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ナノキャリア(4571)

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ナノキャリア(4571)

主要財務データ

image:NanoCarrier-Main-Model-JP.png


直近更新内容

概略

2012年1月26日、ナノキャリア株式会社は、第三者割当による転換社債型新株予約権付社債及び新株予約権の発行について発表した。

(リリース文へのリンクはこちら

発行についての概要

同社が今回発行予定としているのは、第1回及び第2回転換社債型新株予約権付社債及び第8回新株予約権であり、その概要は以下。

第1回転換社債型新株予約権付社債

  • 払込期日:2012年3月21日
  • 発行価額:30百万円(新株予約権の総数は28個)
  • 当該発行による潜在株式数:29,988株
  • 資金調達の額:840百万円
  • 転換価額:28,000円
  • 割当予定先:第三者割当により、ウィズ・ヘルスケアPE1号投資事業有限責任組合に780百万円、シーエスケイブイシー技術革新成長支援ファンド投資事業有限責任組合に60百万円

第2回転換社債型新株予約権付社債

  • 払込期日:2012年3月21日
  • 発行価額:20百万円(新株予約権の総数は43個)
  • 当該発行による潜在株式数:30,702株
  • 資金調達の額:860百万円
  • 転換価額:28,000円
  • 割当予定先:第三者割当により、ウィズ・ヘルスケアPE1号投資事業有限責任組合に800百万円、シーエスケイブイシー技術革新成長支援ファンド投資事業有限責任組合に60百万円

第8回新株予約権

  • 払込期日:2012年3月21日
  • 発行価額:15百万円(新株予約権の総数は67個)
  • 当該発行による潜在株式数:67,000株
  • 資金調達の額:2,025百万円(新株予約権発行分:15百万円、新株予約権行使分:2,010百万円)
  • 行使価額:30,000円
  • 割当予定先:第三者割当により、ウィズ・ヘルスケアPE1号投資事業有限責任組合に62個、シーエスケイブイシー技術革新成長支援ファンド投資事業有限責任組合に5個

希薄化率と臨時株主総会の開催

第1回転換社債型新株予約権付社債、第2回転換社債型新株予約権付社債及び第8回新株予約権に係る潜在株式数は、上記のとおりそれぞれ29,988 株、30,702 株、67,000 株、合計127,690 株となっており、これは2012年1月25日現在の発行済株式総 数234,885 株に対して、合計54.4%の希薄化率となる。

今回の第三者割当の方法による本新株予約権及び本新株予約権付社債の全てが転換及び行使された場合は、同社株式は25%以上の希薄化が生じることになる。そのため、同社は、東京証券取引所の規定(有価証券上場規程第432 条)に基づき、本第三者割当の必要性及び相当性について、普通決議による当社株主の意思確認を実施するために、2012年3 月19 日に臨時株主総会を開催することを決議したとしている。

調達する資金の具体的な使途

  • ナノプラチン®(NC-6004)の臨床開発並びに原薬及び製剤製造費用:2,760百万円(支出予定時期は2012年4月から2016年3月まで)
  • ダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)の臨床開発並びに原薬・製剤製造費用:912百万円(支出予定時期は2012年4月から2016年3月まで)

目的と背景

同社は資金調達の理由について、以下の点を挙げている。

  • ナノプラチン®(NC-6004)及びダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)を自社開発する戦略へと大きく転換を行うため(ライセンスアウトや共同開発を行うことができる提携先の開拓は引き続き継続)
  • 自社開発は多額の開発資金を必要とするものの、開発の進捗を自らコントロールし、より計画的に開発を進めることができるとともに、開発段階を進捗させ、製品価値を増大することにより、それぞれの製品が持つ製品価値の最大化を実現することが可能と考える
  • ナノプラチン®(NC-6004)は、日本及び海外で自社による開発を進める予定。臨床試験を含め、治験費用や薬剤製造費用など日米欧の主要マーケットでの承認・上市までに2,760百円が必要と想定
  • ダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)は、第II 相臨床試験終了後はライセンス先に導出し、ライセンス先が開発費用を負担し、その主導で開発を進める予定。したがって導出可能なステージにまで進めるために、日本での臨床試験を含め、治験費用や製造費用など912百万円が必要と想定している
  • 同社の事業はまだ先行投資の段階にあり、当面、研究開発費等の投下経費が収益を上回る状況が続く見込み。資金調達手段として、直接金融に依拠せざるを得ない
  • 本新株予約権および本転換社債型新株予約権の行使は、比較的長期間にわたって徐々に実行されるため、希薄化は、新株式のみを一度に発行する場合と比べて抑制できると考えた

割当予定先

  • ウィズ・ヘルスケアPE1号投資事業有限責任組合

独創的な科学上の発見や技術革新をもとに医薬品開発を進める企業に投資をすることを目的として2011年4月に組成。出資総額は3,220百万円(予定)であり、出資者(出資比率)は、独立行政法人中小企業整備基盤機構(31.1%)、日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(15.5%)、株式会社ウィズ・パートナーズ(11.5%)など。

  • シーエスケイブイシー技術革新成長支援ファンド投資事業有限責任組合

情報通信、ナノテクノロジー、新材料、新製造技術、ライフサイエンス、環境・エネルギーを主とする分野において、日本経済に活力を与え、また次世代の産業基盤を構築できると期待されるベンチャー企業に投資をすることを目的として2006年9月に組成。出資総額は2,700百万円(予定)であり、出資者(出資比率)は、独立行政法人中小企業整備基盤機構(37.0%)、日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(29.6%)、株式会社ウィズ・パートナーズ(18.5%)など。


2012年1月11日、同社は核酸医薬のデリバリーに適用可能なキャリア(担体)に関する出願が、日本国特許庁で特許査定を受けたと発表した。

(リリース文へのリンクはこちら


2011年12月26日、同社は遺伝子キャリアに関する物質特許が韓国にて特許査定を受けたと発表した。

(リリース文へのリンクはこちら


2011年12月12日、同社はタンパク質医薬のデリバリーに関する物質特許が米国で特許査定を受けたと発表した。

(リリース文へのリンクはこちら


2011年12月6日、同社はpH応答性ミセルに関する物質特許がニュージーランドで特許査定を受けたと発表した。

(リリース文へのリンクはこちら


2011年11月10日、同社は2012年3月期第2四半期決算を発表した。

(決算短信へのリンクはこちら、2012年3月期第2四半期決算の項目へのリンクはこちら


3ヵ月以上経過した会社発表はニュース&トピックス


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業績動向

四半期業績推移

image:Nano-JP-quarter.png


2012年3月期第2四半期実績

2011年11月10日、同社は2012年3月期第2四半期決算を発表した。

第2四半期累計期間の売上高は、興和株式会社からのライセンス及び共同開発契約締結に伴う契約一時金収入等により210百万円(前年同期は18百万円)となった。一方、研究開発費等により、営業損失は109百万円(前年同期は営業損失289百万円)となった。

通期会社予想は据え置かれた。

パイプラインの現況

パクリタキセルミセル(NK105)

ライセンス先の日本化薬株式会社(東証1部4272)が乳がん治療薬開発をめざした臨床試験を進めており、同社によれば、日本化薬社が早ければ2012年早々にも第Ⅲ相臨床試験を開始するよう尽力中とのことだ。

ナノプラチン®(NC-6004)

一部アジア領域(日本、中国以外のアジア)を対象とするライセンス契約を締結しているOrient Europharma Co. Ltd.とともに、膵臓がんに対するナノプラチン®(NC-6004)及びゲムシタビン併用療法の第I相/第II相臨床試験を台湾およびシンガポールで実施してきた。第I相臨床試験パートを終え、本併用療法におけるNC-6004の推奨用量90mg/㎡が決定した。そのため、2011年7月に有効性及び安全性を検証するための第II相臨床試験パートに入った。

NC-6004について同社は、日本国内でも上記と同じ第II相臨床試験を自社で実施する予定で準備を進めており、2012年3月までには IND (Investigational New Drug、臨床試験(治験)を実施するにあたり、治験実施申請資料を当局へ提出し、治験審査委員会から治験実施計画の承認を得ること)申請・承認を経て、試験を開始する予定とのことだ。

ナノプラチン®は抗がん剤のシスプラチンを内包したミセル化ナノ粒子製剤で、ゲムシタビンとの併用による膵臓がん治療薬として開発を進めている同社独自のナノメディシンである。同社によれば、第I相試験パートにおいて、シスプラチンの特徴的な副作用を抑え、安全性が高まっていることが示されたとのことである。また、ゲムシタビン単剤での投与(平均4-5サイクル)に比べ、ナノプラチン®との併用療法では最長で19サイクル(1サイクル:3週間に1回投与)以上の継続投与が可能となるなど、より長期の治療が可能となっているとのことだ。

同社は第II相試験パートでは、有効性の増大、無増悪生存期間(PFS: progression-free survival、病勢の深耕が見られない状態で患者が生存している期間)の延長が期待されるとコメントしている。

ナノプラチン®(NC-6004)に関しては、2011年11月22日に開催された2012年3月期第2四半期決算説明会の席で、中冨社長が個人的意見としつつも、ブロックバスター(従来の治療体系を覆す薬効を持ち、圧倒的な売上高をたたきだす新薬をあらわす用語)になるのではないかとの期待を表明している。

ダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)

日本国内における第I相臨床試験の再開および第II相臨床試験実施に向けて計画策定を行っているとのことだ。また、国内外での新たな提携先との交渉にも尽力中と同社はコメントしている。

エピルビシンミセル(NC-6300)

2011年9月に興和社との間でライセンス及び共同開発に関する契約を締結し、新たに主要パイプラインに加わった。今後は興和社と協力し、医薬品としての承認取得のため、早期の前臨床試験の実施、第I相臨床試験の開始などの共同開発体制を構築し、研究開発を進めて行く予定とのことである。また、2010年からエピルビシンミセルの前臨床試験をめざして開始した国立がん研究センターとの共同研究についても継続実施中であると同社は述べている。

同社は、共同開発契約の締結と同時に興和社に対して第三者割当による新株発行を行った。調達資金は290百万円である。

同社と興和社の契約内容は以下のようになる。

  • 同社は興和社に対し、NC-6300最終製剤の全世界における販売権及び製造権を許諾する
  • 販売権及び製造権の許諾として、同社は最大で総額24億円のマイルストンを受領することになる(フェーズ毎に受領する)
  • 同社はエピルビシンミセル原薬を興和社に継続的に供給する
  • 上市後、同社は販売額に一定料率を乗じた継続的実施料を受け取る予定

同社は非臨床試験という早期ライセンス契約を実現できたことによって、1)主要パイプラインの拡大(pH応答性ミセル)、2)開発の計画的かつ着実な進展、3)契約金等の収入確保、4)契約先からの出資、などを実施することが可能になったと上記契約について強調している。

新規パイプラインのトピックス

タンパク質ミセル

2011年10月、LFB Biotechnologies(以下、「LFB 社」)の持つ血友病タンパク質rhFVIIa(血液凝固第VII因子)を、同社がミセル化したナノ粒子製剤を用い、長期投与における安全性・有効性評価等を目的に、各種試験を実施するため、新たな共同研究契約を締結した。また、両社はこの共同研究の結果に基づき、本製剤の開発及び商業化に関する独占的なライセンス契約の経済的な条件について交渉を行うことについても合意している。


2012年3月期第1四半期実績

2011年8月12日、同社は2012年3月期第1四半期決算を発表した。

売上高は化粧品用の原料供給による収入等により、4百万円(前年比57.0%減)となった。また、研究開発費等により、営業損失154百万円(前年同期は営業損失145百万円)となった。

2012年3月期上期および通期会社予想は据え置かれた。

パイプラインの現況

パクリタキセルミセル(NK105)

ライセンス先の日本化薬株式会社(東証1部4272)が胃がんおよび乳がん治療薬をめざした臨床試験を進めており、同社によれば、日本化薬社が早ければ来年早々にも第Ⅲ相臨床試験を開始するよう尽力中とのことだ。

ナノプラチン®(NC-6004)

一部アジア領域(日本、中国以外のアジア)を対象とするライセンス契約を締結しているOrient Europharma Co. Ltd.とともに第I相/第II相臨床試験を台湾およびシンガポールで実施している。第I相臨床試験パートを終え、2011年7月に第II相臨床試験パートに入った。NC-6004について同社は、日本国内でも上記と同じ第II相臨床試験を自社で実施する予定で準備を進めており、2012年3月期下期には IND申請・承認を経て、試験を開始する予定とのことだ。

ダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)

ライセンス先であったDebiopharm社との契約は2011年3月をもって終了したため、新たな提携パートナーの獲得に尽力しているとのことである。また、日本国内における第I相臨床試験の再開および第II相臨床試験実施に向けて計画策定を行っているとのことだ。

新規パイプラインのトピックス

タンパク質ミセル

同社はLFB Biotechnologies(以下、「LFB 社」)とのオプション契約を締結し、2011年7月までのライセンス契約移行を目標に、諸々の試験(基本的な薬効薬理作用および安全性の確認など)を実施してきたが、ライセンス契約には入らず、新たに1年間の共同研究契約を行うことになった。同社とLFB社は共同研究契約のための諸条件を協議中である(2011年8月時点)。同社によれば、新たに共同研究契約を行う理由は、長期の安全性等の更なる試験が必要となったためとのことだ。



2012年3月期会社予想

image:Nano-JP-fcast.png


2012年3月期における会社予想の売上高は440百万円。内訳の詳細は不明ながら、同社は2011年5月12日に公表した決算短信中において以下のコメントを記載している。

  • ナノプラチン®(NC-6004)については、Orientによる臨床第I相/第II相試験を着実に推進するとともに、ライセンス済のアジア地域以外におけるライセンスも視野に入れ、事業開発を推進する
  • ダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)については、Debiopharm S.A.とのライセンス契約で得た成果を生かし、新たな提携先の獲得並びに臨床試験の進展をめざす
  • 新規開発パイプラインの研究充実を図るとともに、製薬会社等との提携をめざす

SR社は上記、ナノプラチン®(NC-6004)、ダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)、新規開発パイプラインのいずれかの収益化が同社の売上計画の前提になっているのではないかと推測する。また、大幅な増収にもかかわらず、営業損失512百万円の計画となっているが、一定の研究開発費の計上を前提としていることが理由ではないかとみている。


長期計画

主要パイプラインの動向が収益増大への道筋をつけることになろうが、マイルストン収入の性質上、支払い時期が定まらないことから、売上高も引き続き上下変動が予想される。


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事業内容

ビジネス

コア技術

同社のコアとなる技術の「ミセル化ナノ粒子(高分子ミセル)」の技術は、高分子化学とナノテクノロジー(用語集を参照)を融合したものといえる。

同社の技術の重要な側面の一つは、ミセルをさまざまな大きさに「操り」、粒子の内部に薬物を封じ込めるなど、種々の要素を持たせることができるという点であろう。このコア技術が、同社の競争上の優位性の確立を通じ、成長・発展を支え得る。

このシステムは、従来の単量体薬物だけでなく核酸ポリマーを含む重合体、さらには生理活性ペプチドやタンパク質にも活用できるかもしれないと同社は述べている(「生理活性」とは、生命体に影響を与え得ることを意味する)。タンパク質をターゲットとするミセルは、既存のパイプラインを含むパッシブ・ターゲティング化合物に使用されている技術とは同じではないが、同様の原理の延長線上にある。


コアテクノロジー・フォーカス:ミセル化ナノ粒子技術

  • ミセル化ナノ粒子は、水に溶けやすい性質を示すポリエチレングリコールと呼ばれる「親水性ポリマー」と水に溶けにくい性質を示すポリアミノ酸からなる「疎水性ポリマー」を一つの分子として結合させた「ブロックコポリマー(共重合体)」から構成される
  • ブロックポリマーを水中でかき混ぜると、外側が親水性ポリマーで内側が疎水性ポリマーという明確な二層構造を有する20~100ナノメートルサイズの球状の粒子(ミセル)を形成する。この粒子の内部(ポリアミノ酸部分)に薬物を封じ込めたもの(封入したもの)がミセル化ナノ粒子である


(出所:会社資料)
(出所:会社資料)


同社によれば、ミセル化ナノ粒子技術は次のような注目すべき特徴を備えている:

  • 主要臓器に補促される量が少ない。種々のサイズの粒子が血管内投与されると、3,000nm程度以上の大きな粒子は肺に、300nm程度以上の粒子は脾臓に、100nm程度以上の粒子は肝臓に捕捉されてしまうとされている。しかし同社のミセル化ナノ粒子のような100nmより小さな粒子であればこれらの臓器に捕捉される量を減らし、血液を循環してがん細胞に到達することが可能となる。
  • 長時間循環することが可能。人体は体内に入り込んだ細菌などの異物を免疫機構によって排除することで知られているが、通常の医薬品を投与した場合もその影響を受ける。しかし、ミセル化ナノ粒子の表面を覆うポリエチレングリコールは免疫機構から異物と認識されやすい性質を持つことから、粒子を静脈内に注射した後、血液の中を長時間循環することが可能となり、薬の効き目が高まることが期待される。
  • がん細胞へのターゲティングを可能にする。がん組織は正常組織とは異なり細胞の増殖が速く、細胞が多くの栄養を必要とするために新生血管が多く形成されるといわれている。このような新生血管は急激に形成されるため、血管を形成する細胞同士の間隔が正常細胞と比べて広く、透過性が高いため、100nm 以下のミセル化ナノ粒子が血液の中を循環するうちにポケットに入るかのようにがん組織に集積すると考えられている。一方、がん組織ではリンパ管が未発達なため、ミセル化ナノ粒子は血液循環中に戻れず、腫瘍組織に滞留し易い。つまり、到達した時とは違い粒子が容易にがん細胞から排出されない。これは一般に、EPR 効果(Enhanced Permeation and Retention Effect)と呼ばれている。腫瘍組織に特有の血管新生作用でもたらされるこの効果により、抗がん剤はがん細胞で長時間維持される。


(出所:会社資料)


ミセル化ナノ粒子は以下の3つのシステムに分類される。同社はこれらを用途に応じて使い分けたり、組み合わせたりしている。

1)NanoCap®システム 

ミセル化ナノ粒子の内側をポリアミノ酸にすることで、水に溶けない薬物をそのままの状態で封じ込めるシステム。ポリアミノ酸は、水に溶けにくい油のような特性を持つ。NanoCap®システムの効果不溶性薬物の溶解性向上を可能にする。

2)Medicelle®システム

磁気結合または化学結合によって薬物を封入するシステム。一部の医薬品はプラスまたはマイナス電荷を有する。反対の電荷を帯びているポリマーを用いることによってこれらをミセル内に結合させることが可能である。化学結合は、薬物をポリアミノ酸と化学結合させることによって行う。Medicelle®システムの効果血液中の滞留性を向上させる。

3)NanoCoat®システム

薬物を封じ込めたミセル化ナノ粒子の表面に、がん細胞と選択的に結合するセンサーのような働きをする物質を付けることで効率良くがん細胞に結合させるシステム。センサーの役割を果たすものとして、抗体を使用することが可能である。NanoCoat®システムの効果特定部位へのターゲティング能力を強化する。


(出所:会社資料)



同社が権利を所有する出願特許一覧

image:NanoCarrier-Patent-List-JP.png

パイプライン

主要パイプラインの状況(2011年11月時点)

image:Nano-JP-Pipeline.png

出所:同社資料より作成

  • NK105(パクリタキセルミセル)

パクリタキセル(タキソール®)は、卵巣がん、肺がん、乳がん、胃がんなどの適応症で世界的に普及している抗がん剤である。水に溶けにくいため、アルコールを基にした特殊な溶媒が使用されている。その溶媒は重大な副作用を引き起こす。そのため、投与時に副作用軽減のために補助薬剤(ステロイド剤や抗ヒスタミン剤)自体も副作用を引き起こす。同社は、ミセル化ナノ粒子技術(NanoCap®システム)により、パクリタキセルを封入したミセル化ナノ粒子を製造することに成功した。これがNK105(パクリタキセルミセル)である。

数年前、同社は日本化薬株式会社(東証1部4272)とミセル技術を用いてパクリタキセルを改善する共同研究で成果をあげた。その後、日本化薬社はその研究結果に基づきNK105を開発する決定をし、2002年6月に同社から技術ライセンスを受けた。これにより、日本化薬社は日本とアジアにおける独占販売権および世界のその他の国々における非独占的販売権を得た。

第I相臨床試験は、2004年5月から2006年4月にかけて国立がんセンター中央病院で行われ、良好な結果が得られた。Drug Delivery System誌ニュースレター(24-1、2009年)によれば、NK105のAUC(曲線下面積、血液濃度対時間の曲線下の面積)は、従来のパクリタキセルよりも15倍高かった(NK105の推奨用量は150mg/sq.mであるのに対してパクリタキセルの通常用量は210mg/sq.mであった)。数名の患者には4週間以上も症状の安定がみられ、1名の転移性肝臓がん患者では明らかな肝転移の縮小がみられた。

日本化薬社は、2007年11月に第II相臨床試験を開始した。第II相臨床試験での主な目的は、延命に寄与するか否かの確認に加え、薬効と安全性を証明することにある。特に長期間投与した場合、NK105はパクリタキセルよりも低い毒性を示すことが期待されている。パクリタキセルに比べ良好なAUC指標と合わせ低い毒性が実証されれば、NK105がパクリタキセルの代替となる道が開けるかもしれない。

2011年5月時点で、日本化薬社は、胃がんを対象とする第II相臨床試験を既に終了し、第III相臨床試験開始に向けて準備中である。

同社は、本剤の価値を上げるべく、乳がんを対象とした第I相臨床試験を2010年より開始した。早ければ2011年内にも第II相臨床試験に移行する予定であるとコメントしている。

同社は、日本化薬から初回契約一時金および第I相臨床試験と第II相臨床試験開始に伴うマイルストン収入を得ている。さらに同社は、製品が申請された場合にはマイルストン収入とロイヤリティ(正味販売高の2%:総ロイヤリティは4.5%であるが、2.5%は科学技術振興機構に支払われる)を受け取る予定である。治験が順調に進んだ場合、2014年にはこの製品が日本で承認申請されるであろうとSR社は予想している。

現時点では推測の域を出ないが、NK105がパクリタキセルの優れた代替品となることが証明された場合、現在主流となっている超大型薬タキソテールの競合品となる可能性があるとSR社は見ている。タキサン系では30%の世界市場占有率は約14億米ドルの売上に相当する。ロイヤリティ水準2~2.5%と仮定すれば、20億円強の売上高を同社にもたらす可能性がある(ロイヤリティはSR社の想定、参考目的のみ。同社は潜在売上高やロイヤリティについてコメントしていない)。

ナノプラチン®は、同社のミセル化技術をシスプラチンに応用して開発した薬物である。シスプラチンは優れた薬物でありながら重篤な嘔吐を引き起こし、投与の際には長時間にわたる大量の輸液が必要とされ、患者の生活の質(QOL)の著しい低下をもたらす。ナノプラチン®が、これらの問題を解消できると同社は期待を寄せている。

同社は2006年5月より英国で第I相臨床試験を開始した。しかし、主に新規株式公開前から公開後にかけて株式市場の低迷が原因で十分な資金調達ができなかったため、欧州において次の段階の臨床試験を続けることを断念。より低コストのアジア地域で次の臨床試験を進展させざるを得なくなった。最終的に、同社は台湾に拠点を置く医薬品・化粧品製造輸入企業、Orient Europharma Co., LtdにNC-6004をライセンスアウトし、日本および中国本土を除く太平洋圏での独占権を与えることとなった。

Orient Europharma社は現在、台湾およびシンガポールにおいて第I相/第II相臨床試験を実施。膵がんに標準治療薬として使われているゲムシタビンとの併用療法が進められている。第I相臨床試験パートを終え、本併用療法におけるNC-6004の推奨用量90mg/㎡が決定した。そのため、2011年7月に有効性及び安全性を検証するための第II相臨床試験パートに入った。

NC-6004について同社は、日本国内でも上記と同じ第II相臨床試験を自社で実施する予定で準備を進めており、2012年3月までには IND (Investigational New Drug、臨床試験(治験)を実施するにあたり、治験実施申請資料を当局へ提出し、治験審査委員会から治験実施計画の承認を得ること)申請・承認を経て、試験を開始する予定とのことだ。

同社によれば、第I相試験パートにおいて、シスプラチンの特徴的な副作用を抑え、安全性が高まっていることが示されたとのことである。また、ゲムシタビン単剤での投与(平均4-5サイクル)に比べ、ナノプラチン®との併用療法では最長で19サイクル(1サイクル:3週間に1回投与)以上の継続投与が可能となるなど、より長期の治療が可能となっているとのことだ。

同社は第II相試験パートでは、有効性の増大、無増悪生存期間(PFS: progression-free survival、病勢の深耕が見られない状態で患者が生存している期間)の延長が期待されるとコメントしている。

ナノプラチン®(NC-6004)に関しては、2011年11月22日に開催された2012年3月期第2四半期決算説明会の席で、中冨社長が個人的意見としつつも、ブロックバスター(従来の治療体系を覆す薬効を持ち、圧倒的な売上高をたたきだす新薬をあらわす用語)になるのではないかとの期待を表明している。

同社資料によれば、契約による収入は契約一時金およびマイルストン収入であり、直接ロイヤリティについては触れられていない。代わりに、Orient Europharma社が臨床試験費用の半額を負担すると同時にナノキャリアから薬剤を販売価格の一定割合の値段で購入する。これは事実上ロイヤリティに似た手法ではあるが、ナノキャリアの直接製造コスト負担を軽減し、また同社の資金調達難が続くという最悪のシナリオを想定し策定されたものとみられる。

同社によれば、ナノプラチン®のターゲットとなる膵がんの患者数は約19万人、ピーク時の売上高を概ね700~800億円と推定しているとのことである。承認申請は最短スケジュールで2016年を予定しているとのことだ。

  • NC-4016(ダハプラチンミセル)

NC-4016は、オキサリプラチンが生体内で代謝されて生じるダハプラチンからなる新しい医薬品製剤である。オキサリプラチンは有効で広く使用されている薬物であるが、嘔吐、末梢神経障害(手足のしびれといった症状)などの深刻な副作用を引き起こす。 オキサリプラチンは、いったん体内に入ると、がん細胞の繁殖を抑える効果のある(抗がん活性のある)ダハプラチンへと変換される。同社は、ダハプラチンをブロックコポリマーと結合させ、ミセル化ナノ粒子化することで、オキサリプラチンが持つ副作用を軽減し、かつ抗腫瘍効果の増強も期待できると考えている。

同社は2005年3月に、オキサリプラチンを開発したDebiopharm S.A.と、NC-4016についての共同研究を経て、2009年3月に、ライセンス及び供給契約を締結した。その後、Debiopharm社により欧州で第I相臨床試験が実施されていたがが、2011年3月に契約を終結した。同社これまで、Debiopharm社から、当該契約に基づくアップフロント収入及び治験用製剤の供給による販売収入並びに第I相相臨床試験開始に伴うマイルストン収入等を得ている。なお、同社が2012年3月期以降、新たな提携先とライセンス契約を締結した場合、同社は受領したマイルストン収入の一部をDebiopharm社に支払うこととなっている。

2011年5月時点で同社は、残りの試験を自社にて国内で実施する予定であり、準備を進めているとコメントしている。

同社によれば、承認申請は最短スケジュールで2018年を予定しているとのことだ。

  • エピルビシンミセル(pH応答性ミセル、NC-6300)

エピルビシンは、アントラサイクリン系の抗がん剤で、DNAのらせん構造の間に入り込んでその合成を阻害すると共に、酵素の働きを抑制して、DNAを切断する。適用対象は広く、中でも乳がんの治療において重要な役割を担っている。一方、副作用として最も問題となっている心毒性について、同社はミセル化により軽減することが期待されると述べている。

エピルビシンミセルは、東京大学・片岡教授らが基本的なコンセプトを確立したpH応答性ミセルシステムを同社が導入して改良・開発したものである。同社によれば、ミセルにより細胞内に取り込まれた後にpHが低下し、エピルビシンが細胞内に爆発的に放出される画期的なシステムであり、基礎研究ではアントラサイクリン系薬物に耐性を獲得したがんにも効果があることが確認されているとのことである。

NC-6300の動物実験では、血中滞留性が大幅に改善され、がん細胞への集積が高まっていることも示されている(参考文献:Improved anti-tumor activity of stabilized anthracycline polymeric micelle formulation , NC-6300:M.Harada,I.Bobe,H.Saito,N.Shibata,R.Tanaka, T.Hayashi,Y.Kato,Cancer Science 102 (1) 192-199(2011))。また、同社によれば、ヒ卜肝がんモデル実験では、腫瘍がほとんど消滅し、ヒ卜乳がんモデル実験でも、エピルビシン溶液投与と比較し、大幅な腫瘍増殖抑制効果が明らかとなったとのことである。さらに、ミセル化によりエピルビシンの心臓への蓄積が大幅に抑制されていることから、副作用を軽減することへの期待も高まっている模様である。

2011年9月、同社は興和社との間でライセンス及び共同開発に関する契約を締結し、新たに主要パイプラインに加わった。

2011年11月時点で、同社は今後、興和社と協力し、医薬品としての承認取得のため、早期の前臨床試験の実施、第I相臨床試験の開始などの共同開発体制を構築し、研究開発を進めて行く予定と述べている。また、2010年からエピルビシンミセルの前臨床試験をめざして開始した国立がん研究センターとの共同研究についても継続実施中であるとコメントしている。

同社と興和社の契約内容は以下のようになる。

  • 同社は興和社に対し、NC-6300最終製剤の全世界における販売権及び製造権を許諾する
  • 販売権及び製造権の許諾として、同社は最大で総額24億円のマイルストンを受領することになる(フェーズ毎に受領する)
  • 同社はエピルビシンミセル原薬を興和社に継続的に供給する
  • 上市後、同社は販売額に一定料率を乗じた継続的実施料を受け取る予定


新規開発パイプラインと探索中の化合物

同社が行っている新規開発の大半は、短命の生体分子を身体のターゲット領域に的確に送達するキャリア構造体の製造手法研究に集中しているとSR社では推測している。新規プロジェクトのほとんどは評価試験段階にある。

  • タンパク質ミセル

治療用タンパク質のターゲティングは生命工学研究の新興領域である。タンパク質のターゲティングは体内で自然に起こり、さまざまなタンパク質が細胞内の必要とされる箇所に運ばれる。タンパク質はリボソーム上で作り出され、その輸送はシグナル伝達ペプチドによって指揮される。何らかの異変が生じると、一部のタンパク質が過剰生産されてがんおよび他の疾患を引き起こす。「悪い」タンパク質のスイッチを切り、「良い」タンパク質のスイッチを入れることは、薬学における究極の目標かもしれない。しかし、タンパク質やペプチドの血中における半減期は短く、また不適切な場所にあれば損傷(副作用)を引き起こすことがあるため、これらを「長生き」させ、選択的に働くようにすることが重要な課題である。

同社資料によれば、タンパク質をPEG化(ポリエチレングリコール連結)するなどの他企業のソリューションは、タンパク質の生理活性を低下させる。同社が用いる技法はタンパク質の生理活性を損なわず、疾患組織へのターゲティングを可能にする。

同社はG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)に注目している。これは成長因子(サイトカイン)、すなわち骨髄を刺激して幹細胞および白血球細胞を作り出す物質である。ラットの実験で、同社のG-CSFミセルは従来のG-CSF溶液と比較して9倍のAUCを示し、4倍高い好中球(白血球の一種)数をもたらしたことが示されている。このことは、がん治療において、化学療法による特発性好中球減少症や免疫応答低下からの回復を助ける薬剤として、G-CSFミセルを有効活用できる可能性があることを示唆する。

同社の資料によると、タンパク質ミセルはPEGとポリアミノ酸誘導体の組み合わせという他の技術と同様の核共重合体を使用している。ただし、当研究者らは異なる疎水性基を導入することによって疎水性の核部分を改変した。これにより、有機溶媒を使用せずにタンパク質のカプセル封入が可能となる一方で、いわゆる破裂効果が防止された。破裂効果とは、大量の薬物が急速に放出されることをいう(キャリアの「破裂」)。

BCCリサーチによれば、タンパク質薬剤市場は2008年の950億米ドルから2013年には1,600億米ドルまで成長するとの予想である。

同社は、2010年10月20日付でオプション契約を締結したフランスのLFB Biotechnologies社と、血友病治療薬の血液凝固第7因子を含有するタンパクミセルであるrhFVIIaミセル(NC-4026)の基礎試験を行い本製剤の有効性・安全性に関する確認を実施してきた。LFB社は2011年7月20日までにライセンス契約に移行するか決定する予定となっている。

同社は、2011年5月時点で、海外の1社(LFB社とは別)とフィージビリティスタディを実施中であり、裏付けが取れ次第、ライセンス契約に移行する予定であると述べている。

  • siRNAミセル

siRNA(small interfering RNA、阻害的低分子RNA)とは、細胞内のmRNA(メッセンジャーRNA、タンパク質を構成するアミノ酸配列情報を持つRNA)を破壊することで配列特異的に遺伝子発現を抑制する特徴を備えている。つまり、細胞内で病気に関連する特定のタンパクの生合成を抑制することができるという特徴を有するため、siRNAをデザインすることで、様々な疾患に対して効果を発揮する医薬品の開発が可能となると期待されている。siRNA医薬品の治療効果が期待される分野は、がん、AMD(加齢性黄斑変性症)、呼吸器多核体ウイルス、脈絡膜血管新生、糖尿性黄斑浮腫、喘息、高コレステロール血症状などがある。

しかし、siRNAは体内に投与されると直ちに分解されてしまうという大きな欠点を持っており、最近では大手製薬企業も開発を断念するなど、「siRNA医薬品」開発に大きな壁となって立ちはだかってきた。そのため、血中に投与できる製剤とするためには、確実な細胞内デリバリー技術による安定化は必要不可欠とされる。同社はデリバリー技術を東京大学よりライセンスインし(注)、siRNAミセルの開発を進めている。この核酸デリバリー技術に関する物質特許は2010年9月に日本で登録されている。

注:同社は2009年5月25日に東京大学および株式会社東京大学TLOとカチオン性のポリアミノ酸(プラスに荷電したアミノ酸の集合体)に関する独占ライセンス契約を締結した。同ライセンス契約によって同社は、従来のミセル化ナノ粒子によるデリバリー技術に加えて、新たな技術を導入することができた。新たな技術とは、カチオン性ポリアミノ酸によるデリバリー技術であり、siRNAと高分子イオン複合体(プラスに荷電した高分子とマイナスに荷電した高分子が結合した複合体)を形成して、細胞質内へsiRNAを特異的に放出できる技術である。
  • センサー結合型ミセル

同社は、より良好な腫瘍へのターゲティングをめざし、高分子ナノミセルにバイオセンサーを結合させる可能性についての評価試験を行っている。こうしたセンサーの一つは抗体であろう。同社は、キリンファーマ株式会社が開発した抗体を使用する可能性を追究するため、2006年からパートナーシップ契約を締結していたが、これらの抗体は同社が開発したミセル化ナノ粒子技術に適合しなかったため、2008年6月に関係が解消された。同社は現在の評価試験の詳細を公表していない。

  • ドセタキセルミセル

一般名ドセタキセルは、乳がん、胃がん、子宮がん、卵巣がん、前立腺がんなどの幅広い適応症で世界的に普及しているタキサン系の抗がん剤である。ただし、ドセタキセルは、浮腫、骨髄抑制、悪心・嘔吐等の消化器官障害、脱毛、肝機能異常、過敏症、全身倦怠感の副作用があり、患者さんの治療負担も大きい。

ドセタキセルミセルはMedicelle®技術を活用し、ミセルに内包されたドセタキセルの放出速度を調整することにより、薬効を維持しながらドセタキセルの副作用を軽減することを同社は期待している。

ドセタキセルミセルは2009年11月に発表されており、同社ではこれをNK-105 (パクリタキセルミセル) の後継候補とすることを期待している。同社の予想では、ドセタキセルミセルとNK-105との間では開発におよそ6年間の開きがあるとのことである。

  • スキンケア

同社のミセル化ナノ粒子技術が応用できる分野として、スキンケアも挙げられる。2011年10月1日に「エクラフチュール-W」美容液を2010年10月1日に発売した。同社は、医薬品製剤の研究開発中に、ミセル化ナノ粒子が、皮膚の角層深部に留まる性質を発見、化粧品に適する性質として、化粧品への応用開発を進めてきたと説明している。


ビジネスモデル

同社は、ミセル化ナノ粒子の製造技術を用いて新しい薬物を開発している。同社は、原則として、1)自社開発、2)共同研究開発、3)ライセンスアウト、の3つの形態をとっている。それぞれの内容は以下の通りである。

1)自社開発

自社開発の場合、開発医薬品の上市もしくは臨床開発後期段階まで自社開発を行い、自社販売を行った場合、当該製品の販売による収入が計上されることとなる。ただし、多額の費用と人員を要することから、同社は非臨床試験及び臨床試験を行い、臨床試験で有用性を証明できた段階で、3)ライセンスアウトに移行していく選択をしている。

2011年5月時点で、NC-6004 (ナノプラチン®)が、自社開発から2)共同研究開発および3)ライセンスアウトに移行していく段階のパイプラインといえる。

2)共同研究開発

同社のミセル化ナノ粒子製剤技術に興味を示した提携先とミセル製剤化に関する共同研究契約を締結する場合などがある。基本的には同社が製剤を開発し、提携先がその評価をして、良好な評価が得られた場合は3)ライセンス契約などに移行すると考えられる。

3)ライセンスアウト

1)自社開発、2)共同研究開発態においては、研究開発の経過段階で、ライセンスアウトを行う。ライセンス契約の形態により違いはあるが、一般的には、同社は提携時に支払われる契約一時金(アップフロント)収入や開発進捗状況に応じて支払われるマイルストン収入を得るほか、研究開発用の製剤を供給する場合には、それに対応する収入を得ることになる。また、製品上市後は、同社が最終製品の売上に基づくロイヤリティ収入を得ることが可能となっている。

2011年5月時点で、日本化薬社へライセンスアウトしたNK105(パクリタキセルミセル)がこのビジネスモデルに該当している。

同社にとっての主な収入源は以下の通り:

  • 研究開発協力金および補助金:パートナー企業および政府機関との契約に基づく収入。
  • 契約一時金(アップフロント):各ライセンス契約の開始にあたり、その締結時に受け取る収入。
  • マイルストン:開発の各段階で受け取る収入。
  • ライセンス料:製品上市後に支払われる、固定額あるいは正味販売高に応じて料率の変わるロイヤリティ収入。

ライセンサー(例えばナノキャリアのようなバイオテック企業)が受け取る標準的ロイヤリティのパーセンテージの概算は、契約によってさまざまである。よく参照されるケース(Medius Associates 2001)によれば、非臨床段階で約0~5%、第一相試験段階で5~10%、第II相では8~15%、第III相では10~20%、認可薬に対しては20%以上であるとしている。


コスト構成

同社事業が新規であり、いまだ不安定であるという事情から、現段階で具体的なコスト構造を論じることはできない。

売上高とコストというよりも、より中長期的視点から販売管理費と手元現金の関係をみておくことが当面は重要であろう。主なキャッシュアウトフロー要因が販売管理費であるためだ。2011年3月末で同社の現金及び現金同等物は約19億円(新株発行などによって2010年3月期末の同約10億円から増加)。販売管理費は2011年3月期実績が553百万円であった。販売管理費の大半を研究開発費(223百万円)と人件費(給与手当・報酬:129百万円)が占める。今後研究開発費はパイプラインの状況によって変動し得るが、手元現金÷販売管理費=3.4年である。


SW(Strengths, Weaknesses)分析

強み

  • 高分子ミセルにおける研究開発技術の経験。さまざまなブロック共重合体を改変してミセル化ナノ粒子を製造し、有機・無機物質をミセル粒子に封入する技術経験こそが強みであると、同社経営陣は述べている。
  • 特許。同社の技術は30件以上の特許出願によって保護されている。
  • さらなる基礎技術の入手機会。同社は強力な基礎技術提供源である片岡教授およびそのチームとのリレーションを有する。同教授は同社創設者の一人であり、継続的な協力が得られると思われる。経営陣は、東京大学・片岡研究室で生み出された技術の第一先買権を有すると述べている。

弱み

  • 資金調達。同社は2008年初めに上場したが、折しも日本の小型株、特にバイオテクノロジー関連株の下げが著しい最中のことであった。それゆえに、戦略の実行に必要となる十分な資金調達が実現できなかった。2011年3月期まで逆風下の株式市場が成長に必要な資金調達を困難とさせる状況が続いている。
  • 成功をおさめた認可薬がない。年間ロイヤリティ収入があればキャッシュフローがプラスになり、戦略的計画をはるかに実行しやすくなったであろうが、同社は初期段階の開発企業であるため、継続的な収益源がない。
  • 市場での認知度。同社は新薬開発型企業としての地位を確立しようと努めているが、これまでのところは主に初期技術をライセンスアウトしていることで、新薬開発ではなくDDSの開発のみのメーカーと見なされかねない。これは市場からは成長の可能性の芽を摘んでいると評価されかねず、資金調達の機会も逃す可能性がある。経営陣は、自社が正真正銘の新薬開発企業である点をを強調している。


主要設備

同社は本社所在地である千葉県柏市に研究開発施設を持ち、東京オフィスに管理部門を置く。


主要拠点

同社の拠点は日本国内のみである。ただし、国際的な提携関係を追求しており、めざすところは世界市場である。



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市場とバリューチェーン 

マーケット概略

製薬市場において抗がん剤は最大規模の領域である。IMSヘルスのMIDASによると、この領域は2007年に全世界の売上規模では最上位、また欧州および日本で最大売上規模領域であり、米国では脂質低下剤に次ぎ、また医療新興国(BRICs諸国、韓国、トルコ、およびメキシコ)では、セファロスポリン抗生物質に次ぎ第2位であった。

タキソールの世界売上は2000年に16億米ドルでピークとなり、後に別のタキサン系抗がん剤であるタキソテール(ドセタキセル)に取って替えられた。タキソテールは サノフィ・アヴェンティス(Sanofi-Aventis) が販売している評価の高い抗がん剤で、売上成長が続いており、2008年には20億ユーロに達している(出所:SEC Form 20-F)が、2010年に特許切れとなった。タキソールは2003年に特許切れとなった。

主要な白金系抗がん剤であるオキサリプラチンについては、主要パイプラインのセクションを参照されたい。

DDS(Drug Delivery System、薬物送達システム)は、生化学およびナノテクノロジーの進歩によって1990年代後半に生まれた新研究領域である。同社はがん領域を中心に、DDS(薬物送達システム)医薬品の研究開発を進めている。DDSは、腫瘍や他の疾患細胞に対する薬物放出制御を可能にするだけでなく、受動・能動的なターゲティングも可能にする。DDS技術によって薬効の増大、副作用の軽減、使い勝手の改良(投薬回数減、薬剤費の削減、患者のQOL向上)など、従来の医薬品の改善が見込まれる。

本レポートで触れているナノキャリア開発のミセル化ナノ粒子以外にも、DDS技術には、高分子マイクロスフェア、ハイドロゲル、生分解性ポリマー、デンドリマー、電気活性ポリマー、および改質C-60フラーレン(「バッキーボール」)など様々なものがある。

現在上市されているDDS医薬品および分子標的薬を以下にいくつか紹介する:

ドキシル(卵巣がん、エイズ関連カポジ肉腫; Johnson & Johnson)。ドキシルは主に、白金系抗がん剤が有効でない場合に卵巣がんの治療に使用される(「競合環境」も参照のこと)。

アブラキサン(転移性乳がん)。Abraxis BioScience(Nasdaq: ABII)は、世界初のパクリタキセルDDS製剤としてアブラキサンを2005年に発売した。キャリアとしてアルブミンを使用する。アブラキサンはAstraZeneca と共同販売されており、2009年の売上高は3億1,500万米ドルに達した(2008年は3億3,600万米ドル)。アブラキサンの延命効果について、NK105の妥当な比較対象であるか否かについては議論の余地があるとSR社では考える。いずれもDDS薬物であるが完全に異なる送達システムを使用しており、おそらく異なる薬効と毒性プロフィールを持つと思われる。

イレッサ(一般名ゲフィニチブ)とは、AstraZeneca およびTevaが販売する抗がん剤である。イレッサはEGFR(上皮成長因子受容体; 変異するとがんを引き起こす場合があるタンパク質)を阻害する作用がある。タルセバ(エルロニチブ、中外/Roche)は別の類似抗がん剤である。

ハーセプチン(トラスツズマブ)とは、Genentech社(Roche社が買収)が開発した抗体薬であり、乳がんの直接トリガー機構の一つとして同定されたHER2/neuと呼ばれる受容体と結合することにより作用する。

アバスチン(ベバシズマブ)とは、Genentech/Roche社が開発した別のモノクローナル(一つの細胞のクローニングによって生成された)抗体薬であり、腫瘍中の血管の形成を阻害することで作用する(血管新生と呼ばれ、新生を止める薬は血管新生阻害剤である)。
これらの抗がん剤について指摘される問題点は、腫瘍の成長を遅くする作用はあってもがん細胞を死滅させる効果が低いことである。同時に、これらは他の薬剤と併用投与することによってより効果的に作用するとされており、その例としてよくオキサリプラチンが挙げられる。
同社は新規株式公開目論見書上で、同社のナノミセル技術によって開発される新薬は、いわゆる分子標的薬である上述の抗がん剤と併用してがん治療に使用することができるとしている。また、ターゲティングの改善を図るために、ナノミセルにこれらの分子標的薬を封入するといった可能性もあり得るとしている。


サプライヤーおよび技術供給元

同社は自社技術を用いたナノミセルの生産に必要なポリマーおよび試薬を購入している。これらの特定の供給業者に対する依存度は高いと見られる(カッコ内は2011年3月期の全仕入量に対する占有率を示している)。

  • 家田ケミカル株式会社:2,092万円(63.2%)
  • 日本チャールズリバー株式会社:380万円(11.5%)
  • 川原油化株式会社:198万円(6.0%)

川原油化社は日油株式会社の代理店であり、すべての関連材料は日油が製造している。日油は、高分子ナノミセル生産に必要なポリマーをナノキャリアに独占的に製造供給する権利を持つ。この契約は2013年12月まで有効である。

同社は、これまでと同様に今後も株式会社東京大学TLO(東京大学が研究者の発見を事業化するために設立)から、実用化に向けた基礎技術の獲得を継続的に行っていくと見られる。過去には、そうした技術はまず独立行政法人科学技術振興機構(JST)に譲渡され、同社がJSTから技術供給を受けることもあったが、その基礎技術の大半は片岡教授およびその研究チームにより開発されたものである。

東京証券取引所の規定では、上場後の新たなライセンスイン案件について詳細開示の義務付けはないが、新規株式公開目論見書には参考となるいくつかの既存契約の詳細が記されている(p44~53)。一例として東京大学TLOとの実施許諾契約書を取り上げると、実施権の対価として正味販売高の1%の実施料および小額の契約一時金を東京大学TLOに支払うといった内容である。


参入障壁

認可に成功した医薬品への参入障壁は特許保護により非常に高い。その反面、研究開発段階で障壁の高さを判断することは困難である。実際、片岡教授らの国際レベルと見られる基礎研究を利用する権利を有することは一種の障壁といえるものの、多数の競合技術および優位性の主張が存在する。技術が上市段階に近づくに従い、その勝者は明らかになるであろう。 同社が研究開発に取り組む特定の技術が、製品化され成功を収めることができれば、同社の特定領域における研究の優位性は極めて高いため、参入障壁は非常に高くなるはずである。


競合環境

新規薬剤化合物の中から関連のある潜在的な競合品を特定することは難しい。同社は、実質的に全く新しい技術を開発している。日本および世界で類似の化合物あるいは類似の原理に基づく技術を用いて新薬を開発している企業は数社ある。

同社は、新規株式公開目論見書やその他参考資料で、抗がん剤、特にパクリタキセルおよびシスプラチンに適用するリポソーム担体が潜在的な競合品であると触れている。リポソームとは、膜によって保護され、内部に物質を集積しターゲットとする細胞まで送達するために使用される超微粒子である。ドキシル(PEG化リポソームカプセル封入ドキソルビシン)はこうした薬物の例である。(ドキソルビシンは有効であるが心臓毒性の強い抗がん薬である)。リポソーム担体は、概念上はナノミセルと非常に類似しているが、薬物を集積、送達および放出する方法が異なる。同社によれば、このような違いは、リポソーム担体の薬物保持力、放出の制御および薬物選択の低下に結びつく。

同社に似たアプローチで、放出制御、抗がん剤・その他の薬物のターゲティングと毒性軽減の問題解決に向けた製品の開発を行っているバイオテック企業や、がんのターゲティング治療法に取り組んでいるベンチャー企業も数社ある。

Novosomは、ドイツのバイオ企業であり、「電荷を有した逆相リポソーム」と呼ぶ技術を核酸治療剤の送達に用いている。これは、周囲のpH要因によってその電荷をマイナスからプラスに変化させるリポソームである。CD40拮抗剤と呼ばれる薬剤が非臨床段階にある。

Calando Pharmaは、薬物送達技術を開発する米国のバイオテック企業である。IT-101は、Calandoのシクロサート(Cyclocert)(TM)技術を用いて可溶化したカンプトテシン(抗がん剤の一種)であり、現在非臨床段階にある。Calandoの強みは、シクロデキストリンおよびPEGを含むポリマーナノ粒子の製造に関するノウハウであると見られ、CalandoはこのノウハウのsiRNA薬への応用に取り組んでいる。

Access Pharmaceuticals Inc.は米国拠点の企業で、活性代謝物がナノキャリアのNC-4016と同様にDACHプラチンであるプロリンダク(Prolindac、2010年の初めに米国で第II相)を開発した。プロリンダクの場合、活性剤がHPMA(ヒドロキシプロピルメタアクリルアミド)共重合体の幹と結合している。

Supratek Pharmaは、カナダのモントリオールに拠点を置く企業である。「プルロニックブロック共重合体」と呼ばれる技術を開発し、ドキソルビシン系のDDS薬剤であるSP1049Cを開発した。2005年から第II相臨床試験が英国で進行中とみられる。


代替品

同様の薬効をもつ既存薬、新薬が代替となる。医薬品発売後一定の年数が経過し特許期限切れになると、ジェネリックが強力な代替品となる。市販ジェネリックと比べ薬効に大きな優位性がない限り新薬に要求される薬効のハードルは高くなり、相対的にコストが高い新薬がジェネリックより高い売上水準を達成できるとは考えにくい。

別の抗がん技術が成功を収めれば代替となり得るが、そのような技術は既存薬の代替ではなく、既存薬と併用される可能性が高いだろう。そのような技術の例として、がん細胞内に蓄積できるナノ粒子の開発に取り組むフランス企業、NanoBiotixがある。これらの粒子は不活性で、薬物ではなく、それ自体は特定の作用を持たない。しかし、これらをX線にあてることで遊離ラジカルおよび熱が放出され、がん細胞の活動を停止させる可能性を持つ。NanoBiotix製品は実験的非臨床段階にある。


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経営戦略 

同社は、高製造コストや資金的な制限といった制約があるため、特定領域に焦点を絞った戦略をとっている。自社の技術経験、特定分野の研究やライセンスの専門知識を生かし、比較的高い投資回収が見込まれる開発品目の実用化に的を絞っている。

同社は、効能はありながらも有効なキャリアおよびターゲティングシステムを欠くため制約を受けている既存の治療用化合物の研究を今後もさらに推進していくと見られる。具体的な新規の戦略的研究領域は以下の通り:

  • タンパク質および酵素などを使った単剤での分子標的(マーケット概略の項も併せて参照。)
  • 薬物の併用(カクテル)。抗がん剤は多くの場合、互いに組み合わせることでより優れた作用を発揮する。ただし、既存の多くの抗がん剤が引き起こす深刻な副作用のため、抗がん薬のカクテル治療を実用化することは非常に困難であることが分かっている。
  • 非がん用途。

同社は、独自の薬物開発戦略の追求姿勢を維持している。しかし2012年3月期初時点においては、先行コストを低減しキャッシュフローの黒字化をより早く実現するために、早期研究開発段階化合物のライセンスアウトを行う可能性がより高い。同社が、市場または第三者割当増資によって追加資本を調達することができれば、戦略的オプション、ひいてはその事業価値が増大するであろうと、SR社は考える。


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過去の財務諸表

前期以前の業績概況(参考)

2011年3月期業績

2011年5月12日、同社は2011年3月期決算を発表した。

パイプラインの現況

パクリタキセルミセル(NK105)

同社によれば、ライセンス先の日本化薬株式会社(東証4272)が臨床第II相試験を終了、臨床第Ⅲ相試験を実施するための準備中であるとのことだ。2011年2月21日付の日経産業新聞には、「(日本化薬社は)年内をめどに最終段階の第III相試験に着手しており、2015年度中に実用化を目指すところまでこぎ着けた」と報道されている。 また、日本化薬社では本剤の価値を上げるべく、乳がんを対象とした第I相臨床試験を2010年より開始し、早ければ2011年内にも第II相臨床試験に移行する予定であるという。

ナノプラチン®(NC-6004)

ライセンス先かつ共同開発会社であるOrient Europharma Co. Ltd.社とともに第I/II相臨床試験を台湾およびシンガポールで実施中。本試験で英国第I相試験結果から想定された最大耐用量(MTD)以上の高用量まで投与可能であることが確認されたため、現在はさらに高用量のNC-6004を投与する段階にあるようだ。同社は安全性、効果の両面において当初の期待以上の内容で順調に推移しているとコメントしている。

ダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)

ライセンス先のDebiopharm社との契約は2011年3月をもって終了。同社はこれによって、前臨床および臨床試験の結果を自由に利用可能になったとコメントしている。また、新たな提携パートナーの獲得に尽力しているとのことである。なお、同社が新たな提携先とライセンス契約を締結した場合、同社は受領したマイルストン収入の一部をDebiopharm社に支払うこととなっている(詳細は同社が2011年5月12日に公表した決算短信17頁参照)。

新規パイプラインのトピックス

タンパク質ミセル

同社は、LFB Biotechnologies社(以下LFB社)と、rhFVIIa(recombinant human factor VIIa、遺伝子組み換え血液凝固第VII因子)ミセル化製剤(NC-4026)のライセンスのためのオプション契約に基づき、本製剤の有効性・安全性に関する確認を実施してきた。本来、2011年3月期中にライセンス契約に入ることで双方合意し、交渉を続けてきたが、「東日本大震災」などの影響により、LFB社の来日がキャンセルとなり、更なる安全性確認のためにオプション契約を2011年年7月20日まで延長したいとの申入れがあったとのことだ。従って、ライセンス契約締結による売上計上は2011年3月期ではなく、2012年3月期となる見込みと同社はコメントしている。

その他トピックス

同社は2011年3月期中に実施した第三者割当増資、有償株主割当増資および新株予約権の行使請求に伴う新株発行により、1,391百万円を調達した。


2011年3月期第3四半期業績

2011年2月9日、同社は2011年3月期第3四半期決算を発表した。

パイプラインの現況

パクリタキセルミセル(NK105)

ライセンス先の日本化薬株式会社(東証4272)の臨床第II相試験が終了。2010年12月に(日本化薬社が開催した)決算説明会で2011年中に臨床第Ⅲ相試験を実施するための準備中であることを発表した。2011年2月21日付の日経産業新聞には、「(日本化薬社は)年内をめどに最終段階の第III相試験に着手しており、2015年度中に実用化を目指すところまでこぎ着けた」と報道されている。

ナノプラチン®(NC-6004)

ライセンス先かつ共同開発会社であるOrient Europharma Co. Ltd.社とともに第I/II相臨床試験を実施中。台湾に加え、シンガポールでも臨床試験を開始。同社は、QOLの改善および明らかな投与期間の延長が観察され、良好に進捗中とコメントしている。

ダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)

同社によれば、ライセンス先のDebiopharm社が、欧州にて実施中の臨床第I相試験は、順調に進捗しているが、ライセンス・供給契約が2011年3月をもって終結するため、早期に新たな提携パートナーの獲得を行うべく事業開発活動を行っているとのことである。

ダハプラチン誘導体ミセルを用いた研究成果について、同社のサイエンティフィック・アドバイザーの片岡一則教授(東京大学大学院)が米医学誌「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン」に2011年1月5日付で論文を発表した。ダハプラチン誘導体ミセルは、ミセル化ナノ粒子を活用して抗がん剤のオキサリプラチンを改良したDDS(薬物送達システム)製剤。今回の論文は、抗がん剤が効かない耐性のできた大腸がんのマウスに蛍光物質で着色した抗がん剤を内包したミセル化ナノ粒子を投与すると、がん細胞の中に粒子が侵入し、抗がん剤が放出され、効果を示していることが特殊な顕微鏡で観察されたという内容である。耐性のできたがんに効果を発揮したということ、ビジュアル化(顕微鏡で観察)されたことが特に重要な点である。

新規パイプラインのトピックス

タンパク質ミセル

LFB社と有効性試験を実施中である。同社は、2011年3月中のライセンス契約締結に向けて努力しているとコメントしている

siRNAミセル(「パイプライン」の項参照)

2011年1月17日から18日に開催されたFIRST国際シンポジウム 「21世紀の医療イノベーション~ナノバイオテクノロジーが切り拓く最先端医療への挑戦~」において、片岡教授よりsiRNAに関する有用な発表があったとのことである。具体的には、siRNAミセルがsiRNAの欠点である体内での即時分解を抑制し、安定的に腫瘍部位まで到達することが証明されたという。同社はビジネスの今後の柱となるよう、研究活動を推進していくと述べている。

その他トピックス

同社は主要パイプラインの臨床試験費用並びに新規開発パイプラインの非臨床試験推進等のための資金調達を目的として、平成22年12月21日付で、有償株主割当による新株式68,987株(発行価額:1株当たり10,000円)の発行を行い、690百万円を調達した。また、新株予約権(2009年10月15日発行)の行使状況は2011年2月28日時点で480百万円となっている。


2011年3月期第2四半期業績

2010年11月12日、同社は2011年3月期第2四半期決算を発表した。同社の通期業績予想に対する上期の業績および進捗率は以下の通り。

  • 売上高: 3.9%(通期予想475百万円)
  • 営業利益: △289百万円(同△226百万円)
  • 経常利益: △288百万円(同△227百万円)
  • 純利益: △ 289百万円(同△229百万円)

主要パイプラインの現況

パクリタキセルミセル(NK105)

ライセンス先の日本化薬株式会社(東証4272)によって臨床第Ⅱ相試験が終了し、臨床第Ⅲ相試験を検討中。

ナノプラチン®(NC-6004)

ライセンス先かつ共同開発会社であるOrient Europharma Co. Ltd.社とともに第I/II相臨床試験を実施中。台湾に加え、シンガポールでも臨床試験を開始。同社は、QOLの改善および明らかな投与期間の延長が観察され、良好に進捗中とコメントしている。

ダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)

同社によれば、ライセンス先のDebiopharm社が、欧州にて実施中の臨床第I相試験は、順調に進捗しているが、ライセンス・供給契約が2011年3月をもって終結するため、早期に新たな提携パートナーの獲得を行うべく事業開発活動を行っているとのことである。SR社では、臨床第I相試験データを同社がDebiopharm社から受け取れるか否か、今後の動向に注目している。

新規パイプラインのトピックス

タンパク質ミセル

2010年10月20日に同社がリリース文を発表したように、同社は、LFB社とLFB社が有する血友病治療用タンパク質であるrhFVIIaの持続性製剤(同社がミセル化)について、全世界の開発・販売権のライセンスに関するオプション契約を締結した。

本契約締結により、本持続性製剤の確認試験などを行い、その結果に基づき、原則2011年3月末までにライセンス契約に入ることで合意がなされた。同社はLFB社からオプション契約の対価を受領し、LFB社は同社に対し、第VII因子のタンパク質ミセル製剤に関する優先的交渉権を持つことになる。

同社は、同社技術を用いた第VII因子の持続性製剤の開発により、血中滞留性の改善による患者のQOL向上を期待しているとコメントしている。また、同社によれば、日本では血友病治療薬は希少医薬品に指定されており、明確な区別がなく第Ⅰ相臨床試験から第Ⅲ相臨床試験までを行うとのことである。従って、開発期間が短く、早ければ臨床試験から約5年で承認される可能性があると同社はコメントしている。同社によっては、がん領域以外の治療薬開発の第1歩といえよう。

2010年10月20日の同社リリース文によれば、LFB社は、LFBグループに属している。LFBグループはフランスの政府系グローバル製薬企業で、血液製剤の売上規模では世界6位、フランスの病院向け医薬品売上規模では3位の企業である。同社によれば、LFBグループは免疫疾患、血友病、がん等の難病や希少疾患を得意分野とし、バイオテクノロジーに基づいた薬剤の開発・製造・販売を行っているとのことだ。


2011年3月期第1四半期業績

2010年7月30日、同社は2011年3月期第1四半期決算を発表した。同社の上半期の業績予想に対する第1四半期の業績および進捗率は以下の通り。

  • 売上高: 2.0%(上半期予想516百万円)
  • 営業利益: △145百万円(同119百万円)
  • 経常利益: △145百万円(同118百万円)
  • 四半期純利益: △146百万円(同117百万円)

売上高に関しては、提携先に対する新規開発パイプラインの評価研究用ミセルの供給に基づく収入があった。営業利益に関しては、研究開発費を極力節減したことにより、145百万円の営業損失にとどまっている。

また、第1四半期に同社のコア技術であるナノテクノロジーを応用した美容液「エクラフチュール-W」)を開発し、テスト販売を開始した。本格販売開始は2010年10月1日の予定。この化粧品の開発・販売の主な目的は同社の技術力をアピールすることにある。高分子ミセルにより、ビタミンC誘導体やビタミンEなどの保湿性の高い成分を角層のすみずみまで浸透させ、潤いあふれる透明感のある素肌を保つ。

上半期および通期業績予想に変更はなかった。同社は上半期の売上高について、新規契約締結に伴う契約収入等により、達成する見込みであるとしている。

パイプラインの現況

パクリタキセルミセル(NK105)

同社によると、ほぼ計画通り第II相臨床試験が終了し、現在データの解析中。データ解析には通常4~6ヵ月を要するが、データ解析終了後には第Ⅲ相臨床試験が開始される見込み。

ナノプラチン®(NC-6004)

現在、引き続き台湾での第I/II相臨床試験が進行中。II相臨床試験は2011年より開始予定であるが、終了までには開始から約1年かかる見通し。

ダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)

第I相の臨床試験が進行中。同社は、試験結果と基本データが、遅くとも2010年秋までに出揃うとしていたが、終了予定が12月末までにずれた。同社によると、第I相の臨床試験では安全性の確認および投与量の決定が行われるが、同社およびDebiopharm社が予想していたより副作用が少なかったことから投与できる量が増えており、臨床試験が長引いている。臨床試験の時期はずれているが、同社は安全性の確認が行われたことによるもので、Debiopharm社も満足しており、ネガティブではないとしている。


2010年3月期通期実績

2010年5月14日、同社は2010年3月期通期決算を発表した。

売上高は1億1,800万円(前年同期比66.7%減)、営業損失は4億9,300万円(前期は5億3,200万円の損失)、経常損失は4億9,200万円(前期は5億2,400万円の損失)、当期純損失は4億9,500万円(前期は5億2,400万円の損失)であった。

2010年3月期 業績のレポートカード

売上高

目標: 505百万円

実績: 118百万円

営業利益

目標: -253百万円

実績: -493百万円

当期純利益

目標: -257百万円

実績: -495百万円

2010年3月期通期業績は、3月の修正後会社予想とほぼ合致するものだった。第4四半期中にライセンス契約に至る予定だった交渉が2011年3月期まで持ち越されたことが、当初会社予想との乖離要因だった。期中のライセンス契約に至らなかったのは、シスプラチン誘導体ミセル(ナノプラチン®(NC-6004))およびダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)に関する交渉。会社側から詳細説明はないが、NC-6004の臨床試験に想定以上の時間を要していることが契約延期の主因ではないかとSR社では推察している。一方、交渉が先延ばしになったことで、逆に戦略的機会が生まれた可能性があるとSR社では考えている(詳細は後述)。

2010年3月期の研究開発費は219.2百万円(前年同期比25.8%減)だった。これは、予算上の制約が主因だったが、2009年3月期に利用した研究補助金がなかったことも影響したようだ。


損益計算書 

image:NanoCarrier-Income-Statement-JP.png


2003年3月期、売上高は、日本化薬株式会社からのマイルストン収入等により、96百万円を計上し、研究開発費用等により141百万円の経常損失が生じた。

2004年3月期、123百万円の売上高は主にキリンビール株式会社(キリンホールディングス株式会社(東証1部2503)の子会社)からであった。

2005年3月期、Debiopharm社から契約一時金(アップフロント)を受け取り、これが113百万円の売上高の大部分を占めた。

2006年3月期、Debiopharm社から研究開発協力金、エーザイ株式会社(東証1部4523)から研究開発協力金およびマイルストン収入を得、総売上高は108百万円であった。また、英国においてNC-6004ナノプラチンの第I相臨床試験を開始した。

2007年3月期、売上高はDebiopharm社から27百万円(売上高の26%)、キリンファーマ株式会社から29百万円(同28%)、エーザイ社から27百万円(同26%)であった。

2008年3月期、Debiopharm社からの収入は148百万円(売上高の56%)。また、日本化薬社からNK105関連の101万円(同38%)のマイルストン収入があった。

2009年3月期、Debiopharm社からの収入は229百万円(売上高の65%)。Orient Europharma社からの収入は119百万円であった(同33.6%)。

2010年3月期、同社は、既存・新規提携先との契約交渉遅延を理由に2010年3月26日付で2010年3月期の会社予想を下方修正した。同社のプレスリリースによると、交渉は今後も継続するとのこと。

2010年3月期の業績は、修正後の会社予想とほぼ合致する内容だった。

Debiopharm社からの収入は55百万円(売上高の47%)。 一丸ファルコス株式会社からの収入は14百万円(同11%)。28百万円は他の2社からの収入だった(社名は公表されていない)。



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貸借対照表 

image:NanoCarrier-Balance-Sheet-JP.png


資産

2011年3月末時点で、同社の現金及び現金同等物の残高は1,872百万円であり、2010年3月末の1,006百万円から増加した。2011年3月期中に行った第三者割当増資(調達額99百万円)、株主割当増資(同689百万円)および新株予約権行使請求に伴う新株式発行(同601百万円)などの結果である。

同社の固定資産はほとんどが無形固定資産(2011年3月期の固定資産合計57百万円に対し、27百万円が無形固定資産)である。従来、同項目中で最も重要なのは実施許諾権である(2011年3月期現在24百万円)。


負債

負債はごく低水準だった(2007年3月期から2011年3月期の有利子負債はゼロ)。


株主資本

2007年3月期、同社は2009年3月期の第三者割当増資(それぞれ1,400百万円、75百万円を調達)、2008年3月期の新規株式公開(IPO)による643百万円の調達などを含む多様なエクイティファイナンスを行っており、新株予約権も発行している。2009年3月期の第三者割当増資7,500万円はシンテック株式会社(Orient Europharmaの子会社)に対するものであった。2011年3月期には、第三者割当増資(調達額99百万円)、株主割当増資(同689百万円)および新株予約権行使請求に伴う新株式発行(同601百万円)などによって株主資本が増加した。


潜在希薄化

同社は2009年9月に新株予約権の発行を発表した(第6回新株予約権)。公使価格については過度の希薄化を防止するために修正可能条項付とした。最低行使価格31,500円で権利が行使された場合の2011年3月期現在の最大潜在希薄化率は4.6%(2011年3月末の発行済予約権数10,200株、発行済株式数220,885株に基づき算定)である。


一株当たりデータ

image:NanoCarrier-Per-Share-Data-JP.png

(注:同社はIPO前に10:1の株式分割を行った)


2011年3月末時点での発行済株式は220,885株であった。同日付で、発行済ストックオプションとして15,790株の潜在株があった(最大7.1%の希薄化)。

発行済オプションと第6回新株予約権を合わせると潜在株式数は25,990株となり、潜在希薄化率は11.7%となる(2011年3月期末時点)。

同社は2008年3月5日に東京証券取引所マザーズに上場した。当初は総額874百万円(諸費用前)、すなわち25,000円で34,950株(野村證券からのオーバーアロットメントの4,950株を含む)を調達することを目標とした。新規株式公開額は20,000円というより低水準に設定され、調達された資金は合計699百万円であった。

同社は調達した資金のうち相当額をNC-6004の臨床試験に出資する予定であったが、この試験計画を断念し、後にOrient Europharma社へライセンスアウトした。


キャッシュフロー計算書 

image:NanoCarrier-Cash-Flow-JP.png

営業活動によるキャッシュフロー

2006年3月期から2011年3月期の営業活動によるキャッシュフローがマイナスになっているのは、同社の技術が初期段階にあること(2011年3月期時点で、同社はまだマスマーケット向け製品を創出するに至っておらず、研究開発費、人件費など販売管理費の大半は固定費である)を反映したものである。


投資活動によるキャッシュフロー

2006年3月期から2011年3月期の投資活動によるキャッシュフローは僅少に留まっている。


財務活動によるキャッシュフロー

2006年3月期の財務活動によるキャッシュフローは、銀行からの借入金(300百万円)と株式発行(499百万円)によるもの。2007年3月期および2008年3月期は主に株式発行(それぞれ第3者割当増資とIPO)によるものだった。2011年3月期は、第三者割当増資、株主割当増資および新株予約権行使請求に伴う新株式発行によって生じている。


単純フリーキャッシュフロー

2007年3月期から2011年3月期の同社の単純フリーキャッシュフローは、同社が成長初期段階にあることを反映したものである。純利益がプラスになるのはまだ先だが、これは、同社の製品が依然として投資・開発段階にあることが原因である。




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その他情報

沿革

同社設立のきっかけは、ミセル化ナノ粒子技術の学術研究に端を発する。東京大学の片岡教授(「トップ経営者」の項を参照)、東京女子医科大学の岡野教授(「トップ経営者」の項を参照)らが、ミセル化ナノ粒子技術の医学的な応用を目標に研究を重ねた(「用語集」を参照)結果、ミセル化ナノ粒子を静脈投与した場合、血中に薬物が長時間循環し、薬物の効果が持続するキャリア(担体)となり得ることを見出した。バイオベンチャー企業経営の経験を持つ現代表取締役社長CEOの中冨一郎氏が、教授らと共に、その研究成果を事業化するために起業したのが、ナノキャリアである。


本社・研究所 (出所:会社資料)


年表
1996年 6月: ミセル化ナノ粒子を医薬品開発に応用・実用化することを目的として、ナノキャリア株式会社を設立
1997年 8月: 日本油脂株式会社(現:日油株式会社(4403))と、新規ブロックコポリマーの共同開発契約を締結
2001年 1月: 株式会社先端科学技術インキュベーションセンター(現:株式会社東京大学TLO)と「シスプラチン内包高分子ミセル」に関する実施許諾契約書を締結
2002年 6月: 日本化薬株式会社(4272)とパクリタキセルミセルに関する実施許諾基本契約を締結
2002年11月: 同社のミセル化ナノ粒子技術とキリンビール株式会社(現:協和発酵キリン株式会社)のヒト抗体技術を融合し、抗体結合型ミセルによる抗がん剤(NC-4010)開発のための共同研究契約書を締結
2004年 5月: 国内においてライセンスアウト先の日本化薬株式会社がパクリタキセルミセル(NK105)の第I相臨床試験を開始
2004年 5月: 国立大学法人東京大学および株式会社東京大学TLOと「ダハプラチン含有ブロック共重合体抗腫瘍剤」に関する実施許諾契約書を締結
2005年 3月: Debiopharm S.A.(スイス)とミセル化ナノ粒子技術によるダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)に関する共同研究およびオプション契約を締結
2006年 5月: 英国においてシスプラチン誘導体ミセルであるナノプラチン®(NC-6004)の第I相臨床試験を開始
2006年 6月: キリンビール株式会社(現 協和発酵キリン株式会社)と抗体結合型ミセルによる新規抗がん剤(NC-4010)開発のための新規共同研究契約書を締結
2006年 7月: 国立大学法人東京大学および株式会社東京大学TLOと「静電結合型高分子ミセル薬物担体とその薬剤」に関する独占ライセンス契約を締結
2007年 2月: 国立大学法人東京大学および株式会社東京大学TLOと「pH応答性高分子ミセルの調製に用いる新規ブロック共重合体およびその製造法」に関する独占ライセンス契約を締結
2007年10月: Debiopharm S.A.とダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)に関するライセンスおよび製剤供給に関する契約を締結
2007年11月: 日本化薬株式会社がパクリタキセルミセル(NK105)の第II相臨床試験(胃がん対象)を開始
2008年 3月: 東京証券取引所マザーズ市場に上場
2008年 4月: 株式会社東京大学TLOと核酸ミセルに関する独占ライセンス契約を締結
2008年 9月: 台湾のOrient Europharma Co. Ltd.とナノプラチン(NC-6004)のライセンスおよび共同開発契約を締結
2008年12月: ナノプラチン®(NC-6004)第I/II相臨床試験開始申請承認(台湾)
2008年 12月: Debiopharm S.A.が欧州においてダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)の第I相臨床試験開始申請承認
2009年 5月: 国立大学法人東京大学および株式会社東京大学TLOとカチオン性ポリアミノ酸に関する独占ライセンス契約を締結
2009年11月:同社はニュースリリースで、ドセタキセルミセルの開発成功(抗がん剤ドセタキセルを継続的に徐放するミセル)を発表
2009年12月:同社は遺伝子治療分野で、東京大学および株式会社東京大学TLOとライセンス契約を締結したと発表
2010年8月:国内において、ライセンスアウト先の日本化薬株式会社がパクリタキセルミセル(NK105)の第I相臨床試験(乳がん対象)開始
2010年10月:LFB Biotechnologiesと、タンパク質rhFVIIa(第VII 因子)のミセル化製剤のライセンスを視野に入れたオプション契約を締結
2011年3月:Debiopharm S.A.とLICENSE AND SUPPLY AGREEMENTの終結に伴うTermination Agreementを締結



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ニュース&トピックス 

2011年10月

2011年10月24日、同社は、同社のサイエンティフィック・アドバイザーの片岡一則教授(東京大学院)らが、同社パイプラインの一つであるダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)の膵臓がん集積に関する論文を2011年10月23日付で英国科学誌「Nature Nanotechnology(電子版)」に発表したとのリリース文を出した。

(リリース文へのリンクはこちら

この研究は50 ナノメートル以下のミセル化ナノ粒子が膵臓がん治療に有効であることを動物実験により確認したものである。同社によれば、がんの中でも特に治療が難しいとされる膵臓がんに対して、サイズによる治療効果の有効性を明らかにした世界で初めての成果であるとのことだ。


2011年10月11日、同社はLFB Biotechnologiesと血友病治療用タンパク質rhFVIIa(第VII因子)に関する新たな共同研究契約を締結したと発表した。

(リリース文へのリンクはこちら

同社によれば、新たな共同研究の目的は、同社の徐放性ミセル化ナノ粒子製剤の薬理および安全性に関する基本的なデータを得るとともに、長期での安全性および薬効に関するデータを得ることにあるとのことだ。また、両社は、のの共同研究結果に基づき、本製剤の開発及び商業化に関する独占的なライセンス契約の経済的な条件について交渉を行うことについても合意したとのことだ。


2011年9月

2011年9月26日、同社は、1)興和株式会社とのエピルビシンミセル(NC-6300)のライセンス及び共同開発契約の締結、2)興和社に対する第三者割当による新株発行、3)2012年3月期上期の業績予想の上方修正、を発表した(1及び2に関するリリース文へのリンクはこちら、3に関するリリース文へのリンクはこちら)。

1)興和株式会社とのエピルビシンミセル(NC-6300)のライセンス及び共同開発契約の締結

  • 同社は、興和社との間で、pH応答性ミセルシステムを採用したエピルビシンミセル(NC-6300)について承認・上市に向けて開発を進めることを合意し、ラインセンス及び共同開発を行う契約を締結した
  • 今回の興和社とのライセンス及び共同開発契約の締結により、新たにエピルビシンミセル(NC-6300)が主要パイプラインに加わることになった。これまでの主要パイプラインは、パクリタキセルミセル(NK105)、ナノプラチン®(NC-6004)、ダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)の3つであった。
  • 同社は本契約により興和社にNC-6300最終製剤の全世界における販売権及び製造権を許諾し、同社は対価として契約、治療、承認および販売の各段階において、最大で総額2,400百万円のマイルストンを受領するほか、上市後は、販売額に一定料率を乗じた継続実施料を受け取る予定

2)興和社に対する第三者割当による新株発行

  • 発行価額:1株につき26,370円(2011年3月23日~2011年9月22日の東証マザーズ市場における同社株式終値の平均値に1.05を乗じた金額)
  • 発行新株数:11,000株
  • 払込金額総額:290,070千円
  • 払込期日:2011年10月14日
  • 希薄化率:4.91%(2011年9月26日時点の発行済株式総数は223,885株)
  • 資金使途:エピルビシンミセル(NC-6300)の前臨床試験その他の研究開発費用

3)2012年3月期上期の業績予想の上方修正

2012年3月期上期の業績予想の上方修正は以下の通り。

売上高:207百万円(前回予想115百万円)

営業損失:138百万円(同338百万円)

経常損失:139百万円(同339百万円)

四半期純損失:140百万円(同340百万円)

同社は上方修正の理由として、興和社より2012年3月期において契約一時金200百万円を受領する予定であるためとしている。一方、通期業績予想については据え置かれた。


2011年9月20日、同社はタンパク医薬のデリバリーに適用可能なキャリア(担体)に関する出願が、日本国特許庁より特許査定を受けたと発表した(リリース文へのリンクはこちら)。


2011年9月2日、同社はpH応答性ミセルに関する物質特許が中国で特許査定を受けたと発表した(リリース文へのリンクはこちら)。


2011年8月

2011年8月24日、同社は特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループ(2011年8月19日開催、第6回)に同社の中富社長が委員として参加したと発表した。


2011年8月22日、同社はパクリタキセルミセル(NK105)に関する物質特許が韓国で特許査定を受けたと発表した。


2011年8月12日、同社は2012年3月期第1四半期決算を発表した。


2011年8月9日、同社は国立大学法人京都大学と核酸医薬に関する共同研究契約を締結したと発表した。同社によれば本共同研究により、京都大学が作成する新規機能を有する核酸を同社のミセル化ナノ粒子内に内包する、新規の核酸医薬品を創製することをめざすとのことだ。

注)核酸医薬: DNAやRNAの構成成分である核酸からなる医薬品のこと

同日、同社は遺伝子キャリアに関する物質特許がカナダで特許査定を受けたと発表した。


2011年7月

2011年7月20日、同社はナノプラチン®(NC-6004)の第II相臨床試験を開始したと発表した。

同社によれば、本件の詳細は下記のようになる。

  • 同社は、Orient Europharma 社(台湾)と共同で、台湾およびシンガポールにおいて、膵臓がんに対するナノプラチン®(NC-6004)及びゲムシタビン併用療法の第I/II相臨床試験を実施してきた
  • この度、第I相臨床試験パートが終了し、本併用療法における NC-6004 の推奨用量 90mg/㎡が決定した。そのため、有効性及び安全性を検証するための第II相臨床試験パートに入り、シンガポール(National Cancer Centre Singapore)で第1例目の投与を開始した
  • NC-6004については、日本国内でも上記と同じ第II相臨床試験を自社で実施する予定で準備を進めており、2012年3月期下期には IND 申請・承認(注)を経て、試験を開始する予定
  • 本件による2012年3月期業績への影響はない

注)IND(Investigational New Drug)申請・承認:臨床試験(治験)を実施するにあたり、治験実施申請資料を当局へ提出し、治験審査委員会から治験実施計画の承認を得ること


2011年7月15日、同社はLFB Biotechnologies(以下、「LFB 社」)とのオプション契約についてのリリース文を発表した。それによれば、2011 年3 月24 日発表の同社とLFB社とのオプション契約により、2011 年7月20日までのライセンス契約への移行を目標に、基本的な薬理作用および安全性確認など、種々の試験を実施してきたが、長期の安全性を含む更なる試験が必要な為、現時点では、rhFVIIaを対象としたライセンス契約には入らず、新しく1年間の共同研究を行う事となったとのことだ。

同社は、2012年3月期上期にLFB社とのライセンス契約によるアップフロント収入を見込んでいたが、その他テーマからの収益も期待できるとして、2012年3月期上期、通期会社予想は据え置いた。


2011年6月

2011年6月10日、同社はpH応答性ミセル製剤に関する物質特許が日本で特許査定を受けたほか、センサー結合型ポリマーミセルに関する物質特許がオーストラリア特許庁から特許査定を受けたと発表した。


2011年6月8日、同社はダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)の製造方法に関する出願がオーストラリア国特許庁から特許査定を受けたと発表した。


2011年6月3日、同社はパクリタキセルミセル(NK105)に関する物質特許がカナダで特許査定を受けたと発表した。


2011年6月1日、同社はパクリタキセルミセル(NK105)に関する物質特許が日本で特許査定を受けたと発表した。


2011年5月

2011年5月12日、同社は2011年3月期決算を発表した。


2011年5月10日、同社はダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)に関する物質特許が米国で特許査定を受けたと発表した。


2011年3月

2011年3月28日、同社は核酸医薬のデリバリーに適用可能なキャリア(担体)に関する出願(発明1)が日本国特許庁で特許成立(設定登録完了)したと発表した。同社によれば、同社が独占ライセンス権を有する先行出願(発明2:日本で特許成立済)と合せて、ポリマー型核酸キャリアに関する広域な物質特許を日本で確保できることになるようだ。

発明1

名称:短鎖のカチオン性ポリアミノ酸およびその使用

出願番号:2010-037014

特許権者:ナノキャリア株式会社/国立大学法人東京大学

発明2

名称:カチオン性のポリ(アミノ酸)およびその使用

出願番号:2010-524300

特許権者:国立大学法人東京大学

同社によれば、核酸に代表されるバイオ医薬は次世代型医薬品として注目される一方、体内での安定性が極めて低い。そのため、標的細胞に確実に導入するにはキャリアの利用が必要不可欠であり、優れたキャリアの開発が期待されているとのことだ。


2011年3月24日、同社は2011年3月期の業績予想の下方修正を発表した。修正内容は以下の通りである。

2011年3月期通期

  • 売上高:83百万円(前回予想475百万円)
  • 営業利益:△544百万円(同△226百万円)
  • 経常利益:△562百万円(同△227百万円)
  • 当期純利益:△568百万円(同△229百万円)

同社は下方修正の要因として、LFB Biotechnologies社(以下LFB社)とのライセンス契約締結が2012年3月期に持ち越しになったこと(rhFVIIa-ミセル化製剤(NC-4026)のライセンスのためのオプション契約を2011年7月20日まで延長)、Debiopharm社とダハプラチン誘導体ミセルのライセンス・供給契約の終了契約を締結したことを挙げている。


2011年3月16日、同社は核酸医薬のデリバリーに適用可能なキャリア(担体)に関する出願が、日本国特許庁で特許成立(設定登録完了)したと発表した。また、同社によれば、これによってポリマー型核酸キャリアに関する次世代プラットフォーム技術に適用可能な物質特許を日本で確保できることになるとのことである。


2011年3月14日、同社は3月11日に発生した「東北地方太平洋沖地震」の2011年3月14日時点における影響について、下記のようにコメントを発表した。

  • 役職員に被害はなく、本社研究所および東京オフィスの業務上の支障はない
  • 研究所の装置や動物などに対する影響が懸念されたが、設備等の損傷もなく研究活動に支障がないことを確認済である
  • 今後、業績に影響を与える事象が確認された際には、速やかに開示する予定


2011年2月

2011年2月9日、同社は2011年3月期第3四半期決算を発表した。


2011年1月

2011年1月13日、同社はダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)に関する製法特許(白金錯体のポリマー化配位化合物の製造方法)が中国特許庁から特許査定を受けたと発表した。


2010年12月

2010年12月21日、同社は独立行政法人国立がん研究センターとpH応答性エピルビシン結合高分子ミセル(NC-6300)に関する共同研究を開始したと発表した。


2010年12月17日、同社は株主割当による新株式発行(2010年9月30日発表)の条件などが確定したと発表した。詳細は下記の通りである。

(条件)

  • 発行新株式数:同社普通株式68,987株
  • 発行価額:1株につき10,000円
  • 発行価額の総額:690百万円

新株式発行による希薄化率は51.7%である。


2010年12月10日、同社はダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)に関する出願が、オーストラリア特許庁および韓国特許庁から特許査定を受けたと発表した。


2010年11月

2010年11月19日、同社はpH応答性ミセル製剤に関する出願特許が、欧州特許庁から登録査定を受けたほか、センサー結合型ポリマーミセルに関する出願特許が、日本国に続いてカナダ国特許庁からも登録査定を受けたと発表した。


2010年11月12日、同社は2011年3月期第2四半期決算を発表した。


2010年10月

2010年10月20日、同社は、フランスの政府系企業であるLFB Biotechnologies社(以下LFB社)とLFB社が有する血友病治療用タンパク質rhFVIIa(recombinant human factor VIIa、遺伝子組み換え血液凝固第VII因子)を同社がミセル化した持続性製剤について、全世界の開発・販売権のライセンスに関するオプション契約を締結したと発表した。なお、rhFVIIaとは血友病治療に用いられる治療薬の1種である。

同社によれば、本オプション契約は2010年9月30日付の2011年3月期会社予想に既に織り込んでいるとのことである。


2010年9月

2010年9月30日、同社は、同日開催の取締役会において、株主割当による新株式発行を行うことを決議したと発表した。

  • 目的と背景

同社は今回の新株発行の理由について、以下の点を挙げている。

1.2009年9月29日の取締役で発行を決めた第三者割当による新株予約権が、行使価格を上回ることがほとんどなく現在まで至っている。そのため、調達資金は新株予約権が行使された場合に可能であった約947百万円を下回り、約48百万円に留まっている

2.1.により、プロジェクトの資金調達ができていない

3.資金調達手段として、直接金融に依拠せざるを得ない

具体的なプロジェクトとその金額、支出時期について同社は以下のように指摘している。

ナノプラチン®(NC-6004)の臨床試験費用:400百万円、2011年8月以降支出予定

ダハプラチン誘導体ミセルの臨床試験費用:220百万円、2011年11月以降支出予定

pH応答性ミセルを中心とした新規開発パイプライン候補の前臨床試験費用など:692百万円、2011年1月以降支出予定

  • 条件

発行新株式数:同社普通株式133,398株(予定)

発行価額:1株につき10,000円

発行価額の総額:1,333.98百万円(予定)

申込期間:2010年12月1日から2010年12月14日まで

払込期日:2010年12月21日

ディスカウント率:40.5%(2010年9月29日の終値16,800円を参考として)

予定通りの株数が発行された場合の希薄化は100%である。


2010年9月3日、同社は、Debiopharm S.A.,との間で締結していたダハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)製剤のライセンス・供給契約について、Debiopharm S.A.,の経営戦略上の理由により2011年3月をもって終結することになったと発表した。同社は2007年10月15日に同社のMediCelle®システムを用いたダハプラチン誘導体ミセル製剤の日本を除く全世界の開発・販売権をライセンス供与していた。同社では、契約終了は、Debiopharm S.A.,が先に開発した抗がん剤のオキサリプラチンに関わる営業戦略による判断であるとみている。

本契約終結により、同社は、以前より独占的に保有していた製造権に加え、全世界の独占的な開発・販売権を持つこととなる。ダハプラチン誘導体ミセルは、欧州において第Ⅰ相臨床試験段階で、同社は前臨床および臨床試験結果を得る事により、適切な条件でのライセンス契約が可能と見ており、早期に新たな提携パートナーの獲得を行うとしている。

同社によると本契約終結の効力発生日が2011年3月であることから、2011年3月期業績への影響は軽微。しかしながら、SR社では、早期に新たな提携パートナーの獲得が出来ない場合は、マイルストン収入等の面で中長期的に影響が生じる可能性もあると見ている。


2010年9月3日、同社は第2四半期累計期間および通期の業績予想を修正した。修正後の業績予想は以下の通り。

第2四半期累計期間業績予想:

  • 売上高 20百万円
  • 営業利益 △312百万円
  • 経常利益 △312百万円
  • 当期純利益 △313百万円

通期業績予想:

  • 売上高 475百万円
  • 営業利益 △226百万円
  • 経常利益 △227百万円
  • 当期純利 △229百万円

海外製薬会社と新規ミセル化ナノ粒子医薬品製剤について、これまでライセンス契約締結による収入を第2四半期に見込んでいたが、評価期間が延長され、ライセンス契約締結見込み時期が来春にずれた。本件については、第3四半期にいったんオプション契約が締結される。なお、売上減少幅ほどに利益が減少していないのは、経費節減の効果に加え、上記契約案件で見込まれていた費用が発生しないことや、NC-4016についても第I相の臨床試験の終了予定時期がずれたことにより治験用製剤製造費用および関連費用が発生しないためである。


2010年7月

2010年7月30日、同社は2011年3月期第1四半期決算を発表した。


2010年6月

2010年6月28日、同社はパクリタキセルミセル(NK105)に関する物質特許が欧州において登録査定を受けたことを発表した。

2010年6月21日、同社は同社のコア技術であるナノテクノロジーを応用した化粧品を開発したことを発表した(美容液;商品名「エクラフチュール-W」)。発売は2010年10月1日を予定している。


2010年5月

2010年5月19日、同社は同日開催の取締役会において、株式会社メディネットに対し第三者割当増資を行うことを決議したと発表した。発行株数は4,819株、発行価額 1株につき20,750円。調達資金の額は99,994,250円であり、発行諸費用1,800,000円を差し引いた差引手取概算額は98,194,250円となる。2010年6月7日に払込手続きが完了され、増資後の発行済株式数は133,398株になった。資金用途としては、メディネット社との包括的共同研究契約を元に行うがん治療分野の新しい医薬品や医療技術等であるとのこと。詳しくは、サイトカインのミセル化製剤と各種エフェクター細胞および抗原提示細胞を用いた細胞治療との組み合わせによる新たながん治療技術や、抗体結合ミセルを用いてがん領域をターゲットとした治療技術の研究開発費用に充当する予定である。株式発行による希薄化は3.74%であり、既存株主に対して大きなインパクトはない、とSR社は見ている。また、厳しい市場環境におけるメディネット社との協力関係強化は一定の評価ができるであろうが、目に見える形で成果が表れるのにはある程度時間がかかるであろう。

2010年5月14日、同社は通期決算を発表した。


トップ経営者

代表取締役
中冨一郎博士は1996年6月以降同社の代表取締役社長CEOを務めている。久光製薬株式会社でのキャリアの後、米国セラテック社で事業開発担当副社長を務め、後に日本セラテック株式会社の代表取締役社長となった。iPSアカデミアジャパン株式会社の社外取締役でもある。

取締役

加藤泰己博士は、2005年7月から取締役CSO (Chief Scientific Officer) を務めている。ナノキャリアへの参画以前は、協和発酵工業株式会社に22年間在籍し、直近では医薬研究センター部長を務めた。


中塚琢磨氏は、取締役CFO (Chief Financial Officer)および管理部長で、2011年6月同職に就任。同氏は1976年に国家公務員上級職に採用された。その後、三井住友海上火災保険株式会社、グッドウィルグループ株式会社(1999年4月入社)を経た後、アンジェスMG株式会社取締役CFO(2003年9月入社)、株式会社西原環境代表取締役社長(2008年1月就任)などを務めた。


花田博幸氏は、取締役CBO (Chief Business Development Officer) を務めており、同職就任は2008年6月。2007年12月にナノキャリア顧問、ついで2008年5月に事業開発部長の職に就いた。それ以前はアンジェスMG株式会社の顧問を務め、同社以前は、生化学工業株式会社の執行役、さらに株式会社そーせいの開発部門長を歴任。同氏のキャリアは1980年の久光製薬に始まる。


岡野光夫博士(非常勤取締役)は、ナノキャリア技術の中心的な発明者の一人であり、研究開発の方向性への助言および重要な戦略的判断の決定にあたって重要な役割を果たしている。同博士は、東京女子医科大学ならびに米国ユタ大学の教授であり、先端生命医科学研究所所長も務める。その研究専門は生体材料、人工臓器、DDS、組織再生などである。


大橋彰医学博士(非常勤取締役)は、臨床開発におけるその豊かな経験や知識に基づいて臨床/非臨床的プログラム戦略および同社のプロジェクトの実行に関する助言や情報提供を行う主要メンバーである。


サイエンティフィック・アドバイザー
同社は、東京大学の片岡一則教授および筑波大学(学際物質科学研究センター)の長崎幸夫教授と顧問契約を結んでいる。片岡教授は新規技術に関する助言を行い、長崎教授はsiRNAの応用を中心として助言を行っている。

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従業員 

2011年3月末現在、常勤スタッフは28名。平均年齢は39歳である。

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大株主 



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配当および株主還元 

2011年3月期時点で配当を含め、株主還元策は実施されていない。

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IR活動 

お問い合わせ先
ナノキャリア株式会社
東京オフィス
〒103-0027 東京都中央区日本橋3-2-2
電話:03‐3548‐0217(社長室)

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ところで

用語集

基本的なナノキャリア関連のバイオ用語

DNA(デオキシリボ核酸)

生物の全遺伝情報を含む核酸タンパク質合成のような、生命維持に必要なプロセスに関する情報の格納場所、あるいは指示コードの鋳型として機能する。その情報を実際に保有しているDNA分子のセグメントを遺伝子と呼ぶ。

pH

国際的な合意に基づいた相対的尺度による酸性度の指数。純水はpH7に近い中性pH。pH7未満の環境は「酸性」と呼ばれ、pH7を超える環境は「アルカリ性」または「塩基性」と呼ばれる。血漿はわずかにアルカリ性でpH7.35程度である。この値は、身体がストレスなしに機能するために最適なレベルであり、生理的pHと呼ばれる。

RNA(リボ核酸)

DNAにやや類似する核酸。異なるのは、DNAが2本鎖であるのに対してRNAは通常1本鎖という点である。これは、RNAの極めて重要な特徴であり、例えばタンパク質の合成に必要な情報の運搬といった役割を果たす。
  • mRNA(伝令RNA)
情報をDNAからリボソーム(RNAとタンパク質の組み合わせ)まで運ぶもので、リボソームでは続いてタンパク質が作り出される。
  • RNA干渉(RNAi)
遺伝子がサイレンシング(複製の阻止)されるプロセスであり、ウイルスに対する身体本来の防御機能の一部。特定の有害な体内プロセスをサイレンシングすることが可能であると研究者が発見した際には、医学および生命工学ベンチャーの耳目を集める話題となった。RNAiでは、siRNAの断片が「敵対」RNAとカップリングして情報を運ぶことを阻止し、敵対細胞を効果的に死滅させる。RNAiは、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)と呼ばれることもある。
  • siRNA
低分子干渉RNA、「短干渉RNA」または「サイレンシングRNA」とも呼ばれる。RNA干渉に関与するRNAの分類。siRNAの発見は、1999年Science誌で最初に発表された。
  • アンチセンスRNA
mRNAと相補性を持つ1本鎖のRNAであり、mRNAと巧妙に結合する。アンチセンスRNAを相補的mRNAと結合させて翻訳機構を物理的に妨害することによって、細胞機能を妨げることに利用できるかもしれない。医薬的利用は今のところ見出しづらいとされている。アンチセンスRNAはRNA干渉(RNAi)とは異なる。
  • 他のRNA種
20種以上のRNAが存在する。tRNA(転移RNA、タンパク質の産生に不可欠)、rRNA(リボソームRNA、触媒)が重要であると思われる。

アミノ酸

アミノ酸はタンパク質の構成要素をなす。約300種の既知のアミノ酸が存在し、そのうち約20種がタンパク質合成に関与している。

ウイルス

通常は10~300ナノメートルの大きさの感染性因子であり、宿主細胞内でのみ繁殖することができる。ウイルスは、細胞構造を利用してウイルス自身のDNAまたはRNAを複製することによって細胞を乗っ取る。通常は、ウイルスが急速に繁殖する一方で宿主細胞は死ぬことになる。ウイルスは、人間における外因性疾患源の最も重大なものの一例である。

エンドサイトーシス

物質が細胞膜を通らずに細胞内に取り込まれること。言い換えれば、細胞が物質を「飲み込む」こと。

(化学)結合

原子や分子が互いに結びつくプロセス。

核酸

遺伝情報を保有・運搬し、また細胞内での構造をなす高分子。最も一般的なものはDNAおよびRNAであり、これらはすべての細胞およびウイルス中に見い出せる。

共有結合

原子が電子(マイナス電荷を有する原子より小さい粒子)を共有することによって互いに結びつく(結合する)ことである。

血漿

水のような溶液(ほとんど水)で、血液の主要構成成分で、その量の半分以上を占める。血液細胞にとっての自然環境である。

抗体(免疫グロブリン、Ig)

細菌やウイルスなどの外来物質への反応として免疫システムが作り出す、固有のタンパク質。侵入細胞を死滅させるか、その死滅を助ける。異なる防御機能を持つ5種類の抗体が存在する。

高分子

大きな分子

高分子ミセル

ブロック重合体(ブロックポリマー)から形成され、球状の内核および外殻を有する高分子の集合体。

細胞

生物を構成する最小単位。細胞は、本質的にはある程度自律した有機分子の集まりであり、それが属する生物の機能および生殖に必要な情報を含む。

サイトカイン

短命の分子の分類で、タンパク質である場合が多く、ある種の細胞によって、自身および他の細胞の機能に影響を与えるために作り出される。基本的に、これらは細胞に特定の反応(たとえば特定の化学物質を作り出す)を起こさせるシグナル伝達(メッセンジャー)因子である。サイトカインは免疫機構において重要な機能を持つ。

ジアミノシクロヘキサン白金(DACHPt; ダハプラチン)

有機白金化合物であり、オキサリプラチンの基本構成要素。

(分子の)自己集合

自己会合とも呼ばれ、無秩序の系が、その構成要素間の相互作用によって自然に規則正しい構造を形成するプロセスをいう。

重合体(ポリマー)

化学結合(共有結合)によって連結された反復構造からなる高分子
  • 共重合体(コポリマー)
1種類以上の単量体からなる重合体。1種のみの単量体を使用した場合は同種重合体となる。
  • 単量体(モノマー)
他の単量体と結合して重合体を形成することができる小分子(通常は有機分子)。最も有名な単量体は、ブドウ糖およびアミノ酸である。アミノ酸は、タンパク質という重合体を形成する天然の単量体である。
  • 同種重合体(ホモポリマー)
単一の単量体の鎖からなる重合体。
  • ブロック共重合体(ブロックコポリマー)
2種以上の同種重合体の単位が共有結合によって結合された共重合体。

親水性分子

水と一時的結合を形成する分子。言い換えれば、これらは「水を好む」性質を持つ。

疎水性分子

水と反発する分子。言い換えれば、これらは「水を嫌う」性質を持つ。

タンパク質

アミノ酸からなる有機化合物。人体の主要な構造部分をなしている。人体組織の構成要素として、あるいは生化学的反応の制御を補助する「酵素」(生体触媒)として作用することができる。

ナノサイズ

ナノスケール、すなわちナノメートルで測定される大きさ。ナノメートルは1メートルの10億分の1である(1/1,000,000,000)。通常は、1~100ナノメートルの大きさの話をする場合に「ナノスケール」という用語を使う。

白金(Pt)

化学元素であり、かつ貴金属。白金は高い細胞毒性(細胞に対して毒性であること)でも知られている。実際には、DNA合成を阻害(妨害または減少)して細胞の分裂を妨げる。

分子

強力な化学結合によって明確な構造が保たれている、安定した原子の集団。有機(生物学的起源)あるいは無機(鉱物起源)の分子がある。有機分子は必ず炭素を含むが、炭素を含むすべての分子が有機であるわけではない。

ペプチド

αアミノ酸と呼ばれる特定のアミノ酸同士が結合した場合に形成される小重合体。これらのアミノ酸は、すべてのタンパク質の構成要素である。

ポリエチレングリコール(PEG)

ポリエーテルという有機化合物の一種として広く知られている。我々が関心を寄せるのは、水溶性があり、一部の疎水性分子と結合した場合に界面活性剤(ミセルの構成要素)を形成できることである。

ミセル

水性コロイド中に分散している界面活性剤と呼ばれる細胞の集まり(凝集体)。コロイドとは、2種類の物質が互いに均一に分散している混合物である。溶液とは異なり、これらの物質は、通常はその粒子が溶けるには大きすぎるため、懸濁しているだけであって溶解はしていない。コロイドの例は牛乳である。界面活性剤とは、疎水性の「尾部」および親水性の「頭部」をどちらも含むタイプの分子である。この特徴により、界面活性剤は何にでも溶けることができる。水中で一定の濃度に達すると、これらは小さな球状の構造を形成するが、その際、それぞれの界面活性剤分子の疎水性尾部が内部に隠れて内核を形成し、親水性頭部が外部に突出して外殻を形成する。ミセルは、石けんまたは洗剤に似た作用をすることができ、不溶性の粒子がミセル内核(それ自体も不溶性であり、基本的には油である)に拾われてその内部に包み込まれ、「洗浄」効果を示す。これがまさにナノキャリアの技術のポイントであり、小さなミセルが不溶性かつ有毒であることも多い薬物を包み込み、血液中を運ぶことができる。

リガンド

特にタンパク質または核酸と結合するシグナルトリガー分子であり、例えば医薬物質とターゲットとなるがん細胞との結合を可能にするナビゲーション・ブイまたはセンサーとしての役割を果たす。

有機金属化合物

炭素・金属間の結合を持つ化合物。金属が白金である例が有機白金化合物である。ダハプラチンは有機白金化合物の例である。



医薬品関連用語の基礎知識

DDS(薬物送達システム)

薬物が身体から放出、吸収、分布または排除される方法を改変することによって、薬剤プロファイルを改善する技術である。目的は薬物を身体内のターゲット部位に送達することである。簡単に言えば、DDSとは、薬剤送達のシステムである。

GMP

医薬品の品質管理基準(Good Manufacturing Practice)の略であり、同社の事業背景との関連では、International Conference on Harmonization (ICH) によって認可されている研究開発・製造ガイドラインの一部にあたる。

アクティブ・ターゲティング

部位特異性リガンド、またはシグナル伝達分子を用いて薬物をターゲット臓器に運ぶことからなる、非浸潤性の治療手段である。これらの分子はセンサーとして働き、ミセルが運ぶ薬物と結合している場合は薬物送達効率を向上させる。

アブラキサン

Abraxis Bioscience Inc.が開発販売している抗がん剤であり、最初に市販されたDDS抗がん剤の一つ。パクリタキセルをベースとし、送達システムとしてアルブミン(水溶性血清タンパク質)を使用している。

インヴィトロ(In Vitro)

生体組織外部の制御された環境で行うプロセスを意味する。

インヴィヴォ(In Vivo)

動物やヒトといった生体を使って行うプロセスを意味する。

オキサリプラチン

シスプラチンと同族の白金系抗がん剤である。1976年に日本で発見され、Debiopharmにライセンスアウトされた。Debiopharmは、オキサリプラチンを大腸がん治療薬として開発し、1994年にSanofi-Aventisにライセンスした。1999年に欧州で、2004年に米国での販売が認可された。Sanofi-Aventisはこれを商品名Eloxatinとして販売している。新規化学成分としての特許は2007年に期限切れを迎えたが、結腸がんの治療におけるさまざまな用途に関しては2013~2016年まで特許保護される。

契約一時金(アップフロント)

通常ライセンス契約の開始時に行われる現金または株式の支払である。

抗体結合型ミセル

同社が開発した化合物の種類である。結合(コンジュゲード)とは、共有結合を介して生体分子を組み合わせた生成物である。抗体などのセンサーを薬物が封入されたミセルと結合させ、薬物送達効率を向上させるために使用することができる。

シスプラチン

白金系がん治療(抗がん)薬の一種。1978年FDAに認可され、カルボプラチンおよびオキサリプラチンを含む薬物群では最初の(認可)薬であった。DNAまで浸透し、細胞分裂を妨害する。最終的には細胞死を引き起こす有機白金化合物を身体内で形成することによって作用する。静脈内投与で、最も広く使用されている抗がん剤の一つである。広く使用され非常に有効な抗がん剤でありながら、重度の副作用を伴うため使用量に制限がある。

シスプラチン内包高分子ミセル

ミセルの核内部にシスプラチンを封じ込めた高分子ミセルである。

代謝物

生命の維持のために有機体が行う一連の化学反応の生産物。

タキソール

Bristol-Myers Squibbから販売されているパクリタキセルで、パクリタキセルをヒマシ油配合物(クレモホールEL)およびエタノールに溶解したものである。

ダハプラチン誘導体ミセル

ナノキャリアが開発した、ジアミノシクロヘキサン白金(Dachプラチン)を封入した新しいミセルである。

ナノプラチン

同社が開発した薬物の商標(主要パイプライン参照)であり、ナノミセル技術を利用して作り出されたシスプラチン内包高分子ミセルである。

パクリタキセル

抗がん剤の一般名である。1967年に米国で発見され、珍しいタイヘイヨウイチイの樹皮から単離された。Bristol-Myers Squibbによって商品開発され、タキソールとして販売されている。これは、別の薬剤ドセタキセル(タキソテールとして販売)・アブラキサンと共にタキサンと呼ばれる抗がん剤群を形成する。

マイルストン

研究開発または臨床試験のマイルストン達成と関連づけられた現金収入である。

薬物キャリア

薬物のターゲット領域への分布を向上させるように働く物質である。

臨床試験

所定の試験計画に従ってヒトを対象に行う生物医学または健康に関する調査研究であり、新薬、治療、または装置の安全性および効能を確認するために実施する。臨床試験は、第I、II、III、IV相といった数段階から成る。
  • 第I相臨床試験
少人数のグループに対して行う新薬の試験であり、ほとんどの場合は健常者が対象となる。安全性の評価、安全な投与量の範囲決定および副作用の調査を目的とする。
  • 第II相臨床試験
中規模の人数のグループに対して行われる探索的試験で、薬効、安全性、用量反応の確立を目的とした試験である。第I相と第II相試験は合わせて行われることがある。
  • 第III相臨床試験
通常大人数の患者グループでの無作為化試験であり、類似条件下で従来治療と比較した薬効と安全性の確認を目的としている。当該試験が成功した場合、認可に向けて試験結果が規制当局に提出される。
  • 第IV相臨床試験(市販後調査試験)
さまざまな患者集団における認可薬の効果と安全性、時には長期にわたる安全性について調査する。
  • 第0相臨床試験
近年FDA(アメリカ食品医薬品庁)が定めたヒトに対する試験段階で、 FDAの「探索的治験薬研究」に関する2006年ガイドラインに基づき治療レベルを下回るごく少量の投薬で行われる。第0相は、化合物の安全性や薬効に関してではなく、化合物が生体外試験や動物試験の段階と同じ働きをするかどうかのデータを提供する。

ロイヤリティ

ライセンスアウトした製品の収入に関連して支払われる報酬。売上額の一定割合または固定額である。