電子書籍制作の最適化サービス提供、電子化受託取次などを通じて、電子書籍の収益が高まってくると推測される。会社予想には、こうした電子書籍関連の収益実現はほとんど織り込まれていない。また、2012年2月期は大きく円高・ウォン安が進行したが、2013年2月期の会社予想に関しては、2012年2月期の平均レートを前提として用いられている。もっとも、2013年2月期に入ってから、円安・ウォン高へと外国為替市場の基調が変化してきている。仮に期初の為替水準が1年間続いたとすれば、クリエイティブ分野(韓国)の業績は1割程度上に振れる可能性があると同社は述べている。
中長期展望
中長期的視点から同社の成長は、1)既存分野の成長や収益性向上、2)新分野の成長・収益化、の二つに分けて推察することが可能であろう。
既存分野
同社の既存分野をみた際に、営業利益に対する寄与度が大きいのは、クリエイティブ分野(日本)と医療分野である。クリエイティブ分野(日本)の2013年2月期の営業利益予想は550百万円である。また、医療分野は2012年2月期の営業利益が231百万円であり、2013年2月期に関してもほぼ同水準が見込まれている。その他、同社は、将来的にクリエイティブ分野(韓国)およびIT・法曹・会計等の合計で150百万円程度の営業利益を計上する力はあるとコメントしている。こうした点を踏まえれば、環境次第の側面はあるが、グループ全体では約900百万円強の営業利益を稼ぐ力はあるとみて良いだろう。
また、同社は、既存のプロデュース事業の収益性向上を推進している。こうした収益性向上が成功すれば、既存分野だけでも営業利益を10億円台に乗せることは可能かもしれない。
新分野
新分野を順調に立ち上げることができるならば、成長余地は大である。
新分野として、同社は1)中国、2)電子書籍、3)TV通販、等のキーワードを掲げ、既存分野の成長に、新分野の成長を上乗せすることによって、高い成長率を実現していこうとしている。
キーワード1:中国
同社によれば、日本国内で良質のコンテンツ(出版物、ゲーム、映像など)が数多く生み出されているが、そうしたコンテンツが海外に行き渡っているかというと限定的である。そこで、同社は日本のコンテンツに対する潜在的なニーズが高いと想定され、「衣食住」に対する需要から「心」を満たすコンテンツ等へと需要が移行していくと推察される中国をターゲットに、日本の良質なコンテンツを提供していくことに機会を見出している。
キーワード2:電子書籍
米国では、Amazon社の「キンドル」が普及し、紙媒体よりも電子書籍をダウンロードして本を閲覧する方が多くなったとされている。同社は同様の流れが、日本、あるいは中国においても近い将来生じるとみて、その収益機会を捉えるべく体制整備を行っている。
キーワード3:TV通販
同社の中でも中心的なビジネスがTVなど映像制作などの分野。これまで物を売るための宣伝・販売促進活動の中心はテレビ媒体を中心に行われてきたが、その媒体変化を収益に結び付けて行こうとしている。
上記キーワードに対する具体的な取り組みとして、「出版エージェンシー事業」、「国内及び中国における電子書籍市場に向けた取り組みの強化」、「中国のテレビ通販市場に向けた取り組み」などが挙げられる。2012年4月時点の概況をまとめると下記のようになる。
新規事業1:出版エージェンシー事業
2010年3月に上海に現地子会社を設立。出版エージェンシー事業、すなわち日本の出版物を台湾や中国の現地出版社に対して営業したり、日本の出版社の中国での販売ニーズをくみ取って現地の出版社と交渉をしたりしている。中国の出版社の大半は北京にあるため、同社は2012年3月に北京に事務所(上海の出先機関のような位置付け)を設け、営業・交渉活動をより積極化している。
同社によれば、2012年3月までに中国の出版社から常時2,000冊のオーダーがあったとのことだ。出版エージェンシー事業における同社の収入は、現地の出版社から出版された本の冊数に一定のライセンスフィーを乗じることによって求められる。
新規事業2:電子書籍市場に向けた取り組み
日本においては、2011年7月より電子書籍制作の最適化サービスを開始、出版社等からの旺盛なニーズに対応している模様。また、電子書籍配信の大手プラットフォームより電子化及び取次契約を受託したとのことである。同社の収益は、電子書籍制作(紙媒体の電子書籍化)の段階と、取次による書籍の流通段階の2パターンに分けられる。前者の制作に関しては、2013年2月期から3年程度、そうした仕事量が増加するだろうと同社はみている。一方、後者に関しては、より不透明ながら、大手プラットフォームが普及し、ダウンロード数が増加するにつれて、徐々に同社が獲得するロイヤルティ収入が増えるものとみられる。
中国においては、中国でシェア約60%を占める電子書籍リーダーメーカーの漢王科技股份有限公司(漢王)と日本のコンテンツの独占窓口として業務提携契約を締結。コミック、ライトノベルを中心として約100~150作品を販売している。中国における電子書籍リーダー市場は約200万台。同社は中国における電子書籍リーダー市場は今後も急激な成長を遂げ、ハード機普及から3年ぐらいのタイムラグを経てダウンロードが高まるとみている。
新規事業3:中国のテレビ通販市場に向けた取り組み
2011年8月に同社は北京視易購伝媒科技有限公司と中国国内のテレビ通販における日本企業及び日本商品に関する独占販売契約を締結した。視易購伝媒科技は、(中国全土をカバーすることが可能となる)デジタルテレビを通じたテレビ通販としては初の試みとなる「電視商城(テレビモール)」の運営を行うことを目的に2011年6月に設立されたChina Digital TV Holding Co., Ltd.の子会社である。
視易購伝媒科技は2011年9月からテストマーケティングを行い、2011年10月より上海地域約150万世帯に向けて通販事業を展開した。さらに対象エリアを順次拡大していくことにより、中国においてデジタル放送への移行が完了する2015年度には5,000万世帯に展開することを目標としている。
同社は、上記提携により、「電視商城」内に設けられた日本商品専門コーナーにおける日本企業及び日本商品に関する独占窓口権を有している。同社としては当初、既に中国に進出している日系企業に対して、新たな販路として提案。徐々に、新たに中国への進出を検討する日本企業に対しても提案していきたいとしている。
日本貿易振興機構(JETRO)によれば、2009年度の中国テレビ通販市場規模は3,000億円。ユーザー層の特徴としては消費能力の高い20歳から40歳、主要商品は中級・高級品とのことだ。中国国内で先に通販が拡大したネット通販と比較すると、テレビ通販やや対象がミドルからハイエンドよりとなっている。ちなみに、同社は2020年までにはテレビ通販市場が6兆円を突破するとの専門家の見通しを紹介している。
事業内容
ビジネス
同社は自社のビジネスを「エージェント・ビジネス」と定義づけている。現在の収益源は派遣等の人材サービスであり、この点では、「派遣業・人材サービス業」と位置付けられるかもしれない。しかし、井川社長のビジョンは産業の核となるプロフェッショナル(専門家)をネットワークすることで人材サービスに加え、より付加価値の高いサービスを提供していくことにある。クリエイティブ分野における請負サービスやライツ事業は、そのビジョンを基に展開している。そのため、同社を専門家や専門家の創作する製品(サービス)とクライアント間でのマッチングを行うエージェンシーとみた方がより正確であろう。
同社の事業は大きく分けて3つ。「エージェンシー事業」、「プロデュース事業」、「ライツ事業」である。ただし、2012年2月期までの段階で、営業利益の大半は「エージェンシー事業」、「プロデュース事業」による。「ライツ事業」は収益化がこれからである。この3つの事業を「クリエイティブ分野」、「医療分野」、「IT分野」、「法曹分野」、「会計分野」の5つの分野に展開している。同社の当初の事業展開は、TVや映像、WEB制作、ゲーム制作などを行う「クリエイティブ分野」であった。
エージェンシー事業
同社が、クライアント企業と様々な専門家の仲介をするビジネス。契約形態によって、派遣、紹介の2つにサービスが分けられる。
派遣:同社と専門家が雇用契約を結んだ上で、同社が専門家をクライアントに派遣することによって労務サービスを提供する業務。同社は専門家に支払う対価に同社のマネジメントフィーを加えてクライアントに請求している。
紹介:同社がクライアント(取引先)に対して人材(同社に登録している専門家)を紹介。専門家が社員として等、クライアントと直接雇用の契約が締結されれば、同社にクライアントから一定の手数料収入が入る業務である。
プロデュース事業
クライアントの業務の一部を同社が請け負い、専門家を活用することによってコンテンツ作成などを実現する業務。
ライツ(権利)事業
同社が専門家の持つ著作権の流通や管理などを行う事業。現在はクリエイティブ分野でのみ行っている。2012年2月期の全社への収益影響は限定的であった。
各分野(セグメント)毎の具体的な概要は以下のようになる。
クリエイティブ分野・日本(2012年2月期:売上構成比63.5%、営業利益構成比67.2%)
クリーク・アンド・リバー社(以下C&R社、設立:1990年)単体で事業を行っており、同社グループの「柱」といえる分野。
- クリエイター
同社の場合クリエイターとは、大きな組織に属さず、個人事業主として、企画・制作活動を行っているフリーランス・クリエイターをさす。職種としては、映像、ゲーム、WEB・モバイル、広告・出版等の業界における開発・制作活動に関わる仕事が含まれる。具体的には、映画監督、プロデューサー、TVディレクター、脚本家、カメラマン、WEBデザイナー、CGデザイナー、ゲームプログラマー、クリエイティブディレクター、コピーライター、イラストレーターなど。韓国、中国のクリエイティブ分野でも定義は同様。2012年2月末時点で同社に登録しているクリエイター数は約3万人。
- クライアント
TV局、ゲーム会社、WEB制作会社、広告代理店、出版社などコンテンツの制作・提供を中心としている企業や一般事業会社。一般事業会社のニーズとしては、プロモーション用の映像・WEBや印刷物の作成など。同社の同分野の売上構成では、TV局が約30%、ゲーム会社が約20%、広告代理店、各種求人広告サイト、出版社などが残りを占める。2011年2月末時点で同社のクライアント数は約3,000社。2012年2月期の実績では、C&R社(単体)売上高の約60%が紹介および派遣(うち約95%が派遣)であり、残り約40%が請負である。クライアント別には、TV局、ゲーム会社、広告代理店に対しては、エージェンシー事業の比率が高く、一般事業会社に対してはプロデュース事業の比率が高い傾向がある。
- 事業内容
エージェンシー事業、プロデュース事業、ライツ事業の3つの事業を営む。2012年2月期の実績では、収益の大半がエージェンシー事業、プロデュース事業である。
エージェンシー事業
クライアントに対するクリエイターの紹介や派遣を行っている。
1)派遣
同社とクリエイターが雇用契約を結んだ上で、同社がクリエイターをクライアントに派遣することによって労務サービスを提供する業務。同社は専門家に支払う対価に同社のマネジメントフィーを加えてクライアントに請求している。請求金額は職種、求められるスキルによって様々だが、月額35万円~50万円というのが一般的である。同社にとって売上高は、クライアントへの請求金額であり、売上原価には専門家への支払い(労務費)が含まれる。専門分野に特化しているため、株式会社パソナグループ(東証1部2168)やテンプホールディングス株式会社(東証1部2181)などの一般事務派遣の売上総利益率(概ね15~18%)と比較して高い模様。
2)紹介
クリエイターをクライアントに紹介する事業。同社が紹介したクリエイターがクライアントに正社員で雇用されることが決まれば、紹介料がクライアントから支払われる。一定期間での派遣就業が終了した後に派遣先のクライアントにクリエイターを紹介する紹介予定派遣も行っている。手数料はクリエイターの年収の約30%であり、売上と売上総利益が同額である。
プロデュース事業
クリエイターを活用し、クライアント業務の請負を行っている。範囲は広く、かつ単純なWEB、テレビ番組などの「制作」から「企画」段階から関与する、より高度なレベルが求められるものまで内容は様々である。同社にとって売上高は、クライアントへの請求金額であり、売上原価はクリエイターへの支払い(労務費)や外部のプロダクションを活用した際の外注費などとなる。売上総利益率は、同社によれば約25%程度とのことである。例としては、求人情報企業の求人広告の受託制作、大手TV局と共同のモバイルゲームサイト運営、大手携帯総合ポータルサイトに対するソーシャルアプリゲームの提供、などが挙げられる。
販売管理費に関していえば、同社はテレビCMなどを行っておらず、クリエイターの募集は主にポータルサイトを通じて行っている。ポータルサイトの開設以前もクリエイター間での口コミが多かった模様。つまり、クリエイターの募集にはほとんど費用をかけていない。販売管理費に占める比率が高いのは、「エージェント」に係る費用である。同社は、クライアントの新規開拓や提案、契約交渉、作業進捗・納品管理などいわゆる一般的な営業に近い業務を行っている従業員を「エージェント」と呼んでいる。C&R社単体で約100人のエージェントを抱える(2012年2月現在)。基本的に派遣、請負は同じエージェントが手掛けており、組織としては、TV局、ゲーム会社、WEB制作会社、広告代理店、出版社など業界毎にチームが分かれている。
クリエイティブ分野・韓国(2012年2月期:売上構成比12.7%、営業利益構成比6.2%)
連結子会社のCREEK & RIVER KOREA Co.,Ltd.(2001年設立、C&R社出資比率90.0%)がクリエイティブ分野・日本と同様のビジネスモデルを韓国において展開している。同社によれば、日本との違いは以下のような点である。
- TV・映像関連の仕事が大半。韓国TV局の約70のチャネルへ約1,200名のスタッフの派遣を通じ、TV番組の約80%に同社スタッフが関わった(2012年2月期)
- TV・映像関連以外のWEB、ゲーム分野などは今後強化する方針
- ライツ事業は、日本よりも進んでいる。トップクリエイターの作品の映像・書籍化、プロデュース企画などを行っている
- 現状では売上高に占める請負の比率は僅少。今後拡大をしていく予定
医療分野(2012年2月期:売上構成比13.6%、営業利益構成比34.3%)
連結子会社の株式会社メディカル・プリンシプル社(1997年設立、C&R社出資比率71.2%)が主に医師の紹介を行っている。
- プロフェッショナル
医師、研修医、医学生が対象。医師は、開業医(自ら診療所または病院を営んでいる医師)ではなく、勤務医(病院や診療所などの医療施設における被雇用者として診療に従事している医師)が対象。また、常勤医師のみではなく、非常勤医師も対象。2012年2月末で同社への登録医師は約45,000人。なお、同社は2009年12月より看護師を対象としたエージェンシー事業を開始した。
- クライアント
全国の医療機関の他、医療関係の企業、医師を必要とする公的機関等。2012年2月末で同社への登録医療機関は約8,500施設。
- 事業内容
エージェンシー事業(紹介)を営む。
エージェンシー事業
医師の人材派遣業が法律で認められていないこともあり、紹介のみを行っている。
同社に登録した常勤医師が、例えばA病院からB病院に移る場合は、同社の売上高は医師のB病院の年収見込みに応じて決まる。一方、非常勤医師が、例えば月曜日はA病院、火曜日はB病院と複数の病院に勤務する場合、同社の売上高は非常勤医師の各病院における給与所得に応じて決まる。手数料ビジネスのため売上高と売上総利益がほぼ同額である。
同社はエージェンシー事業を「民間医局」のブランドの下で行っている。「民間医局」とは読んで字のごとく民間の医局の意味であり、通常の「医局」とは異なり、医師が登録すれば、同社が医師の希望する病院を紹介するという概念に基づく。一般的に「医局」とは、日本の医療業界独特の慣習であり、大学付属病院の各診療科の教授を頂点とした人事組織をさす(教授を頂点として、助教授→講師→助手→医師→研修医や大学院生といった序列でピラミッド構造を形成)。また、組織は一つの大学病院だけではなく、関連病院なども含めた一大グループ組織であることが多い。2004年以降、新研修医制度導入など厚生労働省の政策により、医師の流動化が進んできている。しかし、それ以前は医局制度の下、例えば、A大学病院出身の医師はA大学病院とつながりが深い病院を2-3年毎にローテーションしていくことが一般的であった。従って、メディカル・プリンシプル社の創業は1997年だが、事業の拡大は2004年以降の医師の勤務形態流動化と軌を一にする。
日本の病院数は8,612施設である(2011年12月末、出所:厚生労働省「医療施設動態調査」)。同社のクライアント数は前述の通り約8,500施設であり、日本の病院の約90%をクライアントとして抱えていることになる。また、日本の医師数は約27万人である(2008年、出所:厚生労働省「医師・歯科・薬剤師調査の概況」)。同社に登録している医師は前述の通り約4.5万人であり、日本の医師の約16%が同社に登録をしている計算になる。いずれにしても、国内では最大規模の医師エージェント会社といえる。同社は、上記実績について、長年事業を手掛けてきた信頼感のためとコメントしている。ちなみに、日本の看護師数は約135万人である(2009年、出所:日本看護協会「看護統計資料」)。同社は看護師を医療分野における次の成長ドライバーとしてみている。
同社によれば、医師の登録者を増やすために、広告宣伝費を大きく投入しているわけではない模様。これはクリエイティブ分野と同様である。ただし、日本全国で各病院の合同説明会を開催。説明会に来た医学生を登録するといった活動は行っている。
IT・法曹・会計分野(2012年2月期:売上構成比10.7%、営業利益構成比2.8%)
- IT分野
株式会社リーディング・エッジ社(2000年設立、C&R社出資比率32.4%)がエージェンシー事業(派遣・紹介)、プロデュース事業を行っている。専門家の対象は、ITエンジニア。クライアントは、メーカー、ベンダー、Sier(システムインテグレーションを行う業者)、一般事業会社など。
- 法曹分野
株式会社C&Rリーガル・エージェンシー社(2007年設立、C&R社出資比率90.0%)がエージェンシー事業(紹介・派遣)を行っている。専門家の対象は、弁護士およびパラリーガル(書類作成等で弁護士をサポートする専門事務官)。クライアントは、法律事務所、一般事業会社など。2011年2月末で同社に登録している弁護士数は3,200名。2011年3月時点で日本の弁護士数が約3万人であるため(出所:日本弁護士連合会HP)、同社に登録している弁護士はそのうち約10%ということになる。
- 会計分野
ジャスネットコミュニケーションズ株式会社(1996年設立、C&R社出資比率100.0%、2009年にC&Rグループ化)がエージェンシー事業(派遣・紹介)、プロデュース事業を行っている。専門家の対象は、公認会計士および税理士等。クライアントは、会計事務所、税理士事務所、一般事業会社など。
SW(Strengths, Weaknesses)分析
強み(Strengths)
- 特定分野の専門家に対する知名度と実績:クリエイティブ、医療分野で一定の実績を収めており、広告宣伝をかけなくても、クリエイターや医師の登録が進む体制が出来上がっている。この点は、新規参入業者や他社が一朝一夕で築けるネットワークではなく、同社の強みといえよう。また、医療分野における収益貢献は、他の分野の収益変動を減殺する役割を果たし得る。
- 井川社長の独自のアイディアと見識:井川社長自らがフリーランスのクリエイターであったという珍しい経験がクリエイターとクライアントの橋渡しをする同社のビジネス上、役に立っているものと考えられる。また、他の分野の専門家もクリエイターと同様の悩みを抱えているという井川社長の推察が医療分野の展開につながり、同社の成長に貢献している。
- 独自性の高いビジネス:同社と同じようなビジネスを行っている会社は他にはない。一般事務派遣業ではないし、タレント事務所でもない。専門家を必要とするクライアント企業に対し、「(人材をベースとした)ワンストップソリューション」を提供している。ただし、下記の点からこの独自性はまだ十分に発揮されていないとSR社は考える。
弱み(Weaknesses)
- 低い利益率:同社の営業利益率は、営業利益が過去最高水準であった2009年2月期でも3.5%と低い。SR社の推測では、同社にも「ニッパチの法則」が当てはまるようだ。つまり、2割の顧客が売上の8割を生み出している状態である。一方、同社の説明によればエージェントの作業量は案件の大小に係わらず大きくは変わらない模様。したがって、「効率性」に課題を抱えている可能性がある。
- 執行力の問題:上記の通り、井川社長はアイディアが豊富で、事業展開も早い。しかし、同社の事業・分野をみた際、利益貢献は特定事業・分野に限られている。いくらいいアイディアがあっても、確かな執行力がなければ利益貢献は見込めず、それどころか経営資源の分散を通じて、既存のビジネスにも影響しかねない。他社が同社の「2番煎じ(チャレンジャー)」として同様のビジネスを展開、果実を手に入れてしまうリスクもあるといえよう。
- 請負サービスにおける試行錯誤:同社がクリエイティブ分野でプロデュース事業を本格的に開始したのは2003年2月期。ただし、同サービスはクリエイターの力を組み合わせてプロジェクトを実現するオーガナイズ能力が必要となる。いわば派遣・紹介ビジネスよりも難易度が高いサービスといえる。同社によれば、同サービスは過去の試行錯誤を経てモデルが確立されつつあるが、収益性には未だ問題を抱えている模様。SR社は同サービスのモデルが確立できれば、同社の成長源となり得るが、それまでは収益性や社内経営資源の分散化といった観点から逆に足枷になりかねないと考える。
コスト分析
同社のコスト構造をC&R社単体(売上、営業利益ともに連結業績への寄与度が高い)の数値を元に分析する。売上総利益率は23.1%から26.5%の間で推移している(2006年2月期から2012年2月期)。売上総利益率の変動要因としては、スプレッド変動(クライアントへの請求単価-クリエイターへの支払単価)や紹介・派遣・請負のミックスが考えられる。概ね売上総利益率は安定しており、売上原価の変動費率が高いということがいえそうだ。
一方、営業利益率は変動が激しい。2009年2月期には6.2%であるが、2010年2月期には営業損失を計上している。SR社は販売管理費に占める固定費率の高さが要因であると考える。実際、人件費および地代家賃の販売管理費に占める比率は概ね60%強である。換言すれば、同社の営業利益率が改善するためには、売上高/人件費比率(エージェントの生産性)を上昇させる必要があろう。クライアントの業況改善など外部要因もエージェントの生産性に影響するが、同社にとってはエージェントの営業・プロデュース能力向上を通じて生産性を高めることが重要であろう。そのためにも、請負サービスを中心としたプロジェクトの収益化やクライアント毎の柔軟なアプローチを実現することが同社の経営陣にとっての課題といえよう。
市場とバリューチェーン
マーケット概略
上図は同社を取り巻く環境をみる上で参考となるような統計数値をまとめたものである。インプリケーションは2点。まず、TV局、WEB制作会社、広告代理店、Sierなどのクライアントの収入は景気動向によって振れやすいということ。つまり、クリエイティブ分野(日本)、IT分野などにおいては同社の業務量も景気動向によって変動する可能性があるということである。次に、医師、看護師の有効求人倍率は全職業を大幅に上回っており、不景気の時でも水準が高い。つまり、医師、看護師に対するニーズは強く、同社が介在することができるならば、医療分野において売上を安定的に伸ばす余地があるということである。
また、デジタルコンテンツ市場、EC市場も経済状況に関わらず堅調に推移している。当該分野も同社にとって潜在的に開拓余地のある市場といえよう。
参入障壁
同社と同様のビジネスを始めることは容易にできるかもしれない。しかし、クライアント、専門家とのネットワークなど同社が創業来構築してきた人的ネットワークを築くことは一朝一夕には難しいものと思われる。ただし、IT、法曹、会計分野などは同社が現在、ネットワークを構築している最中である。従って、参入障壁が高いとはいえない。
競合環境
クリエイティブ分野という観点から、同社と全く同じ事業を手掛けている会社はない。しかし、制作会社として、株式会社東北新社(JASDAQ 2329)、株式会社葵プロモーション(東証1部9607)、株式会社ティー・ワイ・オー(JASDAQ 4358)などが上場している。また、同社の顧客が内製するケース、同社に登録していないクリエイターが手掛けるケースなどもあるとみられ、競合自体は激しいものとSR社は認識している。
医療分野において、同社の次に大きいのは、株式会社リクルートドクターズキャリア。株式会社リクルート(非上場)のグループ会社である。同社は、現時点では競合先ではないものの、規模の大小を問わず新規企業が相次いで参入しているとコメントしている。
経営戦略
井川社長は自らの経験も踏まえたうえで、フリーランスで活躍する優秀な専門家でも顧客の開拓・確保などマーケティングの問題で苦労している点に着目。専門家の代わりに同社がマーケティング活動などサポートを行うことによって、専門家、クライアント、同社の3者間で「Win-Win」の関係を構築しようというのが同社の戦略の根幹である。同社の事業領域としては、専門家の分野という横軸、事業内容という縦軸の二つで示すことができる。
分野としては、専門家は似たような悩み・ニーズを抱えているとの認識の下、これまでクリエイティブ、医療、IT、法曹、会計と分野を広げてきた。今後も看護師、建築士などさらに分野を広げていくことをめざしている。
事業内容については、創業から10年経った2000年までは、紹介・派遣という人を中心としたビジネスを展開。しかし、その後、中核であるクリエイティブ分野では「制作プロデュース」としてのプロデュース事業を付加して事業展開を進めてきた。また、同社は2010年2月期に最終赤字となったが、2011年2月期を大きな変化の年として位置付け、大規模な投資を行った。具体的には、新興国において日本のヒト・モノ・サービスに対する購買力が高まっているとの仮説に基づき、クリエイターのライツを活かした事業を国内はもとより、海外で展開していく方針である(新規事業に関しては「中長期展望」を参照)。
その他情報
沿革
同社は、元々フリーランスのクリエイターであった井川社長が、「クリエイターの生涯価値の向上」と「クライアントの価値創造への貢献」を2大ミッションとして掲げ、1990年3月に創業。当初、映像分野におけるエージェンシー事業からスタート、その後、WEB・モバイル等へとクリエイティブ分野の領域を拡大した。また、同社のビジネスモデルは、クリエイターのみならず、多くの「専門家」に対して適用可能との考えの下、医師、ITエンジニア、弁護士、会計士へと分野を広げてきている。
ニュース&トピックス
2012年1月
2012年1月27日、同社は2012年2月期期末配当金を前回予想の100円から200円に増額修正すると発表した。今回の増額修正の理由として、同社は2012年2月期通期業績が従来予想を上回って推移していること等を挙げている。
2012年1月12日、同社は2012年2月期第3四半期決算及び通期会社予想の上方修正を発表した。
2011年10月
2011年10月6日、同社は2012年2月期第2四半期決算を発表した。
2011年9月
2011年9月28日、同社は2012年2月期第2四半期累計期間及び通期業績予想を上方修正した。
修正内容は下記の通りである。
2012年2月期上期
- 売上高:7,700百万円(前回予想7,200百万円)
- 営業利益:400百万円(同150百万円)
- 経常利益:400百万円(同150百万円)
- 純利益:150百万円(同30百万円)
2012年2月期通期
- 売上高:15,000百万円(前回予想14,500百万円)
- 営業利益:550百万円(同300百万円)
- 経常利益:550百万円(同300百万円)
- 純利益:220百万円(同100百万円)
同社は上期業績予想の修正の理由は、期初に東日本大震災が与える影響を計りかねる状況であったため、2011年2月期実績を目安として会社予想を設定したが、上期実績が予想を上回る見込みとなったためと述べている。また、通期業績予想の上方修正については、上期業績予想の修正を反映させたためとコメントしている。
2011年9月21日、同社は中国の北京視易購伝媒科技有限公司と、テレビを通じた通販事業における日本企業及び日本商品に関する独占窓口契約を締結したと発表した。
2011年6月
2011年6月29日、同社は2012年2月期第2四半期累計期間(上期)の会社予想の上方修正を発表した。
2012年2月期第2四半期累計期間(上期)会社予想
- 売上高:7,200百万円(期初予想7,000百万円)
- 営業利益:150百万円(同100百万円)
- 経常利益:150百万円(同100百万円)
- 純利益:30百万円(同20百万円)
同社は、会社予想を上方修正した理由として、期初予想発表時点では東日本大震災が同社に与える影響に対する不透明感があったが、第1四半期において事業が堅調に推移したためであるとコメントしている。
純利益の上方修正額が経常利益に比して小幅に留まっているが、この理由は、東日本大震災の影響により、保有有価証券の価格が著しく下落したものについて、第1四半期で減損処理を行い、投資有価証券評価損51百万円を特別損失として計上する見込みとなったためとであるとのことだ。
2012年2月期通期の会社予想に関しては、変更されていない。
2011年3月16日、同社は、3月11日に発生した「東日本大地震」の2011年3月16日時点における影響について、下記のようにコメントを発表した。
被害の状況
同社の連結子会社である株式会社メディカル・プリンシプル社仙台支社が入居する社屋に一部被害が出ておりますが、重大な影響を及ぼす被害は出ていない。
業績への影響
今回の地震で同社が直接的に受けた被害は少なく、現時点で業績に与える影響は軽微。余震等で新たな災害が起きた場合には改めて報告する予定。
注:同社は、「東日本大震災の被災者・被災地への支援」についてホームページ上にて別途開示している。











