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ドン・キホーテ(7532)

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ドン・キホーテ(7532)

主要財務データ

image:Don-Quijote-JP-main-model.png

直近更新情報

概略

2012年1月10日、株式会社ドン・キホーテは12月の販売状況を発表した。

(月次売上高の項目へのリンクはこちら、リリース文へのリンクはこちら


2011年12月9日、同社は11月の販売状況を発表した。


2011年11月11日、同社は10月の販売状況を発表した。


2011年11月4日、同社は2012年6月期第1四半期決算を発表した。また、2012年6月期第2四半期累計期間の会社予想の上方修正も発表した。

(決算短信へのリンクはこちら、2012年6月期第1四半期決算の項目へのリンクはこちら


3ヵ月以上経過した会社発表はニュース&トピックスへ


業績動向

月次動向

image:Don-Quijote-JP-monthlies.png


2011年12月

12月の既存店売上高は前年同月比2.3%増だった。12月は年間で最も繁忙な月に該当するが、既存店における商品部門別粗利益は、全部門とも前年同月を上回ったとのことである。また、ドン・キホーテ単体を始め、グループ各社の販売高は、月間合計で過去最高になったと同社は述べている。商品部門別の販売状況は、「日用雑貨品」や「食品」のような定番商品が堅実な推移をみせる中で、ボーナス商戦に伴う高額品需要も高まった模様だ。


2011年11月

11月の既存店売上高は前年同月比1.1%減だった。「家電製品」が前年同月比で大きくマイナスとなり、全体の数値を押し下げているが、同社によれば、前年同月に生じたテレビ及びその周辺商品への駆け込み需要の反動の影響とのことである。「家電製品」以外は時計・宝飾品・輸入ブランド品及びファンシー雑貨など嗜好性が高い商品に牽引される格好で好調に推移しているほか、売上総利益率の改善も進み、既存店売上総利益額は前年同月を上回っていると同社はコメントしている。


2011年10月

10月の既存店売上高は前年同月比0.1%増だった。同社によれば、「家電製品」は7月までの好調な販売推移や前年のエコポイント半減前の空け込み需要の反動から売上及び客単価に下押し圧力になって反面、「日欧雑貨品」や「時計・ファッション用品」が引き続き好調に推移しているとのことだ。


2011年9月

9月の既存店売上高は前年同月比6.3%増だった。同社によれば、気候変動に左右されにくい「日用雑貨品」や「食品」は当月も堅実に伸長し、時計や輸入ブランド品などの高額系商品の販売が徐々に力強さを増しているとのことだ。また、「家電製品」は、アナログ停波の反動などから売上高は前年比マイナスとなったが、商品構成の見直しやPB商品の構成比上昇で売上総利益率は前年比プラスに転じたとのことだ。


2011年8月

8月の既存店売上高は前年同月比0.8減だった。同社によれば、営業日ベースに置き換えた既存売上高は、前年比0.7%増程度である。商品別には、「日用雑貨品」や「食品」などは堅実に伸ばし、更にブランド商品や時計等高額系商品の販売も回復傾向がみられた。


2011年7月

7月の既存店売上高は前年同月比6.7%増だった。同社によれば、固定客のリピート率上昇に加えて、新規顧客が着実に増加したとのことである。商品別には、地デジ移行に伴う駆け込み需要の発生や、扇風機などの季節家電の好調な販売が牽引した「家電製品」、涼感系寝具や日焼け止めなどの商品が寄与した「日用雑貨品」を始め、全商品部門とも前年実績を上回る好調な実績となった。



四半期実績推移

image:Don-Quijote-JP-quarterly.png


2012年6月期第1四半期実績

2011年11月4日、同社は2012年6月期第1四半期の決算発表を行った。また、2012年6月期第2四半期累計期間の会社予想の上方修正も発表した。

売上高は前年比8.1%増の134,863百万円であった。売上高は前年同期よりも10,147百万円増加したが、法人別にみると、ドン・キホーテが約6,200百万円の増収、長崎屋が同約4,200百万円であった。主力のドン・キホーテの既存店売上高は前年比2.1%増(客数同0.9%増、客単価0.2%減)であったが、同社は前年同期のハードルが高いこと、猛暑や台風など全般的に厳しい天候であったこと、などを踏まえ、こうした既存店増収率の実績は評価できると述べている。ドン・キホーテの全店売上高は前年比7.2%増であった。また、長崎屋(MEGAドン・キホーテが9割を占める)も前年比14.1%増と好調であった。

売上総利益率は25.8%とほぼ前年並み(前年同期は25.7%)であった。しかし、同社は今回の売上総利益率の実績に満足しているとのことである。なぜならば、2012年6月期を始めるに当たり、同社は震災の影響を受けて、贅沢品に対する消費支出が抑制され、生活必需品、食料品、日用雑貨品などの商品群の消費へと向かうと読んでいた。そのため、第1四半期当初はそうした商品群、すなわち相対的に低い売上総利益率のものからスタートしている。もっとも、その後第1四半期の中盤から後半にかけては、顧客ニーズを現場で感じ取り、商品ポートフォリオを機敏に変化させることで、相対的に高い売上総利益率の商品群の販売に成功、上記売上総利益率につながったと述べている。同社によれば、第1四半期の中盤から後半にかけては「節電」、「エコ」、「涼感」などをキーワードとした商品群が売れたほか、ルイ・ヴィトンやグッチのような輸入ブランド品や時計の売れ行きが好調であったとのことだ。従って、第1四半期を前半と後半に分けると、前半の売上総利益率が低く、後半にかけて上昇し、上記結果になった模様である。

販売管理費は前年比7.3%増と人員増等を映して増加したものの、売上が堅調に伸びたことから、売上高販管費率は20.1%(前年同期は20.2%)と抑制された水準に留まり、営業利益率は5.8%と改善(前年同期は5.5%)、営業利益は前年比13.1%増の7,781百万円となった。当期純利益に関しては、特別利益で1,782百万円の更生債権弁済益を計上した(特別利益合計は2,173百万円)こともあって、前年比116.3%の6,674百万円となり、四半期ベースで過去最高となった。

今回の決算で注目される点としては、上述した点以外に長崎屋の収益性の改善も挙げられよう。2011年9月時点で長崎屋の営業店舗数は40店舗、うち5店舗がGMSの長崎屋であり、35店舗がMEGAドン・キホーテである。MEGAドン・キホーテ35店舗の実績は下記のようになっており、収益性の改善が顕著である。

2011年7月-9月のMEGAドン・キホーテ35店舗の実績(括弧内は2010年7月-9月の実績)

  • 売上高成長率:前年比16.2%増
  • 売上高総利益率:22.0%(21.3%)
  • 売上高販売費率:18.7%(20.4%)
  • 営業利益率:3.3%(0.9%)

長崎屋の収益性改善は、ドン・キホーテ社の業績への寄与が見込まれると同時に、これまで長崎屋の再建に一部奪われていた同社の経営資源がドン・キホーテ単体により集中できるようになったという点が大きいとSR社はみている。同社が2012年6月期において、「ドン・キホーテ」の出店を増やそうとしていることにその点が表れている。

2012年6月期第1四半期末の店舗数は229店舗(2011年6月期末:228店舗)であった。2012年6月期第1四半期中の新規出店は2店舗(ドン・キホーテ1店舗、Essence1店舗)、閉店が1店舗であった。また、長崎屋の業態転換(MEGAドン・キホーテへ)を1店舗行った。

2012年6月期第2四半期累計期間の会社予想の上方修正は下記の通り。

2012年3月期第2四半期累計期間

売上高:272,000百万円(前回予想270,000百万円)

営業利益:15,200百万円(同14,700百万円)

経常利益:14,900百万円(同14,600百万円)

純利益:10,000百万円(同7,800百万円)

2012年6月期通期の会社予想に関しては、第2四半期決算発表時(2012年2月6日)に見直す予定と同社はコメントしている。

2011年11月についても、同社は計画を上回るペースで推移していると述べている。また、輸入ブランド品などの高額品が引き続き売れているとのことである(2011年11月中旬時点)。



2012年6月期会社予想

image:Don-Quijote-JP-forecast.png


2011年2月4日開催の決算説明会で安田会長が2012年6月期は経常利益30,000百万円をめざすとコメントしたことから、経常利益の計画値が注目された。同社によれば、経常利益30,000百万円は引き続きターゲットとして意識しているが、期初の会社予想時点では、達成可能な数字を提示したとのことだ。

ドン・キホーテ単体の会社予想は以下。前提として、ドン・キホーテ既存店売上高が通期で前年比0%増(上期:前年比1.0%増、下期:前年比1.0%減)の想定。同社は、この点について2011年6月期の既存店売上高が前年比3.4%増とここ数年でも高い実績であったことを踏まえた数値であると述べている。しかし、新規出店等を予定していることなどを踏まえれば、欧米景気の不透明感や円高に伴う日本経済の減速(円高は同社の仕入れ上プラスに作用するが、日本経済の減速を通じて、トップラインにネガティブに作用し得るため)などのダウンサイドリスクを踏まえた上で、達成可能な数値を置いているとの印象をSR社は受けている。

  • 売上高:358,000百万円(前年比3.3%増)
  • 営業利益:20,200百万円(同2.6%増)
  • 経常利益:20,000百万円(同2.4%増)
  • 当期純利益:10,400百万円(同14.8%増)

グループとしては、15店+αの新規出店の前提。2011年9月時点で確定している15店舗の内訳は、ドン・キホーテが13店舗、ドイト1店舗、New MEGAドン・キホーテ1店舗。ドン・キホーテの出店が2011年6月期と比較して増える理由について、同社はここ数年、MEGAドン・キホーテの業態確立に力を注いできたが、ようやくドン・キホーテに注力できる状態になったためとコメントしている。2012年6月期に関しては、地方の出店が多い模様であり、これは前述した理由によって、出店エリアを拡大できる余力が生じたことによるとのことである。また、出店計画には、新業態「Essence(エッセンス、以下参照)」も含まれている。

単体よりも連結の増益率が高い予想となっている要因は、長崎屋の更なる収益改善を見込んでいることが主因であり、計画上、長崎屋の営業利益が2011年6月期よりも約1,300百万円改善すると見込まれている。

Essenceについて

同社が2012年6月期に入ってスタートした新業態。売場面積300㎡から1,000㎡、アイテム数10,000から20,000とドン・キホーテよりも特定商品に特化した小型店舗(詳細については「Essence」の項を参照)。


将来展望

ドン・キホーテの中期的な目標は国内市場でさらなる成長を遂げることにある。経営陣は国内市場がゼロサム・ゲームの状態にあると捉えており、競合他社のシェアを奪う形で安定的な成長を達成することが可能であると考えている。同社の競争優位性は、他社に比べて、優れた実行能力と機動力を備えている上に、成長へのこだわりも大きい点である。こうした点は、日本企業としてはユニークな特性といえるだろう。また、オーナー企業(ここでは創業者がトップ・マネジメントを兼ね備えているケースをさす)として、マーケット・リーダーであろうとしている。こうした点は、2011年6月期の決算説明会で安田会長が述べた「当社は、単なる風変わりな小売企業ではなく、優良成長企業であり、そのように認識されることを望んでいる」とのコメントに集約されている。

同社の中期戦略の目標の1つに、MEGAドン・キホーテとNew MEGAドン・キホーテの業態を確立させることがある。2011年6月期末時点で、MEGAドン・キホーテ業態は依然未完成である(詳細は「MEGAドン・キホーテ」の項目を参照)。同社は、従来基盤としてきた都市部商圏以外の地域での拡大を目指し、生活防衛型ディスカウントストア業態の開発を完成させることを優先課題としている。MEGAドン・キホーテとNew MEGAドン・キホーテの業態の成功が確認されれば、他社の好条件の居抜き物件を獲得することで、経費を抑えつつ高い収益性を追求することが可能となるだろう。今後の新規出店については、年間20~25店舗の出店数が目標になるものとみられる。ドン・キホーテでの新規出店が主体となる見込みであり、営業エリアは今後も大幅に拡大する見通しである。同社は、2012年6月期以降、成長の原動力として主力業態のドン・キホーテに再び重点を置き始めている。

同社への取材を踏まえ、SR社は、同社が今後5年間に5~10%の範囲の売上高成長率を達成できると見ている。新規出店と既存事業の組合せによって、多少上下に変動しながらも、このような成長が達成されていくと思われる。また、MEGAドン・キホーテ業態が成功すれば、利益の伸び率はさらに高まることになろう。Essence業態はこれまでのところ成否を判断し難い状況にあり、今後の出店計画は未決定となっている。しかし、Essenceが打ち出した商品ミックスはドン・キホーテの従来の品ぞろえに近いものとなっており、同社が競合他社の店舗からEssenceを差別化することに成功した場合には、Essence業態は有力な店舗フォーマットとなると思われる。

ディスカウント中心のビジネスモデルとデフレの進行に伴う販売価格の引下げ圧力を考慮すると、利益率が大きく改善する公算は小さく、SR社は、営業利益率は概ね4~6%が妥当であろうと推測している。

収益性の高い店舗取得が行われれば、年平均7~10%の増益も可能であり、また、投下資本収益率も改善する公算が高い(この点に関する詳細は「損益計算書」を参照)。


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ビジネス

事業概要

主要商品

ドン・キホーテの取扱商品は多種多様である。最近ではM&Aの実施等も踏まえた顧客基盤の広がりを反映し、当初のバラエティ商品や衣料品から進化し、商品構成も変化してきている。

image:Don-Quijote-JP-product-breakdown-consolidated.png

image:Don-Quijote-JP-product-breakdown-parent.png


商品別の売上高から同社の事業の変遷が読み取れる。時計・ファッション用品、日用雑貨品、スポーツ・レジャー用品が従来の主要カテゴリーだが、店舗拡大および都市中心部以外の出店が増えるにしたがい、食品が重要な役割を果たすようになってきている(スポーツ・レジャー用品は今となっては、売上高全体に占める比率が低い)。2000年頃は家電製品、日用雑貨品、時計・ファッション用品の売上構成比は各々23~25%であった(売上総利益率では時計・ファッション用品が最大で、収益に最も貢献していた)。食品は2000年6月期には売上高の17%を占めるのみであり、当時は生鮮食品を取り扱わずほとんどが加工食品系であった。食品の占める比率は、地方への出店で徐々に上昇し、長崎屋の取得によって更に高まった。2011年6月期には売上高の21.2%がアパレル及び高級ブランド品品で構成され、日用雑貨品の構成比は21.4%、家電製品は同11.1%、食品は28.3%となった。

同社最大の課題は、生鮮食料品カテゴリーの開発である。質のいい生鮮食料品を低価格で提供することにより、顧客の来店頻度は上がり、多くの消費者が「買い物する場所」として選択する際の重要な要素となり得る。一方、食品は他のほとんどのカテゴリーに比べ売上総利益率が低く、特に生鮮食料品はロス率が高い。ドン・キホーテの深夜営業を考えると、ことさら在庫管理が難しいカテゴリーだ。こうした要因は、同社がこれまで食品にあまり力を入れてこなかった理由でもある。ただし、今後の成長を考えると選択の余地はない。残念ながら、長崎屋の買収では期待した食品事業の専門知識を有した人材を獲得することができなかったため、何らかの革新的な解決策が望まれる。

その解決策の一つが、生鮮食料品に強いスーパー事業の企業買収であると、SR社は考える。スーパー事業はドン・キホーテのコア・コンピタンスではないため、その分野の専門性を開発するには希少な時間と資本を無駄に消費する。もう一つの案は、すでに同社が進めようとしている施策である、生鮮食料品販売のノウハウを持つ外部業者と提携し、報奨金を払う形で採算性のある食品販売をしてもらう方策である。

長崎屋のグループ化により全体の収益においてテナント賃貸収入が占める割合は増えている。2011年6月期のテナント賃貸収入総額は158億円であった。


ビジネスモデル

ドン・キホーテは大衆向けディスカウント小売業者である。近年のデフレ環境下で、小売業者が値上げできる可能性はほぼ皆無に等しい。そのため、売上高を拡大するには店舗当たりの売上増か、新規出店によって量を稼ぐしかない。同社はこれまで順調に新規出店を進めてきたが、改めてその変遷を見てみよう。

1989年に東京都府中市でドン・キホーテ1号店を開店した同社は、首都圏(1都3県)内で店舗ネットワークを広げていった。2001年12月からは従来の首都圏中心の店舗展開から、地方都市への展開を開始し、その一方で大型店舗の出店も進めた。また、首都圏内においても店舗出店を重ねて存在感を増し、売上高を着実に増加させてきた。一方で、1店舗当たりの売上高や1平米当たりの売上高は減少傾向にある。

1店舗当たりの売上高は店舗の規模または効率性(高い在庫回転率)と比例する。小売コンセプトがいったん確立すると客単価が安定化することから、小売企業の多くは主な業績変動要因として客数に目を向ける。都市部のドン・キホーテ店舗は集客力が高く、夕方6時から夜11時までが特に混み合う。郊外立地店舗の場合は、来店客数は少ないものの、その分を出店の際の資本的支出と賃料の抑制で補完し、食品や日用雑貨品など回転の速い商品を中心に扱っている。


image:Don-Quijote-JP-sales-floor area.png


1平米当たりの投下資本、あるいは1平米当たりの売上高は長崎屋の取得後に減少している。長崎屋店舗の再建が済めば、売上高や収益の数値にプラスに働くだけでなく、ROIの向上にも寄与するであろう。

過去の急速な成長は、同社に対し、都市部は飽和状態となり、一方で、新規出店余地のある郊外型店舗では異なる商品構成が求められるという課題を突きつけている。郊外の大型店舗においては、資本効率が悪く、アミューズメント商品を減らし、食品の強化や従来型のディスカウント小売モデルへの移行が行われることが迫られている

企業買収や他社既存店の取得により店舗数を拡大することは、初期投資を抑制するという意味において、有効な手段である(新規出店にかかるコストに比べれば、はるかに低いコストで買収対象企業の債務を肩代わりできることが多い)。同社が、ドイトおよび長崎屋を取得したことは、まさにその最たる例である。ただ、ドイトは同社にとってまさに最適な再編が極めて容易なケースであったのに対し、長崎屋には引き続き課題が残っている。

ディスカウント小売業者は売上総利益率が低く(20~25%)、販売費および一般管理費も少ない傾向にある。収益成長の鍵は高い在庫回転率、安定的な売上総利益率の維持、販売および一般管理費の抑制にあるといえる。しかし、小売業者は、売上総利益率が低い商品は在庫回転率が高く、売上総利益率が高い商品は回転率が低いというトレードオフに直面する。また、固定費を可能な限り低減することも求められる。同社はこうしたトレードオフや固定費の問題に対して有効な革新的かつ効果的な答えを見出した。

同社は価格競争力を意識した定番ディスカウント商品と利益率の高い「スポット」商品や目新しい商品の組み合わせという独自の商品構成を用いたのである。さらに同社は、比較的狭い売場面積に同社特有の「圧縮陳列」方式を用いて、大量の在庫を詰め込むことによって、消費者が何も買わずに店を出る確率を下げ、在庫1単位当たりの固定費を低減している。こうしたことは、長時間営業と回転の速い商品に焦点を絞ることによってさらに強化されている。ただし、こうした手法を地方のドン・キホーテ店舗やMEGAドン・キホーテ業態にまでうまく適用できるどうかはわからない。2000年代初頭に地方に展開し始めたころから、在庫回転率は落ちている。

在庫回転率の低下を補うべく、同社は売上総利益率を改善させようとしてきた。価格で勝負するビジネスモデルのディスカウント小売業者が売上総利益率を改善することとができるか、疑問に感じる向きもあるだろう。2008年6月期の売上総利益率の上昇は、部分的には、利益率の高い長崎屋の衣料品とドイトのDIY用品が商品群に追加されたことによるものである。また、売上高販管費率の上昇にも着目したい。売上高販管費率はドイトおよび長崎屋を買収する前の2006年6月期の18.6%から2009年6月期の22.9%まで上昇している。もっとも、売上高販管費率は2011年6月期には20.4%まで低下してきており、グループ化したこれら企業の事業統合の成功を示しているといえよう。

同社の売上高も他の小売業者同様、年末や盛夏に繁忙期を迎えるという季節性はあるものの、さまざまなカテゴリー商品を販売し、異なるマーケットで営業展開していることから、季節性はそれほど顕著ではない。


マーチャンダイジングと在庫管理

ドン・キホーテ 店内の様子(出所:会社データよりSR社作成)

同社が採用するマーチャンダイジング手法の組み合わせは、他の小売業者との差別化要素となっている。

同社のマーチャンダイジングの特徴は、多数のSKU(最小在庫管理単位)と一風変わった商品を含む多種多様なカテゴリーである。都市部にある大型のドン・キホーテ店舗では、食料品や衣料品に始まり、ロレックスのような高級腕時計、テレビなどの家電製品や目新い商品まで含めると、各店の取扱商品数は約4万SKUに上る。取扱商品の幅広さにより、宝探しのような雰囲気が創り出されている。現在では定番品を中心に本社において集中購買が行われているが、スポット品については、各店舗が独自のマーチャンダイジング手法を実践できる高い自由度を持つ。

一方で、店舗ごとに全く性質の違う商品が扱われるため在庫管理が大きな課題となるが、同社は在庫管理において卓越した力を発揮している。在庫は地域ごとに縦割りで、商品グループごとに横断的に管理されている。在庫管理の最終責任は商品グループにある。定番品は通常自動発注で、SKU単位で管理することによって、長期在庫を持たないような体制が整備されている。同時に、同社は購買においても店舗ごとのマーチャンダイジングにおいても、店舗が独自の商品や手法で競争を勝ち抜いて人気店となれるよう、本社による過剰統制や厳格管理を意図的に避けている。


業態別店舗数

同社は独立した店舗を構え、商品を販売する従来型の小売業者である。主な業態は、同社の主力である「ドン・キホーテ」と、長崎屋のグループ化を機に創られた大型ディスカウント店の「MEGAドン・キホーテ」である。PAWは大型のドン・キホーテにそれを補完するテナント事業が組み合わさった業態である。また長崎屋、ドイトの店舗も何店か運営されている。

なお、「ドン・キホーテ」はドン・キホーテ単体で運営されているものが大半である。また、MEGAドン・キホーテは旧長崎屋店舗をリニューアルしたものが大半であるが、他業態からの転換や新規に出店された店舗も幾つかある。


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2011年6月期末時点の単体ベースでの所有店舗数は169(ピカソ、PAW業態含む)。店舗総数のうち(主要顧客を主婦層とする)地方の店舗が全体の6割を占める。グループ全体の店舗数は、2010年6月期末の220店に対して、2011年6月期末は228店である。

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ドン・キホーテ(通称「ドンキ」)は、同社の主力業態であり、店舗面積は1,000~1,500 ㎡で、通常数フロアから構成されている。商品は「圧縮陳列」方式で陳列され、狭い通路に高くそびえる陳列棚には4万~6万SKUの商品が詰め込まれ、手書きの派手なPOPサインで飾られている。店舗のレイアウトは初めて訪れる顧客には分かりにくい上に頻繁に変更される。しかし、この「混乱」は力を入れている商品にリピート客を引き付けることを意図した店舗の戦術である。全ての商品が陳列されており、在庫商品を保管するスペースは存在しない。

中心となる客層が、(暇つぶしの20代というよりはむしろ)主婦層である地方店舗では、従来の業態に修正が加えられている。こうした地方店舗においては、一般的な小売店舗に近づく傾向が見て取れる。ドン・キホーテ店舗が一般的な小売店舗に近づきつつあるということは、ドン・キホーテ業態が従来備えていた斬新性を一部喪失しつつあるということも意味する。競合他社との差別化に成功し続けるためにも、同社はその独自性を維持する必要があるとSR社は考える。

MEGAドン・キホーテはドン・キホーテ業態と従来型の大型総合スーパー業態の間のギャップを埋める新たな大型店舗業態である。同社はここ数年、郊外型大型店舗モデルの確立を模索してきた。(好立地に不採算店舗を多く抱え倒産した総合スーパーの)長崎屋の買収を契機に、同社のMEGA店舗コンセプトが考案され、MEGAドン・キホーテ1号店は2008年4月にオープンした。MEGAドン・キホーテは、「アミューズメント」のコンセプトを残しながら、長崎屋の既存店舗を改装した上で営業するという試みとなっている。

MEGAドン・キホーテは、生活防衛型ディスカウントストアである。従来のドン・キホーテ業態が、2分の1がディスカウント商品、2分の1がエンターテインメントで構成されているとした場合、MEGAドン・キホーテ業態は5分の4がディスカウント商品、5分の1がエンターテインメントから構成されているといえよう。2011年6月末時点でMEGA店舗数は43店となっている。同社によれば、追加設備投資はないと想定して、キャッシュフローの回収期間(在庫投資回収も含む)は約3年、店舗レベルで30%のROIが上げられるとのことである(計算では店舗の建物は賃貸と想定。2011年6月末時点でMEGAドン・キホーテの80%は賃貸物件)。MEGAドン・キホーテの店舗規模は3,000㎡から9,000㎡と店舗ごとに大きく異なっているが、これは他店が立ち退いた店舗やドン・キホーテが取得した既存店舗を改装しているためである。

商品構成については、MEGAドン・キホーテは食品のウェイトが高く、ドン・キホーテの24.7%に対し52.7%となっている。一方、時計・衣料品はドン・キホーテでは25.5%だが、MEGAドン・キホーテでは19.7%と低めである。(比較は2010年6月期のMEGA業態とドン・キホーテ業態の売上をベースとしている。出所:同社データ)。

Essenceは同社が2012年6月期に入ってスタートした新業態である。売場面積は300㎡から1,000㎡、アイテム数は10,000から20,000となっており、ドン・キホーテ店舗と比べると特定の商品に特化した小型店舗となっている。同社によれば、ドラッグストア、スーパー、コンビニエンストアの特色を備えた都市型・ディスカウントストアをイメージした業態であるとのことだ。2011年9月時点で、同業態の出店計画は川口駅前店、荻窪店の2店舗に留まるものの、この2店舗が一定の収益性を確立した場合には、出店を増やす意向であると同社はコメントしている。規模、品揃えなどを踏まえれば、ドン・キホーテ店との比較で機動的な出店が可能なだけに、この業態が成功すれば、今後の同社の成長戦略を左右する重要な要素となりうるとSR社は考えている。

PAW(「パウ」と発音)は、ドン・キホーテを核テナントに、ゲームセンター、美容院、DVDレンタルショップなどのテナント数店で構成される複合商業施設業態である。PAWは、大型店経営のための同社初の試みであった。モデルは従来のドン・キホーテ業態と同じだが、さらなる集客力とテナント賃貸収入がこれに追加される。当初、PAW店舗は成功を収め、2008年6月期末時点で合計28店に拡大した。しかし、その後主力テナントであったゲームセンターが営業時間、未成年の入店、景品付きゲーム等に対する規制強化により苦境に立たされ、PAWのテナント構成に影響が出た。ドン・キホーテ店舗の増床やMEGAドン・キホーテ業態に転換可能なPAWについては、順次変更されている。2011年6月期末の店舗数は23店舗である。

ピカソは、小型の店舗業態として首都圏内における小規模立地の展開をしている、ディスカウント商品と弁当・惣菜類を組み合わせたコンビニ型のフォーマットだが、高い収益を得るための充分な集客力確保が難しいことがわかった。ピカソモデルの店舗は売場面積300~500㎡で、ドン・キホーテ店舗と比較して投資額は3分の1、店舗在庫は約4分の1となる。

ドイトの店舗は、DIY用品のホームセンターである。2011年6月期末時点で16店と、グループ化時点の24店から減少している。ドイトの店舗面積は平均2,800㎡で通常のドン・キホーテの店舗より2~3倍広い。SR社は、いずれドイト店舗のうち何店かもしくは全店がドン・キホーテおよびMEGA業態に転換されると推測している。

長崎屋。2011年6月期末時点の長崎屋店舗数は6店舗。


SW(Strengths, Weaknesses)分析

ドン・キホーテの強み、比較的小規模の店舗において圧倒的な量の在庫を高い回転率で回せる点にある。これは競争の激しい日本の小売環境においても、高い収益率と高水準のキャッシュフローを創出できることを意味している。ドン・キホーテの店舗は、顧客の関心を常に引きつけておくべく意図的に大量の在庫を抱えている。それゆえ在庫管理が最も重要であり、また滞留在庫は即流動化する必要がある。また、柔軟なレイアウトとディスカウント、これらの決定権限を店舗レベルに委譲していることがドン・キホーテの重要な要素でもある。一方、顧客の観点からすれば、ドン・キホーテは他店とは比べ物にならないほど多種多様な商品を、楽しくわくわくする雰囲気の中で、他店よりも安い価格で提供してくれる。平均客単価は、比較可能な大型専門店や総合スーパーよりも高い。

強み(Strengths)

  • 野心あるトップ・マネジメント:同社は、創業者が今も経営を行っているオーナー企業である。日本においては株主価値の追求が常に最優先されるわけではないが、こうしたオーナー企業は例外で、成長を志向した経営が行われる傾向がある。
  • 楽しく安い買い物ができる場所としての強力なブランド:同社が作り上げたユニークな小売ノウハウは、仮に同じ歴史をたどることができたとしても模倣することは極めて難しいオンリーワンの存在だ。また、この小売技術を従来の業態の枠を超え、新たな業態にも持ち込めることを示した。競合他社に比べると、コスト面と差別化の両方で優位性がある。
  • 資金調達のしやすさ:上場企業である同社には、さまざまな資本調達手段がある。これは上場している他の小売業者にも当てはまるが、ディスカウント業者としての同社には重要な差別化要因である。SR社は、同社のビジネスモデルは、不採算の既存小売業者を吸収できるユニークな位置付けにあると考える。昨今の消費環境、人口構成を考えると、ある規模を超えて収益を上げられるのは低価格路線をゆく小売業者のみと主張するのも極論とはいえない。低価格を貫く小売業者の中で総合ディスカウント業者は総合スーパーや百貨店を吸収できるという意味で比較的有利な位置にいる。それは取扱商品カテゴリーが非常に多いこと、エリアに応じて力を入れたい商品カテゴリーを柔軟に調整できることなどによる。家電量販店などの専門店も、大型の「器」の事業吸収は可能だが、おそらく柔軟性は低く、多くの場合低コストの「器」を自社で築くことを好むであろう。同社は日本で唯一上場している最大手のディスカウント小売業者である。

弱み(Weaknesses)

  • ドン・キホーテ業態への依存性:同社は郊外エリアへの自社事業の展開を進めてきているが、その独自性を今後も維持できるかどうかは未知数である。コア・コンピテンスの枠外のマーケットをターゲットとしたMEGAドン・キホーテは、広い郊外エリアに適したアプローチを展開する試みである。
  • ドン・キホーテ業態が海外で通じるかが不確実:これはやや中長期的な観点からの課題である。モデルは日本のマーケットにはうまく適合しているが、海外マーケットで消費者を引き付ける力は十分発揮できていないようだ。ただし多少の試験的施行をすれば、アジアの人口が集中したマーケットに当モデルを持ち込める可能性はある。現在のところ海外店舗はハワイに4店舗を展開するだけであるが、ドン・キホーテUSAは2006年1月に取得したのち、当初の赤字決算から2010年3月期は営業利益率4.2%を計上できるまで改善している。同社が真剣に海外マーケットへの事業拡大を考えるのであれば、そのための詳細な青写真が必要である。
  • 過去の風評問題:ここ数年間、同社は物議を醸し出さないよう努めてきたが、「トラブル・メーカー」としての評判は、当面は消えないであろう。安田会長の歯に衣着せぬ言動、慣習に縛られないビジネスモデル、店舗の派手な宣伝は保守的な日本社会にはなじみが薄く、世間から必要以上に注目を集め易いといえる。


グループ企業、M&A、投資

ドン・キホーテ・グループは16社で構成されており、ドン・キホーテ事業に次いで長崎屋とドイトの営業が大きな部分を占める。グループ事業は小売に重点を置かれているため、将来的に長崎屋とドイトが単体に組み込まれることも理に適っている。

長崎屋は同社における最大の子会社であり、そのM&Aも大規模であった。取得時には総合スーパー56店舗があった。長崎屋の店舗は駅前や郊外の人口が多いロードサイドという立地にあり、MEGAドン・キホーテ店舗へ大半が転換されている。

ドイトのM&Aが行われたのは、2007年の長崎屋取得の数ヵ月前である。ドイトは収益性が低かったが、店舗の立地条件は良かった。ドイトを子会社化して間もなく、同社はドイトの店舗をドン・キホーテ業態、またはドイト店舗にドン・キホーテを併設した複合型に転換した。その結果、店舗はすぐに黒字転換し、グループ収益に大きく貢献するようになった。余剰人員は、慢性的に人手不足状態にあったドン・キホーテの店舗に振り向けられた。

2011年6月期を終えた段階で、同社は長崎屋の立て直しとMEGAドン・キホーテのコンセプト開発に注力しているため、新規の大規模M&Aは考えていないと述べている。同社は、当該2企業において目覚ましい結果を出さない限り、さらなるM&Aに対して市場が否定的な見方をするであろうことを認識している。また一連のM&Aで同社の財務的負担も増えたため、2010年6月期から2011年6月期までの期間はM&Aに関していえば「消化」の時期に該当した(過去のM&Aに関する詳細は「沿革」」の項を参照)。

2011年9月30日時点で同社は澁澤倉庫株式会社(東証1部9304)の発行済株式724.1万株(9.52%)を保有している。

2011年8月31日時点で同社は名古屋を基盤とする百貨店事業者、株式会社丸栄(東証1部8245)の発行済株式333.2万株(3.84%) を保有している。


海外事業

同社は、ダイエーから取得した4店舗をハワイに所有し、運営している(ドン・キホーテUSA)。海外事業は、同社にとって限定的であり、向こう2-3年で拡大する可能性は低い(2011年9月末時点)。


市場とバリューチェーン

市場概況

日本の小売市場は成熟しており、かつ長期的にみれば縮小傾向にある。その一因が日本の人口動態にあることはいうまでもない。日本の総人口は2007年から減少し始め、なおかつ少子高齢化が進んでいる。こうした市場環境下で、大手チェーンは、縮小する消費支出をつなぎとめるために、低価格戦略を取らざるを得なくなっている。しかし、大手チェーンは小規模な競合先との差別化に苦戦している。これは日本のサプライチェーンが細分化し、一部に地域的相違性があることから、仮にM&Aを実施したとしてもその後、取得した企業の事業統合が複雑になるなど、M&Aでの成長が難しいことにも起因している。日本で最も成功している日本の小売業者数社(同社、株式会社ファーストリテイリング(東証1部9983)、株式会社しまむら(東証1部8227))をみる限り、やはり低価格戦略が鍵となっている。

一部で、「日本の小売店舗が過剰である」とよく取り沙汰される。背景としては、日本は米国よりも人口が少ないにもかかわらず、米国と同じ位の数の小売店があることが挙げられよう。しかし、こうした単純な比較は、日米の消費行動の違いを無視したものである。日本では人口密度が高く、かつ徒歩で買い物に行く傾向がある。これによって、最寄りの駅近くの小規模な商店が生き残ることが可能となっている。一方で、米国では小売店が必要に迫られ拡大し、様々な消費ニーズを満たすための水平統合が行われていった。日本の都市部では、通常は近隣に複数の専門店が集まる商店街があるものの、これらの商店は1960年代頃から大手小売企業の攻勢を受け始めることとなった。最近ではデフレに強い大手チェーンによる支配がますます顕著になってきている。

SR社は、日本における本当の問題は、資本調達を容易に行えることにあると見ている。ダイエーをはじめとする、業績が悪化した多くの小売業者は、1990年代から2000年代にかけての政界の圧力を背景に、銀行によって何とか生かされてきた。小売業者は余剰人員を抱えて苦しむ大きな雇用主であり、小売企業の破綻は失業率の悪化という形で社会に悪影響を与える。このため、政界は小売業者の破綻に大きな抵抗を示してきた。このような政策スタンスが超金利時代と企業統治の甘さと相まった結果、通常であれば倒産すべき小売業者が非常に低い利率(約1%)で借入を行うことが可能となったものの、さらに低い収益しか生み出さず、株主価値を食い尽くしていった。破綻同然の何十社もの企業が生き延びたことで、新興の小売業者との競争が激化し、デフレ傾向がさらに悪化する結果を招いた。

2002年の金融危機を切り抜けた日本の銀行も徐々にその態度を変容させている。いまだ倒産を許容することには消極的ではあるものの、銀行は業績の悪い企業に対して再編や財務体質改善を迫っている。従って、経営難の企業には、支払金利は低いものの、新規の借入には、問題解決への取り組みを行う大きな圧力が伴うこととなる。企業倒産や、その結果としての失業も、以前よりは社会に受け入れられるようになっており、小売業界では統合再編の波が波及し始めた。

日本の小売業界で現在進行している変化は、世界で生じている変化に類似したものである。例えば、米国においては、以下に記載するような事項が顕在化している。

  • 価格が二極化し、高いブランド力を持つ企業と、低価格路線をゆく小売業者が、その中間にいる業者を犠牲にして、成功を収める傾向が見られる。マーチャンダイジングに強い高級百貨店が統合再編により生き延び、ウォルマートやターゲット、コストコ・ホールディングなどのディスカウントストアが成長する中で、中堅の小売業者は姿を消していった
  • 一握りの大手企業がますます市場占有率を高め、品ぞろえに類似化傾向が見られる。
  • オンライン小売業者が台頭している

日本における最近の傾向は、米国の状況と酷似している。百貨店は統合再編の波にさらされ、低価格チェーンが攻勢を強めている。その間、中堅の総合スーパー(GMS)チェーンは苦境に立たされている。ファーストリテイリング社、株式会社ヤマダ電機(東証1部9831)、株式会社ニトリホールディングス(東証1部9843)などの低価格の専門小売業者が成功を収める一方で、総合スーパーにおいては、新規モデルの開発は進んでいない。一方で、ウォルマート、カルフール、テスコなどの外資系の大手小売業者は日本市場でいずれもつまずきをみせている。また、地域密着型のイオン株式会社(東証8267)が低価格総合スーパーへと進化する試みを進めている。こうした状況下で、ドン・キホーテのMEGAドン・キホーテ業態が、日本のディスカウント小売業界に存在する大きなすき間を埋めていく可能性はある。同社の2011年6月期決算説明会資料によれば、同社はすでに売上高ベースで日本の小売業トップ20に入っている。


顧客

同社にの顧客層は、2つに分けられる。まず、20~30歳代を中心とした若年層であり、彼らは深夜に買い物をし、ドン・キホーテでの買い物を娯楽ととらえている。若年層は以前より同社の主要顧客層である。次に、主婦層であり、彼女らは日用雑貨品などを価格や鮮度(真新しさ)、使いやすさ等を基に購入している。同社が地方および郊外エリアに事業を拡大するにつれ、若年層の占める比率は低下しつつある。どちらの顧客層もドン・キホーテというブランドに対するロイヤリティは低く(容易に乗り換えされる)、地元商圏内に代替となる選択肢があるかどうかに依存するという側面もある。


サプライヤー

ドン・キホーテは数千もの卸売業者から仕入れを行っている。概してこのような卸売業者は、同社のような大手小売業者に対する力は極めて弱い。


参入障壁

小売業界の参入障壁は得てして低いが、同社のように成功し、競争力のある小売業者が作り上げた障壁はオペレーションのノウハウ等を考慮に入れると極めて高い。同社は、日本の小売企業トップ20社にしか享受することができない資本調達手段や仕入れにおける規模の経済力を有している。大規模な全国チェーンの運営は複雑な事業であり、日本は世界でも最も課題が多い市場である。


競合環境

同社は、複数の競合他社を持つ。都市部エリアでの最大の競合は、深夜はコンビニエンス・ストア、日中は専門小売店であろう。郊外の場合は、低価格のスーパー、その他のディスカウントストアが主な競合先である。

日本の小売業界は細分化しており、競合が激しく、多くの地域チェーン店が存在する。こうしたチェーン店は必ずしも利益の最大化という目的のために運営されているわけではなく、雇用の維持やプライドなどの非経済的な理由により運営されている側面もある。

ドン・キホーテは非常に競争力のあるビジネスモデルを有し、当初の都市中心部の夜間の市場から全国へチェーン展開を成功させた実績を持つ。同社がそれほど競争力を持たないカテゴリーは家電である。この分野は、規模と価格のみが差別化要因であり、ヤマダ電機社やヨドバシカメラ(非上場)が業界のスタンダードを決めている。

ディスカウントストアとなると、埼玉県が基盤で、11店舗を持つのみだが(同社ウェブサイトによる、2011年8月末時点)、ロヂャース(非上場)が比較対象とされることが多い。その他の例としては、ダイクマ(ヤマダ電機社の子会社、非上場)、ジャパン(スギホールディングス株式会社(東証1部7649)の子会社、非上場)がある。また日本各地に9つのアウトレットを持つコストコ・ホールセール・ジャパンが言及されることもある。


代替品

同社の行っている事業にはいくつかの代替サービスがある。エンターテインメントという点では、ゲームセンターやボーリング場に行くことが、ドン・キホーテにおいて買い物をすることの代替となり得る。PAWは、まさにこのような代替的活動を同じドン・キホーテの店舗に取り込むことで、対立ではなく相乗効果を生み出そうという試みであった。過去10~15年、消費者向けサービス事業のほとんどが法律で許されるぎりぎりの範囲で営業時間を延長している。同社にとって、競争が激しくなる、あるいは代替サービスが作られることといったマイナスの側面もあったが、結果的により活気ある夜間市場が作り上げられるなどメリットの方が大きかった。しかし最近では、夜間のエンターテインメント、中でも未成年に対する制限を目的とする規制が厳しくなってきた。たとえば、全国の自治体が16歳未満の夕方6時以降のゲームセンターや同様の施設への入店を禁止する法律を制定している。


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経営戦略

同社の戦略は、CV+D+A (コンビニエンス+ディスカウント+アミューズメント)を幅広い顧客基盤へ提供することによる成長である。さらなる店舗の開店または取得(コンビニエンス)と、低コスト(ディスカウント)を、楽しいマーチャンダイジングという独自の個性(アミューズメント)で維持しつつ実現することに焦点を当てている。一般的に、これはコスト・リーダーの部分的差別化戦略である。同社がM&Aで取得した小売事業も、いずれはコスト削減や運営および小売業態のスリム化のために単体事業に含めるだろうという予測は妥当と思われる。また、この先数年はコア・コンピタンスに注力し続け、企業グループとなるよりも、なるべく単一の企業体であり続けようとしていると考えることも妥当であろう。


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過去の財務諸表

前期以前の業績概況(参考)

2011年6月期通期実績

2011年8月18日、同社は2011年6月期通期決算を発表した(上表を参照)。

売上高は前年比4.1%増の507,661百万円であった。生活必需品や季節商品、プライベート・ブランド商品などの販売促進策が奏功し、主力のドン・キホーテ既存店売上高は前年比3.4%増(客数同3.1%増、客単価同0.3%増)と好調であった。また、長崎屋(稼働店ベース)も前年比9.8%増収であった。人件費を中心に販売管理費を抑制したことから、営業利益は前年比20.3%増の25,336百万円となった。特別損失は災害による損失1,894百万円、資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額682百万円など合計5,379百万円であったが、2010年6月期に計上した投資有価証券評価損が縮小したことなどにより、2010年6月期の特別損失5,156百万円より小幅増加したに留まった。特別利益が1,388百万円と2010年6月期の同892百万円より増加したこともあって、当期純利益は前年比23.7%増の12,663百万円となった。以上によって、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益のいずれも過去最高水準を更新した。

売上総利益率は25.4%と2010年6月期の同25.3%より0.1%の改善に留まったが、売上総利益率は東日本大震災を前後で動きが異なる。すなわち、震災発生前まで、同社は景況感改善を先取りした中高価格帯商品の充実を図りつつあったが、震災発生後は「客数増、販売点数増」に軸足を移し、マーケットシェアを高める方針に切り替えている。こうした方針転換は同社の四半期毎の売上総利益率の推移にも表れている。すなわち、第1四半期会計期間および第2四半期会計期間は売上総利益率が前年同期を上回っているが、第3四半期会計期間および第4四半期会計期間については売上総利益率が前年同期を下回っている。とはいえ、第3四半期会計期間および第4四半期会計期間の売上高は相応の伸びを示しており、販売管理費の抑制と合せて、営業増益に結び付いた格好だ。

法人別の業績概要は以下のようになる。注目されるのは、長崎屋であり、買収後初めて営業黒字化を達成した格好だ。

  • ドン・キホーテ:売上高346,559百万円(前年比6.1%増)、営業利益19,685百万円(同14.4%増)
  • ドイト:売上高19,387百万円(前年比1.7%減)、営業利益768百万円(同49.1%減)
  • 長崎屋:売上高124,377百万円(前年比2.9%増)、営業利益748百万円(2010年6月期営業損失1,881百万円)
  • Don Quijote(USA):売上高15,226百万円(前年比11.8%減)、営業利益754百万円(同5.0%増)

店舗状況

新規店舗15店(ドン・キホーテ7店、MEGAドン・キホーテ3店、ドイト4店、WR1店)、閉店7店(ドン・キホーテ1店、ピカソ1店、長崎屋2店、MEGAドン・キホーテ1店、WR1店)で2011年6月期の純増店舗数は8店舗であり、2011年6月期末店舗数は228店(2010年6月末220店)。また、2011年6月期における長崎屋のMEGAドン・キホーテへの転換は9店舗。


2011年6月期第3四半期実績

2011年5月9日、同社は2011年6月期第3四半期の決算発表を行った(上表を参照)。

2011年6月期第3四半期累計期間に関し、売上高は前年同期比2.7%増だった。生活必需品や季節商品、プライベート・ブランド商品などの販売促進策が奏功し、主力のドン・キホーテ既存店売上高は前年同期比3.0%増(客数同2.8%増、客単価同0.2%増)と好調であった。また、人件費を中心に販売管理費を抑制したことから、営業利益は前年同期比22.0%増となり、第3四半期累計期間ベースで過去最高益を更新した。

2011年6月期第3四半期会計期間の数値は、上表のようになる。売上総利益率が24.7%と2010年6月期第3四半期会計期間の同25.3%から低下した。同社によれば、東日本大震災によって商品調達が混乱し、一部で仕入価格が上昇したが、商品価格は維持したこと、日用雑貨品の売れ行きが良かったこと、などが要因であるとのことだ。この点に関しては、1)客数の増加によって売上増加が実現されていること(月次動向の既存店売上高前年比の3月、4月実績を参照)、2)同社が強調しているように、経費コントロールがなされていること(2011年6月期第3四半期会計期間の売上高販管費率は20.0%と2010年6月期第3四半期会計期間の同20.7%より低下)などを踏まえれば、SR社は特に懸念すべき点とは捉えていない。

同社は、東日本大震災の発生まで、時計・ファッションやスポーツ用品などへの商品ポートフォリオの見直しや中価格帯商品を充実させる施策の推進してきた。しかし、(2011年5月時点で)今後に関しては2008年秋のリーマンショック・世界同時不況以降の消費動向に類似した状況になると予想している。すなわち、生活必需品需要が増加する見込みとのことであり、価格訴求を同時に行っていく可能性も示唆している。

東日本大震災の影響

同社によれば、2011年3月11日に発生した東日本大震災の影響などは下記の通りとのことである。

  • 震災当日(3月11日)は全223店舗中約25%に該当する65店舗で営業休止措置を講じた。その後、店舗は徐々に再開し、営業休止店舗は、3月12日:14店舗、3月14日:8店舗、3月23日:5店舗、4月11日:2店舗、5月27日:1店舗、などとなっている
  • 2011年3月の大震災直前までのドン・キホーテ既存店売上高は前年比2.6%増、震災当日は同25.4%減となった。しかし、その後食品、日用雑貨品を中心に持ち直し、3月月間では同4.2%の実績となった
  • 今後に関して、震災および電力制限による影響は総じて軽微とみている。午後の電力消費のピークとなる時間帯のオペレーションは検討中とのことだが、営業時間は維持する方針とのことだ。なお、節電・省エネルギーへの対応として、長崎屋などの店舗において2,000百万円程度(2011年4月時点で600百万円程度を投資済み)をかけて電灯のLED化など改装を進める予定としている

New MEGAドン・キホーテについて

同社は2011年4月MEGAドン・キホーテの新たなタイプの店舗を2つ出店した。MEGAドン・キホーテ神戸本店とMEGAドン・キホーテ宇治店である。売場面積は1,000坪前後(3,300㎡前後)とドン・キホーテとMEGAドン・キホーテの中間程度であり、同社が苦手としてきた「生鮮食品」と「ミセスアパレル」の品揃えを抑制することによって店舗運営の効率性を高めた店舗であるという。立ち上がりは順調とのことであり、同社にとっては出店のオプションが一つ増えたことになるといえよう。


2011年6月期第2四半期実績

2011年2月4日、同社は2011年6月期第2四半期の決算発表を行った。また、同時に通期業績予想の上方修正を発表した。

2011年6月期上期実績については、ほぼ2011年2月1日に上方修正した計画値通り、堅調な結果となった。連結売上高は255,488百万円と前年比1.9%増、営業利益は14,193百万円と前年比27.9%増。主力のドン・キホーテ単体が売上高177,938百万円で前年比5.2%増、営業利益11,407百万円で前年比26.4%と好調であった。単体についてみていくと、既存店増収率は前年比2.7%増(客数:前年比2.2%増、客単価:0.2%増)であった。また、売上総利益率は25.2%と2010年6月期上期より0.4%上昇、中価格帯商品やレジャー、ファッションなど嗜好品の商品を積極的に投入した結果、ミックスが改善したことが寄与した。売上高販売管理費率も経費抑制によって18.8%と2010年6月期上期より0.7%低下(販売管理費は2010年6月期上期の33,001百万円に対し2011年6月期上期は33,369百万円)。営業利益率は6.4%と2010年6月期上期より1.1%上昇した。

法人別動向としては、ドイトが天候不順の影響もあって売上高が9,542百万円と前年比11.5%減収、営業利益は529百万円と前年比45.4%減益となった。一方、長崎屋が前年比1.2%減収となったものの、営業利益151百万円と2010年6月期上期の営業損失1,083百万円から大幅に改善した点が注目される。内訳は、長崎屋が衣料品の苦戦により前年比8.6%減収であったが、MEGAドン・キホーテの増収によって上記減収幅まで緩和された格好である。

2010年10月に経営支援を決定したフィデック社(東証1部8423)に関しては、2011年1月27日にフィデック社が実施した増資2,000百万円のうち、同社が1,700百万円を引き受け、連結子会社化(損益計算書上は2011年4月1日以降、貸借対照表上は2011年3月末となることが決まった。同社の貸借対照表は買取債権など資産が約11,000百円、有利子負債が約15,200百万円程度、フィデック社の連結化によって増加するに留まり、同社の財務与える影響は軽微である。

ちなみに、新業態として2010年10月1日よりスタートした会員制店舗のWRは、有料会員が想定ほど集まらなかったとのことで、2011年1月4日付で閉店、減損損失約390百万円を第2四半期の特別損失に計上している。

2011年2月4日開催の決算説明会における同社からのその他主要コメントは下記の通りである。

  • 社債償還資金などに係る資金は、銀行借入以外に社債発行よる調達を2011年3月中に計画。「エクイティ・ファイナンス」を実施する予定はない
  • 2012年6月期は経常利益30,000百万円、経常利益率6%をめざす。ドン・キホーテ単体の売上高総利益率改善とMEGAドン・キホーテの収益貢献本格化を見込む


2011年6月期 第1四半期決算

2010年11月4日、同社は2011年6月期第1四半期の決算および2011年6月期上期会社予想の上方修正を発表した。修正後の上期会社予想に対する進捗率は次の通り。

  • 売上高:48.3%(上期会社予想258,000百万円)
  • 営業利益:55.0%(同12,500百万円)
  • 経常利益:54.4%(同11,800百万円)
  • 純利益:50.6%(同6,100百万円)

売上高は前年同期比0.9%増だった。商品ポートフォリオの見直しや中価格帯商品を充実させる施策の推進、猛暑効果などによって、主力のドン・キホーテ既存店売上高は前年同期比1.8%増(客数同2.0%増、客単価同0.2%減)と好調であった。また、時計・ファッションやスポーツ用品など粗利益率の高い商品の販売が好評だったうえ、人件費を中心に販売管理費を抑制したことから、営業利益は前年同期比32.9%増となり、四半期ベースで過去最高益を更新した。純利益に関しては、資産除去債務会計の適用に伴い682百万円を特別損失に計上したことなどから、前年同期比13.5%減となった。

計画対比でいえば、売上高は計画値(128,000百万円)を下回ったが、営業利益は計画(6,100百万円)を上回った。

2011年6月期上期の会社予想の修正内容は以下の通り。

  • 売上高:258,000百万円(据え置き)
  • 営業利益:12,500百万円(当初予想12,000百万円)
  • 経常利益:11,800百万円(同11,200百万円)
  • 純利益:6,100百万円(同5,700百万円)

同社は、上方修正の理由について、第1四半期の決算実績が計画を上回ったためと説明している。通期会社予想については、2011年6月期第2四半期決算時に見直すとして、今回は据え置かれた。

2010年11月4日開催の決算説明会における同社からのその他主要コメントは下記の通りである。

  • 子会社業績は伸び悩むが、MEGA転換店は収益基盤の強化策の実験を進めている
  • 社債償還資金などに係る資金は「デット」による調達を計画しており、「エクイティ・ファイナンス」を実施する予定はない

ドン・キホーテ:既存店売上高は先に記載したように好調であった。主な要因は、商品ポートフォリオの見直しや中価格帯商品を充実させる施策の推進、猛暑効果などである。

まず、商品ポートフォリオの見直しに関し、月別販売高状況をみると、2010年6月期の第1四半期は食品、日用雑貨品などが売れていたのに対し、2011年6月期は時計・ファッション用品など同社が独自性を発揮でき、かつ粗利率が高い商品が牽引した格好だ。同社の説明によれば、2010年の春よりこうした「同社らしい商品」を顧客の目に付き易い場所に配置するようなレイアウト変更を実施するなど、仕掛けを施してきたことによるとのことだ。次に、中価格帯商品を充実させる施策とは、同社の説明によれば、顧客の消費行動が2009年末より単なる「生活防衛」から変化しつつあることを実感。その上で2010年に入ってから従来の製品よりも一段上の価格帯の商品構成を増やしてきたとのことである。最後に、猛暑効果とは、盛夏物の販売期間が長くなったことによって、値引きなどによって在庫処分をする必要性がなくなったことをさす。具体的には、月別販売高状況においてスポーツ・レジャー用品の販売が好調であったことに示されている。

2010年10月も既存店売上高は前年同月比5.4%増と好調だ。SR社は、天候要因はともかく、商品ポートフォリオの見直し効果や中価格帯商品を充実させる施策が功を奏しているのではないかと考える。

MEGAドン・キホーテ:既存店売上高(改装中の店舗は対象に含まず)は前年同期比5.8%であった模様。同社の表現によれば、「100点満点中、現状は30から40点、1年後は50点ぐらいだろう」とのことである。

法人別にみれば、長崎屋は2010年6月期第1四半期が170百万円の営業損失であったが、2011年6月期第1四半期は営業利益150百万円と黒字に転換している。同社によれば、買収される前の長崎屋は営業黒字の月が年間3ヵ月しかなかったが、2010年6月期は同様の基準で5ヵ月ほど営業黒字が計上できるようになったとのことである。

WR:2010年9月23日より運営を開始した新業態(注:同業態は数ヵ月で閉店している)


2010年6月期通期実績

2010年8月18日、ドン・キホーテは2010年6月期通期の決算発表を行った。詳細は下記の通りである。

  • 売上高:4,876億円(前年同期比1.4%増)
  • 営業利益:211億円(前年同期比22.7%増)
  • 経常利益:211億円(前年同期比32.0%増)
  • 当期純利益:102億円(前年同期比19.7%増)

連結売上高は前期比1.4%増の4,876億円であった。主力のドン・キホーテの既存店売上高は前年同期比1.5%減だったが、連結ベースで2店舗の店舗数純増があった。商品別(ビジネスの項の「商品分類別の状況」の表参照のこと)には、食品の売上高が前年同期比13.6%増、日用雑貨品の売上高が同15.8%増と好調だったのに対し、家電製品(同1.8%減)や衣料品(同50.3%減)が苦戦した。ドン・キホーテ単体の売上総利益率は横ばいだったものの、連結ベースでは消費環境に対応した商品構成の変更や価格引き下げに加えて、天候不順の影響およびMEGAドン・キホーテ店の増加などにより1.2ポイント低下した(ただし、0.5ポイントは会計処理変更でテナント賃貸事業費用が売上原価に計上されるようになった影響で、実質は0.7ポイントの低下)。

販管費については、グループ経営の効率化や、人件費、地代家賃、広告費などの経費削減などがあり、売上高販管費率は21.0%と対前年同期比で1.9ポイント改善した(このうち0.5ポイントは上述の会計処理の影響であることから、実質は1.4ポイントの改善)。その結果、営業利益率が前年同期の3.6%から4.3%に改善、営業利益は絶対額としても211億円と前年同期比22.7%増の大幅増益となった。

特別損益は、投資有価証券評価損26.6億円、有価証券売却損5.1億円、店舗撤退損失4.0億円などにより42.6億円のマイナスだったものの、当期純利益も前年同期比19.7%増の102億円だった。

2010年6月期の設備投資額は228億円だった。主な内容は、新規出店、業態転換、MEGAドン・キホーテ店の再改装および店舗用地の購入など。

店舗状況:2010年6月末時点で単体合計店舗数は162店となり、2009年6月末に比べ12店舗増加した。長崎屋の店舗数は42店舗だった。連結の店舗数は220店舗で2009年6月末に比べ2店舗増加した。新規出店はドン・キホーテ店の8店舗とドイトの1店舗、閉店は7店舗。これ以外に長崎屋のMEGAドン・キホーテ店およびドン・キホーテ店への転換が10店舗、MEGAドン・キホーテ店の再改装11店舗なども行った。

※長崎屋の業態転換について

ドン・キホーテは2007年に総合スーパー事業者である長崎屋を買収後、長崎屋店舗の業態転換を進めている。売り場面積が比較的小規模な店舗はドン・キホーテ業態へ、多層階店舗など大規模店舗は新たな店舗業態としてMEGAドン・キホーテへ転換されている。買収時に55店舗あった長崎屋店舗は2010年6月期には長崎屋業態が17店舗、MEGAドン・キホーテおよびドン・キホーテ業態が25店舗(14店舗は閉鎖)となっている。2011年6月期末までにはさらに7店舗がMEGAドン・キホーテおよびドン・キホーテ業態に転換される見込み。残る10店舗については当面長崎屋業態のまま営業が継続される見通しである。

法人別の業績は以下の通り。

ドン・キホーテ(単体):売上高は3,267億円(対前年同期比6.1%増)だった。デフレ傾向が続く状況下、既存店売上高は会社計画の1.0%減に対し実績は1.5%減だった。商品単価下落の影響を受けたが(5.1%減)、来店客数の増加(3.8%増)でカバーした。ドン・キホーテ単体の売上総利益率は0.2ポイント改善、営業利益率も2009年6月期の4.7%に対し、2010年6月期には5.3%まで改善した。ドン・キホーテの営業利益は約172億円で、連結営業利益の81.7%を占めた。2、3年前までドン・キホーテの業績を牽引していた主力商品は高価格のファッション関連製品、ブランド製品や家電製品であった。これらの売れ行きの激減を受け、同社はいち早く食品や家庭雑貨など節約型・生活防衛型商品の品揃えを拡充することで業績を下支えしたと言えよう。SR社は、商品構成や販売促進の方法を機動的に変化させたことが、経済環境が決して良くなかった2010年6月期の増益につながったと見ている。

長崎屋:売上高は1,209億円(前年同期比1.6%減)だった。店舗数減少(純減4店)や業態転換に伴う営業期間ロスの影響を受けたが、同社によるとMEGA転換店においては、業況は着実に改善傾向にあり、小売事業の売上高は前年同期比5.6%増となった。衣料品がミセスアパレルを中心に不振(売上高はほぼ半減)だったが、主力の食料品は健闘した。営業利益は2009年6月期の69百万円の損失に対して、2010年6月期は1,881百万円の損失だったが、2009年6月期にはテナント賃貸事業の営業利益が約25億円含まれていたことを考慮すると、実質的には5億~6億円の改善である。SR社の見解では、長崎屋の収益改善は当初見込まれていたよりペースは緩やかであるものの、着実に前進している。2008年4月のMEGA業態の初出店以来、同社が行ってきた「壮大な実験」は実を結びつつあると言えよう。2010年8月の決算説明会において、安田隆夫会長はMEGAドン・キホーテ店舗がほぼ全店黒字基調になりつつあることを指摘し、収益改善が進んでいることを強調した。MEGAドン・キホーテは生鮮食料品を含む食品の取扱い比率が高く、これまでの店舗では重い買い物袋を持った主婦をドン・キホーテが従来から強みとしている日用雑貨に惹き付けるのは難しかった。改善策としてこれまで一つだった業態を、例えば1階は食料品、2階はドン・キホーテ業態というように明確に分け、ファミリー層の買い物の利便性を高めている(妻が食品の買い物をしている間に、夫はドン・キホーテで買い物ができる)。

ドイト:売上高は197億円(対前年同期比17.3%減、純増減0店)だった。工具を中心に木材・金物・塗料など専門性・買い回り性の高いプロ需要商品が好調だったが、低温・多雨など天候不順の影響を受け園芸・植物の売上が不振だった。一方利益面では収益性の改善が進み、営業利益は前年同期の541百万円に対し、1,508百万円と大幅に改善(前年同期比+967百万円)、売上規模は大きくはないものの、営業利益率も7.6%とドン・キホーテ単体の営業利益率5.3%をしのぐ水準まで上昇した。


損益計算書

image:Don-Quijote-JP-Income-Statement.png


過去の業績動向

同社は創業以来、そして上場後も含めてその急速な成長を新規出店によって実現してきた。しかし2000年前後、この急激な成長が論争を引き起こした。ドン・キホーテの出店に対し近隣住民が公的秩序の名の下、異議を申し立てたところへ、イデオロギーの異なる一部の団体が加担し、さらにメディアも便乗したのである。当初は規則に違反していないと自信を持っていた同社は対応が遅れ、これにより一時的に評判が悪化していったが、6ヵ月程度で論争は収束した。また、この時期は偶然にも、都市中心部の店舗不動産価格が上がって物件探しが難航し、郊外エリアに移行しようとしていた時だった。地方の店舗に重点を置くということは、すなわち食品の販売方法を学ぶ必要性を示唆するものであり、ROIC (投下資本収益率)は落ち込み始めた。

同社は一連の経緯から、様々なことを学び、改善を経て新たな成長ステージに向かった。すなわち2000年以降の新規出店や店舗運営に際しては、2000年6月から施行された大店立地法に基づき、さらに地域環境に配慮しながら店舗設備にコストもかけた。さらに社内体制を強化し、出店政策にも変更を加えた。これらにより、2000年6月期の期末店舗数27店から2011年9月期末までで169店に増加したが、この間、何ら論争に至っていないという事実を認識しなければならない。


image:Don-Quijote-JP-profit-margin.png


2007年以来、小売業界に影響を及ぼす可能性のある新しい法規制や、より厳しい法規制が制定される傾向にあった。中でも特筆すべきは、消費者金融業者の利息を制限する利息制限法、建築基準法の改正、街づくり三法(「大規模小売店舗立地法」、「改正都市計画法」、「中心市街地活性化法」)、風俗営業法の下の規則の厳格化、および「公的妨害行為」防止のための自治体の法律などである。これらの規制に適合し、あるいは影響を最小限にするため、同社は従来のビジネスモデルを改善した。また、2005年央から徐々に進行した円安は輸入商品に打撃を与え始め、原油高も加わった原材料高騰により宝飾品や時計などに対する国内需要が冷え込み、状況はさらに複雑化した。同社の近年の業績は、こうした課題を踏まえた上で分析されるべきだと、SR社は見ている。同社は、食品・日用雑貨品を強化したビジネスに速やかに移行できたことで、そのビジネスモデルの柔軟性を証明できたと信じている。

ドイトおよび長崎屋の取得は、同社が高い収益性を維持し、投下資本に対し目覚ましい収益を上げているという事実を覆い隠している。こうした不採算部門がいったん黒字転換すれば、15% 近いROEおよび20% 近いROICも達成可能であろうといえる。


過去の会社業績予想と実績

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貸借対照表 

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同社の貸借対照表は小売業者の典型といえる。2011年6月期末時点の総資産は3,413億円で、そのうち23.97%の815億円が在庫である(「マーチャンダイジング」の項の在庫に関する記述を参照。)さらに固定資産2,067億円のうち、大半が土地 (871億円)、建物(581億円)、敷金および保証金(333億円)等の店舗物件関連である。2010年6月期に、同社は目黒区の物件を約70億円で取得し、新本社とドン・キホーテ店舗を入れている。また、同社は約44億円の投資有価証券を有している。


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負債の部は、同社がさまざまな資金調達手段を柔軟に利用していることが示されている。2011年6月期末時点で流動負債に含まれる有利子負債は396億円である(主なものは、1年内償還予定の社債129億円と1年内返済予定の長期借入金118億円)。また、長期有利子負債には長期借入金356億円のほかに580億円の普通社債および3.5億円の転換社債が含まれる。同社は1996年にJASDAQにIPO後、さまざまな資金調達手段を利用してきた。IPO後、同社は1998年と1999年の2回の公募で新株を発行し、株主資本を調達している。また、同社は転換社債も積極的に発行してきている。2011年6月末時点の発行済残高は以下の通りである。


image:Don-Quijote-JP-convertible-bond.png


資金調達の必要性に関しては、特に2013年満期の転換社債が早期償還を迎えた後の財源の補充のために200億~300億円の資金調達を検討しているのではないかとSR社は考える。同社の株式保有者にとっては重要なことだが、同社は近年、資金調達手段として社債等を活用しており、エクイティ・ファイナンスよりもデッドでの調達により重きを置いている。


一株当りデータ

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株主還元

同社は、成長を実現し、それが株価上昇に反映れることによって、株主への利益還元することを優先事項としてきた。また、上場以来、増配傾向にある。ただし、2011年6月期の配当性向は16.7%と高い水準ではない。

同社はこれまでに2回、株価の下げ幅が大きすぎると経営層が判断した際に、自社株買いを実施してきている。また、過去のエクイティ・ファイナンスと転換社債の活用および株式分割によって発行済株式数は増加しており、2011年6月期末の(株式分割調整後)発行済株式数は、2000年6月期と比較して28.6%増となった。また、この間、EPSは211.8%増、CAGR(年平均成長率)は10.9%となっている。


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キャッシュフロー計算書 

image:Don-Quijote-JP-cash-flow.png


同社の単純フリーキャッシュフローを分析しても、資金利用や調達に関する明確なパターンは見いだせない。営業キャッシュフローは拡大傾向にあり、2000年6月期から2011年6月期までのCGAR(年平均成長率)はおよそ21%である。財務活動によるキャッシュフローは投資のための資金源としての重要性が増した時期もあったが、同社が過去数年間、積極的に企業買収を行ったことが大きい。

重要なのは、同社の運営体質が変化してきているという事実であり、営業キャッシュフローの数値のみを捉えても確固たる結論を導くことは難しいといえる。「社会的」リスク(防火、防犯、および迷惑防止)への意識の高まりとその結果としての対策をとることで、同社のキャッシュフローは影響を受けた。また、地方への出店も都心型店舗に比べキャッシュフロー的に見劣る立地への進出による影響もあった。2006年及び2007年の企業買収は売場総面積の大幅な増加を同社にもたらしたが、同社は買収により取得した店舗のキャッシュフロー改善に取り組んでいる。こうした取り組みの効果は、2011年6月期に顕在化している。


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その他情報

沿革

1980年、同社は現会長の安田隆夫氏により設立された。安田氏は、当時経営していた小さな店舗において夜間に清掃と在庫補充を行っていた際に、夜に買い物をするニーズがあること、また、そのような時間帯の競合はほぼ皆無で、収益性が十分見込めることに気付いた。ドン・キホーテの全社売上高の50%以上は今でも午後8時以降の営業時間帯に生み出されている。安田氏は1989年にドン・キホーテ第1号店をオープンしたが、「終夜営業」と、詰め込めるだけの商品を詰め込む「圧縮陳列」というまさに二大原則に則ったものであった。

このほかに、創業当初から今日まで受け継がれているドン・キホーテ店舗の特徴は、その都度手書きで作られるPOPディスプレイと、並行輸入したロレックスなどの高級腕時計から「コスプレ」の衣装、さらには「スポット」品に及ぶ多種多様な商品の豊富なラインアップである。ドン・キホーテ店舗で販売される約30~40%のアイテムは、流通市場に滞留する過剰在庫品や卸売商、その他小売業者の在庫一掃(閉店、倒産)で調達されたものである。このようなスポット品を購入することで、低価格販売を行っても高い利益率を得ることが可能となっている。

安田氏のもう一つの発見は、都市中心部の若者たちが時間をつぶすためにショッピングに娯楽性を求めていることであった。ドン・キホーテに来店する顧客は、お得な商品を求めるよりも買い物をする楽しみを追求する「お楽しみハンター」たちで、他店では扱っていない目新しい商品を購入してくれた。このような目新しい商品の販売が同社の利益率を高め、そのビジネスモデルを完成に導いた。同社は現在、そのビジネスモデルをコンビニエンス+ディスカウント+アミューズメント(CV+D+A)という公式で表している。

当初、同社の経営陣は、各店舗の商品セクションの責任者に対し、仕入れやマーチャンダイジングの決定において前例を見ないほどの自由裁量を与えた。各責任者はモチベーションが高まり、他店舗や同一店舗内の他セクションの他の責任者と競ってマーチャンダイジングに取り組んだ。近年になって仕入れは本部集中型方式に変更されたものの、引き続き店舗スタッフには大幅な裁量が与えられている。

1996年に同社は日本証券業協会に株式を店頭登録し、2000年に東証1部に昇格している。

上場企業になってまもなくの同社の歴史は数々の「論争」で彩られたものであった。同社が深夜の時間帯に娯楽街以外のエリアに大型店舗を出店し始めると、一部の地元住民は猛反発した。この件で、経営陣は、住民と話し合いを行い、詳細において妥協し、住民の不安を和らげるよう努力することで問題を解決する術を学んだ。また、同社は犯罪事件の被害にもあっており、その際マスコミから注目を浴びたが、それはあまり好意的なものではなかった。経営陣が初期の広報政策の誤りから学んだこともあり、2005年後半以降は問題も収束に向かった。しかし、その型破りなビジネスモデルゆえに、同社は今後もマスコミの注目を浴びるものと思われる。ただし、過去のマスコミ報道は、同社の株価には時折影響を及ぼしたものの、その収益を落ちませることはなかった。

同社は急ピッチで拡大し、1997年6月期末時点に7店であった店舗は2000年6月期末時点には27店に増加した。

コンビニエンス・ストアへの対抗となる業態を模索する一環として、2001年6月期には小規模商圏に対応する実験モデルとなるピカソ業態が誕生した。しかし、ピカソ店舗は2006年6月期に15店まで増加した後、新規出店を見送っており、収益に大きく貢献したことはなかった。また、同社はPARO “Purchase Amusement Rambling Oasis”(買い物とアミューズメントとぶらぶら歩きのオアシス)という名の大型店舗業態を創出している(名称はその後PAWに変更されている)。

2002年6月期末に、同社の経営陣は「成長の第2ステージ」について語り、その際に、ドン・キホーテ、ピカソおよびPAWがフォーマットとして完成した3業態であると述べている。また、同社は、東京都心から郊外への拡大を手始めに全国展開に乗り出し、大阪、名古屋、福岡、札幌にも出店を進めた。

2003年6月期に同社は医薬品の販売を開始。薬剤師が店舗に不在でも、テレビ電話を通じて消費者と薬剤師を対話させることで医薬品を販売する仕組みを採用し、日本の厳しい医薬品販売規制をくぐり抜ける革新的な試みを行った。消費者には好意的に受け止められたものの、監督官庁である厚生労働省が異議を唱え、その後、さまざまな議論を経て、テレビ電話を通じた医薬品販売は条件付きで認可されることとなった。しかしながら、最終的には、2009年4月の薬事法改正の施行後に当該サービスは廃止される運びとなった。

2004年6月期に、同社は(同社の証券コードと同じ)「7532」という名の新しい中期計画を発表した。計画値は、経常利益率7%、EPS 500円、3年以内の売上高3,000億円達成、売上高の2桁成長および収益率の20%成長であった。

2005年6月期に、同社はマスコミによるバッシングに直面した。2004年12月に同社の2店舗で放火による火災被害が発生し、従業員3名が死亡、8名が負傷したが、同社の「圧縮陳列」は、火の回りを早め被害者の避難を困難にさせる要因となったと非難されたのである。対応措置として、同社は、消防法に定められた基準を上回る防災設備を設置し、常駐警備員を店舗に配置させた。

2005年8月に同社は惣菜・弁当専門店のオリジン東秀株式会社(非上場)の株式を取得する意思を示した。同社はコンビニエンス・ストア型の店舗業態の開発に意欲的であったが、惣菜・弁当のノウハウがなかったことから、オリジン東秀社を買収することで、コンビニエンス・ストア運営に不可欠なノウハウを取得する意向であった。2006年2月までに同社が株式市場を通じて買い付けたオリジン東秀社の株式は47.8%に上ったが、オリジン東秀社はドン・キホーテの株式取得を敵対的な買収と見なした。最終的には、イオン社がオリジン東秀社を救済する「ホワイトナイト(友好的な買収社のこと)」として現れ、ドン・キホーテはオリジン株式を売却、同社が切望したコンビニ業態の開発は棚上げとなった。

同社は2005年にも再び小さな論争を巻き起こした。この事件は、同社の独特な企業文化を象徴するものかもしれない。2005年3月に大阪で観覧車付きの店舗の出店し、成功を収めた同社は、続いて六本木店の屋上にもハーフパイプのローラーコースターを設置させた。しかし、そのようなアトラクションが近隣に騒音を起こすとして一部住民からの猛反発を浴びた。結局、同社はこのアトラクションを撤収することとなった。

2006年11月に同社は、埼玉、東京、神奈川でDIYホームセンター24店舗を運営するドイト株式会社(非上場)の再建の受皿会社となり、ドイト社の債務を149億円で肩代わりすることとなった。これは、ドイト社の1店舗当たり620百万円の投資を行ったに等しい。もっとも、これによって同社は好条件の店舗立地を多数確保し、簿価90億円相当の土地を取得した。(当時のドン・キホーテ店舗の平均延床面積1,175㎡に対して)ドイト店舗の平均延べ床面積は4,169㎡であり、幾つかのドイト店舗は大型のドン・キホーテ・ストアには理想的であった。同社は着実に営業の再建を進めていった。2007年6月期のテーマはドイトのDo It Yourself (DIY)に引っかけて「Do It Myself !」であった。

2008年6月期には、2007年10月に株式会社長崎屋(2000年までは上場)を買収した。長崎屋は18県に55店舗を有する総合スーパー事業者であった。同社はまず株式会社キョウデン(東証6881)およびその関係者から86%の株式を買い付けた後、合計133億円を支払い、30億円の純債務を引き受けるとともに長崎屋を100%子会社化した。長崎屋の取得により、同社は369,108 ㎡の売場面積を手中に収めた。ドン・キホーテやPAWの店舗を新規で建設すると通常1㎡当たり20万円はかかるのに対し、長崎屋取得の際の総投資額は売場面積1㎡当たりで換算するとわずか約4万4,000円であった。この取得により、同社は売上高で日本の小売業者のトップ25位の仲間入りを果たした。

2009年6月期の注力事項は、長崎屋の再生であった。これからの成長に向けての新しい実験として、MEGAドン・キホーテの展開が始まった。一方で同社は、愛知、岐阜県内に7店舗を展開していたディスカウント業者株式会社ビッグワンの株式を23億円で100.0%取得した。

ドイト(出所:会社データよりSR社作成)


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ニュース&トピックス

2011年9月

2011年9月22日、同社は同日付でシンジケーション方式によるコミットメントライン契約を締結したと発表した(リリース文へのリンクはこちら)。

融資枠設定限度額は100億円であり、契約期間は2011年9月22日から2012年9月21日。アレンジャーはりそな銀行であり、コ・アレンジャーは三井住友銀行およびみずほ銀行である。同社はコミットメントライン枠設定の目的について、財務の安定性を高めるためと述べている。


2011年8月

2011年8月18日、同社は2011年6月期通期決算を発表した。


2011年6月

2011年6月16日、同社が2011年6月期の期末配当予想の修正(増配)を発表した。期末配当予想はこれまで1株当たり15円(年間25円)だったが、今回の修正で同18円(年間28円)に引き上げられた。


2011年5月

2011年5月31日、同社は同社代表取締役会長であり主要株主である安田隆夫氏より、同日保有する同社株式を取引所有価証券市場内かつ立会時間外で売却したとの報告があり、主要株主の持分の異動が発生することになったと発表した。

売却株式は3,840千株で異動予定日は2011年6月6日。同社によれば、本株式売却後の安田氏の株主保有比率は19.1%から14.1%まで低下する見込みとなっている。


2011年5月9日、同社は2011年6月期第3四半期決算を発表した。


2011年3月

2011年3月22日、同社は、3月11日に発生した「東日本大震災」による影響について、下記のようにコメントを発表した。

店舗の状況

  • ドイト「仙台若林店」につきましては、営業停止措置を取った
  • 上記の結果、営業停止店舗は以下の通りとなる

株式会社ドン・キホーテ:仙台南店、六丁の目店

株式会社長崎屋:ラパークいわき店

ドイト株式会社:ラパークいわき店、仙台若林店

注:同社は、「東日本大震災の被災者・被災地への支援」についてホームページ上にて別途開示している。


2011年3月18日、同社は、3月11日に発生した「東日本大震災」による影響について、下記のようにコメントを発表した。

店舗の状況

  • 営業停止としてきた店舗のうち、長崎屋「勝田店」および「MEGAドン・キホーテ仙台台原店」については、時間短縮などの措置を講じた上で、一部営業を開始した
  • ドン・キホーテ「千葉ニュータウン店」は3月19日より、同「郡山駅東店」は3月20日より、それぞれ営業を再開することとした
  • 上記の結果、営業停止店舗は以下の通りとなる

株式会社ドン・キホーテ:仙台南店、六丁の目店

株式会社長崎屋:ラパークいわき店

ドイト株式会社:ラパークいわき店

「計画停電」等に関する対応

同社グループは、「計画停電」に該当する地域の店舗営業時間の短縮等と併せて、被災地以外の店舗については、節電対策を実施している。


2011年3月16日、同社は、3月11日に発生した「東日本大震災」による影響について、下記のようにコメントを発表した。

店舗の状況

  • ドン・キホーテ「晩翠通り店」、長﨑屋「八戸店」及びドイト「仙台若林店」を、それぞれ時間短縮等の措置を講じながらも一部営業を再開した
  • 2011年3月16日正午現在、以下の店舗については営業停止をしている

株式会社ドン・キホーテ:仙台南店、六丁の目店、郡山駅東店、千葉ニュータウン店

株式会社長崎屋:仙台台原店、勝田店、ラパークいわき店

ドイト株式会社:ラパークいわき店

「計画停電」等に関する対応

同社グループは、「計画停電」に該当する地域の店舗営業時間の短縮等と併せて、被災地以外の店舗については、節電対策を実施している。


2011年3月14日、同社は、3月11日に発生した「東日本大震災」による影響について、下記のようにコメントを発表した。

店舗の状況

  • 東北地方および関東地方の店舗において、建物の損傷、陳列什器の転倒及び商品の落下等の被害が発生した
  • 2011年3月14日午前8時現在、以下の店舗については営業停止、その他の数店舗につきましては時間短縮等の措置をとっている

株式会社ドン・キホーテ:仙台南店、晩翠通り店、六丁の目店、千葉ニュータウン店

株式会社長崎屋:八戸店、仙台台原店、勝田店

ドイト株式会社:仙台若林店

今後の見通し

地震による被害状況については現時点では不明。ただし、2011年6月期の業績に対する影響が見込まれる場合は、必要に応じて発表する。


2011年2月

2011年2月4日、同社は2011年6月期第2四半期決算、通期業績予想の上方修正を発表した。


2011年2月1日、同社は2011年6月期上期の業績予想を修正した。修正内容は以下の通り。

  • 売上高:255,481百万円(前回予想258,000百万円)
  • 営業利益:14,100百万円(同12,500百万円)
  • 経常利益:14,000百万円(同11,800百万円)
  • 純利益:7,500百万円(同6,100百万円)

同社は、売上高予想の下方修正の要因として、生活必需品について価格訴求を行ったとコメント。一方、営業利益の上方修正理由については、利益率の高い商品やプライベート・ブランドの充実、経費コントロールなどを主因として指摘している。通期会社予想については、2011年6月期第2四半期決算発表時に見直すとして、今回は据え置かれた。


2011年1月

2011年1月25日、日本経済新聞は同社の2011年6月期上期の営業利益が135億円前後(前年比22%増)となり、上期の最高益を更新した模様と報じた。会社予想は同125億円(同13%増)であった。


2010年12月

2010年12月30日、同社は内部監査により、同社元取締役兼CCOが決裁したコンサルティング費用の支払について、同社元取締役による実体のない不正な支出であったことが判明したと発表した。


2010年12月15日、同社は株式会社フィデック(東証1部 8423)が実施する第三者割当増資の一部を引き受け、連結子会社とすることを決議したと発表した。フィデック社の調達予定金額は約20億円(普通株式222,223株を1株当たり9,000円で発行、払込期日は2011年1月27日)であり、同社はこのうち約85%(約17億円)の割当を受ける予定。これによって、フィデック社に対する出資比率は48.6%となる見込みである。


2010年11月

2010年11月4日、同社は2011年6月期第1四半期の決算ならびに2011年6月期上期会社予想の上方修正を発表した。


2010年10月

2010年10月15日、同社は株式会社フィデック(東証1部 8423)と「業務・資本提携に関する新合意書」を締結したと発表した。同社とフィデック社は2009年4月27日に業務・資本提携に関する基本合意書を締結していた。新合意書にて、同社は、フィデック社の資本増強のための施策に協力すること、同社のバックオフィス機能の更なるアウトソーシングを進めるなどフィデック社との業務上の関係をより一層強化することにより、経営支援をしていくとしている。


2010年9月

2010年9月22日、同社は9月23日より新たに会員制ホールセールクラブ「WR」業態の運営を開始すると発表した。「WR」は「W=Wholesale」「R=Revolution」の二文字(「卸売の革命」の意)を表しており、新店舗は高品質の商品を「卸」価格型で提供する新たなフォーマットとなる。EDLP(エブリデー・ロー・プライス)の実現をめざすが、アウトレット、DS(ディスカウント・ストア)、SuC(スーパーセンター:食料品スーパーとディスカウントストアが複合化した店舗業態)など、既存のいずれの低価格業態とも異なる店舗業態である。

同社によると、大阪府の複合商業施設「ラパーク岸和田」内にオープンする第1号店の「WR岸和田店」は、プレミアムな会員制「ジュニア・デパート」である。これまでの「圧縮陳列」を基本とした店舗フロアとは大きく異なり、百貨店のようにゆったりとした店内にファッションからスポーツ用品、インテリア、生活雑貨、家庭用品、ジュエリー・時計、インポート雑貨など、定番品から最先端のデザインまで、約12万点のアイテムを取り揃えている。

会員として登録した顧客は、卸売価格に近い会員価格(通常の価格より約3~4割安)で商品を購入できる。会員登録料は年間2,100円で、年間20万円以上の買い物をすると更新料は無料。個人だけでなく、法人のまとめ買いも可能。

SR社では、「WR」には従来の同社のコア顧客層(若者層が中心)とは異なるファミリー層などを取り込む狙いがあると見ている。卸売価格に近い価格で販売を行うため、利幅は薄くなるが、仕入れ面での工夫や量販によるメリットにより利益を確保するものと思われる。新業態が成功すれば、複数店舗展開が行われる可能性もある。

なお、運営は新たに設立した「株式会社ダブルアール」(本社:東京都目黒区)が行う。「WR岸和田店」は、1年間で9万~10万人の会員獲得、3年目までに年間約100億円程度の売上をめざすもよう。


2010年9月17日、同社は2004年1月26日に発行した2011年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(ロンドン証券取引所上場)について120%コールオプション条項に基づき残存する全額の繰上償還を行うと発表した。

詳細は以下の通り。

繰上償還する銘柄 株式会社ドン・キホーテ 2011年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債
繰上償還対象総額(額面) 8,620百万円(2010年 9月 15日現在)
繰上償還期日 2010年10月29日(ロンドン時間)
繰上償還金額 額面 500万円につき金 500万円

2011年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の概要

発行日 2004年1月26日(ロンドン時間)
当初の償還期限 2011年1月26日(ロンドン時間)
発行総額 17,000百万円
転換価額 1,821円


2010年8月

2010年8月18日、同社は2010年6月期通期業績を発表した。


2010年6月

2010年6月11日、同社は同日の同社取締役会において、自己株式の売り出しをすると発表した。

詳細は以下の通りである:

  • 2,422,500株を上限とする株式を海外(米国とカナダを除く)で売り出す(引受人Deutsche Bank AG, London branch)。
  • ブックビルディング期間は2010年の6月11日から6月14日までになっている。
  • 売出価格は2,367円であり、同社普通株式の同日終値の2,466円に対し4.01%のディスカウントである。従って、同社の手に入る払込金額の総額は5,675,190,750円である。
  • 資金用途は主に設備投資資金、または運転資金として調達した借入金のうち、2010年6月における返済予定額(8,632百万円)の一部に充当する予定である。


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トップ・マネジメント

現会長の安田隆夫氏はドン・キホーテの創設者であり、日本に独特な1つの小売業者を誕生させ、成功に導いた。安田氏は、その生真面目さ、オープンな姿勢、会社や小売事業に対する熱い情熱で知られている。

安田氏の世間一般の常識を打破しようとする経営姿勢とドン・キホーテがこれまでの日本の小売習慣にはなかったビジネスモデルを採用してきたことが、皮肉にも過去に同社イメージを損なわせる問題を引き起こす遠因ともなった。2005年頃から、同社はイメージをより意識するようになり、世間のドン・キホーテを見る目も改善されたように思われる。例えば、創業初期と比べると、同社の新規出店に地元が抗議することもなくなった。とはいえ、同社および経営陣は多くの伝統的な日本の企業とは一線を画しており、そのような独自性は、同社イメージに引き続き影響を及ぼし、おそらく同社の見方を二極化させる要因となっている。

現在の安田氏の役割は、グループとしての事業を統括し、全社的な戦略を立案することにある。一方で、個々の店舗の出店計画を決定する定例の店舗開発会議にも参列している。2007年10月の長崎屋の買収を契機に、安田氏はかなり積極的に日常の事業運営に関与するようになっているようだ。


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従業員と組織

2011年6月期末時点で、ドン・キホーテ・グループ全体の従業員数は14,180名、うち4,164名が正社員である。単体の従業員数および正社員数はそれぞれ5,683名と2,455名である。単体での正社員の平均年齢は31.6歳で、平均年収は493万円である。


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大株主

安田会長とその一族が同社株式の30%超を保有している。また、外国人投資家が大きな比率を占めている(2011年6月末時点で51.5%)。


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IR 活動

IR部門は直接CFOの管轄下にあり、同社は四半期毎に決算説明会を開催している。


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ところで


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